ハイスクールD×D 理不尽壊しのリインカーネイション   作:橆諳髃

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悲報……作者またもや提出期限を過ぎる。ジャンヌさんのお仕置き延長……


58話 堕天使(堕ちた転生者) 中編

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フッ」

 

「ハッ」

 

「セイッ‼︎」

 

「「「ぐぁぁっ⁉︎」」」

 

若者が持つ武器の一振りで、若者を囲う者達が風圧などで吹き飛ばされ、それに巻き込まれて地面に伏す。数の暴力で数えたのならば、若者に利は無かった。

 

だがその若者は、自身の力だけで数の暴力を打ちのめしていく。軽々と振るわれる若者の武器は、常人が両手で持ったとしても満足に払う事は出来ないだろうと簡単に予測が出来た。それを若者は片手で、まるで棒切れを振るうかのように扱うのだから。

 

その様子を他の誰かが見たらきっとこう思うことだろう……

 

それまさしく自然災害……嵐が無慈悲に何もかもを巻き込んで進んでいっていると……

 

「っと、最後はアンタだけだな」

 

「ば、化け物め……」

 

「何とでも言って構わない。対して俺はアンタらからそんな罵倒を食らったからと言って痛くも痒くもないからな。それじゃあ……次に目を覚ました時が天国である事を願おう」

 

その一言とともに若者は両手でで武器を握り、上段から相手の頭目掛けて振り落とした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は転生者だからこそ、この作品が本来どの様な道筋を辿っていくのかを知っている……イッセー達には、既に俺が転生者だとは知らせているものの、この世界が創作物だとかそんな事は口にしていない。

 

(まぁそもそもの話、この作品本編が始まる相当前から介入している時点で辿る道筋もズレているが……)

 

二天龍退治に少し手を加えた事然り、本編始まる数年前の過去に介入した事も然り……まぁ最終的に自分が選んだ事だから悔いはないが?

 

(だが……まさか俺以外にも転生者がこの世界にいるなんてな)

 

この情報は、女神様と俺と一緒に来てくれたゲーティア(現アルヴィン)からもたらされた情報だ。女神様曰く、自分以外の誰かがこの世界に転生者が紛れ込んだと。アルヴィン曰く、その転生者は堕天使側に属しており、表向きはよく振舞っている様だが、裏では平気で悪事を行なっていると。

 

一応神様の世界でのルールではあるが、その世界では転生させるとしても神様1人につき(この単位で言い表しても大丈夫かは分からないが……)人間1人、しかも転生させる世界も早い者勝ちらしく、その世界に転生させた転生者が死んでしまったり、何らかの悪影響を及ぼしてその世界を破滅に追い込んだりなどが原因で、神様がその転生者を転生させた世界から追放しない限りは、その世界には転生させない。というのがルールであるらしい。

 

そんなルールがあるにも関わらず、何故そんな事になってしまったかといったら……簡単な話俺の事が気にくわないとある神が勝手にやった事だそうだ。しかも転生させるか否かの判断がまずあって、言うなれば生前どれだけ善行、悪事をやったかによって天国か地獄か、はたまた転生の3つに別れる。

 

俺の場合は……善行+若くして死んでしまったとの事で転生したと聞かされたが……別段善行をした覚えは無い。自分のやりたかった事をしたまでで、それ以上でもそれ以外でも無い。でもその結果として、今俺が生まれた世界がある。再び歩む事ができる世界がある。本当に女神様には感謝しなくちゃな。だからこそ……この世界でも俺のやりたい事をやる。大切な人を、目の前で傷つきそうな人達を守ると。

 

まぁ俺の事はさておき……その堕天使側に所属する転生者の事だが、なんと1回地獄に堕ちているにも関わらずに転生したとの事だ。

 

(というかそれってアリなの?)

