魔法少女リリカルなのは~月光の鎮魂歌~   作:心は永遠の中学二年生

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言い忘れていましたが、ピアノちゃんのパーティー加入により…
生命エネルギー→魔力
第二の心臓→リンカーコア
と、各種名称が変更されました!
ところで、小説書いてて思う………無印って、こんなにツッコミどころ多かったんだ…。
本編に合流した終わりが見えないんだが!?(涙)



第九話 無印編 始まりと不屈と

Side 高町なのは

 

温かい。

なんだか頭がボーっとする。

私は今、真っ白などこかに浮かんでいる。

体がフワフワして、どこまでも飛んで行ってしまえそう。

でも…温かくてフワフワしてるけど、私の心の中はとっても冷たかった。

 

ごめんね、負けちゃった…。

 

別に天狗になっていたつもりはない。

でも心のどこかで、ユーノくんを襲っていた化け物に勝てたから…なんて思っていたのかもしれない。

ううん、かもしれないなんて不確かなものじゃなくて、間違いなく慢心していたんだと思う。

お父さんやお兄ちゃんがいつも言っていたことだ。

油断こそが戦場最大の敵だって。

でも私のは、油断どころか慢心。

別に二人から剣道を習っていたわけでもないけど、それでもあれだけ近くでいつも聞いていて、私はそれを生かせなかった。

 

ごめんなさい…。

 

声が出ていないのは、なんとなくわかる。

それでも私は謝り続ける。

心が重い。

心が苦しい。

心が痛い。

心が冷たい。

でも私は泣かない。

泣いちゃいけない。

だって私は、いい子じゃないといけないから。

いい子は、泣いちゃいけないものだから。

 

『こんな時までいい子やって、どうする気だよ?』

 

どこかから…とっても遠くて、すっごく近いどこかから…誰かの声が聞こえた気がした。

違う…この声は聞いたことがある。

この言葉は去年、私がドジして指を怪我したときのだ。

 

『つまんねー意地張ってる暇があったら、子供らしく玩具売り場であれ買ってこれ買ってって泣き喚いてダダこねてろ、よっぽど実りあるぞ?』

 

懐かしいなぁ。

それは実りがあるの?って思わず聞き返しちゃったっけ。

 

『そんなつまんねー顔して意地張ってるよりは』

 

思わず笑っちゃった。

 

『頭も打ったのか?』

 

大きなお世話なの。

でも当然だよね、私たち子供だもん。

 

『ま、痛かったり辛かったら泣いて、嬉しかったり楽しけりゃ笑えばいいんじゃね?ということで…今この状況のどこが嬉しかったり楽しかったりしたんだ?』

 

うん、この後思いっきりほっぺた引っ張ったよね。

段々腹立ってきた。

すずかちゃんが止めてくれたけど、結構痛かったんだよ?

 

あ…。

 

真っ白だった視界が少しだけ開けて、そこには彼がいた。

私の手を引いている彼。

 

そうだ、こんな顔してたんだっけ。

 

面倒臭そうな、どこか申し訳なさそうな、努めて明るくしているような、どこか虚ろな、そんな顔。

それを見て私は気付いたんだ。

同じだって。

私と同じ顔してる。

それは仮面。

本当は構ってほしい。

本当はおはようって笑いかけてほしい。

本当はいってらっしゃいって言ってほしい。

本当は一緒に遊んでほしい。

本当は車に気を付けつように注意してほしい。

本当は迎えに来てほしい。

本当はみんなでご飯を食べたい。

本当は背中を流してあげたい。

本当は寝るときに絵本を読んでほしい。

本当は辛い。

本当は泣きたい。

本当は笑っていたくなんてない。

本当は痛い。

本当は悲しい。

本当は苦しい。

本当は…一人は、嫌だ…。

本当は……助けてほしい…………。

 

でも、私が我が儘を言えばみんなが困る。

今は大変な時だから、家族みんなが頑張らないといけない時だから。

だから私は、一人でいた。

ずっとずっと、一人ぼっちでいた。

一人で起きて幼稚園に行って、一人で公園に行って遊んで、一人で帰ってきて、一人でご飯を温めて、一人で食べて、一人でお風呂に入って、一人でお布団で寝て、そしてまた、一人ぼっちの朝が来る。

お友達はいた。

一人とは言わなかったのかもしれない。

でも…それでも私は苦しかった。

言えば、構ってもらえたかもしれない。

うちの家族はみんな優しいから、どれだけ疲れていても私の我が儘を叶えようとしてしまう。

我が儘かもしれないけど、それも嫌だ。

みんなに迷惑を掛けたくない。

みんなに面倒臭いって思われたくない。

みんなに、嫌われたくない…。

 

『お前、やせ我慢上手過ぎ』

 

えっ…?

 

『痛いの我慢する必要ないだろ?さっきのはボール遊びやってたアホ共が悪い』

 

あぁ…さっきの続きか。

フォルテくんって、まるで私の心の中でも読んでるみたい。

 

『お前の友達って、痛いのを痛いって言う程度であっさり切れる程度のもんなの?なぁ…えっと、あー…………あれだ!鈴鹿!どう思う?』

 

『どう思うって…そんなあっさり切れたりしないよ。それと…私はすずかだよっ、鈴鹿じゃないよっ!合ってるけど、それ違うからね!?』

 

『合ってるじゃん?』

 

『違うからね!?月村だよ?月村すずかだよ!?』

 

『そっか、保健室前では静かにな?』

 

『ご、ごめんなs…ってフォルテくんのせいだよね?』

 

………この後のことも覚えてる。

ちょうど保健の先生がいなくて、フォルテくんが職員室に先生呼びに行ってくれた。

本当に大げさだったけど、突き指は気を付けないとだめって先生にも言われた。

 

また真っ白になる。

さっきより、なんだか体が軽くなった気がした。

 

『前を、向きなさい』

 

またどこかから、声が聞こえる。

これは、いつだったかな…?

