ハイスクールD×D 理不尽壊しのリインカーネイション 作:橆諳髃
さて、今回主人公がいく世界は……と言っても、多分サブタイトルを見て分かった人もいると思います。まぁ本文の方で既に答えは書いていますので、それを見れば分かると思います。
では、物語の開幕です。
眩い光が収まった事でようやく目を開けた。開いた視界の先には、都会の高層ビルが立ち並ぶ。これだけ見ると、俺が元住んでいた世界の、現代と同じ様な光景だ。だが見ていて思う事がある。それは、活気に満ちていないという事だ。
今の時間帯でいうと、日は高く登っているし、昼まである事が分かる。それにもかかわらず、ビルには人の気配がない。それだけでなく、まっすぐ立ってもいない。いつ倒壊してもおかしくないと、そう思うほどだ。それに付け加えて、周りには人っ子ひとりいない。探せば見つかるんだろうが、そう思うほど周りには誰1人としていない。
「……少し歩いてみよう」
そこでただ突っ立っているよりも、動いた方が良いと考えた俺は、この土地を見て回る事にした。
そう思ったのが10分ほど前ぐらいで、歩けど歩けど似た様な景色ばかり。そんな中ようやく見つけたのが、地面から生えている紫色の結晶だった。俺はそれを見た瞬間、この世界がどこなのか分かった。
「この世界は……ギルティクラウンか。という事は……あの悲しい結末を変えて欲しいと、そういう事ですか? 神様」
俺は1人呟いた。あの優しい神様が、何の意味もなく俺をこの世界に誘う訳がない。だからこそその考えに行き着いた。
俺がまだ生きていた時、このアニメを見て最終的に思った事は、理不尽がこの世界を包み、その中で人は簡単に裏切ってしまい、自分の愛するものでさえ……力があるだけでは救えない。そんな悲しい世界だと思う。中には、心温まる場面もあった。だが……やはりと言って良いほどこの世界は残酷すぎる。
それほどにまでこの世界は、半端な覚悟で臨んじゃいけないと思う。さっきまでいた世界でも、勿論半端な覚悟で臨んでた訳じゃない。でもこの世界は……いや、この世界でも虐げられる者たちがいる。なら俺は、それを救うまでだ。
そう思いながら歩いていると、どこからか女性の悲鳴が聞こえた。俺は急いで悲鳴があがったであろうところまで駆ける。そしてその現場に着いた時、子供を庇う母親らしき人が、軍人みたいな格好をした人達に銃を向けられていた。
(あの様子だと、親子共々殺されてしまう。だからと言って無闇に人を殺す事は……いや、手ならある)
とある考えが浮かんだ俺は、物陰から姿をさらし、軍人達に声をかけていた。
「その人達を殺めるのは……少し待って貰いたい」
「ん? 貴様何者だ⁉︎」
俺の声に反応した軍人達は、一斉に俺に銃を向ける。常人でこの位置から撃たれると、もうなす術はない。それぐらいの位置にまで、軍人達との距離は狭かった。まぁ俺の場合だと、この距離から撃たれてもどうって事はない。なにせ、さっき宇宙が誕生したと言われるほどの光線を体に受けたばかりだからな。おっと、黙っておくのも怪しまれるから早々に答えておこうか。
「俺は……そうだな。一応医者とでも名乗っておこうか」
「医者だと? 貴様、嘘はついていないだろうな?」
「まぁ疑われるとは正直思っていたけど、まぁあなた達が証拠を見せろというのであれば、今すぐ見せよう。そこの少年よ、何か病にかかってるんじゃないかな?」
軍人達と話す時よりも優しい声音と口調で少年に語りかける。すると少年は、俺の声に反応したのかこちらの方に顔を向ける。その顔の半分ほどだが……既に紫色の結晶が覆っていた。
「……やはりアポカリプスウイルスに感染しているのか」