 

勿論女神様からは絶対にあり得ないと言われた。例えあったとしても地獄の刑期を終えて厳しい審査を超えたらの話で、今回のはとある神様の独断だそうだ。全くもって傍迷惑な話だとは思う。そもそも俺の事が気に食わないのであれば、直接俺の方にしてくれば良いものを……なのにこんな回りくどい事をして、他の人に迷惑をかけて……

 

(もしこの世界に来たのなら俺が軽くお灸を据えてやるとしよう

 

そこにはとても怖い笑みを浮かべた颯也さんがいたと言います……

 

 

 

 

 

「にしても、化け物……ね」

 

最後の1人にそう言われて、少し寂しげに呟く。精神的にはかなり歳はとっているが、それでも心はガラスのハートなのである……

 

颯也はここに来る前、祈荒に頼み事をされた後の事だが、帰りが遅くなる事であったり、何をしに行くのかについてはしっかりとエレナ達に話していた。そこで心配された事は……誰の目にも想像できる事だ。そして少し心が“傷付いた”。それでも微々たるものではあるが……傷付いたのだ。

 

(まぁ俺よりもイッセーの方が余程大きな傷を負っているよな)

 

傷付いた事を自覚しているとはいえ、今は目の前の事である。そう……ここで立ち止まる訳にはいかない。

 

「さて、後は首謀者だけだな」

 

地下を占拠していた輩は適当に気絶させてある所に送っておいた。まぁあいつらが更生すれば良いんだが……

 

(いや、どうあったとしても更生する姿が目に浮かぶんだが……)

 

まぁ、ここに来る前に祈荒さんからこいつらを助けたいって頼まれたからな。そっちはそっちでどうにかするだろう。

 

(それと今気付いたが……レイナーレさんも気を失っているか)

 

少し時間をかけすぎたと思うが、まさかこの短時間でレイナーレさんを沈静化するとは……こちらとしてはイッセーも能力に覚醒した事は感じているし、だからといってあの3人でレイナーレを沈静化したとは思わない。そう、イッセー達の他にもう1人いるのだ。それもこの場にいきなり現れた(迷い込んだ)と言っても良いぐらい唐突に……

 

(というかあの人までこっちに来たか……というか会った時よりも益々強くなってない?)

 

まぁ何というか……あの世界で縁を結んだ事は確かではあったから、いつこっちに来てもおかしくなかったし……

 

(でもあの人も大変だよなぁ〜……違う世界を転々とし過ぎというか……)

 

でもそれはそれとして……これで首謀者も出てこざる得ないだろうな。

 

「さぁ〜て……さっさと首謀者を叩きのめして元の日常に戻るか」

 

手に持っていた武器もいつのまにか納めて、礼拝堂へと続く階段を上っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side ???

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うっ……ここは……?」

 

さっきまで寂れた教会の地下にいたはずなのに、何故か今は全く、来た事がないところにいつのまにかいた。ここで目覚める最後は確か……どうしていただろうか? ……っ⁉︎

 

そこで思い出した。あの男に……あの悪魔の武器を持った悪魔のような男に殴られたのだ。それも自分の頭をあの武器で、なんの躊躇いもなく……周りにいた奴らも、手段は違えどあの武器で殴り飛ばされて消えて行った。あれはまさに……化け物のような所業だった。

 

「化け物……」

 

自分がそう呟いた時だった。

 

「あら、目が覚めましたか」

 

声をかけられた。声が聞こえた方向を見るとそこには、修道女がいたのだ。それも教会でよく見るような姿のだ。だが顔付きは美人の部類に入る。もしこの女性に言い寄られたのなら、自分だったら即座にOKを出すだろう。

 

「め、女神だ……」

 

「ふふ、お世辞でも嬉しいですわね」

 

その独り言が聞こえたのか、修道女は頰に手をやりながらそう答えた。その仕草に見惚れてはいた。それから少し経ってから、自分の現状の事を思い出した。

 

「こ、ここは……どこなんだ?」

 

「ここですか? そうですね……簡単に言うならば……」

 

お前達を更生させる場所よ

 

その声は、修道女の後方から発せられていた。それによってやっと気付いたのだ。この場所が異様な事に……意識が少し混濁して目の前の事しか見えてはいなかったが、よくよく周りを見ればさっきまで一緒にいたはぐれエクソシスト達が生気のない顔で俯き、ブツブツと何かを言っていた。それも皆、同じ姿勢で……

 

「ヒィッ⁉︎」

 

「あら、怖がらなくても良いですわ。最後には皆、幸せになるのですから」

 

修道女が綺麗な笑みでそう言うが、男にはにわかに信じられるものではなかった。さっきまで美人だと思っていた修道女に対して恐怖が込み上げてきて、尻餅をついた状態で後ずさった。

 

「逃げる事は許さないわよ?」

 