ううん、そもそも、誰だったのかな…?

知らないようで知っている。

知っているようで知らない、どこかの誰かの声。

 

『俯いていたら、何にも見えない』

 

何にも、見えない…。

 

『足元には何にもない。少なくとも、君が求めているものは、足元に落ちているものではないだろう?』

 

足元には、落ちていない…。

 

『それは君自身が、自分の足で取りに行くものではないか?』

 

取りに、行く。

 

『さぁ、前を向いて。安心していい。答えは大抵の場合、目の前にある、とても簡単で、単純なものだ』

 

簡単で単純なもの。

 

それが何かはわからない。

でも多分、それはここにいてわかるものじゃない。

少しずつ、明るくなっていく。

消える。

誰かの声が、気配が。

もう何もない。

私はどこかもわからないところから、小さく一歩、足を踏み出した。

 

「おはようなのは、目は覚めた?」

 

 

 

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Side フォルテ・L・ブルックリン

 

 

フォルテ・L・ブルックリンの朝は意外と早い。

まだ太陽が昇る前には起き出して、参考書を詰めたリュックを背負ってランニングに出る。

参考書はちょうどいい重りになる上に、参考書を読みながら体を鍛えられるので一石二鳥、いや、ラジオを聞きながらなので一石三鳥になるのだ。

帰ってきてからは、短時間だけ研究に入る。

研究と言っても、朝から本格的な実験をやるわけではない。

走っている間に思い付いたアイディアを書き出したり、前日の研究成果をおさらいして矛盾点や問題点を洗い出す。

これが中々重要な時間だったりする。

前日に苦労して組み上げた術式を翌朝見返すと、とんでもない勘違いの上に成り立っていたことがあったのだ。

それらを書き出して、一通り頭に詰め込んだら、朝食の準備に取り掛かる。

下ごしらえは前日のうちに済ませてあり、あとは軽く焼いたりするだけだ。

その間も彼は思考を止めない。

否。

彼が思考を止めるのは睡眠時間だけだ。

授業中も、休み時間も、遊んでいるときも、食事していても、入浴中でも思考は止めない。

原因は彼の中の、ある考えによるものだ。

 

僕の生涯を全て使っても、魔法体系の基礎は完成しない可能性がある。

 

それは、一種の脅迫概念と言ってもいいだろう。

彼が今現在研究を続けている新たな魔法体系は、間違いなく地球に生まれた魔導師たちの未来を守る上で必要不可欠なものだ。

そして彼は、“守る”という言葉に一際思い入れがある。

彼の仲間…後に“魔法族”と呼ばれる存在の未来の為に、彼は魔法体系の基礎だけはなにがなんでも存命中に完成させたいと考えている。

しかし、何事にも例外はある。

たとえどれだけ冷静を心掛けて、どれだけ思考を重ね続けようとも、彼はまだ8歳の少年だ。

一つの方向に集中して思考し続けられない瞬間というものは、厳然と存在している。

それは突発的な事件に直面した場合しかり、突然の親友の負傷しかりである。

 

 

 

血塗れのなのはを拾った夜、僕は眠ることができなかった。

正確には、寝ずに看病を続けていたというわけなのだが。

人語を話す謎の珍獣、ユーノくんの魔法治療の甲斐あってか、なのははすぐに治った。

出血が派手だっただけで、傷そのものは浅かったようだ。

ただ、外傷は消えても出血や疲労が祟って、その晩なのはは目を覚まさなかった。

最悪の場合に備えて、アリサにアリバイ工作の協力を依頼して正解だった。

なのははユーノくんの散歩のあと、アリサの家でお泊りしたことになっている。

治療の最中、ユーノくんから今回の件のあらましを聞いた。

 

とある世界の遺跡からジュエルシード、僕たちが“異物”と呼んでいた石が発掘された。

それが過去の遺失物(ロストロギア)と呼ばれる、地球で言うところのアトランティスの超兵器などの危険なオーパーツであることが判明。

“管理局”なる過去の遺失物(ロストロギア)を管理する組織に引き渡そうとするも、輸送中に事故が起き、ジュエルシードは地球に落ちてしまった…ということらしい。

ユーノくんはジュエルシードの発掘者の一人で、なぜか、本当にな・ぜ・か、事故に責任を感じ、単身地球へジュエルシードの回収へやってきた。

しかし、ジュエルシードのいくつかは既に起動しており、ジュエルシードの異相体、僕が黒マリモと呼んでいたものと戦闘中にユーノくんは負傷、なのはに拾われ、魔導師として絶大な才能を持つなのはにジュエルシード回収の手伝いを求めた。

ここまでが前提。

そして昨日、ジュエルシードの捜索を行っていたなのはが神社でその気配を察知。

しかし、ジュエルシードを封印しようとしたところ、謎の黒い魔導師の襲撃を受けて負傷。

黒い魔導師はそのままジュエルシードを回収して逃亡。

僕がなのはを発見して現在に至る。

 

「…これ、どこのSF?」

 

当然の反応だと思う。

まあ、自分も人のことは確かに言えないが、それでも異世界や古代の超兵器よりはマシなはずだ。

というか、ベルカどこ行った?

