魔法少女リリカルなのは~月光の鎮魂歌~   作:心は永遠の中学二年生

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一か月…お待たせして申し訳ないです!
さて、今回はちょっぴり布石回
どこが布石かわかってもらえるかも微妙…



第八話 無印編 嵐のあとの静寂

Side 高町なのは

 

 

私、高町なのはは、私立聖翔大付属小学校に通う普通の小学三年生!だったんですが…異世界からやってきたフェレットさん、ユーノくんと出会ったあの日、なんと、私は魔法少女になってしまったのです!

びっくりです!

ユーノくんは、事故でこの世界に落ちてしまった小さな宝石、ジュエルシードを回収するためにやってきたそうです。

ジュエルシードっていうのは、本来は願い事を叶えるものなんだけど、暴走して暴れたり、とっても危険なの!

私はたまたま魔法の資質があったので、魔法の杖・レイジングハートを預かって、ユーノくんのお手伝い。

出会ったあの日に封印したのが3個。

ユーノくんが封印したのが1個。

見つかってないジュエルシードはあと17個。

どこに落ちてるのかわからないし、とっても大変かもだけど、リリカルマジカルがんばります!

 

(さすがに道端には落ちてないね…)

 

(いや、地球のこの地域に落ちたことしかわかってないから、道端に落ちていることもあり得るよ。とはいえ、確かに道端じゃ、誰かが拾っていってしまうかもしれないね)

 

私の肩に乗っているフェレットさんがユーノくん。

普通のフェレットさんはお話できないから、お話は念話っていうテレパシーみたいなものでお話してます。

 

(もうちょっと歩いて、商店街から離れて…神社の方に行ってみよっか)

 

(うん、ごめんねなのは。僕の魔力が回復してれば、もう少し探しやすかったのに…)

 

(大丈夫!ユーノくんとお散歩してるみたいで楽しいし!ユーノくんこそ、まだ怪我が治ってないんでしょ?)

 

(僕はもう全然…)

 

(ダメだよ、無理しちゃ)

 

むー、気を付けないと一人で探しに行きそう…。

ユーノくんに無理させないためにも、私ががんばらなくちゃ!

 

「あれ?なのは?」

 

「あ、フォルテくん?」

 

角を曲がったところでばったり会ったのは、クラスメイトのフォルテくん。

アリサちゃん、すずかちゃんと並んで私の仲良しさんなの。

 

「どうした?ボーっと歩いてたら危ないぞ?」

 

「にゃはははは…はーい、気を付けます」

 

「よろしい…って僕は保護者か!」

 

「言い出したのフォルテくんなのに!?」

 

ちょっとひどいと思うの。

フォルテくんは優しそうな見かけと違ってちょっぴり意地悪さんなのです。

あと、外国人さんらしく、たまに日本語とか常識とかがすごく怪しいです。

 

「あれ?フォルテくん、お顔どうしたの?」

 

フォルテくんのほっぺたに青い痣ができていました。

フォルテくんはとっても強いし、体育の成績もいいからあんまり怪我とかしなさそうなんだけど、どうしたんだろう?

 

「あー…あれだ、伯父さんと喧嘩した」

 

「えぇー!?」

 

びっくりなの!

フォルテくんとアームストロングさんって、とっても仲良しさんだったのに。

 

「そこまで驚かなくても…ちょっと隠し事してたのを打ち明けたら、全力パンチが飛んできただけ…だけ………だ、け……………………死ぬかと思った!」

 

「えっと…ご愁傷様なの…」

 

アームストロングさんって、ものすごく体を鍛えてるから、殴られるととっても痛そうなの。

フォルテくん、半泣きで震えてるし。

 

「そうだ、紹介しておこう。ほら、隠れてないでこっちにおいで?」

 

今気が付いたけど、フォルテくんの後ろに誰かが隠れていました。

覗きこんだらびっくり!

緑の髪の綺麗な女の子だったの!

黒色のゴスロリの服がとっても似合ってる!

 

「ほらほら、ピアノ、自己紹介やってみよう?」

 

「え、えっと…ピアノ・F・ブルックリンです…」

 

「あ、はじめまして、高町なのはです!なのはって呼んでください!」

 

「なのは、さんですか…」

 

「はい!よろしくね、ピアノちゃん!」

 

あ、フォルテくんの後ろに隠れちゃった………ちょっとショックかも…。

 

「あ、あはははは…ごめん、人見知りの激しい子なんだ」

 

「しかたないよ…」

 

うぅ…ちょっと傷付くけど、なのはは強い女の子だから負けません!

 

「ピアノちゃんって、フォルテくんの親戚?」

 

ブルックリンって言ってたし、観光案内かな?

 

「義妹だよ、ついこの間こっちに来たばっかりなんだ。こっちの言葉や常識は、あんまり知らないから色々教えてるところ。」

 

「え?フォルテくん、妹がいたの?」

 

これはちょっとびっくりなの。

 

「血は繋がってないけどね。ところで………なのはの肩に乗ってるのが、アリサの言ってたフェレット?」

 

「あ、うん、そうなのユーノくん!」

 

キュゥ!

 

ユーノくんは私たちの言葉以外にも、フェレットさんの言葉も話せるから、こうして鳴き声もやってくれるの。

ちゃんと片手も上げてご挨拶。

 

「あ、片手を上げました」

 

「ピアノ、あれは前足って表現するんだ」

 

フォルテくん、それは細かいと思うの。

 

「なのは、このフェレットってなんて種類?」

 

「種類?」

 

「そ、種類。犬だったらチワワとかブルドックとかいるじゃん?このフェレットはなんて種類かと思って」

 

これは…地味にピンチなの?

種類って、異世界だし…スクライアって適当に応えれば………。

 

「毛並みはいいね、毛の質は細いし柔らかいし、なによりこの色…天然じゃなく人為的な交配によるもの?だとすると僕の知ってる中にはないから、かなり最近現れた新種かな?自然界じゃまずありえないし。いや、ありえなくはないけど、ここ二年以内に発見された新種ってことに………ん?なのは、どうした?なんで汗かいてるんだ?顔色も悪いぞ?ユーノもなんか小刻みに震えてるみたいだけど?」

 

それは意外と追いつめられてるからなの!