カツカツと足音が修道女の後ろの方から聞こえ、やがて修道女を追い抜いて自分の前に立ち、見下ろした。

 

目の前に立つのも女性で、修道女と少し似たような雰囲気は醸し出すが、だがそれは雰囲気だけで根本的には全くもって真逆だ。白髪寄りの金髪を膝裏まで下ろし、瞳は金色で、額には黒銀の額当て、纏うのはその色に似つかわしい鎧装束、腰には剣を、右手には真っ黒に塗り潰されたような旗を携えていた。

 

「アンタ……私の大切な人にどれだけ酷い事を言ったか……理解しているわよね?」

 

金色の瞳で睨みながら男にそう問うた。男は恐怖のあまり何も言い出せずにガクガクと震えるしかなかった。

 

「無言ね……まぁ良いわ。コイツ借りるわよ?」

 

「あまり乱暴な事はダメですよ? ジャンヌさん?」

 

「そこまではしないわよ? まぁやったとしても地獄に落ちた方がまだマシって思えるくらいの事よ」

 

「それが乱暴だと言うのですが……」

 

「でもアンタにとっても都合はいいでしょ?」

 

「まぁ……結果的にはですが」

 

「ふふっ、なら良いじゃない?」

 

「ですがそんな乱暴な所を颯也さんが見たらどう思うでしょうか? 悲しそうな顔が目に浮かぶのですが」

 

「……確かにね。でも私は我慢ならないわ。あの子を傷付けた輩を、そのまま野放しにするのは……だから私は、あの子が化け物じゃないって事をコイツに刷り込ませるのよ」

 

「それ私の仕事なのですが……」

 

「まぁともかくとして、コイツ少し借りていくわ」

 

「ヒィーッ⁉︎ た、助けて! 誰かたすけてくれぇーっ⁉︎」

 

その男はジャンヌに引き摺られながら助けを求めたが、それには誰も反応しなかった……

 

「全く……ジャンヌさんにも困ったものですわ」

 

それを見送っていた祈荒はポツリと言いながらも、目の前で懺悔(更生)しているもの達に振り返った。

 

「さぁ、この世界の神に見捨てられた者達よ……神の加護を失ってしまった者達よ……もう大丈夫です。私が……あなた方を導いて差し上げましょう」

 

聖母のような笑みを浮かべた祈荒から後光が発せられたと、その時のはぐれエクソシスト達は皆口にした。そして誓うのだ。我が人生は目の前におわす、殺傷院祈荒様の為にと……そしてその方が慕う愛護颯也様の為に捧げると……

 

 

 

因みに何故ジャンヌがここにいるかというと……颯也が今どんな状況であるかを家で見ていたからだ。ニトクリスが水晶を出し、そこから颯也の状況を部屋の中に投影したのだ。勿論颯也がはぐれエクソシスト達に対して無双したこともバッチリと映し出されていた。そして不運にも最後のはぐれエクソシストが吐いてしまった言葉も……

 

これに対して見ていた颯也の家族達は憤怒を浮かべた。中でも1番酷かったのはジャンヌで……

 

「少し出かけてくるわ……」

 

そう言って家を飛び出して今に至るという。

 

後これは余談ですが、颯也さんの戦闘シーンは当然の事ながら録画されたといいます……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side イッセー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(クソッ……メチャクチャだこんな強さ‼︎)

 

俺達は颯也に頼まれてレイナーレを止めにかかっていた。本当は……もう1度レイナーレと対峙するのは怖かったんだと思う。だけどもう1度あった時、そんな考えは無くなっていた。無意識ではあるんだろうけど、レイナーレ……いや、もう夕麻ちゃんでいい。彼女を助けたいと思った。あの辛そうな顔を見たら、なおさらそう思った。

 

「グッ……アアッ! アァァァァァァッ‼︎」

 

俺達の目の前には、まるで破壊の限りを尽くさんとする夕麻ちゃんがいた。瞳は赤一色になって、咆哮をそこかしこに撒き散らし、嵐のように暴れ狂う……それでも辛そうに見えたのは、彼女の瞳から涙が溢れ出していたから。

 

それを見たからだろう……俺の奥底で何かが燻っていった。それは徐々に強くなって、体の芯が熱くなって、次第に身体中が熱くなっていった。なんなんだろう、この燻りと身体の熱さは……

