さよなら、しれえ   作:坂下郁

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 大和の背中を押す提督。


第五話 アルバムの続き

   『クククク………アハハハハハ!!』

   『勘に触りますね、その声』

 

 

 新しい朝。微睡みながら昨夜の夢を思い出す。忘れていた、いいえ、忘れたい記憶の断片が、ガラスの破片がスローモーションで降るように頭の中にちくりと刺さる。

 

 むくりと頭を持ち上げると、栗色の長い髪が滑るように流れる。

 ベッドの上に座り直し、二度三度頭を振り、意識を覚醒させようとする。

 ゆっくり……急ぐことはない。やることは特にないのだから。

 

 それでものろのろとベッドから起き出し、薄手のシャツ一枚を素肌に羽織る。カーテンを開け寝室に光を導いてから、ダイニングキッチンへと向かう。やることは無くてもお腹は空くから。

 

 

 「……いただきます」

 

 小さな声で呟き、用意した朝ご飯を食べ始める。どこに出しても恥ずかしくない味だと自分でも思う。でも一人きりの食事はいつも味気ない。微かに鳴るカトラリーの音、もぐもぐと食べ物を()む小さな音。

 

 「……ごちそうさま」

 

 小さな声で呟き、食器をシンクに下げる。ダイニングテーブルに戻り、上体を投げ出すように倒す。いつしか結わなくなったポニーテール、長い髪がテーブルに広がる。いつもと同じ思い出に沈み込み、時間は無為に流れる。気が付けば窓から差し込む光は夕暮れへと変わっていた。

 

 

 

 

  『ククッ……アーッハッハッハ!!』

  『ごめんなさい、私がここまでやられるなんて……』

 

 

 それは、サーモン海北方を抜け中部太平洋へ進出を狙う私達と、是が非でもそれを阻止したい深海棲艦の間で繰り広げられた死闘。

 

 レ級エリートやフラヲ改を中心とする強力な、いいえ、凶悪な敵部隊が幾度も私達の挑戦を退け、戦線は膠着状態に陥っていた。何度ボロボロにされ大破撤退が続いても、艦隊の士気は依然高い。とはいえ艦娘の気力だけに頼る訳にいかない。文字通り提督と一体で泊地運営にあたる秘書艦の私も焦っていた。あと一撃(ラストダンス)、あと一撃でレ級の守りを突破できる、ここを逃せばまた敵は態勢を立て直してしまう。私の頭にはそれしかなく、翌月また次のチャンスを待とうと反対する提督を強引に説き伏せ出撃を指示した。

 

 疲れと焦りは正常な判断力を容易く奪い去る。無理な進軍、敵の攻撃を支えきれず徐々に落伍し退避する仲間達。大丈夫、みんなは既に安全圏に退避している。殿を務めた私は、ポニーテールを結び直し、覚悟を決める。荒い波がうねるサーモン海、空を圧する数の敵攻撃隊との対空戦闘は熾烈を極め、さらに気持ちの悪い笑みを浮かべたレ級エリートが近づいてくる。いいでしょう、世界に冠絶する四五口径四六センチ砲三基九門の威力、今度こそ叩き込んであげる――。

 

 

 -ーこの戦争が終わったら、大和は何がしたい?

 

 

 顔を洗う波が、途切れそうになる意識を引き戻す。波間を沈みつ浮きつ漂いながら見上げる空。思い出すのは提督の笑顔と答えられなかった問いかけ。ごめんなさい、恥ずかしくて、私は何も言えなかった。届かなくても、せめて言葉にしよう。パクパクと動かした口に海水が流れ込む。激しく咽ながら、水底へ引き込まれる様に意識が暗く落ちてゆく。

 

 

 『私は……大和は……小さなお部屋でもいいから、提督、あなたと二人で暮らしてゆきたいです』

 

 

 

 レ級に敗れ轟沈したと思った。けれど目が覚めると、この二DKの部屋だった。

 