フォルテくんの物知りが、今はとっても恨めしいの!

 

「な、なんでもないよ!?」

 

(な、なのは、このフォルテって人、かなりまずいと思う!)

 

(うん、フォルテくん物知りさんだから…)

 

ユーノくんから切羽詰まった念話が届くけど、どうすればいいんだろう?

 

「えーっと…あ、フォルテくんその荷物はっ?どこかへお出かけするのっ?」

 

こういう時は、強引に話題を変えるしかないと思うの!

でもそれ抜きでも、フォルテくんが背負ってるおっきなリュックは気になる…。

 

「これ?…三日分の水と食料と常備薬と防災ずきんと衣服と懐中電灯と携帯ラジオと電池と発電機と濾過装置」

 

「どこに何しに行く気なの!?」

 

アリサちゃんじゃないけど、これは黙っていられないの!

 

「突然空からミサイルが落ちてきたらどうするんだ!」

 

「それどういう状況!?一巻の終わりだと思うの!」

 

「マ○リックス的に回避すればいいんだよ!」

 

「できないの!普通そんなことできないの!!」

 

…お兄ちゃんならできそうとか、そんなこと思ってない、よ?

 

「まあ真面目な話、小学生くらいの子供は秘密基地を作るものらしいから、ちょうどいい立地条件を探している真っ最中だ」

 

「…フォルテくん、真面目って言葉の意味間違えてる」

 

そうじゃなかったら絶対おかしい。

 

「あれ?ピアノちゃんの案内は…?」

 

「………秘密基地を作りながら?」

 

「嘘ならもうちょっとマシな嘘を考えて!」

 

適当すぎると思うの!

フォルテくんは真顔で嘘がつける人なのかな?

悪い人にならないように、気を付けなくっちゃ!

 

「義兄さん…」

 

「あーはいはい、ごめんなのは、ピアノが待ちきれないっぽいから…」

 

「あ、そっかごめんねピアノちゃん」

 

「大丈夫、です…」

 

あぅ…また隠れられた…。

でも、答えてもらえたから一歩前進なの。

 

「なのははこれからどうする予定?」

 

「私はこれから山の方に行こうと思ってるの」

 

「ユーノくんのお散歩、ですか…?」

 

「うん!」

 

「肩に乗っているのに、ですか…?」

 

「ピアノ、それは言ってはいけないことだ」

 

ピアノちゃん、その一言はちょっと厳しいの…。

 

「あんまり引き止めるのも悪いから、僕らはそろそろ行くよ」

 

「あの、それでは…」

 

「うん、また学校でね」

 

フォルテくんたちと別れて、私たちはジュエルシード探しを再開しました。

なんとなく、フォルテくんの雰囲気が怖かったのと、ピアノちゃんからおかしな気配みたいなのを感じたけれど…気のせいだよね。

 

 

 

 

Side フォルテ・L・ブルックリン

 

 

やれやれ…本当に面倒なことになったな。

僕はなのはと別れた後、こっそり溜息を吐いた。

いつかはと、その覚悟を決めていたとはいえ早すぎる。

というか、今全力で最悪を天元突破している気分だ。

 

「ピアノ、なのはを見てどう思った?」

 

「悪い人ではないと、思います…」

 

「そうだな、悪い人ではない」

 

だがそれは決して善人と断言できるわけではない。

そう考える自分は歪んでいるのだろうとフォルテは思った。

 

「なのはは、友達になれそうか?」

 

「………わかりません」

 

「そうか」

 

ならばあえて何も言うまい。

なのはとピアノ、二人が友達になるのをフォルテは止めようとは思わない。

本音で言えば、フォルテはなのはを敵に回したくはないが、同時に味方にしたくもないのだ。

だがそれでもフォルテは何も言わない。

なぜならそれは、ピアノに友達ができるメリットの方が大きいと思ったからだ。

例えなのはと敵対する可能性があったとしても。

例え高町(・・)と敵対する可能性があったとしても。

 

「しばらくは異物捜索だ。ピアノは異物を感じ取れるんだったな?」

 

「はい」

 

ピアノが言うには、近くにある異物にはどこかシンパシーのようなものを感じるらしい。

黒マリモの中から出てきた異物に対して、ピアノはそう言った。

 

あの夜、黒マリモの中から出てきた異物を調べた限りでは、ピアノが出てきた異物と大差ない存在であることまでしかわからなかった。

即ち、願望器である。

特筆すべき違いは、ピアノの異物にあった揺らぎが感じられないことと、異物の中に浮き上がる文字が“Ⅶ”であったということだ。

揺らぎに関しては時間帯などが関係している可能性もあり、また、そもそも揺らぎが感じられないとピアノの時のように中から出すこともできなそうだったので、そこに関しては一時保留。

数字に関しては、おそらく通し番号的なものだろうと考えられる。

ピアノが“Ⅳ”、黒マリモが“Ⅶ”ということは、最低でもⅠ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅴ、Ⅵがどこかに存在していると考えるべきだろう。

黒マリモの一件から、異物は今、何かしらの理由で製作者、あるいは保有者の手から離れている状態なのではないかと思われる。

ピアノの分だけなら、まだ落とし物レベルで考えることもできたが、黒マリモが現れた段階でその考えは破棄。

同時に先日の公園での破壊活動に黒マリモ、もとい異物が関与していた可能性が現実味を帯びてきた。

ただそうなると不自然な点がある。

なぜ異物関係者は公園の件を隠蔽しなかったのか?

どう考えても表沙汰にできない、異物という存在が関与した破壊活動を隠蔽しないはずがない。

それこそ、適当な奴に金を払って「酔っぱらってバットで壊して回った」と自首させるだけで隠蔽としては問題ない。

多少不自然なところがあっても、犯人が出頭していれば警察という組織はそれ以上に調べようとはしないものだ。

未開拓だからって見下されてる?調べられてもどうせ辿り着けないとか思われてる?