 

俺は……正直愛護が羨ましかった。勉強を必死こいてやって、高校は前まで女子校で今では共立の駒王学園に入学することが出来た。全ては俺の夢と理想の実現……つまり女の子達とイチャイチャしたかったのは言うまでもなかったんだ。でもそんな時に現れたんだ……何でもこなせるイケメンって奴が……

 

初めて会った時は入学式の時の新入生代表の挨拶の場でだった。元々の挨拶としては、多分学校側が用意していただろうからそれを打ち合わせの通りに読むだけで、後は何かと長い校長先生の話とかだろうなとかって、まぁそこは他の所と変わらないだろうなと、そう考えていたんだ……

 

アイツの挨拶が始まるまでは……

 

愛護は、あろう事か俺達の目の前で用意された挨拶が書かれた紙を引き裂いたんだ。

 

「この行為は生徒会の方々、並びに教師の方々には許可をもらってやっている。だから無理な話かもしれないが……気にしないでもらいたい」

 

この行為には俺だけじゃなくて他の生徒も面食らったと思う。そこから始まったのは……即興で考え付いたとは思えない程の挨拶だった。それで今でも印象に憶えているのがこの言葉だった。

 

「夢はあるか? こう聞いておいてなんだが私には未だに将来の夢というものは無い。だが、生き方だけならハッキリと志している事がある……自分の思い描いた信念を違わず、死ぬまで生き抜く事だ。その過程で夢が見つかるならそれも良し。見つからないなら見つからないで、私は私自身の生き方を貫くだけだ。そして私は宣言しよう! 高校在学の3年間……最低限でも私の目の前で困っている者がいたなら救うと……大小大きさ関係なく救うと。まぁ何が言いたいと言ったら……入学したならしたなりで、全力で高校生活を楽しんで欲しい‼︎」

 

その後は……何というか良く覚えていない。校長先生の挨拶も何を話したのか曖昧で……ともかくとしてその場の空気を全部愛護が掻っ攫っていったような……そんな感じがした。

 

それからは最早腐れ縁みたいな形で、1年から同じクラスだ。そして1年の頃から松田と元浜でバカばっかりやった。それで付いたあだ名が3馬鹿トリオだった。でもアイツは……そんな俺達にでさえも分け隔て無く接してくれた。まぁ俺達が馬鹿やった時も真っ先に説教しに来ていたが……

 

それ以外でも、学業とか成績はトップで、スポーツ万能で、目の前で困っている人がいたら自分の事はそっちのけで助けて、オマケにイケメンで……羨ましい以外に言葉が見つからなかった。

 

でも……今俺はそんな相手から……羨ましいと感じてならなかったアイツから期待を受けていた。そう思うだけで……単純で馬鹿だって思うかもしれないけど……それだけで俺は、身体の奥から力が湧き出る気がしたんだ‼︎

 

「俺は……夕麻ちゃん、君を止めて見せる! そして颯也に、少しでもいい所を見せるんだ‼︎ お前だって……何も出来ないでここで終わるのは嫌だろう⁉︎ だからさ……俺の想いに応えろ! 神器(セイクリッドギア)‼︎」

 

イッセーがそう叫ぶと、それに反応するかの様にイッセーの左腕に展開されていた神器、龍の籠手(トゥワイス・クリティカル)は紅色の光を発して反応した。そして光が収まった時には……そこには姿形が変わった神器の姿があった。

 

『Boost!』

 

その音声が籠手から発せられると同時に、イッセーの力が少しだけだが膨れ上がった。

 

「こ、これは……」

 

「な、何だ? 力が急に増した気がする……」

 

「2人とも気を抜かないでください。来ます!」

 

イッセーが少し戸惑っている中、正面から暴走したレイナーレが飛びかかってくる。それを躱す3人。

 

(あれ? ここまでの距離を跳んだつもりは……)

 

全力で避けたとしても相手との距離は1m離れるかどうかと思っていたが、実際には2mは離れていた。

 

『Boost!』

 

「また力が……それもさっきよりも強く」

 

そこでイッセーは気が付いた。もしかしたら自分の神器の能力は……時間が経つにつれて自身の能力を倍加させるものではと。

 

だから2人に指示を出した。

 

「木場! 子猫ちゃん! 出来るだけ時間を稼いで欲しい‼︎」

 

