魔法少女リリカルなのは~月光の鎮魂歌~ 作:心は永遠の中学二年生
翠屋。
そこは女神がシュークリームを作っていると噂されている、世界最高の喫茶店だ。
他のメニューも格別で、日夜人目を忍んで天の国から神が降臨していると言われている現代のエデンなのだ!
「まさか高町さんが天使だったとは、知らなかったよ。あ、失礼いたしました高町様!わたくしのような下民が、天界の方に気安く話しかけてしまい誠に申し訳ございません!」
「にゃああああ!だからそれやめてってば!!」
「………あんた、そんなキャラだったわけ?」
「反応が面白いからに決まってるだろう?」←素
「フォ~ルぅ~テぇ~くぅ~ん~~~~?」
「よし、走ろう!ソルト・バーサークさん!」
「誰よそれ!?あたしはそんな、妙にカッコイイゲームキャラみたいな名前じゃない!アリサ・バニングスよ!!」
「ほら、月…………………ツッキーも走るよ?」
「今妥協したよね!?絶対月から先が出てこなかったから、適当にあだ名付けたよね!?月村だよ!?月村すずかだよ!?」
うん、苦笑いの似合う娘だ。
なぜ僕が放課後、高町さんとその他愉快な仲間達と一緒に居るかというと、それは今朝の「この間助けてくれたからお礼がしたい」という高町さんの言葉から始まった。
「お礼?助けた?何から?何を?どうして?」
「え…?覚えてないの?」
「…………………………記憶にございません」
「なんか、政治家さんみたいだね?」
仕方がないだろう?覚えてないものは覚えてないんだ!
「あんたこの間、なのはがボールにぶつかりそうになったのを助けてくれたでしょ?そのお礼よ。」
「………………………………………………………………………………あ、あれか」
ものすごくしっかりと、記憶の底に沈めていた。
当然生涯サルベージされる予定はなかった。
ちなみに、思い出せた理由はあの事件のせいで図書館の本を一時なくしたということが関連付けで思い出せたからである。
「ホントに覚えてなかったの!?」
「当たり前だろ?そんな細かいこと一々覚えてられるわけない」
本音だ。
「う~…でもでも!お母さんに言ったら、お礼したいから連れてきてって言ってたし!私もお礼したいって思ってたし!」
「いや別に…」
大したことはしていない、そう言葉を続けようとして…それが正しいのか悩んだ。
僕は普通ではない。決してとか断じてとかそういう言葉を頭につけても問題ないほどに。
普通の人にとって、これは“大したこと”なのだろうか?
実際、あれの対処に
「大したことだけど、気にするな」
この対応で問題ないはず。
「大したことって認めてるじゃない!」
なぜかバニングスさんが、机をバンバン叩きながら怒っているんだけど…何故だ?
「大したことがイコール気にすることとは限らない。オッケー?」
「オッケー?じゃない!」
「お礼だけでも、ダメ…?」
高町さん、そんな涙目で見上げないでください。
月…………月原さんも悲しそうな顔しないでください。
クラス中の男子から殺気で殺されそうなんです。←ガチ
「…………わかった、受け取るよ。だからそんな泣きそうな顔しないでくれ、いやホントガチで頼むから切実に」
つい自然に、高町さんの頭を撫ででしまった。
それが原因だったんだろうと思う。
この日の体育でドッジボールをやった時に、割と真剣に僕をしつこく狙われたのは。
当然返り討ちにしてやったけど…そんなに撫でたきゃ自分らで脈作れよ。
「回想終了!」
「あんた何言ってんのよ?」
「いや別に?」
というか、高町さんも人が悪い。
なんでお礼の内容が翠屋だって教えてくれないんだ!
二つ返事でオッケーしたぜ?
「割と重要なことだけど、高町さんがあの翠屋の正統後継者だなんて知らなかったよ?」
「そんなすごくないよ!?」
「跡取りって、言えばいいんじゃないかな?」
「ホントあんたって変なところでエセ外国人よね」
「うるさい、アサリ・バルザック!」
「あんた絶対わざとやってるでしょう!?」
「気のせいだ。でも翠屋ってあの翠屋だろ?シュークリームが最高に美味しいよな?」
「他のメニューも美味しいよね!」
月……………月村さんが食いついた。
やっぱり女の子らしく甘いものには目がないようだ。
大通りの喫茶店、翠屋。
平日ということもあってか客足はまばらだ。
そんな中に、僕らは入っていく。
カランカラン
「ただいま!」
「おかえりなさい、なのは。そっちの子が?」
「うん、フォルテくんだよ!」
そんな満面の笑みで紹介しないでほしい。
本音では大したことしてないと思ってるんだ。
不必要に罪悪感が…!
「はじめまして、高町さんのお姉さん。フォルテ・L・ブルックリンといいます」
自己紹介ってなんで毎回毎回こうも緊張するんだろう?
僕は別に人見知りじゃないはずなんだけどな?
「あらあら♪ご丁寧にどうも。私はなのはの“お母さん”の桃子っていいます。気軽に桃子さんって呼んでね?」
「はぁ!?お母さん!?」
マジか、若作りとかそういう問題じゃなくないか?
まじめに信じられないんだが…。
「………昔はかなりヤンチャだった…とか?それともなのはのお父さん…まさか…」
中学生のできちゃった婚的な?