ベルカマジ滅ぼす!

 

「あの、義兄さん…あれは、なんという生き物ですか?」

 

「あれは猫という生き物だ。猫というのはあの生き物の総称で、細かい種類は色々あるが、そこまで詳しく知らなくても多くの人はそのまま不自由なく暮らしている」

 

「あっちも猫ですか?大きい気がしますが…」

 

「あれは犬だ。猫と同様に犬というのも総称で、猫同様種類も多く、知らなくても特に問題ない」

 

現在ピアノと一緒に歩いているのは、異物捜索という一面もあるが、ピアノの社会見学という一面の方が大きい。

勝手に起こした(?)とはいえ、この世界で生きていくにはどうしてもいろいろ常識が足りていない。

ならば勉強させるしかない。

幸いピアノの学習能力は高く、真綿が水を吸うが如くという言葉がしっくりくるほどなので、実地でいろいろ見て感じてもらった方がいいと思ったのだ。

 

「あれは家ですか、それともお城…ですか?」

 

「いいえ、あれは月村邸です。ああいうそれなりを超えるレベルのお家を邸宅とか豪邸とか言います」

 

思わず説明口調で懇切丁寧に否定するのは仕方がないだろう?

お城かと聞かれたら違うと断言できるけど、この月村邸を普通の家と表現すると、それは世界の多くの一般家庭の皆様に対して宣戦布告するに等しい。

どう見ても豪邸じゃん?

敷地内に森があるとかなんだよそれ?

しかもセキュリティー超高い!

僕もここに侵入できる自信ないよ?

魔法使っても失敗しそう…。

 

「まあ、目的地の一つだ。知り合いを紹介しよう……………………訂正、親友だった」

 

「………親友、なんですか?」

 

「親友だ」

 

ピアノは何か言いたそうな顔をしていたが無視した。

うん、言いたいことはわかる。

顔に書いてあるもん。

言わなくても伝わっているよ。

 

チャイムを鳴らし、僕たちは中庭のテラスに案内される。

そこには先に到着していたらしいアリサがすずかと紅茶を飲んでいた。

 

「あ、来たわね」

 

「いらっしゃい、フォルテくん。えっと…?」

 

「お待たせ、ピアノ、挨拶を」

 

「………」

 

ピアノを促すも、無言で後ろに隠れられた。

小動物とか、そういう弱々しい何かに頼られるような気持ちになりながら、苦笑する。

これ、毎回同じようなこと繰り返すの?などと思っていると、アリサが回り込んできた。

 

「ピアノ、っていうのかしら?あたしはアリサよ、アリサ・バニングス。間違ってもアンコ・バクダンズでもアラシ・フェスティバルでもないわよ?」

 

「なんだそれ?」

 

「あんたが昔あたしに言ったのよっ」

 

はて?そんな記憶も無きにしも非ず?

もうアリサの名前は百超えてるんじゃないかなぁ?

全部覚えきれるはずがない。

 

「あはははは…私は、月村すずかだよ。すずかって呼んでね?」

 

「わ、私は…ピアノ・F・ブルックリン、です…」

 

「「ブルックリン?」」

 

さすがだな、アリサもすずかも息ぴったりだ。

 

「ぶっちゃけ、“我々”の色々で義理の妹という立場にしたんだよ」

 

“我々”というのは、アリサとすずかにだけわかるようにした僕の仲間…つまり、魔導師たちのことを指す言葉だ。

日本で説明しているのはこの二人だけだから、わざわざ考えてみた。

そのうち魔導師云々についても説明しないと…って、ピアノのこと秘密にしないといけない段階で無理か。

 

「ってことは、ピアノも?」

 

アリサは持ち前の性格で、ズバッと確信をついてきた。

でもちょっと違うんだよな。

 

「まあ、いろいろあるけど…そうだね、“我々”の仲間だよ」

 

嘘は言っていない。

魔導師としては仲間だし?

軽く調べた限りじゃ、生物学的に大きな差異もなかったし?

 

「あの、義兄さん?この人たちは…?」

 

「あ、うん。この二人は僕の親友で、種族的な説明はある程度してあるんだ。色々…本当に色々…あって、ね…」

 

本当に色々あったな…。

誘拐事件とかもう二度と遭遇しないぞ!←フラグ

もしもあったら今度は無視してやる!←フラグ

って、そうそう何度も遭遇するはずもないか。←フラグ

 

「なんだかよくわかりませんが…大変だったんですね…」

 

「いや、気にするようなもんじゃないし」

 

ピアノは同情の視線を向けているが、正直な話、大変というか気疲れの方だから、ちょっぴり的外れだ。

 

「あ!フォルテくん、その荷物は?随分大きなリュックだけど…」

 

話しが重い方に流れそうだったのを敏感に察知したらしいすずかが、先程から気になっていたことを切り出した。

 

「これ?三日分の水と食料と常備薬と防災ずきんと衣服と懐中電灯と携帯ラジオと電池と発電機と濾過装置」

 

「「どこに何しに行く気なの!?」」

 

「ふっ…アリサもすずかもまだまだだな!そのツッコミはなのはと重複している!」

 

「別に芸人になりたいわけじゃないんだからいいでしょ!」

 

おおう…さすがツッコミ要因アリサだ。

速攻で切り返しが来るとは思わなかったぞ。

カウンターツッコマーアリサと呼ぼう。

 

「変な名前を付けるなっ」

 

「心を読まれたっ!?」

 

こいつ、新型か…!