「何か策があるんだね!」

 

「あぁ‼︎ 真正面から俺の全力をぶつける‼︎」

 

「もはや策ではありません……」

 

「ははっ……でも、やってみる価値はあるね!」

 

そこから木場と子猫はレイナーレをイッセーに近付けまいと足止めをした。その間イッセーは神器から発せられる音声と共に自らの力が増幅されるのを感じていった。それをレイナーレも暴走状態ではあるが、危険だと判断してイッセーに攻撃をかけようとする。

 

だが……

 

「行かせません!」

 

「君の相手は僕達だよ‼︎」

 

2人が懸命にレイナーレの行く手を阻む。そして……

 

「後は任せろ! 木場! 子猫ちゃん!」

 

その声に2人は反応し、阻んでいたレイナーレの抑えから離れた。急に2人が離れたことによって前にバランスを崩した。そこにイッセーが駆け出していき

 

「うぉぉぉぉっ‼︎」

 

神器の宿る左手でレイナーレの腹を全力で殴り付けた。

 

「ガァァッ⁉︎」

 

その力は凄まじく、レイナーレの背後にあった長椅子を巻き込んで壁に激突した。

 

「はぁ……はぁ……やったか?」

 

「どうだろうね……でも見る限りではかなりのダメージを与えたはずだよ?」

 

「……待ってください。まだ相手はやる気のようです」

 

子猫の言う通り、少し動きは鈍いが立ち上がろうとするレイナーレ。

 

「くそっ! まだ力が足りなかったのか……」

 

正直イッセーは、この一撃でレイナーレには倒れて欲しかった。何故なら彼の中で……自分を殺しかけた存在ではあるが、今日再び会って、彼女の囚われている状況から助けたいと純粋に思った。あまり傷なんて付けずに倒したかった(救いたかった)。だがそれでも暴走した彼女は立ち上がる。

 

「こうなったらもう1回……っ⁉︎」

 

やろうといいかけた瞬間にいきなり身体から力が抜けた。

 

「ち、力が抜けて……」

 

「もしかしてさっきの反動で……まさか悪魔に成り立てだから身体が馴染んでいないのかもしれない……」

 

「でも相手もかなりのダメージです。2人で攻撃し続ければ何とか倒れてくれるはずです」

 

「お、俺も力が増したら直ぐに参戦するから……だからもう1回お願いできないか?」

 

「イッセー君は無理しなくて良いんだ。ここまでやってくれただけでも大金星なんだから!」

 

「あまり無茶はいけません」

 

そして体制を整える2人と、それを見るしか出来ないイッセー……

 

「くそっ……ここまで来たって言うのに……俺は颯也の頼み事さえ……最後まできけないのかよ⁉︎」

 

それは2人にも聞き取れないような小さな声だった。その証拠に2人は反応する事なく目の前のレイナーレに集中する。イッセーが悔しそうに顔を滲ませている時だった。

 

「いいえ! 十分そこの君は颯也ちゃんの頼みをきいているわよ‼︎」

 

「「「っ⁉︎」」」

 

そこに突如として響く第三者の声……その声が発せられたのは、礼拝堂の高い所、ステンドグラスが完全に割れてしまった戸からだった。そこには月光をバックに何者かのシルエットが映し出されていた。

 

それをイッセー達が確認した瞬間、そのシルエットがこちらに飛んでくる。そしてイッセー達とレイナーレの間に着地した。

 

「全く……なんかいつものような世界に飛ばされた感覚ではなかったけど、まさかこの世界に呼ばれた理由がこれだったとはね〜。はぁ〜つくづく縁があり過ぎるというか……」

 

そう言いながら彼女はレイナーレと対峙した。同時に腰に指していた刀を2振り抜き放つ。そこに立つ彼女の姿は……まるで昔の時代からタイムスリップしたのではないかというくらいの格好をしていた。

 

まず長い白髪の髪は1つに結わえ、着ている着物はオリジナルなのか膝上までしかない。しかもある程度着崩しているように思える。大体の特徴はこんな感じではあるが、それでも目の前に立つこの女性が只者ではないことを木場と子猫ちゃんは感じていた。2人がかりでも倒す事は難しいと……それを思われていた事を知らない彼女は声高らかに……

 