異世界の中心について聞くと、ミッドチルダなんて知らない単語が出てきた。

なんだそれ?

だからと言って、ベルカという単語を使って質問するわけにもいかない。

念のために、ピアノのことを伏せているのだ。

そもそも、こっちから積極的に話す必要なんて今のところ、本当に欠片もない。

君主危うきに近寄らず…というには既に完全な危険地帯にいる気がしないでもないが、わざわざ確実に落ちるとわかっている橋を全力走破する気には到底なれない。

 

いつもはランニングに出る時間になったが、今日はパスした。

ユーノくんから聞いたことを整理したかったし、なにより、なのはを一人にできなかった。

怪我自体はもう治ったと言っていいけど、目を覚ますまで安心はできない。

ユーノくんも深夜遅くまで起きていたが、さすがに貫徹はきついのか、今はタオルを敷き詰めた机で丸くなっている。

まあ、フェレットはどう見ても体力的に余裕がありそうな種族じゃないし、戦闘になったらしいから疲れているだろう。

 

太陽が昇ってきた。

眩しい。

しかし、そう感じたのは僕だけではなかったらしい。

 

「…ぅぅ、ん………」

 

「なのはっ…!?」

 

…いや、違う。

これは僕らしくない。

いつもの僕はこう、もうちょっと余裕な姿勢でいる。

アリサもすずかも、もちろんなのはも、僕を一つ上に近所のお兄さんのようにちょっとした心のよりどころにしている。

本音のところを言うなれば、正直面倒だし億劫だ。

だがだからと言って、彼女たちが抱いている幻想をあっさり打ち砕くべきじゃない。

意外と彼女たちは、色々と背負いすぎているようだし。

だから僕は仮面を被る。

これまで通り、これからも。

 

「おはようなのは、目は覚めた?」

 

 

 

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Side ピアノ・F・ブルックリン

 

 

怪我が完治して目を覚ましたなのはさんと、寝ないで看病を続けていた義兄さんは、学校に行ってしまいました。

人に言えない理由では、学校を休めないそうです。

ちょっぴり、寂しいです。

 

「どうかしたの?」

 

「いいえ、なんでも、ありません…」

 

彼の名前は、ユーノくんというそうです。

人の言葉を話す動物です。

義兄さんがくれた、動物図鑑まじか☆マジデカ小動物篇第一巻に200ページくらいかけて書いていたフェレットという生き物とそっくりです。

…不思議な生き物だと思いますが、私も他人の事は言えないので何も言いません。

詳しい話は、放課後に全員で集まってするということです。

それまでは、ただの戦災孤児ということにしておくように言われています。

ユーノくんにもそう伝えた上で、昔の記憶がないということにしてあるそうです。

私を守ってくれるためにそう説明したんだと思います。

…ちょっと、うれしいです。

 

「あの…ユーノくん、あなたは寂しくないですか…?」

 

私は何を聞いているのでしょう?

寂しいわけありません。

ユーノくんは故郷に家族がいます。

飼い主のなのはさんもいます。

寂しいはず、ありません。

 

「…寂しくはない、かな?」

 

やっぱりです。

ユーノくんは寂しくなんてありません。

私が勝手に寂しがっているだけです。

 

「だって、今ピアノちゃんがいるからね」

 

「は、い…?」

 

何を言っているのでしょう?

私がいるから?

家族や飼い主のなのはさんではなく?

 

「僕だって、一人ぼっちは寂しいよ。でも、今はピアノちゃんがここにいるじゃないか」

 

そう言ってユーノくんは笑います。

ごく自然に、私の寂しさを流してしまうように。

なんででしょう?

さっきより寂しくありません。

 

「…訂正を、要求します」

 

「え…?」

 

ユーノくんが何か驚いたような顔をしていますが、私にとっては大事なことです。

 

「僕だって…と言いましたが、私は寂しいなんて、言っていません」

 

ユーノくんが苦笑いしているのがなぜかちょっぴり腹が立ちますが、それはまあ、いいです。

それより、せっかく一人じゃないんです。

一人ではできないことをしましょう。

差し当たって、この間義兄さんがくれたオロセ?セオロ?とかいうもので遊ぶとしましょう。

 

 

 

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Side フォルテ・L・ブルックリン

 

 

放課後、追求してこなかったアリサに心の中で感謝して、一端なのはの家に寄ってから自宅へ急ぐ。

さすがに外泊した翌日に家にも帰らず遊びに行くなんて、確実なアウトフラグだからだ。

最低でも、僕と伯父さんの関係だったら死亡フラグだ。

あの筋肉な肉体から放たれる殺人パンチは、普通に電離層を突破可能な威力なので、人間如きで耐えられるはずがない。

ユーノくんと二人っきりにしたピアノのことも心配だ。

別にユーノくんを疑っている訳ではないけど、ピアノはまだいろいろ常識を知らないから不安なのだ。

だが、そんな不安はあっさり裏切られた。

帰宅した僕たちが見たものは、オセロ盤の前で白熱した試合を続けるピアノとユーノくんの姿だった。

 

「ピアノちゃん、僕の勝ちだ…!」

 

「いいえ、まだです」

 

「待つだぁぁぁぁっ!!どこを打っている!?打て!早く違うところを打て!!」

 

「おかしなテンションで言っても、私がここに打つことは、変わりません」

 

「バナナ!粉バナナ!」

 