 

「…義兄さん、表情に出てます」

 

「………義妹よ、こういうくだらないギャグは軽く流すか軽く乗るんだ」

 

やっぱりこういうのは、経験が必要だという判断は間違っていなかったらしい。

本を読むだけでは、知識ばっかりの未経験者になる。

耳年増っていうんだっけ?←意味わかってない

 

「えっと…ピアノちゃん、純粋だね?」

 

さすがにすずかは、世間知らずとまでは言えないらしい。

最近積極的になってきた気はするけど、そういうところを残すのはありだと思う。

 

「まあ、ね…。そうだ、いい加減こいつも紹介してやらないとへそを曲げるかもしれない…NGST-4、自己紹介だ」

 

僕はリュックから、NGST-4を出してやる。

新しい器に急ピッチで入れ替えたため、相変わらず見た目はまだアレだけど、ガ○ダムのランドセルくらいにはマシな見た目になった。

いや、飛べないけどさ。

 

『はじめまして、新人類能力補助用自己成長型演算装置試作四号機、仮称NGST-4です、見た目通りへそはありませんので曲げることはできません』

 

…なかなかに手厳しいなNGST-4よ。

へそがないってことを突っ込むとは、レベルを上げたな。

 

「しゃべった!?」

 

「わ~…すごい技術だね!」

 

アリサは予想通り驚愕の表情で固まったが、すずかはとても感心したように頷いてNGST-4を隅々まで観察している。

…白々しいとは言わない。

たとえ?僕らにも内緒にしている?明らかにオーバーテクな?メカメイドがいたとしても?別に嫌味だとは思わないよ?彼女たちのプライバシーにも関わるし?言えないのはいいよ?でもそれとこれとは別だよ?何が言いたいかというと?僻んでんだよ!ちくしょう!こちとら蓄積技術なんてないから一から作ったんだよ!!

こちらの想いが伝わったのか、すずかはちょっと微妙な苦笑いのあと、スーッと身を引いた。

正直すまん、大人気なかった…。←小学三年生

 

「フォルテ、NGST-4だっけ?何のための機械なのよ?」

 

「んー…ピアノの件も含めてちょっとだけ話すよ」

 

「あ、じゃあ紅茶飲む?」

 

「ありがとう。ピアノは…猫と戯れ中だね」

 

さて、どれだけ話したものか…。

とりあえず、“異物”のことは伏せて、ピアノはちょっと追われてるかもしれない立場という説明でいいか。

魔力って呼び名とかは、ピアノの発案ってことにしよう。

NGST-4は、そのままの説明でいいだろう。

 

………

………………

………………………………

 

「ってわけだ。詳しくは話せなくてごめん。でも、ピアノがもしも助けを求めてきたら友達の義妹(・・・・・)として助けてやってほしいんだ」

 

こういう理由であれば、万が一の事態が発生してもこの二人はただ一般的な善意(・・)で行動したことになり、そこには一定の信憑性ができる。

つまり最悪、この二人には累は及ばない…はずだ。

この予防線がどの程度役に立つかはわからないけど、張っておいて損することはないだろう。

 

「うん。もしもなんて、無い方がいいけどね…」

 

「そうね、でもあんたもちゃんと助けを求めなさいよ?」

 

この二人の才能は並ではない。

今のちょっとした言い回しで真意に辿り着いたようだ。

もっとも、アリサは不本意と顔に書いてあるが。

アリサとしては、そういうのも一切抜きに人を見捨てるという選択肢を持たないし、そもそもこういう予防線は好きではないだろう。

 

「わかってるよ、僕だって自殺志願者とかじゃない。勝算があるか、退けない状況でもない限り無茶はしないよ」

 

「そもそも無茶するなって言ってんのよ!」

 

「すみません、気を付けます…」

 

なにか、アリサの琴線に触れてしまったらしい。

僕は知らなかったことだが、アリサは年末の誘拐事件で僕が≪レールガン≫を使った時、火傷を負わない体質でも、熱いものは熱いという事実には気付いていた。

そんな無茶をさせてしまった事実に気付いたのは、かなり後になってからだったので、謝る機会もなく、少しため込んでいたのだ。

 

「あの…義兄さん、これも猫、ですか?ちょっと熱いです…」

 

全く気が付かなかったが、いつの間にかピアノは、ものすごい数の猫の群れに埋まっていた。

…いや比喩でもなんでもなく埋まっている。

漫画か何かで吹雪の中で立っていた人みたいな感じで猫達磨が出来上がっている。

その数の生き物に囲まれていれば、それは当然熱いだろう。

 

「そうだね、猫だね、できればもうちょっと早く声を掛けてくれれば助けやすかったかな?」

 

とは言っても、助けない選択肢はない。

僕らは三人がかりでピアノにくっつく猫たちを引きはがした。

なお、すずかが引きはがすたびに毎回、グイード、ケーニヒ、ガノフ、パリロなどと名前を呼びながらだったので、僕はほんのちょっとだけその記憶力の高さに引いた。

間違いなく敷地内には三桁以上の猫がいますよ?

 

「ごめんねピアノちゃん。うち猫がちょっと多いから…」

 

「ピアノ、すずかの家にいる猫の数はちょっと多いのではなく、本気で多いから間違えないように」

 

細かいことだが訂正しておかないと、ピアノの多いの基準がおかしくなる。

 

「とりあえず、お風呂入る?服も髪も毛だらけになっちゃったし…」

 

「大丈夫、ですよ?」

 

「すずかは落ち込み過ぎだと思う」

 

「あんたはちょっとデリカシーないと思うわよ?女の子が髪と服を傷つけられたら怒るのと同じで、それだけすずかは落ち込んでるのよ」

 

アリサにそう言われても困る。

女心を理解するのは、自然界の真理を解き明かすよりも難しいと思う。

 

ピカッ…

 

「え…?」

 

ピアノから発せられた一瞬の光。

その光が晴れて現れたピアノには、先程まで体中についていた猫の毛は一切ついていなかった。

 

「…………………ピアノ、ごめん。僕が悪かった。この二人が事情を知ってるっていうのは、決してこの二人の前なら何の気兼ねもなく魔法を使っていいというわけじゃないんだよ。ごめん、ちゃんと説明すべきだった…ホント、ごめん………」

 