 ベッドから跳ね起き、きょろきょろ周囲を見渡す。誰もいない。呼ぶ声に応える声もない。寝室を出て部屋の探索を始める。不思議と怖くなかった。小さな、本当にこじんまりとした部屋。ベッドが一台あるだけの寝室、何も家具のない洋間、ダイニングテーブルと冷蔵庫があるだけの、十分な広さのダイニングキッチン。あとはバスルームとトイレ、短い廊下の先には玄関。

 

 凍りついたように私の手はドアノブの前で固まっていた。ドアノブに手を掛け、鍵を回してドアを押す。それだけの動作ができない。そうできない事に疑問を抱かない自分に疑問を抱いたが、一瞬で忘れた。私はくるりとドアに背を向け部屋に戻った。

 

 軍艦色のカーテンを除けば白一色の部屋。カーテンを開け、思わず目を細める。眩しい光が部屋を照らし、外に広めのベランダが見える。窓を開け外に出てみる。ここはおそらく五階建て程度の建物の最上階、足元には鬱蒼と続く緑の森、遠くの先に見える光り輝く海。

 

 

 サーモン海での戦いはどうなったのか、そう思わない訳ではない。けれど今はそれよりも眠りたい。森と、その遥か先にある海に背を向け寝室に戻る。そして眠りに落ちる。

 

 

 

 以来、どれほどの時間が経っただろう。現実感のない、小さな二DKでの不思議な暮らし。

 

 ひょっとしたら自分はもう死んでいて、魂だけがふわふわしているのかな? 日々は変わらず、私も変わらず、ただ時間は過ぎてゆく。朝が来て目を覚ます。食べ物が常に補充される不思議な冷蔵庫に感謝しつつも疑問に思わず、三食を用意して食べ、日が暮れれば入浴して眠る、その繰り返し。

 

  戦争が終わったら提督と一緒に、そう望んでいた。でも、ここにいるのは私だけ。色の無い部屋で、私は提督が迎えに来てくれるのを待ち続けているのだろうか。そして今日も一日が終わりに向かう。

 

 

 

 がちゃり。

 

 

 

 突然の金属音に、反射的に音の方へと顔を向ける。足音がする。誰か……来たの? と言っても、小さな二DKの部屋、一〇歩もかからず玄関からダイニングに到着する。手には何か厚みのある本のような物を持っているこの人は……。

 

 がばっと上体を起こすと、栗色の長い髪が踊る。ダイニングの入り口に向かい直し、二度三度頭を振り、目の前の人に意識を集中する。こんなに早く動けたんだ、という速さで慌てて立ち上がる。

 

 「提督……提督っ!!」

 

 それ以上は言葉にならない。激しく嗚咽を続ける私に、提督はゆっくりと近づき、あやす様に私の髪を撫でる。その指先が、温もりが、私の嗚咽をさらに激しくする。どれほどの時間、そうしていただろう。提督は私を抱きしめ続け、髪を撫で続けていた。

 

 

 

 今までの固まっていた心が嘘のようにほどけ、気持ちが落ち着きましたが、同時に恥ずかしさがこみ上げてきました。やだ……髪も何もしていないし、お洋服だってシャツしか着てないのに……。慌てて提督の腕から逃れます。

 

 「私、こんな恰好で……恥ずかしい」

 

 桜の花びらをあしらった髪留めを口に咥え、髪をポニーテールに結わえようと、両手で髪を頭の高い位置にまとめようとしましたが、果たせませんでした。

 

 「あ……」

 

 再び大和は抱きすくめられます。どれくらいそうしていたでしょうか。このまま時が止まればいい、そう思ったりしましたが、それでも、何とか言葉を紡ぎます。

 

 「ダ、ダメですよ提督。ま、まだシャワー浴びてないし……」

 

 顎を支え少し強引に大和の顔を自分の方に向ける提督。唇が唇で塞がれ、言いたかったことは途中までしか言わせてもらえませんでした。

 

 

 

 目覚めはいつも悲しかった。伸ばした指の先に触れるシーツの感触が、貴方の不在を教えてくれるから。

 

