真・恋姫†無双~北刀伝~   作:NOマル

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~一刀と関羽、鈴々に会いに行くのこと~

 

軍神、関羽にボコボコにされた一刀はとにかく必死で謝り、なんとか許してもらった。

そうこうしている内に昼頃となり、二人は村の飲食店で食事を取ることにした。

 

「ははは!そりゃ災難だったねぇ~」

「ええ、まあ……」

「笑い事ではない」

 

話を聞いた女将は大きく笑い、一刀は苦笑いで答えた。関羽は尚も不機嫌のままだ。

 

「なんなんだ?あの悪ガキどもは。鈴々山賊団とか言っていたが……」

「名前通り、鈴々って子が大将の悪ガキ集団さ」

「へぇ~、あの赤毛の子が?」

 

大きな子豚に跨がっていた少女。赤毛という特徴が印象に残っていた為、一刀はそう推測する。

 

「まあ、やっていることは畑を荒らしたり、牛に悪戯をしたりってところかねぇ。そういやこの間、庄屋様の家の屏にばかでかい庄屋様の似顔絵を落描きしてたけど、ありゃ傑作だったねぇ~!」

 

女将はまた大きく笑った。

 

「それにしても、親はなにをしているのだ?山賊気取りの悪ガキを放っておくなんて」

「……あの子、親はいないんだよ。」

「えっ?」

 

関羽が驚くと、女将は途端に暗い表情になる。そして、呟く様に語り出した。

 

幼い頃、押し入ってきた賊の手により、両親を失った。その後、村の近くの山小屋に住んでいた母方のじいさんに引き取られたしかし、そのじいさんも亡くなって今は一人となってしまった――――。

 

「あの子だって根はいい子なんだよ?ただ、今はちょっと羽目をはずしているだけ。手下の子の親たちも大目に見てやってるのよ」

「そうだったのですか」

 

女将の話を聞き、そう答えた関羽の横で一刀は思った。

 

(両親が死んで、引き取ってくれたおじいさんも、か………。俺と一緒だな)

 

一刀は心中で、そう呟いた。自分も、大切なものを失う悲しみを味わった。心を紛らわせる為の悪戯なのだろう。

 

「あの~実は女将、折り入って頼みがあるのだが……」

「ん?頼み?なんだい?」

「えぇ~~と~」

(まさか、関羽……)

 

会計の時間となった途端、言いにくそうにする関羽。それを見た一刀は、嫌~~~な予感を感じ取ったのであった。

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

村の近くの裏山。その山小屋に、鈴々山賊団はいた。全員、その小屋を住処としており、さっき取った卵をゆで玉子にして食べている所だ。

 

「今日も大成功!!そういやこの間、庄屋の家の屏に描いた絵、消されちゃってたな」

「傑作だったのに、もったいないよねぇ~」

「だよねぇ~」

「な~に、今度はもっとすごいのを描いてやるからいいのだー!」

 

鈴々は立ち上がり、そう宣言した。

 

「さすがオヤビン!」

「鈴々山賊団サイコー!!」

 

子供たちは一斉にそう叫んだ。そんな中、外はもう夕方。空が橙色に染まっている。

 

「あ、そろそろ帰る?」

「うん」

「……あ…」

 

子供たちの一人がそういうと鈴々の表情が一瞬暗くなった。他の子も続く。

 

「じゃあ、あたしも」

「俺も」

「アタイも、と」

 

子供たちは、家へ帰る為に全員外へ出た。

 

「オヤビン、じゃあね~!」

「またね~!」

「うん、また明日~!みんなで山賊するのだ~♪」

 

子供たちは、全員村へ帰っていき、鈴々も小屋へ戻っていった。

 

しかし――――その表情は先程までの明るい面影はない。暗く、悲しい色に染まっていた。

 

「……明日になれば…また…みんなに…会えるのだ」

 

 

 

 

明日になれば……また――――

 

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

一方、一刀と関羽はというと……。

 

「はぁ~……あの女将、人使い荒いな」

「はは、まあ一宿一飯の恩義ってことで」

 

関羽がそういうと、一刀も答えた。まさかの路銀を持っていない、という有り様。無論、一刀も持っている訳もなく、結果、住み込みで働いて返すという事に。

今夜も女将に頼み込み、泊まらせてもらっている。

 

「でもまあ、いつもの野宿に比べれば、天国だな」

「そっか。じゃあ、早めに寝るか」

 

石造りの小屋。地面の上に敷かれている幾つもの藁。

一刀はそう言うと、藁の上に寝転がる。

 

「それじゃ関羽、おやすみ」

「ああ。おやすみ、一刀殿」

 

一刀は横になり、眠りに落ちる。関羽も横になる。そしてふと思った。赤毛の少女、鈴々の事を。

 

「賊に家族を…か…」

 

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

「――――愛紗!起きろ、愛紗!!」

 

青年がそう呼ぶと、少女は目を覚ました。

 