どこかで聞いたことがある新世界の神な会話をしてらっしゃるが、忘れよう。

はい、このシーンはカットですね。

なんだか、心配していたのが馬鹿みたいだ。

ともかくオセロの終わりを待って、ようやく話が始められた…と言っても、昨日ユーノくんからされた話と大差はない。

おさらいに近いものだ。

ピアノも同席させているが、「彼女も関係者だ」という一言で封殺。

嘘は言ってない。

遺跡から発掘された過去の遺失物(ロストロギア)、ジュエルシード、なのはとユーノくんの出会い、レイジングハート、そして黒い魔導師。

 

「なのは…君、よく生きてたね?普通無理だよ?ぽっと出の民間人が訓練なしで実戦投入とか、ありえないよ?生き残るだけでも奇跡で、勝つとかありえないからね?君はどこの化け物ですか?」

 

「にゃ!?ひ、酷い…」

 

「いや欠片も酷くないから…レイジングハートさんの能力かもしれないけど、正気の沙汰じゃない」

 

『私はマスターをサポートしただけです』

 

「謙虚だね…」

 

レイジングハートの補正込みでも、どう考えてもおかしい。

例えば、伝説の武将・呂布が子供のころから最強だったかと言えば違うだろう。

子供の呂布が、大の大人に勝てるかと言えば…まあ、民間人が相手ならという但し書きつきで勝てたかもしれない。

つまりはそういうことだ。

本当に正規の訓練を受けた軍人を相手にできる子供が、そうそういるわけがない。

魔法というメルヘン補正がかかっているとは言っても、相手も同じものを使うのだから補正なんてあってないようなものだ。

つまり、なのはの純粋な才能というわけだ。

なのはは、運動神経ゼロの、運動音痴という言葉が霞むレベルの非才…いや才能が逆方向に進んでいるんじゃないかと思うくらい酷いのだ。

 

「これが、高町か…」

 

「え?私は高町だけど、まさかまた忘れてたの!?」

 

「違う。でもまさか…目覚めちゃったとはね………いや、気付いてなかったかっていうと、そうでもないけど…」

 

高町なのはの資質、魔導師としての稀代の才能。

それは、欧州を渡り歩いた僕だからわかる、異次元の才能。

欧州で見つけた仲間たちの魔力量の中央値を10とすると、僕が80で、なのはは470となる。

 

ふざけるな、馬鹿げている、冗談ではない。

 

いくら仲間たちの資質のムラがあるとはいえ、大多数は僕の1/8前後、現状最強クラスの首席指揮官や幹部級、上位能力者(イレギュラーズ)と比べても、魔力量だけで見れば間違いなく地球人類最強だろう。

もし戦乱の時代に生まれ、そしてその上で運用を見誤らなければ、なのは一人で世界を統べることも可能な力量だ。

海鳴でなのはの資質を見抜いたとき、何の冗談かと本気で思ったものだ。

 

「気付くって?それと、僕は君達の話をまだ聞いてないんだけど…」

 

「あーごめん、話を戻そう」

 

ユーノくんに促されて、今度は僕たちの方の話をする。

ピアノのことは伏せておくため、すずかの猫のジュエルシードを道端で拾ったことにして話す。

そもそも、すずかたちを関わらせるつもりもない。

新人類かもしれない出自、欧州での仲間探し、設立したガーディアンズ、組み上げた術式、開発したNGST-4、拾った青い石、黒マリモ、神社へ向かったこと。

 

「待って!それって、君がこの世界の始まりの魔導師ってことなのかい!?」

 

とても驚いた様子のユーノくんを見ながら、ピアノも同じ反応していたことをのんびり思い出していた。

気持ちはわかるけど、そんな反応されるとこっちはなんというか、こそばゆいぞ?

 

「ユーノくん、始まりの魔導師って?」

 

なのはの質問に、ユーノくんが興奮しながら説明するのを横目に、僕は思案を重ねる。

 

果たして、このユーノくんという生き物は信用できるかどうか。

 

悪いとは思うが、僕は相手を無条件で信じるほどお人好しじゃない。

身内認定した相手ならともかく、このユーノくんはまだそんな関係じゃない。

ただ、確実なこともある。

ユーノくんは最低でも、組織に所属してはいない。

組織に所属して、ジュエルシードを集めようとしている場合、他者との接触は避けるべきだし、なによりユーノくんの本当の戦闘力がどうであったとしても、現地の民間人に協力を求めるようでは組織人として失格だ。

どんな組織でも、世界一つから小さな石ころを拾ってくる仕事を、ユーノくん一人に任せはしないだろう。

ではユーノくんがここにいる理由は?

ベルカという単語が出てこないことといい、おかしな点は多々あるが、最もしっくりくる理由が、発掘者としての責任感、あるいは矜持と言い換えてもいいそれだけなのだ。

どれだけ穿った考え方をしてみても、ユーノくんが犯罪者…後ろ暗いことをしているとは考えられない。

………待てよ?遺跡から発掘って言っていたよな?

ユーノくんがジュエルシードを発掘した遺跡があったころと、今現在の世界情勢が変わっているとしたら?