「そうだ。だからこそここで始末しなければ、もっと感染が増えるのだ。これで分かっただろう? そこをどけ。それとも、その親子共々ここで我々に撃たれるか?」
俺の後ろからそんな声が投げかけられる。要するに邪魔だからこの場から立ち去れという事だ。だが俺は、目の前で理不尽を被っている人を放ってはおけない。
「……何故退かなければならない? 言ったはずだ。俺は医者だと」
「例え貴様が医者であろうと、そのウイルスは特殊な薬でなければ治らないのだ。もっとも数に限りがあるがな」
「確かに限りがあるのなら、全員に配る事なんて出来ないだろう。だが……」
俺は片膝を地面につけてしゃがんでいる状態から立ち、軍人達の方に顔を向ける。その時、軍人達は怯んだ。まぁそれもそうだろう。並々ならぬ殺気を放ちながら向けているのだから……。
「だからと言って、目の前の命を奪っていい事にはならない! 俺は、そんな理不尽的考え方を持つあんたらに対抗してこの親子を治す‼︎」
俺は軍人達にそう言い放ち、この親子を治す準備をする。もっとも、手元にはメスとか麻酔はない。やろうと思えば出せるが、そんな物で治そうなんて思っていない。まぁ、俺が今からやろうとする方法で治るかどうかなんて分かりはしないが、やらないよりマシだ。
「かの者達の病を消し去れ……リカバー!」
俺はある世界の呪文を唱える。その証拠に、俺の足元には魔法陣が煌めいている。それを見ている軍人達も、その光景に驚いているのか一言も発さなかった。そんな軍人達を放っておき、呪文を唱え終えた俺は親子の方を見る。すると、さっきまで少年の顔の半分を覆っていた結晶が物の見事に、跡形もなく消えていた。
「あれ? お母さん、僕どこも痛くないよ!」
「あ、ありがとうございます‼︎ この子だけでなく、私まで……」
「別に大した事はしちゃいないよ。まぁ、治ったんなら良かったです。さぁ、早く安全なところへ」
「ありがとうございます‼︎ この恩は忘れません!」
「お兄ちゃん、ありがとう‼︎」
そう言って親子はその場を去っていった。
「貴様‼︎ 何者だ⁉︎」
それを見送っていると、さっき聞いた台詞が耳に届く。全く……さっき言ったばかりだろ?
「さっきも言ったと思うが、俺は医者だ」
「嘘をつくな! 薬品も何も使わずあのウイルスを治すなど‼︎」
「誰が薬品を使わなかったら治せないと言った? それはお前らが勝手に決めた事だろ? 即ち、それがあんたらの限界だ。さて……用が済んだなら俺は行かせてもらおう」
「待て‼︎ 貴様のその能力、我々の拠点で洗いざらい吐いてもらう‼︎」
「それを断ったなら?」
「荒くなるが、実力行使に移ってでも来てもらう‼︎」
「それは、あんたらの力が俺を上回ったらの話でしょ?」
そんな会話みたいなものをしながら、俺は頭の中である呪文の詠唱に入る。その証拠に俺の足元に、先程とは違う色の魔法陣が煌めいて浮かび上がる。
「っ! 何をするつもりか知らんが、今度はさせんぞ‼︎」
「殺しはするな! 足や腕を狙え‼︎」
「行動がいささか遅かったな。そうしても手遅れだ! タイムストップ‼︎」
俺の詠唱が終わるのと、軍人達が引き金を引くのが同じタイミングになった。普通であるなら、その銃口から飛び出る弾丸はこちらに真っ直ぐ飛び、そして俺の体を貫くだろう。
だが、俺が今詠唱した呪文は中々に特殊なやつだ。その呪文の名前の通りそれは……俺以外の時を数秒ほど止める。
「さて、いつ移転するか分からないし、とりあえず今やる事は、アポカリプスウイルスに感染してしまった人を治す事を始めようか」
俺はそう呟き、その場を後にした。