「ん…兄者、どうしたのですか?」

 

少女が眠そうな目を擦りながら聞く。対して青年は、鬼気迫る面持ちで妹に語りかける。

 

「戦だ!村が襲われた!」

「えっ……!?」

「今すぐ寝台の下に隠れるんだ!」

「う、うん!」

 

少女は兄に言われ、急いで寝台の下に隠れた。

 

「目を瞑って、じっとしていろ。絶対に声を出すんじゃないぞ!」

 

青年はそう言い残し、出ていった。

 

「金目のものを奪えっ!!」

「ぎゃああっ!!」

 

外からは、恐ろしい声や喧騒の音が聞こえてくる。少女は恐怖に怯えながら、じっとしていた。心の中で兄の無事を祈って……。

 

(兄者…兄者…兄者………!)

「ぐはっ!」

 

突然のことにびっくりして、少女は思わず目を開けた。

 

 

そこには、変わり果てた兄の姿があった……。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

「――――っ!?はあ……はあ………夢か」

 

関羽は、目を覚ました。悪夢を見てしまい、額が汗で濡れている。

 

「はぁ、嫌な夢を見たな…」

 

気怠そうに関羽はそう呟くと、一刀の方を見た。こちらはまだ夢の中に旅立ったままだ。

 

「まだ寝てるか……」

 

初めて出会った、自分と同年代と思われる青年。何の素材で出来ているか分からない、白い制服。何処かの貴族だろうか?そう思ったが、話しかける雰囲気や、立ち振舞い等は、庶民とほぼ変わらない。素性が未だ分からずにいる。

 

「――――こういうところも、あるんだな」

 

年相応の精悍な面持ち。しかし、寝顔は何処か幼い子供の様に見える。面と向かって言うのは失礼かもしれないが――――“可愛い”。そう思ってしまった。

 

「――――そ、そろそろ起こさないとな」

 

関羽は、赤くなった顔を左右に振った後、一刀を起こそうと、肩を揺する。

 

「一刀殿、起きてください。一刀殿」

「うぅ~~ん……」

「中々、手強いな」

 

声をかけても、肩を揺らしても、起きない一刀。眉を細めながら、関羽は苦戦していた。

 

「一刀殿、起きてくだ――――」

「うぅ~~ん、あと五分」

「え?あっ――――」

 

関羽がもう一度起こそうとすると、寝ぼけた一刀は関羽の腕を引っ張り、引き寄せた。そのまま関羽を抱き枕のように抱き締めている。

 

「ちょ、一刀殿!?」

「うぅ~~ん、柔らかい枕だぁ~♪」

 

関羽は抜けようとするが、物凄い力で抱きついていたので、中々抜けなかった。

抱き心地がいいのか、寝顔は実に恍惚としていた。

 

「い、いい加減にしろっ!!」

「いってぇえええ!?」

 

関羽は、なんとか右手を抜き出し、一刀の頭に拳骨をお見舞いした。あまりの痛さに、一刀も目を覚ました。

 

「な……なんだ~?」

「ふん!」

「っ?」

 

一刀は頭を押さえながら、起き上がった。関羽は胸を押さえながら、背を向けている。その表情は赤く染まり、目尻には涙が溜まっていた。

対する一刀は、何が起きたのか、全く分からずにいた。

 

 

 

 

場所は変わり、厨房。女将に頼まれ、関羽はまな板の上で、包丁を振るう。

 

「はっ!」

 

関羽は、大根を空中へ投げ、包丁で切りつける。その軌跡を辿るように、大根は切り分けられた。

横で見ていた女将は、目を見開く。

 

「大したもんだねぇ~………。けど、もう少し普通に切れないのかい?」

 

女将がそう聞くと、関羽は恥ずかしそうに頬をかく。

 

「ちゃんとした料理はあまりやったことがないので、つい……」

「まあ、いいさ。それにしてもこっちの子は中々のもんだねぇ~」

 

女将はそういいながら、一刀の方へ目を移した。

輪切り、半月切り、賽の目切り。人参と玉ねぎ等の野菜を切っていく。切った野菜も、形が整っている。

 

「そうですか?まあ、師匠に言われて、教わったもので」

「はっはっは!謙遜しちゃって~。顔も良いし、性格もいいときた。こんな旦那を持って幸せだねぇ~あんた」

「えぇ!?」

 

急に女将にそう言われ、関羽は顔を瞬く間に真っ赤にする。一刀も驚き、思わず手を止めてしまう。

 

「ま、待ってください!一刀殿とは、そういう関係じゃ……」

「そうなのかい?あたしはてっきり……」

「ち、違います!」

(うっ!堂々と言われるときついなぁ~……)

 

しかし、関羽の言葉も本当だ。自分と彼女は、そういう関係ではない。

分かってはいるが、少し傷付いてしまう。

 

「ははは!わかったわかった。じゃあ、それがすんだら薪割りと店の掃除、ついでに納屋の片付けも頼もうか♪」

「えっ?あの、ちょっと…」

「急いでおくれよ?」

 