それこそ、ベルカはミッドチルダに改名しているかもしれない。

つまり、ジュエルシードの中から出てきたピアノの言葉は、ユーノくんのジュエルシードを発掘した遺跡が遺跡になる前の情報で、それは考古学的にはともかく、今現在の世界情勢を推察する情報としての価値は限りなく失われる。

つまり、ユーノくんの言っていることはかなりの信憑性を持つことになる。

…これから次第ではあるけど、ある程度なら信じてみてもいいかもしれない。

 

「フォルテくんって、すごい人だったの!?」

 

「え…?あ、あぁうん、そうだね…」

 

あ、しまった…話しをほとんど聞いてなかった。

でもこの反応…多分、始まりの魔導師って言葉の意味を説明されたっぽいな。

 

「あの…ユーノくん、質問があります」

 

「なんだい?」

 

ピアノがおずおずと手を挙げる。

かなり消極的な性格をしているピアノとしては珍しい行動だ。

いや当然か。

ジュエルシード本人と言っても過言じゃないもんな、ピアノって。

 

「ジュエルシードについて、ですが…何か判明してること、なんて、ありませんか…?」

 

「判明していること?そうだな…遺跡にはかつて願望器として作られたって書いてあったけど、失敗したらしい。理由は書いてなかったよ…ひょっとしたら、あの後も継続している遺跡調査で何か出てきてるかもしれないけど…」

 

「そう、ですか…」

 

明らかに気落ちしたピアノ。

ピアノの言わんとしていることはわかる。

ピアノには記憶がない。

だからピアノの土台は僕とNGST-4のいた研究室から始まった、たった数日間の記憶だ。

…守らないと。

僕が守らないと…。

もう僕は、××を××たくない…×××××に××××××から………。

 

「…僕の方で調べた限りだと、まずジュエルシードは自己修復機能があるらしいこと、内包するエネルギー量が最低でも核爆弾と同等…いや、確実にそれ以上であるということ、起動方法もわからないから、誰が起動してもおかしくない…くらいかな?そこらへんはどうだ、ユーノくんに挨拶の機会を飛ばされてしまったNGST-4?」

 

『私の呼びかけにその前置きは不必要です。問題ないと思われます。付け加えるならば、未確認黒色ゲル状生物には通常の物理兵器での攻撃がほとんど効かず、魔法攻撃が現状最も有効であるということが挙げられます』

 

「…NGST-4、確かに僕の黒マリモって呼び方も悪かったが、未確認黒色ゲル状生物って覚えにくい。ユーノくんがせっかく“異相体”なんて正式名称を教えてくれたんだから、そっちで呼んでくれ…覚えにくいから」

 

『イエス、マイロード』

 

僕の隣に置いてあったNGST-4が突然声を上げたことに二人は驚き、ユーノくんは自分のせいで自己紹介を邪魔してしまったことに気付いて謝罪した。

もっとも、NGST-4は気にすることもなく、『問題ありません』と言ったのだが、それが素っ気なく聞こえたらしく、余計にユーノくんを困らせていた。

 

「さて、本題に入ろうか?」

 

こちらの真剣な空気を読み取ったのか、居住まいを正す二人。

ピアノは相変わらず無表情だが、若干不安そうな気配を感じる。

 

「まず一つ、ユーノくん、ジュエルシードといったね?それは何個ある?」

 

「ジュエルシードは合計21個で、全てこの世界の、この地域に落ちたはずです」

 

「…いや、敬語じゃなくてもかまわないよ?ユーノくんが1個、なのはが3個、僕が2個、黒い魔導師が最低1個…残りが最大で14個ってことかな?」

 

「そうです」

 

「では…ジュエルシードが万が一発見できない場合は?」

 

「時間がどのくらいかかるかはわかりませんが、“管理局”にジュエルシードの提出の話を通してあるので、そう遠くなく彼らが回収に来ることになります。彼らはその道のスペシャリストですから、見つからないということは…」

 

「そうか…じゃあ、この世界の人間が保有していた場合は?」

 

「頭を下げてお願いするか“管理局”が処理することになるかと…」

 

「なるほど、それで君たちは…いや、君はどうする、なのは?さっきも言ったけど、なのはが初陣を生き残ったのは偶然だと思うし、黒い魔導師が次も見逃してくれるとは限らないが…」

 

なのはの表情が目に見えて曇る。

いや、仕方がないことだ。

自分が命のやり取りをするような場所にいたことを自覚したのだから。

本当は戦場に立つ前にその手の覚悟はすべきだし、初陣で死の恐怖と戦場の空気を感じて、生き残ったという慢心を戒める上官や、退役を勧める同期が本来なら必要なのだ、軍隊ならばそれがある。

だが、なのはは民間人であり、訓練校に行ったわけでも、勝負の世界にいたわけでもない。

あの家(・・・)にいて、よくまあまともに育ったものだと余計なことを考えてしまう。

 

「念のために言う。なのは、これ以上は………死ぬよ」

 

「――――っ!?」

 

最低だと思う。

僕は最低の偽善者だ。

そんなことは知っている、知っているのに…。

ったく、痛いなぁー…。

 

「君がもしも、この街の平和のために…とか、自分しかいない…とか言うなら、それは問題ないよ。これでも僕は、ユーノくんの言うところの始まりの魔導師だ。ジュエルシードをある程度研究できるくらいには技術があるし、戦闘技術も多少は実家で学んだ。これ以上なのはが命を懸ける必要は、ない」

 

僕は心を鬼にして、なのはに言い含めるように告げる。

それはもう必要ないと。

それは危険だと。

暗に問う。

代わりがいるのに命を懸けてまで戦う理由があるのかと。

そしてなのはは気付かない。

それは暗に、僕には代わりがいても戦う理由があると断言していることに。

卑怯でいい。

罵ってくれてもいい。

それでも、なのはが戦場から遠ざかってくれるなら、そのほうがいい。

 

「なのは………君は一体どうしたい?」

 

