魔法少女リリカルなのは~月光の鎮魂歌~ 作:心は永遠の中学二年生
なぜ日本には梅雨などという実に腹立たしい季節があるのか。
外で遊べないだろう!と、子供なら文句を言うだろう。
でも僕からすればそれは些細なことだ。
教室に居てもできることなんていろいろある。
本を読むとか、のんびり友達と話すとか。
冷静になれ、クールになるんだ。
そうだただちょっと…
「おーい、かくれんぼしようぜ!」
「教室でボール投げちゃダメなのに~先生に言いつけてや~ろう!」
「誰が先に階段上れるか勝負な!」
「……………………………し、静かにしてくれ(涙)」
教室内がうるさい。
なぜかって、そりゃ梅雨だからだ。
校庭に遊びに行けない子供がうるさいだけだ。
「あーもう!あんたたち、もうちょっと静かにしなさいよ!っていうか、暴れるなっ!」
「ア、アリサちゃん…」
「にゃはははははは…」
学級委員(だっけ?)とその愉快な仲間が頑張っているようだが、いまいち効果が出ていない。
子供には本当に困ったものだ。
僕のように静かに本でも読んでいろ。
面白いぞ、エネルギー工学って。
機械工学も勉強中だし、そのうちガ○ダム作ってみたい。
…二足歩行が難しいのは知ってるよ!
せめてガ○タンクだ!
とりあえず、しおりを挟んで本を閉じる。
多少の事なら目をつむるが、ボール遊びはいただけない。
注意しようと立ち上がった僕は、その時見た光景をおそらく一生涯忘れないだろう。
金髪の学級委員(だと思う)が走り回っている男の子に注意をしている最中である。
その後ろにいた月…月なんとかさんっていう女の子にボールが飛んでいくのが見えた。
瞬間、僕は足に
だが、ここは教室内でたくさんの生徒がいる。
どれだけの速度で動ける存在だろうと、周りに被害が及ばない速度となるとおのずと限界速度は決まる。
間に合わない…!
声を出しても喧噪で聞こえそうにもないし、仮に聞こえたとしても間に合わなかっただろう…本来なら。
月なんとかさんの向こう側に立っていた棚町さん(だっけ?)という女の子。
どう考えても彼女にはボールの接近が見えていなかったはずだ。
なのになぜ…彼女は今この瞬間ボールの阻止に動いている?
それも、おそらく初動は僕よりわずかに早い。
視線の向きから考えても、見えていた可能性はない。
ってちょっと待てやコラ!
なんで素手でソフトボール止めようとしてるんだよ!?
僕は右手に持っていた(思わず置いてき忘れた)【エネルギー工学の発展と展望】(市立図書館より貸与中)を思いっきり投げ、棚町さんの手にぶつかる前にボールを撃ち落とすことに成功した。
「怪我はない棚町さん!?」
「え?あ、うん大丈…って、助けてくれてありがとうだけど、棚町じゃなくて高町だよ!高町なのは!」
名前、間違えたか…よくあることだし気にしない。
「ちょっ何やってんのよあんたら!!」
あ、学級委員(だったと思う)が怒った。
「落ち着け、タルト・バーニング。まずは高町さんを保健室に連れて行くべきだろう?」
「そうだった!なのは、あんた怪我ない!?保健室行く?」
「アリサちゃん、大丈夫だから」
「………ダウト。高町さん、中指の先っぽが少し腫れてるね?ごめん、本投げるのが少し遅かったみたいだ」
慎重に、さっき彼女が伸ばしていた右手に注目して、ようやく気付けた。
彼女は演技の才能でもあるのだろうか?
自分の席に戻り、水筒から氷を取り出す。
それをハンカチでくるんで高町さんに渡した。
「とりあえず、これで冷やすと良い。保健室に行くよ?突き指してる可能性もあるからね」
「にゃ!?本当に大丈夫だよ!」
「素人診断で放っておいて中指が一か月使えません、とか言いたくないなら保健室だ。僕、保健委員だから連れてくよ?タルトさん、あとお願いね?」
「わかったわ。あとあんた、あたしの名前はアリサ・バニングスよ!タルト・バーニングなんて変な名前じゃないから!忘れんじゃないわよ!そもそもタルト焼いてどうすんのよ!?」
「…美味しいタルトの完成です?」
「うがーーーー!!って、こんなことしてる場合じゃなかった!そこの男子、正座!」
「わ、私もついて行きます!」
「ん?」
月なんとかさんが、同行を申し出た!
どうする?
→・連れて行く
・説得して置いて行く
手間を考えれば当然だよね!
「わかった、行こう」
「うん!なのはちゃん、ごめんね…」
「大丈夫だよ、すずかちゃん。フォルテくんが心配性なだけだよ…」
大きなお世話だ。
しかしそうか、月なんとかさんの名前は、「すずか」というのか。
忘れないように気を付けよう。
ちなみにこの後、教室内でのボール遊びは完全禁止として、僕の読書ライフはとてもしっかりと守られたのでした。
追記…
なぜかあれ以降、高町さんに懐かれて困っています。
あと、月なんとかさんに警戒されてるっぽいです。
「月村!月村すずかだよ!?」
はい、名前覚えられない系主人公フォルテでした。
当然のことながら日本人じゃありません。
…プロフィールってどこで書けばいいんだろう?