関羽の言葉も届かず、女将はそう頼むと厨房から出ていった。数々の注文を突き付けられ、関羽は肩を下ろす。

 

「うぅ、本当に人使い荒くないか?」

「まあまあ、俺も手伝うからさ。」

 

関羽が言うと、一刀は優しく答えた。

 

女将の注文を済ませる為、二人は藁を背負いながら一緒に村を歩いていた。

 

「え~っと、後は納屋の片付けか」

「ああ、後はもうそれだけ――――ん?」

 

関羽は話すのを止め、屋敷の前に人混みができているのを見た。

塀のある屋敷で、その中庭。二人の中年男性の前に、数人の兵士が列を組んで並んでいる。

 

「いいですか!?相手は子供とはいえ、手のつけられない暴れもの!油断は禁物ですぞ!?」

 

役人らしい男性が、数人の兵士らしき人達に叫んでいた。

何があったのか?一刀は人混みの中の一人に問いかける。

 

「何か、あったんたんですか?」

「なんでも、今からお役人に鈴々を捕まえてもらうんですって」

「役人にって子供相手に大袈裟な……」

「庄屋様、こないだの落描きが相当頭に来なさったらしくて。今回ばかりは、堪忍袋の尾が切れたんだって」

「ったく、大の大人が何ムキになってんだよ」

 

少し苛立ちながら、一刀はそう言う。もう一人の村人が怯える様に呟く。

 

「しかし、お役人も本物の山賊には怖くて手を出さん癖に、こんなときだけ……」

「捕まったら、どうなるじゃろう?」

「殺したりはしないと思うが、ムチで叩かれるのはあるかものぅ。あぁ、おそろしや……」

 

その言葉を聞いた途端、一刀は迷わずに足を進める。それに驚く関羽だったが、彼女も一刀と共に役人の前へと向かう。

 

「庄屋殿、お話の途中で申し訳ない」

「ん?なんだ、お前は?」

 

庄屋が怪訝そうに聞くと、関羽は答えた。

 

「私は旅の武芸者で、名は関羽。こちらは一緒に旅をしている、北郷殿だ」

「……どうも」

「聞くと、鈴々なるものは、大人も手を焼く暴れ者とか。ここは一つ、私達に任せてはもらえないでしょうか?」

「あんたらが?本当にやれるのか?」

「ええ。所詮、相手は只の子供。本物の山賊に比べれば、かわいいものです」

 

関羽がそういうと、役人が何かを思い出したのか、思わず声を上げる。

 

「もしや、おまえが噂の黒髪の山賊狩りか!?」

「あんたが、あの!?」

「いや、自分から称しているわけではないが……」

 

関羽が照れ臭そうにしていると、役人達は、何やらがっかりしたような様子を見せた。

 

「黒髪のきれいな絶世の美女だと聞いたが……」

「噂はあてにならんな」

 

それぞれ文句を言っていた。

 

「そ、それは、どういう意味かな?」

 

関羽は、この態度にイラッときていた。

役人達の落胆した様子を見て、一刀も若干、憤りを感じていた。

 

(関羽は充分、綺麗だと思うけどな……。ていうか、こいつら女の子に対してそんな態度はないだろ)

 

庄屋たちに対し、心中で文句を言う一刀。

 

「まあ、あんたは腕が立つと思うが、そっちの男はちょっとな――――」

「ご心配なく」

 

庄屋が話している最中に一刀が口を開いた。

 

その瞬間、その場にいた誰もが硬直した。庄屋と役人、そして数人の兵士達が、身動きを取れずにいた。全員、顔が青ざめ、大量の汗をかいている。

 

一人の武人でもある関羽。彼女もまた、冷や汗を――役人達程ではないが――かいている。

綺麗な表情が、驚愕に染まっていた。

 

「俺も、一応腕はそれなりにあるつもりです。なので、ご心配なく――――」

 

庄屋と役人の目前まで行き、一刀は満面の笑顔で、庄屋たちに凄まじい“氣”を乗せながら答えた。

 

「わ、わかったわかった!じゃ、じゃあ、頼んだぞ!?」

「う、うううむ!!し、しっかりな!?」

 

庄屋達は、得体の知れない恐怖に怯みながら、辛うじて答えた。早く去って欲しい、というのが見て分かる。失礼します、と一礼した後、一刀は関羽の元へと戻る。

その際、兵士達が避けるように道を開ける。

 

関羽もまた、動かないままであった。

 

(この凄まじい氣。一刀殿、あなたは一体?)

「よしっ!それじゃ行こうか!関羽!」

「っ!そ、そうだな……」

 

一刀が言うと、関羽も慌てて後を追う。

優しい笑顔を見せられ、緊張と警戒が和らいだ。対して、役人達は尚も、怯えたままであった。

 

 

そして二人は、鈴々山賊団のいる山へと向かったのだった。

 

 

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