「………………」

 

………答えられない、か。

いや、仕方のないことだろう。

まだ小学三年生の女の子に、命のやり取りをする戦場に行くかと問われて即答できるはずもないのだから。

僕がなのはから視線を外そうとした瞬間、なのはは顔を上げた。

そしてその顔は、残念なことに、決意に満ちたものだった。

 

「私は………あの子とお話がしたい」

 

「話?」

 

少し想定外な言葉だ。

それどころか、ここで答えが返ってき事が、既に驚愕に値する。

 

「なんでジュエルシードを集めてるの、とか…なんでそんなに悲しそうな目をしてるの、とか…」

 

「…それに答えが返ってくる可能性は「わかってる!でも、何にもわからないまま喧嘩になっちゃうのは嫌だ!」

 

僕の言葉を遮り、なのはははっきり断言する。

それは多分、高町なのはという少女の中にある根っこの部分。

矜持と言われるそれ。

絶対に引けない、譲れない一線。

 

「…たったそれだけで、命のやり取りをする戦場に立つ気か?」

 

「それだけじゃない…それに死なないし、死なせないから!」

 

「具体的にはどうする気?」

 

「どうするかなんて、まだわからないけど…それでも、力を合わせれば…!」

 

「それはウィットに富んだとても面白い冗談かい?日本語は難しいな?力を合わせるとかそれ以前の話だよ?普通に考えて、殺す殺されるの覚悟がない奴が戦場に立ってもただの的だ。それ以前に、目の前に立ってる人間の話をのんびり聞くような奴が、戦場に立つはずがないし、君を撃墜するはずもない」

 

「なんで会ったこともないフォルテくんがそんなこと言えるのっ?」

 

なのはは険しい顔をしているが、正直言って、子供の我が儘にしか見えない。

いや、現に子供の我が儘だろう。

話し合いですべてが解決できると、まだ信仰しているのだろうか?

 

「なのは、そんな幻想捨ててしまえ」

 

「え…?」

 

「話し合いですべてが解決できるなら、世界はとっくに平和になっている。でも見ろ…この世界一つですらも完全な平和の時代は来たことがない。半世紀と少し前には世界大戦があったな?あれで推定2000万人以上が死んだことになっているが、誰も話し合いで解決できなかったという証明だ。こう言うと、自称賢人は“あの出来事から学んだ”とか“もう過ちは繰り返さない”とか“我々は進化した”とかくだらない戯言をほざくけど………断言する、何にも変わっていない。十数年前にもイシュバール戦争があったし、ここ数年でもテロの脅威は消えていないし、今も世界の1/5は戦争を続けている」

 

そして、ピアノの出身地ということにしているドラスヴェニアは、500年間内戦が続いていて、形だけの国境線の中で延々意味もない混沌の革命を繰り返している。

さすがにそれは卑怯だと思ったから言わなかったが、それでもなのはの言葉を折るには十分だ。

 

「それでも…」

 

「ん…?」

 

「それでも、何にもわからないまま喧嘩になるなんて…私は、嫌だ」

 

…ここまで言ってなおも折れない、か。

君の中にあるそれは、随分強靭だね。

本当に小学生かって思うよ。

なのはの眩しいほどの決意を前に、僕が返す言葉なんてない。

 

「わかった、そんなに言うなら絶対に死なずに、死なせずにな?」

 

「えっ…あ、うん………って、それだけ!?」

 

「え?不満?」

 

何を期待されてたの?

え、止めてほしかったのか…?

 

「だって、私がいるのは反対だって…!」

 

「…………………………………………………言った?」

 

言ってないよな?

 

「言って、ないね…」

 

「だろ?」

 

僕は最初からどうするかとしか聞いていない。

何を勝手に否定された気になっているんだ。

僕はなのはに何かを強制するような関係でもないし、なのはの矜持を否定する理由もない。

本当なら、戦場から離れて安全なところにいてほしいから説得や誘導くらいはするけど、僕はなのはの保護者というわけじゃない。

彼女の覚悟をわざわざへし折るのは僕のやっていいことじゃないし、そもそもできそうにない。

極論、覚悟があるなら、それでいいのだ。

 

「なのははそれでいいとして…ユーノくんにも伝えておく、君が戦う必要はないよ?」

 

「………僕には発掘者として、あれを管理局に届ける義務があると思っています。それに…現地の人に迷惑だけかけて、それを知らん振りすることは僕にはできない」

 

「それが君の戦う理由?」

 

「はい」

 

迷いなく答えるユーノくんに、若干…いや、凄まじい罪悪感を抱く。

僕はピアノを渡す気はない。

交渉の切り札はいくつかあるとはいえ、まだこっちが圧倒的に不利なのだ。

 

「わかった、僕はこの世界の人間としてジュエルシードを集めよう。君たちがこの世界に敵対したり、僕の身内に手を出したりしない限り(・・・・・・・・・・・・・・・・)は、僕は敵にはならない」

 

―――布石。

最低だな…碌な大人にならないだろう。

いや、そもそも碌な人間でもないんだ。

忘れてなんて、いない。

 

「ありがとう」

 

「…近所にそれと分からない核爆弾が、文字通りゴロゴロ落ちてるのが困るだけだよ」

 

僕の若干白々しい言い訳は、どうもズレた方向に解釈されたらしく、二人の視線が暖かくなってしまったが、さすがに心中溜息を吐くだけに留める。

こうして、僕たちの微妙にズレた共闘関係が始まりを告げた。

どう見ても脆弱な共闘関係が吉と出るか凶と出るか、それは今の段階では誰にもわからないことだった。

 