「新免武蔵守藤原玄信! いざ尋常に勝負‼︎」

 

宣言した後、弾の様にレイナーレに向かう。それに対してレイナーレは、イッセー達から受けていたダメージもあったか、武蔵が迫っている事は分かっていたが、あまりの速さに対応出来なかった。

 

ザシュキンッ

 

「グ……アァ……」

 

その一撃を受けてレイナーレはうつぶせに倒れた。

 

「夕麻ちゃん‼︎」

 

思わずイッセーがそう叫んでしまう。対して木場と子猫の2人は、正直一瞬で、しかも大分ダメージを負っていたとはいえレイナーレを一瞬にして行動不能にまで落とし込むことに唖然としていた。

 

「そこのツンツン髪の子は心配しなくても大丈夫よ? ただ気を失っているだけだから」

 

そう言いながら彼女は気を失ってピクリとも動かないレイナーレを抱えてイッセー達の元へと来る。

 

「た、助けて頂いてありがとうございます。ですがいきなり現れたあなたは一体……」

 

「あぁ、そう言えばちゃんとしてないわよね? 私は宮本武蔵……新免武蔵守藤原玄信だよ! 宜しくね‼︎」

 

「えっ……宮本武蔵って……えぇっ⁉︎ お、女ぁっ⁉︎」

 

「まぁ、確かにそう反応されて仕方ないわよね〜。私も、まさか別世界の武蔵が男なんて思わなかったし」

 

「別世界……という事は、あなたはこの世界の宮本武蔵ではないのですか?」

 

「う〜ん……まぁ簡単に言ったらそんな感じよね。さしずめ私は別世界の武蔵さんってところよね。あっ、それとあの子はどこかしら?」

 

「あの子とは?」

 

「あぁ、あの子っていうのは〜……」

 

「ちっ、何か変だと思って来てくれば使えない奴ばかりじゃないか」

 

「っ⁉︎ だ、誰だテメェは‼︎」

 

「ん? お前みたいな脳みそ全てがセクハラに行く様な奴に名乗る名前なんて僕は持ち合わせてはいないよ」

 

「んなっ⁉︎ なんでそんな事を!」

 

「どうでも良いじゃないかそんな事。ともかく君は僕にとっては邪魔な存在なんだよ。だから早々に消えな」

 

そう言って突如現れた者にイッセーは攻撃を仕掛けられた。しかしながら狙いが少し甘かったのかイッセーの少し横の所に着弾した。直接のダメージは食らっていないものの、その爆風で吹き飛ばされる。

 

「イッセーさん‼︎」

 

そこに先程まで長椅子の陰に隠れて見守っていたアーシアがイッセーの元に駆け寄っていき、自らの神器である聖母の微笑(トワイライトヒーリング)で傷を癒し始める。

 

聖母の微笑(トワイライトヒーリング)か。だから早々に奪い取っておけと言ったのに」

 

「という事は、あなたがこんな事を仕組んだ黒幕ということね?」

 

「部長⁉︎」

 

先程部室で別れた部長達と、この前自分を襲った堕天使、それと衣服がボロボロで疲れた様子の女性2人が姫島と亞里沙に肩を担がれた状態で廃協会の入口から現れる。

 

「……おいドーナシーク、これはどういう事なんだ? 僕は言ったよな? そこのセクハラ野郎と聖母の微笑(トワイライトヒーリング)の所持者を始末しろってさ?」

 

「確かに……そうだ。だが俺は、お前のやり方に不満を持っていた! そのせいで俺達の同士がどれほど犠牲になったか‼︎」

 

「はんっ、そんな事でね。でも僕が何でこの場にまだいるか分かるかい? 上にバレていないからだよ。それに与えられた成果も挙げているしね? だから僕のやり方は黙認……いや、公認されたも同然なんだよ! その僕からの指示を無視して挙句のこの始末……相当あの世に行きたいんだね? だったら直接僕が君達と、そこにいる悪魔共々あの世に送ってやるよ‼︎」

 

そう言った瞬間、彼の周りから魔法陣が多数発生した。そこからは黒い鋼鉄の何かが何体も召喚されていた。

 

「プルーマども! 奴らの命を奪い尽くせ‼︎」

 

そう命令されたプルーマと呼ばれる小型のロボットは、手負いのイッセー達とリアス達、堕天使のドーナシークに殺到する。

 