僕が頬を掻きながら謝るのと、ピアノの足元の薄緑色の三角の魔法陣が消えるのは同時だった。

ピアノが言うには、三角の魔法陣は“ベルカ式”というもので、異世界では最もポピュラーな魔法体系らしい。

 

「今の…ひょっとして見ちゃまずかった?」

 

「気にしなくていい…とまでは言えないけど、忘れてくれると嬉しいかな?」

 

思わず苦笑い。

そもそも他言無用な内容に忘却を掛け合わせるなど、面白すぎる冗談だ。

 

「―――ッ!?義兄さん!同時に二か所!片方はここから北にしばらく行ったところ、片方はあの森です!」

 

「…両方一気は無理だ。森から片付ける。二人とも、悪いけどちょっと待ってて。ピアノ、行くぞ!」

 

「ちょ、フォルテ!?」

 

「フォルテくんっ!?」

 

突然のことについて行けない二人を無視して、僕らは森に向かって走った。

 

森の中(何度も言うが敷地内です)をしばらく進むと、そこには全高3mほどの巨大な子猫がいた。

…………いや、巨大な子猫って日本語がおかしいけど、今は正しいだろう。

実際とても大きい。

でも、どう見ても子猫だ。

 

「ピアノ、これはどう思う?」

 

「…“異物”は、願望器。子猫の大きくなりたいという、願いを叶えた結果では、ないかと…」

 

「いや、正しいけどさ…間違ってるだろ」

 

ちなみに、この時点で僕らは知らなかったことだが、今回のこれは正しく願いを叶えた(・・・・・・・・・)数少ない事例だったりする。

しかし、そのことに気付くのはだいぶ先のことである。

 

「で、この子猫をズタボロにリンチするの?」

 

「………嫌、ですね」

 

例えるなら、手術だとわかっていても、子供を切ることに躊躇う医者の気持ちだろうか?

正しいけど、理解していても、納得もしているのに、理屈でもなんでもないところで否定の感情が湧いてくる。

どう言い訳しても、子猫をボコボコにすることには変わりないわけだし。

 

「…どうしよう?」

 

「すずか、あんたん家は猫育てすぎじゃない?」

 

「さすがに育てるってレベルじゃないと思うよ…」

 

………?

あれれ~、おかしいよ?

此処には僕とピアノの二人しかいないはずなのに、他にも声が聞こえるんだ。

と、見た目は子供で頭脳は大人な自称名探偵の子供のふりして女風呂に入るムッツリ変態高校生のモノマネを脳内でするという、ありていに言えば現実逃避から気力で復帰して振り返る。

そこには、先程ついてこないように言ったはずのアリサとすずかの姿があった。

 

「…………………待ってるように言ったよね?」

 

「待ってるとは言ってないわよ?」

 

「揚げ足を取るな」

 

「ここは私の家だから、私がどこにいても問題はないはずだよ?」

 

「それ以前の問題だ!これは知ってはいけない情報に分類されるんだぞ!?」

 

冗談じゃない!…どうしよう?

“異物”に首を突っ込んだ馬鹿な子供の、事情を全く知らない友人という立場でないと、万が一の時に関係者として“異物”の本来の所有者に消されかねない。

あ、揉み消せば何とかなる?

むしろ関係者が口を開かなきゃ問題ない…かな?

幸いここ敷地内だけど人気のない森だし。

あとでしっかり、言い聞かせれば(・・・・・・・)いけるか?

…仕方ない、気乗りしないけど言い聞かせよう(・・・・・・・)

よし、それでいこう!問題解決っていうか、それ以外選択肢が残ってないっていうか…ぶっちゃけ目撃者だって知られたらアウトじゃね?って思うわけで。

となると直近の問題として、もう一つ北に“異物”があるということを考えないといけない。

そこであの黒マリモが暴れている可能性がある。

目の前の子猫を迅速に対応する必要があるから…だから迅速にこの子猫を袋叩きにする?

…ごめん、それ論外!

 

ニャッ!

 

「ッ!散開ッ!!」

 

こっちがごちゃごちゃしているうちに、巨大子猫は飼い主であるすずかが遊んでくれると勘違いしたのか、前足で猫パンチ(必殺級)を繰り出してきた。

もの凄い風切り音が聞こえたが、そこにいるのは基本的に天才や才媛、あるいは異質。

誰も彼もが平均を超えた反射神経を持っている。

アリサとピアノは素早くその場を飛び退き、すずかは自身の身体能力を活用して木の上に飛び乗り、僕は身体能力を強化して巨大子猫の懐に入った。

 

「ピアノ!」

「≪フィールド≫!」

 

僕がピアノを呼ぶのと、ピアノが≪フィールド≫を発動するのは同時だった。

その瞬間、空気が変わる。

先程まで感じていた風が突然なくなり、鳥の囀りや虫の息遣いなど、およそ生命の息吹と呼ばれるそれらが失われる。

代わりに感じる空虚。

視界に広がる灰色のそれが、≪フィールド≫の発動を僕に教えた。

 

「少しオイタが過ぎるかな?」

 

僕は少し良心が咎める中、巨大子猫に触れる。

なるべく衝撃は一瞬にするように心がけて≪バルカ≫を発動する。

 

『バルカ、イグニッション』

 

「≪バルk――ッ!っておいこら!なんで僕は餌認定なんだよッ!?」

 

巨大子猫のもう片方の前足に触れて電撃を流そうとした瞬間、巨大子猫があろうことか顔を近付けてガブッとやろうとしたのだ。

有り体に言うと食べられそうになった。

納得しかねる!!

全力でその場を飛び退いた僕は、≪アイギス≫で空に駆け上る。

 

「まったくもう…!どうしたもんかね?ピアノ、代案ある?」

 

「…私が接触して直に封印すれば、可能性はあります」

 

「採用!」

 

それ、もうちょっと早く言ってほしかった。

たとえ1%の可能性でも、子猫いたぶる選択肢でないならまだマシだろう。

子猫の気分は変わりやすいのか、僕に向いていた意識は今、自身の顔を洗うことに向けられていた。

とは言っても、さすがに近付けば気付かれて猫パンチ(必殺級)されるだろう。

 

「じゃ、囮作戦だ。僕が餌(文字通りの意味)やるから、ピアノは気付かれないようにそっと近づいて子猫と接触してくれ」

 

「はい…!」

 

「あたしたちはどうする?ピアノの援護した方がいい?」

 

「そうだね、そうしてくれると嬉s………………………………………」

 

ピアノと顔を見合わせる。

僕たちはテレパシーとか使えないけど目線だけで語り合った。

お前か?