 でも今日は違います。指先を伸ばす必要もありません。伸ばしたくても伸ばせません。私がいるのは、望んで焦がれていた貴方の腕の中だから。

 

 「へへへ……」

 

 提督の厚い胸板に顔を埋め、思わず笑みが漏れてしまいます。やっと……やっと大和が夢に描いた、二人の暮らしが始まります。提督が目を覚ます前に、朝ご飯の用意をしちゃいましょう! 提督を起こさないよう、そっと腕の中から抜け出します。

 

 キッチンにふわっと広がるコンソメスープの匂い、フライパンには焦げたバターの香りが立ち上る鮭のムニエル、季節の野菜のサラダに添えるのは、今作っているシーザードレッシング。これで完成、あとは提督が目を覚ましたら、トーストを焼くだけです。

 

 思いの外すぐに提督がダイニングへやってきました。あれ、早かったですね。少し気怠そうに椅子を引き腰掛け、テーブルに肘を置いて頬杖を付く、ちょっとお行儀の悪い私の提督。

 

 もう少しだけ朝ご飯の準備に時間がかかりそうです。私は急いで電気式のケトルのスイッチを入れお湯を沸かし、その間に、シンク上の収納庫から紅茶缶、ティーポット、ティーカップ、そしてミルクポット……紅茶を淹れるための道具を取り出します。ケトルからごぼごぼと湯玉のあがる音、沸騰しましたね。ティーカップを二つ準備してお湯を注ぎカップを温めます。大和特製のモーニングミルクティーで、心身ともに元気に目覚めてもらいましょう。

 

 「大和の特製紅茶を飲んで待っていてくださいね」

 

 寝起きはぼんやりしてる低血圧気味の人、だからミルクティーは少し甘めにしてあります。カリカリトーストが好きな提督のため、タイマーを六分にセットしたトースターにパンを入れ、その間に他のお皿の準備を整えます。

 

 がちょん、と音を立ててポップアップ式トースターからこんがり焼けたパンが跳び上がりました。このトースターは、焼き上がるとパン全体が飛び出してきます。慌てずにさっとお皿で受け止めます。

 

 「提督っ、見てましたかっ? ……って、新聞ですかぁ」

 

 大和の声に反応して、提督は新聞の陰から顔を覗かせます。ちょっとがっかりです。華麗なキャッチ、見てくれてなかったんですね。

 

 

 「食べ終わりましたか? そのままでいてください、大和が片付けますから」

 

 本当にささやかな、でも彩りに満ちた二DKのお部屋での暮らし。大和が欲しかったのは、こういう時間でした。

 

 洗い物をしていると、人影が左に立ちます。提督が無言で手を差し出しています。洗い終わったお皿を拭いてくれるつもりのようです。ふふっ、なんかこういうの、いいですね。

 

 蛇口からの水音と、かちゃかちゃとなる食器、時折鳴るきゅっという拭きあがったお皿の音。二人で洗い物をすると、あっという間に終わっちゃいます。あとは、今日のやることは……。

 

 「大和はこれからお洗濯と掃除機がけを始めますから、提督は向こうのお部屋でゆっくりしててくださいね」

 

 

 

 ぱんっ、と音を鳴らしてタオルの水気をとばし、物干し竿に干してゆきます。やっぱり洗濯物は天日干しが一番です。ベランダが洗濯物でいっぱいになり、風に揺れています。潮の匂いのしない、優しい風。大和の前髪も吹く風に揺れています。旗艦として艦隊を率いていた時、敵戦艦と正面から撃ち合った時、戦船として血が滾り、力が漲っていました。でもそれよりも、こうやって何気ない平和な時間を過ごす事の大切さを噛み締めています。

 

 「提督、こっちは終わりましたよ。何をしてるんですか――」

 

 窓を開け室内に戻ろうとすると、吹き込んだ風がレースのカーテンを大きく揺らします。一瞬提督の姿を見失い慌てましたが、カーテンが元の位置に戻った時には、提督が床に座り何かを見ていました。