 

 

◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□

 

 

 

Side 八神はやて

 

 

久しぶりにフォルテくんが遊びに来る。

先週はゴタゴタしていたせいで来れないと連絡があったけど、それでもやっぱりほぼ毎週遊びに来る唯一の友達が来ない期間というのは、正直寂しい。

春休みと違って、平日に遊びに来れないのはわかっているし、フォルテくんにも都合があるのもわかっているつもりだ。

それでも、寂しいものは寂しい。

自分はこんなに寂しがり屋だったろうかと悩むも、そもそも知り合いの数が数なので、そんなことわかりっこない。

いつもはどこかで待ち合わせをしたりするのだが、時たま…それこそ月一以下の頻度でだが、“家に”遊びに来るのだ。

ちなみに、フォルテくんの家には行ったことがない。

何故と聞かれれば、なんとなくとしか言いようもない。

なによりフォルテくんが連れ回すことの方が多いから、行き先に口出しする機会があまりなかったという方が正しい。

不満があるじゃないけど…。

ともあれ、久しぶりに友達が遊びに“家に”来るのだ。

今日は誰か知り合いを連れてくるらしいけど…。

部屋のあちこちを確認するのはおんn………と、友達として!当然だと思う。

掃除は行き届いている、出しっぱなしの新聞や本などもない、お菓子やジュースもちゃんと買ってあるし、出かけることになっても問題ないようにちゃんと着替えてある。

服装は、ちょっとおめかししつつ、それでも動きやすく。

なんせフォルテくんは、車椅子のことは気にかけてくれるのに、遊ぶという行為については、躊躇いなく体を使った遊びも考慮に入れているのだ。

キャッチボールをやった時は、フォルテくんがつまらないのではないかと心配になったものの、それでも正直言うとものすごく楽しかった。

初めてのキャッチボールだっただけに、野球中継のように上手くいかないことはわかっていたけど、まさかうちがあそこまでノーコンだったとは…。

あっちへこっちへ…それこそ面白いようにおかしな方向に飛んでいくボールを、なぜか着地前に獲ろうと「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」と叫びながら全力で走るフォルテくんの姿は、なんというか…見ていてものすごく面白かった。

多分…わざとピエロをやったんだろう。

わざわざ楽しませるために始めたのだろうそれは、どうもフォルテくん自身もどこからか本気になっていたらしく、何度目かの時に着地前の弾を拾えたことを、まるで子供のように飛び跳ねながらはしゃいでいた。

…まあ、子供なのだけど。

なぜか外で剣玉をやろうと言い出した時もそうだ。

一見、どこでやってもあまり変わらない剣玉だが、臨海公園でやると途端に難易度がエクストリームになる。

あそこは海風もあるので、その影響をもろに受けるのだ。

足が動かないことで体を動かす遊びというものをほとんどしてこなかった自分にとって、どんなよくある子供の遊びでも、十分に魅力的なものになった。

いつか足が治ったら、鬼ごっこやかくれんぼ…他にもしたいことがたくさんできた。

 

「こんな前向きになったんはフォルテくんのおかげやろなぁ…」

 

思わず呟いた言葉に、誰もいないリビングを慌てて見回す。

当然誰もいないが、その当然が生まれて初めて安堵という感情をもたらした。

あぶないあぶない…ひとりごとには注意しないと…。

 

ピンポーンっ♪

 

「はーいっ」

 

自分の声が弾んでいることを自覚するが、これだけはどうしようもないし、どうしたくもない。

去年、壊れていた呼び鈴を修理してくれたのはフォルテくんだ。

まさか機械に詳しいとは…いや、図書館で読んでいた大量の本から予測くらいはしていたが、まさか呼び鈴を修理できるとは思わなかった。

今日はどんな遊びをするのだろうとワクワクしながら玄関を開けると、そこにはフォルテくんと…見知らぬ可愛い女の子がいた。

 

「オッス、オラフォルテ!よろしくな!!」

 

「悟空か!!」

 

会って早々ボケとツッコミから始まる…漫才ではないし、たまにあるのだが、このノリは意外と楽しかったりする。

とはいえ、遊びに来てくれたのに立ち話をする必要もない。

フォルテくんと女の子をリビングへあげて、私はお菓子とジュースを持っていく。

最初の頃はなにかと運ぶ作業を手伝いたがったフォルテくんだが、さすがにそこまで行くと家政婦のような関係になってしまいそうで嫌だったので、家の中のことは自分でやりたいと話すと納得してくれた。

気を使われ過ぎるのも疲れると、フォルテくんも知っていたのかもしれない。

 

「さてと、はじめましてやね?うちは八神はやていいます」

 

女の子に頭をぺこりと下げると、なぜか慌てたようにフォルテくんの後ろに隠れてしまった。

はて?何か間違えたかな?

 

「あーごめん、人見知りが激しいんだ。ピアノ、自己紹介だ」

 

「あ、あの…ピ、ピアノ・F・ブルックリン、です…よろしく、おねがい、します…」

 

途切れ途切れに一生懸命名乗るピアノちゃんを、なぜか頭を撫でたくなる衝動が湧きあがった。

表情が硬い…というか無表情なのだが、それもまた可愛い。

 

「ピアノちゃんか…可愛い名前やね」

 

微笑みかけるとピアノちゃんも安心したのか、あるいは名前を褒められたのが嬉しかったのか、小さく頷いてくれた。

その間も、フォルテくんの服をちょんとつまんだまま、相変わらず無表情だけど若干の好奇心と心配が入り混じっているのか、上目づかいで様子を窺うピアノちゃん…。

あかん!なんやこの可愛い生き物は!めっちゃくちゃ撫でまわしたい!!