いいえ違います。

じゃ、誰?

誰でしょう?

振り返る?

怖い気が…。

心を強く持とう?

…はい。

はい、それじゃ…そーっと振り返って………

 

「なんでアリサもすずかも居んだよ!≪フィールド≫で僕ら以外居なくなったはずだろ!?むしろ≪フィールド≫の意味なくなったよ!!二人とも僕たちの側じゃないよね!?」

 

「吸血鬼だからじゃないかなぁ」

 

「すずか、変わったなぁ…」

 

まさかここまでオープンに吸血鬼の話題を持ち出すようになるとは…これが月村すずかか!

普通に反応されてしまったが、アリサとすずかがなぜか≪フィールド≫内にいる。

あの夜、ピアノから使える魔法について説明を受けたけど、どう考えても魔導師以外が入れる理論じゃなかったはず…。

どこか理論に穴があったか、あるいは二人は特異体質?

確かにすずかは可能性もあるけど、アリサだけはありえない。

結論、時間ねぇしお手上げだから今は考えなくてよくね?

むしろ目撃されない今の状況だけで満足すれば丸く収まらね?

二人に被害が行かないように気を付ければいいだけだし。

 

「………仕方ない、ここでのことは他言無用な?それと、後でお話があります」

 

はい、二人ともいい笑顔。

ちょっと腹立つけど。

いいや、言い聞かせる(・・・・・・)予定だし。

 

「アリサ、ぶっちゃけて悪いけど、君はこの中で一番弱い。だからなるべく僕より後ろに下がっていてほしい。最悪、≪アイギス≫で守ったり、場合によっちゃ抱えて逃げるから。すずか、君は司令塔だ。足元に≪アイギス≫を展開するから、それを足場に安全な高さまで上がってきて。基本僕が餌(文字通りの意味)をやるから、子猫が興奮しすぎてそうとか、飼い主としてのアドバイスをしてほしい」

 

「仕方ないわね」

 

「うん」

 

二人から了承を得て、再び子猫に向き直る。

いつの間にか、顔洗いから毛づくろいに変わっている。

マジ猫の行動予測できぬ。

 

「それでは…そーっと近付きます…」

 

集団心理的なものだろうか?

ピアノが近付いて行くのを、なるべく音を立てないように見守る。

息まで殺す必要はないはずなのに、全員で息を殺している。

僕は辛うじて子猫の手(前足)が届きそうな高さまで、ゆっくり慎重に降りる。

 

ニャァ?

 

あ、気付かれた?

ピアノは子猫と目が合ってしまった。

まずい、この後何が起きるかすごく想像できるぞ?

 

「こっちだ!」

 

僕は想像した事態が現実にならないように、子猫の目の前をぶらぶら走り回る。

 

「あ、フォルテくんダメ!」

 

『エマージェンシー』

 

「へ?」

 

すずかの叫びに、思わず立ち止まった僕が見たものは、視界いっぱいに広がる猫ハンドだった。

 

 

 

◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□

 

 

 

Side フォルテ・L・ブルックリン

 

 

「酷い目にあった…」

 

太陽が傾き、大地を赤く染め上げた頃、帰宅ラッシュ状態の町を横目に、僕たちは人知れず空中を疾走していた。

ピアノの張った小型移動式の≪フィールド≫の効果で、僕たちの姿は誰にも見えない。

正確には、僕がピアノを抱えているので、僕一人で走っているのだけど。

背中にはリュックのNGST-4、両手にはお姫様抱っこのピアノ。

≪アイギス≫の演算も少し慣れてきたのか、NGST-4が勝手に計算してくれている。

 

「あの、義兄さん、大丈夫、ですか…?」

 

「決して大丈夫とは言えないけど、大丈夫だ…」

 

あのあと、巨大子猫(ドルバーというらしい)に捕獲された僕は、全身がベタベタになるほどに舐め倒された。

ピアノが魔法で何とかしてくれなければ、今頃体中ベタベタで空中を全力疾走するという地獄を見たことだろう。

…考えたくもないな。

 

「でも、よかったです。“異物”も取り出せました」

 

“異物”は、僕が餌(文字通りの意味)をやっている間に、ピアノの魔法ですごくあっさりと取り出せた。

精密検査してみないと何とも言えないが、子猫は何の影響もなく元通りに見える。

あ、最低限だけど“異物”は危険物であることと、絶対に関わらないでほしいこっち(・・・)の案件であることだけは言ってある。

当然これだけだと不安だから、後で時間を取って言い聞かせる(・・・・・・)つもり。

 

「でもまさか…想定してなかったわけじゃないけど、“Ⅹ”か………」

 

子猫から出てきた“異物”に書かれた数字は“Ⅹ”。

ピアノの“Ⅳ”、黒マリモの“Ⅶ”、子猫の“Ⅹ”。

つまり、最低でもあと7個の“異物”が存在していて、そのどれもこれもが核爆弾と同等か、それ以上のエネルギー量を持っている。

町中に、見かけじゃ誰にもそうだとはわからない核爆弾が7個転がってると言えば、僕の全力疾走するほどの焦りも理解してもらえるだろうか?

しかも、“異物”は暴走する。

起動シークエンスは不明。

子猫でも起動できるらしい。

しかも願望器とか狂った設定つき。

破滅願望者が拾ったら、どう考えても日本終了のお知らせじゃね?