 

 「……それは?」

 

 提督が見ていたのは一冊の古いアルバムでした。思わず興味津々で、提督の横にちょこんと座ります。

 

 「きゃあーっ、提督若いっ。ふふっ、随分可愛らしかったんですね」

 

 緊張した表情で肩に力が入りまくり、まだ身に着かない敬礼をする提督が、泊地正門の前に立つ写真。可愛らしい、という大和の言葉に不満そうな表情を見せる提督。その表情も可愛いですよ、と思いましたが口にはしませんでした。

 

 それからもページを繰ると、様々な写真が出てきます。最初の頃は駆逐艦や軽巡洋艦との写真が多く、途中から重巡、空母も交えた写真が増えてゆきます。当時大和は泊地にいませんでしたので、自分が写っている写真は一枚もありません。

 

 ぴくっ。

 

 思わずページをもったまま手が止まります。そんな大和の表情を見ている提督の表情が気まずいものへと変わります。

 

 それはとある艦娘と一緒に写っているもの。最初の頃の緊張したような表情ではなく、どこかにやけた顔で腕なんか組んじゃって。ふーん、金髪ロング巨乳が好キダッタンデスネー。あれ、何か棒読みっぽくなっちゃいました? 慌てて次のページへ行くよう繰り返し言う提督。はいはい、過去は過去ですからね。

 

 ぴたっ。

 

 再び手が止まりました。建造ドックの前、大和と提督が真ん中にいて、その後ろには、当時泊地にいた艦娘達が整列して全員が写っている写真です。

 

 「これって……」

 

 提督が頷きます。大型建造で生まれた大和が着任した時の写真です。心から嬉しそうな提督の表情。周りの艦娘のみんなも、懐かしいですねー。そこから先は、大和との写真ばかりでした。

 

 そして……何かを握り締めながら泣いている私の頭を照れくさそうに撫でている提督の写真。指輪を頂いた時の……てゆうか、何でこんな所が撮られてるんですか!? あぁ……なるほど……本当は芸能人みたいに二人で指輪をはめた手を見せながら写真を撮るつもりが、私がいつまで経っても泣き止まず、面白がった青葉さんがその光景をぱちり、という事ですか……。

 

 こてん、と提督の肩に頭を預けます。そっか……私、こんなに愛されてたんですね。胸の中に何とも言えない温かい気持ちが広がり、まるで自分が夢の中にいるような、ふわふわした感じがします。

 

 

 夢……!?

 

 

 自分の何気ない一言が、それまでの気持ちに冷や水を浴びせます。次のページの写真、それは出撃前の光景を写した一枚。サーモン海北方海域解放戦の頃のものですね。心臓がばくばくし、少し震える指で次のページを繰ります。

 

 

 

 ぱらり。

 

 

 ぱらり。

 

 

 ぱらり。

 

 

 

 一冊の古いアルバム、その先はすべて白紙のままでした。

 

 

 堪らずに振り返ると、提督は既に立ち上がり、大和に手を伸ばしています。一緒に行こう、ということでしょうか。立ちあがり、ゆっくりと手を伸ばし、震える指先で提督の手を掴みます。気付けば大和も制服を着ています。

 

 私は理解しました。これは私の夢なんだ。傷付き疲れた私が逃げ込んだ世界。夢なら、いつか目覚めなきゃならない。

 

 提督と手を繋ぎながら、ゆっくりと、ほんとうにゆっくりと玄関に向かい歩いてゆきます。前を行く白い制服の広い背中を見ていると、徐々に鼓動が高まります。このドアを開け外に出れば、私はきっと目を覚ます。そしていつ終わるとも知れない戦いの日々へと戻ることになります。

 

 ぴたり、と足が止まってしまいます。怖い……の? いいえ、戦う事は怖くない。でも、提督と二人で暮らす時間の愛おしさを知ってしまった今、この時間を失いたくない――。

 