「そんな物で……舐められたものね。これで消し飛ばしてあげるわ!」

 

そう言ってリアスはプルーマ1体に滅びの魔力を浴びせた。

 

「それはこっちのセリフだね」

 

「なっ⁉︎」

 

だがリアスの攻撃は効かなかった。滅びの魔力を真正面から受けて傷1つ負っていなかった。

 

「僕のプルーマは、魔力を帯びた攻撃を無効化するんだよ。だからそんな攻撃通用しないね。そら、散々に逃げ回って踊り死ね‼︎」

 

「ふ〜ん。でも私の攻撃は通じるようね?」

 

「くっ……たかがイレギュラー風情が」

 

それに対して武蔵は刀でプルーマを数体両断していた。

 

「ちっ……だけどそんな物、物量の圧倒的な暴力には敵わないよ‼︎」

 

それを黒幕が言った途端、プルーマの進行方向が武蔵に向いた。それは数体とか手足の指の本数にはおさまらない数十の単位で襲いかかる。それを武蔵は、顔色変える事なく、逆に余裕の笑みを浮かべていた。舌なめずりをして目の前のプルーマが自分の攻撃範囲に来ないかを今か今かと待ちわびる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大気の風よ! 切り刻め‼︎ タービュランス‼︎」

 

 

 

礼拝堂にその声が響き渡ると、武蔵の眼前に迫っていたプルーマは、突如として地面から湧き出た竜巻に巻き込まれる。そして巻き込まれたが最後、最初からそこには何も無かったのではないのかという程残骸も落ちていなかった。

 

「なっ⁉︎ プ、プルーマが一瞬で……」

 

「私の出番を全部持っていっちゃって〜……全くあの子ったら〜」

 

「この技って確か……」

 

「颯也さん‼︎」

 

そこには、いつのまにか颯也がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて……やっと黒幕とご対面って所だな」

 

「貴様……そうか、貴様が転生者と呼ばれている奴か!」

 

「そちらではどう呼ばれているかは知らないが……転生者である事は確かだな」

 

「そうか……そうか! やっと見つけたぞ‼︎ お前さえ倒してしまえば僕はこの世界で自由にできる権利を得られるんだ! そして僕は神になってこの世界を自分の思うがままにしてみせる‼︎」

 

「なるほど……こちらの世界にお前が転生する時に何を吹き込まれたかは知らないが……そんな都合のいい話がゴロゴロと転がっているわけがないだろう?」

 

「そのもの言いは僕を倒してからしなよ! プルーマじゃお前を倒せないって事は分かった。なら僕は……僕の最強でお前とお前達を消すだけだ‼︎」

 

黒幕転生者は自身の足元に巨大な魔法陣を発生させると、魔法陣から発せられる光に黒幕転生者は包み込まれる。その眩い光は廃協会内を白一色に染めた。その光量にはリアス達も目を手などで覆う。颯也だけは変わらない表情で直視していたが……

 

そしてリアス達が再び視線を黒幕転生者に向けると、黒幕転生者の姿形はその場には無く、代わりに途轍もなく大きな……例えるのなら白い鳥の様なロボットが鎮座していた。そしていつのまにか先程の廃協会とは違う風景の中に自分達も立っていた。だがそのロボットから……

 

『これこそが僕の最強! 転生特典‼︎ 悪魔を葬り去るには最早最高以外のなにものでもない! さぁ! 目の前の奴らをぶっ潰せハシュマル‼︎』

 

キュアァァァッ‼︎

 

まるで呼応するかの様にハシュマルと呼ばれる巨大なロボットは咆哮をあげる。それと同時にプルーマが先程の比ではない程押し寄せる。

 

「あの大きなロボットとは別にさっきのロボットまで⁉︎」

 

「部長、さっきの攻撃で魔力が効かない事は分かっていますわよね? 多分私の雷でも効果は無いと思いますわ」

 

「そうね……なら私と朱乃は敵からの攻撃を防ぐ事に集中するわ」

 

「でしたら私はリアス達に害が及ばない様に露払いを致しましょう」

 

「亞里沙何言ってるの⁉︎ あなたも魔力攻撃主体でしょう⁉︎」

 

「確かにリアス達にはその攻撃方法しか見せていませんでしたわ。ですけど私はこの世界に生まれてから決めている事がありますわ。それは……」

 