 

「でも、この先に1個はあって、残り6個になります」

 

「それ、“Ⅹ”が最大数っていう前提の上でな?」

 

ぶっちゃけ100個とかあっても不思議じゃない。

だって異世界の技術とか物量ってわからないし。

でもこの先に1個はあるので、また何かしらのヒントにはなるだろう。

 

「この先の“異物”の反応…少し前から感じられなくなっています」

 

「…休眠状態に入ったかな?」

 

勤めておチャラけた感じに言う。

残念ながら、空回ったようだ。

多分ピアノも想定はしているだろう。

自然な休眠でなく、誰かが意図的に休眠させた(・・・・・・・・・・・・)可能性がある。

その場合、誰が(・・)というのが問題なんじゃない。

誰かが関与している(・・・・・・・・・)ということが、そもそも問題なのだ。

相手がベルカだろうが、他の世界だろうが、この世界の人間だろうが、話の分かる相手とは限らないし、どう考えても揉め事の種になる“異物”が中心にいるのだ。

最悪、僕をこの世界のために切り捨てることも、視野に入れないといけないな。

 

「でも………道端…月村邸…この先っていうと神社の建ってる山か?それとも神社そのもの?」

 

ピアノの“Ⅳ”は道端に落ちていた。

黒マリモの“Ⅶ”は勝手に来たので、どこにあったか不明。

子猫の“Ⅹ”は言わずもがな月村邸の敷地内。

この先にあるはずの“異物”はおそらく神社か、あるいは神社のある山のどこか。

すずかが言うには、あの子猫はまだ拾ったばかりらしく、当然子猫に持ち物などない。

敷地の外へは出られないはずなので、外から子猫や他の猫が持ってきた可能性は低いと見ていいだろう。

他の可能性だと、鳥が持ってきて落したとかは………いや、僕はただ否定したいだけだ。

すずかが関わっている可能性を、否定したいだけなんだ。

月村邸のセキュリティーは決して低くない。

そんな中に、わざわざ“異物”を落とすだろうか?

“異物”の持ち主、あるいはばら撒いた誰かの意図が見えない。

だがもし、“異物”が月村の関係物(・・・・・・)なら、敷地内にある理由がある程度説明できる。

僕はもしも万が一、すずかの与り知らぬところで、彼女の一族が関与していたらと考えるのが恐ろしいのだ。

正直、親友になった経緯や、その後のゴタゴタもどうでもいい。

あまり認めたくはないけど、僕は彼女たちに救われたのだから。

 

「あれか…?」

 

名前も知らない神社のある山。

そこが宗教的意図のある場所だったりするかもしれないし、避難所的な意図で建てられたものかもしれない。

だが、当然僕たちの世代にとってはただの遊び場でしかなく、山の名前も“神社山”などと適当な名前を付けられているほどだ。

正式名称など、小学生が気にするはずもない。

僕はアリサに一度引っ張って来られたことがあるから、存在だけ知っているのだが。

神社の境内の影になっているところに僕たちは降りた。

念のため、周りに人影がないのは確認している。

 

「だいぶ日も傾いてきた…急ぐぞ」

 

「はい」

 

『イエス、マイロード』

 

相も変わらず無表情なピアノと、いつも通りのNGST-4が、今はとても心強い。

いや、僕が勝手に不安になっているだけか。

降りるときに見たが、境内は特に異常がなかったようだ。

そうなると山の方に入っていくことになるが、これがまた厄介だ。

もうすぐ日が暮れる。

日の暮れた真っ暗な山の中で、たった一つの小石大の“異物”を見つけ出すのは至難の業だと言っていい。

しかも、ここにあった“異物”は先程からピアノのセンサーに引っかからない。

…もうここに無い、とは考えない。

考えたくない。

 

「手分けして探すのが定石だけど、もうすぐ暗くなる。迷子の方が困るから一緒に探そう」

 

「はい…!」

 

僕はピアノの手を取って、真っ暗な山道に足を踏み入れた。

 

………

………………

………………………………

 

行けども行けども、何の手がかりもない。

僕たちは、最悪ここに誰かいる可能性も考えて、なるべく何もしゃべらずに、黙々と“異物”の捜索を続けていた。

 

「…」

 

「…」

 

『…』

 

一応光物だから、落し物という枠の中では比較的探しやすいもののはずだ。

鍵や硬貨だと、見つけるどころか諦める確率の方が高いし。

 

「…………」

 

「…………」

 

『…………』

 

パキッ

 

「…………………」

 

『…………………』

 

「…………………ごめん」

 

小枝を踏んでしまった。

焦り過ぎているかもしれない。

普段歩く分には、モノを踏まないように注意しているのに。

そうだ、気分を入れ替えよう。

考えも凝り固まっている。

首をゆっくり回してリラックスする。

そして、あちこち見まわすうちに、とんでもない見落としがあることに気付いたのだ。

 

「…なあ、なんか焦臭くないか?」

 

「…?」

 

『前方12m地点に不自然な熱源多数。生命体の大きさや熱量ではありません』

 

「………行こう」

 

「はい」

 

ピアノの手をしっかり握り直して、慎重に足を進める。

山の中と言っても、ここは滅多に人が来なさそうな道だ。

そして、この焦げ臭さ。

 

「これは…」

 

さっきの場所から12m地点。

相変わらずただの森だが、不自然なことに数本の木が黒く焦げている。

一部はなにか、砲弾ででも貫いたような穴まである。

もしも、今日が曇りだったとしたら、落雷だと楽観的に見ることができただろうが、残念ながら快晴だ。

 

「厄介事の予感だ…」

 

思わず小声で呟いてしまった。

この状況、明らかに人工的に作られたものだ。

なぜかと言えば、穴が開いた木に注目すればわかることだ。

 

「NGST-4、僕の気のせいの可能性も考慮したいから一応聞くぞ?あの木の穴、全部同じ角度から撃ち込まれてるよな(・・・・・・・・・・・・・・・)?」

 

『現在発見しているものに限定されますが、全ての穴の角度が、ここから東北に26m、上空に7mの空間で集束されます』

 

NGST-4も同意見のようだ。

穴の開き方は言うまでもなく不自然だが、なによりこの穴の角度が、ほぼ一定角を指し示すのだ。

ここから東北に26m、上空に7mの空間。

そこからこの地点に向かって隊列でも組み、数人がかりで一斉射撃でもすれば、こんな形にもなるだろう。

銃にしては、木が焦げすぎな気がする。

爆発物にしては、被害が小さすぎる。

ではなにか?

