魔法少女リリカルなのは~月光の鎮魂歌~ 作:心は永遠の中学二年生
魔法(魔砲?)はしばらくお待ちください。
全てが燃えていた。
大地も、空も、川も、海も、家も、民も、貴族も、奴隷も、家畜も、植物も、兵器も、城も、家も、石造も、町も、都も、国も、希望も、絶望も、世界も全てが燃えていた…。
そして………方舟も。
豪奢な飾りや煌びやかな装いとは無縁であろうとも、それでも王家の全てであった方舟は、燃えていた。
強固な外壁も、精密な魔導炉も、屈強な騎士も、歴戦の精兵も、命無き傀儡も、造られた破壊者も、敬虔な神官も、英知の学者も、高位の魔導師も、そして…彼の目の前に横たわる最後の王族も。
彼女はもう目を覚まさない。
明るく元気で、少々お転婆で、自身にないものを嘆くこともせずに笑っていた彼女。
彼と、彼女と彼女と、そして彼と笑い合っていた彼女はもう…決して目を覚ますことはない。
何故ならたった今、彼が彼女の心臓を貫いたから。
ゆっくりと、浮遊感を感じ始める。
どうでもいい。
炎が彼の身を舐め回している。
気にするほどではない。
むしろ冷たすぎる。
地獄の業火は、絶望の苦痛を味あわせるほど熱いのではなかったのか。
彼が奪ったものが、この程度というはずもない。
怒りも、憎しみも、悲しみも、その一部ですらも味あわせてもくれない。
失望とはまさにこのことだろう。
全てが色を失っていく。
全てが消えていく。
全てがなくなっていく。
かまわない。
なぜならこれは墓標だからだ。
あまりに…あまりにも長すぎる戦いの中で生き…そして死んでいった、彼らすべての墓標だ。
浮遊感が増していく。
いかに不死を与えられた彼であっても、今度という今度はさすがに死ぬだろう。
ここまでやればさすがに無理だ。
元は純白だったこの服もドス黒く変色し、彼の身は既に満身創痍という生易しい言葉ですら言い表せないほどに死にかけていた。
死。
それは彼の救済。
全ての命が等しく求める永劫の静寂。
万物に対して唯一与えられた平等の権利。
死の向こうには何もなく、神の国も次の生もない。
どこにもいない憎き神に確約された終末。
右手を見る。
たった今彼女を貫いた右手は、赤黒く生々しい不快な感触を脳に伝えている。
彼の中で去来する感情は、一体なんだったのだろうか。
死を求め続けていたはずの彼は、今まで一度もしようともしなかった祈りを捧げることにした。
最後の最後、今際の際に、彼は一言呟いた。
「すまなかった」
紅蓮の業火が彼らを飲み込み、戦乱という名の秩序を失った世界は、何千年か振りに暗黒の時代という平穏を手に入れた。
うん、イミフですね!
イメージとしては11eyesというゲームの序盤のところのイメージで書いてみましたww
感想とか待ってます!
でも私の心は非常に弱いので、お手柔らかにおねがいしますm(__)m