 

「はやて、もう撫でてるから…」

 

「え?」

 

あ…ありのまま、今、起こったことを話すで!

うちはピアノちゃんのことを撫でまわしたいと思ったら、いつの間にか抱き着いて撫でまわしてた。

な…何を言っているのかわからんと思うけど、うちも何をしたのかわからんかった…。

頭がどうにかなりそうやった…イラックマやとかシヴァーニャンやとか、そんなチャチなもんとは断じてちゃう!

もっと恐ろしいものの片鱗を、味わったわ…。

ってなんやこの銀戦車男現象は!?

でもこれ抱き心地良すぎ!

小柄な体格が程よくフィットする!!

しかもピアノちゃんは無表情のままなのに、抵抗することなく…むしろ受け入れてくれてるっ!!

あかん!これは…手放せん!!

 

「落ち着け」

 

「うぁいたー!」

 

スパーン♪という小気味のいい音と共にフォルテくんのチョップが炸裂する。

なんということでしょう!フォルテくん()の細やかなツッコミ(心遣い)がこんなところにも!

 

「ってちゃうやろ!フォルテくんツッコミできたんか!?ちゅーか今、斜め45度で叩いたやろ!」

 

「日本古来の宗教に則ってみた」

 

「宗教!?」

 

「あれ、違った?あれだよ、壊れたものを斜め45度で殴ると………付喪神が壊れたものを直してバージョンアップしてくれるっていうやつ」

 

「八神さんは、今回の更新で…Ver.1.9からVer.1.9.1に更新されました」

 

「Why!?なんやそれは、聞いたことないわ!付喪神高性能すぎるやろ!あれか!日本の発信の高性能家電はメイドイン付喪神やったっちゅうことか!?Ver.1.9.1ってバージョンアップが微妙にせこっ!もうVer.2.0出せや!っていうかピアノちゃんも案外ノリええなっ!?」

 

なんという飛躍した理論…偏見コワイ。

ピアノちゃんのキャラって、綾●レイちゃうかったんか…。

 

「違うの?」

 

「違うわ!」

 

心を込めて全力で言い返すと、フォルテくんは肩を落として落ち込んでしまった。

言いすぎただろうか?

 

「なんてことだ…つまりはやてはアップグレードしていない、オールドタイプはやてのままか…!」

 

「八神さんの更新は、失敗しました…現在のバージョンは、Ver.1.9です」

 

「失礼なやっちゃな…」

 

前言撤回。

どうも、言いすぎではなく言い足りなかったらしい。

地味にピアノちゃんの言葉の方がダメージ大きいんは…どういうこっちゃ?

 

ちなみに、結局この日は一日、テレビゲームをすることになった。

毎度のことやけど、フォルテくんってテレビゲーム弱すぎる…。

初心者のピアノちゃんに負けるって酷過ぎるやろ…。

そんなに難しいんかな、バイオカートって?

亀の死体を投げつけたり、生ごみでバイオ攻撃をしたり、突然空から謎の雷が落ちてくる程度の簡単な普通の、土管工事の専門家さんのレースゲームやねんけどなぁ。

大闘争ジェノサイドブラザーズも苦手みたいやし…パズル系は逆に強すぎるから、面白くなくなって困ったもんや。

ポケットサイズ・モンスターズ・ハンターズ5Dが一番まともになったくらいか。

初心者のピアノちゃんが、必殺技の10テラボルトを回避して進撃のババルートを倒した時は、さすがにフォルテくんと二人でorzしたけど。

ピアノちゃんのアレ、初期装備やねんけどなぁ…。

この後もしばらくゲームをして、ピアノちゃんが席を外している間に例のおまじないもして、時間になったらフォルテくん達は帰っていった。

そういえば、フォルテくん妙なこと言うてたな…。

たしか、もし万が一青い綺麗な石を見かけたら絶対に触らずに見つけた場所をすぐ連絡してほしい、やっけ?

宝石かな?

落し物って言うてたけど、触らんようにってところがようわからん。

まあ、ええか…もし万が一って話やし、積極的に探すとかせんようにって釘刺されてもうし、気にせんほうが得策やな。

今日はピアノちゃんっていう新しい友達ができたし、いい夢見れそうや。

 

 

 




同盟回でした!
冗長に書きすぎた…。
本編に合流するようで…する気はほとんどなかったりww
黒い魔導師、貴様一体何者なんだぁー(棒)
オリキャラ、まだあと何人か出したいなぁ~…。
たまにネタがストーリー中にあるけど、イシュバールの民とか出演しないよ?
黄金の鉄の塊の錬金術師もいません!←名前を呼ぶときは「さんを付けろよデコ助野郎!」
万が一キャラクターが現れても、本編には何にも関係ないネタで済むレベルだから。
本格的にストーリーに出演はしないから。
もしどっかで現れても、「あ、この世界にこいついるんだ~」くらいに留めといてくれれば万事問題なし!
言い忘れてましたが、「◇□◇□◇□」って本編の中でやってますが、あれは場面が変わるときに使っています。
翌日になったり、場所が大きく変わったりしたときですので、視点が切り替わるくらいならそのまま「Side~」ってなります。
それと…今回は連投する!………ように努力中。
具体的にはまた明日?………現在完成度35%なんだけどね。

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