 気付けば、優しく包む様な笑顔で提督が大和を見守っています。それは丁度建造ドックから出て最初に見たのと同じ、提督の笑顔。大きく深く頷いた提督は、綺麗な敬礼で大和に向けます。

 

 ーー君の力を待ち望んでいる人がいる。力なき民を、国を、深海棲艦の脅威から守るため、戦いの海に乗り出してくれ。不肖非才の身であるが、提督として全力で君を支えよう。

 

 大和が着任した時に送られた言葉が脳裏に甦ります。この国の古称を冠した艦娘として、大和が大和である限り、国を、銃後の民を守り続けなければなりません。

 

 提督に見守られながら、意を決しドアノブに手を掛けます。鍵を空けノブを回しドアを開け放つ。二人で静かに暮らすのは、戦争が終わってから。その日が来るまで、ううん、その日が来た後も、いつまでも一緒にいてくださいね――。

 

 

 そんな想いを裏切るように、強く突き飛ばされた背中。大和は、大きくつんのめりながら一人で部屋を出ました。

 

 

 そして閉まるドア。

 

 

 狂ったようにドアを叩き、涙ながらに提督の名を呼び叫んでも答えはありません。

 

 「どうして……」

 

 

 

 顔を上げると目に飛び込んできたのは、驚愕、それ以外の言葉で説明のできない表情の妖精さん達でした。

 

 きょろきょろと周りを見回すと……泊地の病室のようです。知らせを受けたのでしょう、艦娘のみんなが息急き切って駆け込んで来ます。懐かしい顔も初めての顔も、みな驚き、喜び、目に涙を浮かべています。でも一人足りない――。

 

 「提督はっ!? 提督はどこですかっ!?」

 

 よほど切羽詰った声だったのでしょう。一瞬にして病室に沈黙が訪れました。見渡しても誰も口を開こうとしません。皆一様に凍りつき困惑した表情に変わっています。沈黙が重くのしかかる中、意を決したように声が上がります。

 

 「大和、落ち着いて聞いて欲しい。お前の言う提督は――」

 

 

 

 「そう、だったんですね……」

 

 知らされた事実に、私は呆然としてしまいました。レ級との戦いから今日までの間、すでに何年もの時間が過ぎていたなんて。

 

 瀕死の重傷で発見された私は、緊急入渠で一命を繋いだものの意識が戻らなかったそうです。提督は、その後の指揮が守勢的なものになり、戦果を上げられず程なく更迭されたそうです。古いアルバム一冊と指輪だけを愛おしむ様に胸に抱き、何度も振り返りながら泊地を後にしたと聞き、私は涙を堪えられませんでした。

 

 ただ、その後の提督のお話、あの小さな二DKで過ごした時間が最後の温もりであり、今生の別れだったと私が知るのは、もっともっと後の事となります。今の私は、提督に託された思いを噛み締める事しか頭にありませんでした。

 

 

 -ー例え一人でも、私に艦娘であれ、貴方はそう言うのですね。

 

 

 あの小さな部屋は、夢であり私の心の中だったのでしょう。

 

 それがどれほど静かでも、目を伏せ心を閉ざした果ての時間。殺し殺され、傷つき傷つけられ、命からがら基地に戻ったら、高速修復剤(バケツ)を使ってまた戦場に駆け戻る……そんな血塗られた戦いの日々でも、私と提督は出会い、お互いを愛し、精いっぱい生きてきた。悔いの無いよう一瞬一瞬を積み重ねた、あの古いアルバムの中に切り取られた時間は、確かに輝いていた。

 

 だから私は立ち上がる。今度こそ負ける訳にはいかない。何度倒れても甦る。例え今は会えなくても、貴方の艦娘として誇り高くあり続ける。この戦争が終わった時に、胸を張って貴方に会いに行けるよう戦い続けるから、見守っていてくださいね。

 

 「提督、全ての戦いが終わり、大和の力を誰も必要としなくなった時、必ずあなたの元に帰ってきます。その時は……アルバムの続き、二人で埋めましょうね」


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