「彼の……愛護颯也の隣に在り続けるために強くなると‼︎」

 

そう言った瞬間、亞里沙の身体から闘気の様なオーラが溢れ出す。それは赤……リアスが持つ髪の色とは違う少しピンクが混じった様な赤だった。

 

「亞里沙……それは……」

 

「ふふっ、内緒にしていて申し訳ありませんわ。でも、これが私の……愛護颯也と共にいるための力なんですの」

 

リアス達の方でその様な会話がされていた中、颯也と武蔵は……

 

「ヒュ〜♪ 全く颯也ちゃんってモテモテよね〜……よし、私も負けていられないわ!」

 

「あれ? 何でそこ対抗する様に闘気を纏わせてるの?」

 

「もぅ、颯也ちゃんも鈍いなぁ〜。決まっているじゃない」

 

「私も颯也ちゃんの事好きだから、だよ?」

 

こんな戦場のど真ん中で何を惚気た様な雰囲気を出しているのか……と思うだろう。しかしこれは仕方がない事だ。何故なら、それはもう颯也と颯也の事が好きな女性達がセットでいたなら自然と起こってしまう現象であるからである……

 

「あ、貴女もですか⁉︎」

 

「えぇそうよ? まっ、この世界に来てる他の女の子達も颯也ちゃんの事好きな事は知ってるし、それについては負ける気は無いんだからね? だから……覚悟しておいたよね?」

 

「はは……参ったなこれは。まぁでも……ありがとう武蔵さん」

 

「ちーがーう! 私の事は武蔵ちゃんって呼ぶ様に言ったじゃん‼︎」

 

『おいそこの奴ら……いつまで惚気てるつもりだ‼︎』

 

「お前こそ悠長に待ってくれてたよな? 案外優しいところあるじゃあないか?」

 

『き、貴様……もういい。余裕顔が金輪際できない様に僕が地獄へと落としてやるよ‼︎』

 

「颯也ちゃん、来るよ!」

 

「分かってますよ。それじゃあ……行くか。バルバドス‼︎」

 

颯也がそう唱えると颯也の身体は光り、その光がおさまると白い鎧で主に身に纏った颯也の姿があった。

 

「さっきの黒い奴はほぼほぼ私に任せて! 颯也ちゃんはあの白い親玉をぶっ潰しちゃって‼︎」

 

「元よりそのつもりさ」

 

颯也は地下でも振るっていたメイス……鉄血メイスを呼び出す。

 

「さぁ……始めようか‼︎」

 

背部にあるブースターを蒸してハシュマル一直線に飛び出して行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回また作者さんが提出期限を過ぎてしまった為、代わりにまた私が後書きを担当させて頂きます。

では解説を……



宮本武蔵

多分誰もが一度は聞いた事があるでしょう歴史上に存在した人物です。史実では佐々木小次郎とライバル関係にあり、巌流島という山口県にある島で決闘をした(ここは作者の解釈)と言われています。
しかしながら今回新しく登場した武蔵さんはfgo出身の武蔵さん。fgoの世界では女性として描かれており、うどん大好き剣豪美少女。そして美男子の年下の男には目がない……
fgoの世界でも事あるごとに違う世界へと渡りまくっていた。そんな中で当時、まだ転生見習いだった颯也と出会い、縁を結んだがためにこちらの世界へと渡って来た。尚、武蔵さんも颯也さんLOVE勢との事です……



黒幕転生者

颯也を転生させた女神と同じ天界に住む、とある神が地獄から呼び寄せ転生させた。転生特典にハシュマルとプルーマを授かる。



ハシュマル

機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズの第2期に登場した唯一の大型モビルアーマー。オルフェンズの世界では、三日月・オーガス達鉄華団が活躍する300年前に人類を脅かした殺戮兵器。通称天使の名を持つ。

武装

・頭部ビーム砲

・腕部カラー/エネルギー弾射出装置

・超硬ワイヤーブレード

・プルーマ








プルーマ

ハシュマルを親機とした小型モビルアーマー。ハシュマルが破損、エネルギーなどがきれた際に、修理補給を担当する他、敵とみなした物を襲う。そして襲った物から物資を強奪して修理補給する事ができる。

今回はこの程度で……また次回お会いしましょう……

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