火にしては延焼していない。

消火したような形跡もない。

瞬間的に高熱に炙られたような…そう例えば、落雷のように瞬間的に高熱が通り過ぎたら、おそらくこんな状態になるだろう。

………≪バルカ≫か?

いや、≪バルカ≫はまだ放電までしかできない。

ガーディアンズの全員が習得できているわけでもないし、一番上手いはずの僕でもNGST-4の助けがあってようやく5mほど飛ばせるだけだ。

発射したと思われる空間から、ここまでの直線距離はおよそ27m。

現実的な数字じゃない。

 

「あの…どういうことでしょう?」

 

まだわかっていないらしいピアノが首を傾げている。

 

「つまり、空からここに電撃系攻撃があったってことだ」

 

「―――!?」

 

ピアノは無表情ながらも驚いているようだ。

当然だろう、最悪の可能性がこれで証明されたのだから。

 

「ここで誰かが電撃系の魔法を使った。そして、さっきから感じられない“異物”の気配…ここから導き出される答えは?」

 

「誰かが、どこかの魔導師が、ここで戦闘を行った?それで“異物”を持って行った…?」

 

「正解」

 

おそらく何者かは魔導師だろう。

魔導師は“異物”と戦闘になり、そしておそらく勝利した。

それは、“異物”の反応が消えたことが証明している。

そこから導き出されること、それは、ここで戦闘した魔導師と戦闘になる可能性があるということ。

平和的に済む可能性は低いだろう。

僕個人としては、なるべく穏便に済ませたいんだけどな。

 

『ここから西南西に55mの地点に生体反応、人間です』

 

僕が思考の海に沈んでいると、NGST-4が突然声を上げた。

 

「ピアノはここに…いや、先に帰っていてくれ。場合によっては降伏してでも生きる道を模索して」

 

スイッチを切り替える。

ピアノは心配そうだったが、戦闘能力の低い自分では足手まといになると思ったのか、どこか辛そうに離れていった。

ごめん、と心の中で謝る。

この先にいる誰かが迷い込んだ子供や、焦げ臭いのに気付いて様子を見に来た大人とかなら、それはまだいい。

問題は魔導師の場合、ここは戦場になるだろうということだ。

そして、それはおそらく避けられない。

最低でも27mの射程を持つ魔導師だ。

勝てないまでも苦戦は確実。

ピアノは帰宅できれば可能性がある。

ブルックリン家、アームストロング家はブリタニア皇族とそれなりの繋がりもある。

両家に加えて、ブリタニア皇族まで敵に回してピアノを手に入れるのは、さぞ骨が折れることだろう。

僕個人の繋がりを持つ皇族は、割と身内贔屓だから、僕が死んだと言えば絶対報復に出る。

それこそ、英国軍を動かし、ガーディアンズにも働きかけるだろう。

いや、ガーディアンズは勝手に報復を始めるか?

あの主席指揮官(馬鹿)、普段は冷静で理想的な指導者なのに、仲間のことになると途端に熱くなるからな。

どちらにしても、最低限の事情を知る伯父さんが生きている以上、ピアノの安全は確約されたも同じだ…帰り着ければ。

そのためにも、僕はなんとしても時間を稼がなくてはいけない。

これが今回の最低勝利条件。

最上は相手魔導師と和解。

次に相手に悟られずに情報だけ収集して素早く逃げる、かな?

 

「……――――は……………―――のは、しっかり!」

 

誰かの声が聞こえてきた。

声からの性別判断は不可能。

中性的な声だ。

どうやら、誰かに声を掛けているらしい。

誰かは怪我でもしているのか?

 

「NGST-4、何人だ?」

 

『反応は一人です。しかし、周囲に野生の小動物の反応があり、100%とは言えません』

 

「十分だ」

 

僕は小声で確認した後、更に足を進める。

 

「…―――のは……ぅしよう?治癒魔法が使えたら…」

 

大分声が近付いてきた。

相変わらず、声からの性別判断は不可能。

ただ、それなりに幼い声だ。

年齢は僕と同じか、あるいはその前後くらい。

そして、“治癒魔法”という言葉から、無関係の他人である可能性を除外。

極めて敵性確率の高いアンノーンに認識を変更。

接近を続行する。

 

「誰か助けを呼ぶ?駄目だ、この姿で人を呼んでも信じてもらえない…どうしたら…」

 

茂みに隠れて、そっと様子を窺う。

最初に見えたのは白。

白い塊がある。

次に目についたのは赤。

白い塊のところどころに赤い色がついている。

次に金色。

とても小さい何かの色。

それは唐突に向きを変えた。

 

「あなたは!?いや、今はそれどころじゃない!お願いします!彼女を助けてください!彼女は怪我をしているんです!」

 

それが何かを言っていたが、僕は聞こえなかった。

僕は…その白を知っていた。

それが何なのか、僕は知っていたのだ。

そしてようやく理解する。

僕は今、とてつもないものに足を突っ込んでいるという自覚と共に、目の前に事態を理解する。

なぜならそれは、つい昼過ぎにも会ったのだから。

 

「なのは…?」

 

その白の名は、高町なのは。

そこにあったのは、僕の親友である少女の、血まみれで倒れ伏した姿だった。

 

 

 




はい、速攻で本編に合流しちゃいました。
白い魔王に何があったのか、金色の何かとはなんなのか…(棒)
日常回というか、戦闘回というか…すごく微妙な回でした!
次回から、正式に後の魔王とお話します!
『O☆HA☆NA☆SHI』じゃありません…よ?多分ね?
やっぱり人物紹介が一番読まれてるんだけど…なんで?おかしくないよね??

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