「言いたいことはわかるけど、なのはちゃんのお母さんだよ」
「高校生って紹介されても納得するぞ!?」
「あらあらお上手ね♪」
月村さんがフォローするも、信じられない。
あっちの地味っ子眼鏡のウエイトレスの方が、高町さんのお姉さんらしい。
……嘘だろ?全然似てない…………
注文を聞きに来たすらっとしたウエイターの方は、お兄さんだそうだ。
「あなたが高町さんのお兄さん?」
「そうだ」
「あなたは忍者ですか?侍ですか?」
「…二択なのか」
「二択です」
「影分身の術なんて使えないぞ」
「じゃあ侍です」
「侍なのか」
「侍です」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………シュークリームと日替わりコーヒー」
「…………わかった」
「…………………………………………え?何、今の会話?」
それは、会話に口をはさめなかった全員の想いの代弁だった。
なぜ注文に「忍者ですか?侍ですか?」というありきたりな外人の質問が入るのかとか、なぜ二択なんだとか、そもそも今その質問が必要なのかとか言いたいことは色々あったが、その全てを集約した言葉を高町さんが呟いたため、その場はそれで収まった。
友人とのくだらない談笑。
喫茶店のテラスに座っているその光景は、どこにでもあるこの国のありふれた平和な日常。
平和な時間を壊すかのように…あの感覚がやってきた。
ぞわり…
背筋に冷たいものを感じた。
それは体の動きを一瞬にして奪い取るほどに重いものだ。
この感覚を彼は、フォルテ・L・ブルックリンは知っていた。
―――――強者。
近くに、いる。
自身では対抗できない圧倒的な力を前に、人はただその力が去っていくのを息を殺して待つことしかない。
その感覚は一瞬だった。
だから彼は、小学二年生のままだった。
小学二年生であり続けられた。
「あんた聞いてるの?」
「ああ、飼い猫が可愛いんだろ?猫屋敷って…何匹いんの?」
「もう数えきれなくて…」
「つける薬なしだな…やれやれ」
もはや条件反射だった。
さっきの一瞬で強者がどこにいるのか、誰なのかごく自然に首を動かして確認した。
通りの向こうの路地裏。
しょうもないヤクザレベルから軍人くずれレベルの中に一人の強者。
人数的にはそれほどでもないが、他数カ所に点在しているようだ。
強者はあそこの一人だけらしい。
厄介事には、あんまり関わりたくないな…。
っていうか殺すぞ?
翠屋は僕にとって聖域なんだ。
汚物はどっか他所に消えろ。
内心苛立ちながらも、彼は動かなかった。
なぜならそれは、必要のないことだったから。
彼がコーヒーを飲み終わる頃には、路地裏を含めた付近の気配は消えてなくなっていた。
「…………………………………やっぱり侍だ」
空になったカップ越しに呟いた言葉は、誰の耳にも届かず談笑の中に消えて行ったはずだった。
「……………。」
一人、聞こえる力を持つ少女がいなければ。
「ごちそうさまでした、美味しかったです!」
最高の笑みで元気いっぱいに美味しかったと言うその姿は、どこからどう見てもほほえましい小学生の日常の光景だ。
「高町さんのお兄さん」
「なんだ?」
注意深く観察すれば感じられる、微かに苛立っているような…殺気立っているような声色。
それを微塵も気にすることなく、僕は爆弾を投下した。
「右膝、怪我でもしたんですか?歩き方が、なんかぎこちないですよ?」
途端に彼、高町恭也の表情が凍った。
「…昔ちょっとな」
彼は瞬時に仮面を被った。
それは家族である高町なのはでも、瞬時に見破ることが困難なほどに上手く被られていた。
だから、フォルテは何も言わなかった。
「…フィリス・矢沢という名前をご存知ですか?」
「誰だそれは?」
「僕の実家の方にいた医者です。今は海鳴総合病院にいますので、もし気が向いたら行ってみてください。腕は保証しますよ?」
「そうか、気が向いたら行ってみよう」
「前向きに考えてくださいよ?いい人ですから、“フォルテの紹介”って言ったら必ず見てくれます」
それだけ言うと僕は踵を返した。
お嬢様方がリムジンで送ってくれるらしい。
…リムジンだけでお礼になったんじゃね?
かなり本気の感想だったわけだが、言わぬが花という言葉を僕はちゃんと知っていた。
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「いや、本当にいいんだって!帰る!おうち帰る!!」
今日は本当にお礼の押し売りデーらしい。
曰く「さっきのはなのはちゃんのお礼」らしく、今から月村家でお茶をご馳走したいという。
「さっきコーヒーを飲んだばかりだからいい」と断ろうと思ったのだが、どうも切羽詰まっているような、追い詰められているような目を見てしぶしぶ了承したのだが、ここまでドデカいお屋敷だとは聞いていない!
ちなみにバニングスさんはピアノのお稽古、高町さんは塾らしい。
「…嫌?」
いやだからさ、君ら自分が美少女ってこと理解してる?
そんな泣きそうな顔で聞かれて「嫌です」って言える男いないよ?
「…ちょっと喉が乾いてきたし、ごちそうになろうかな」
パァっと花が咲いたように笑顔になる月村さんを見て僕は思った。
どうかこのまま育ってください、と。
ノエルさんとかいうメイドが紅茶を準備してくれている間に、飼い猫を紹介してもらった。
「あっちの白猫がネーナ、そこの黒猫はミルで、こっちの子はクーニャ、それから………」
な、長い…!
紹介開始からどれだけ立ったのかわからないが、まだ終わらないのだろうか?
まだ向こうの森(敷地内です)から何匹もぞろぞろと増えてきているようなのですが?
ログインとログアウトが激しい!
トリスが森に帰った。
ジョンがすり寄ってきた。
リンとクネが屋敷に向かった。
セリオとミョンがじゃれ合っている。
新たに7匹の猫が森から現れた。
ボーはいつの間にか昼寝している。
サパーは木で爪を研いでいる。
ジェミニはジェーン(子猫)にお乳をやっている。
新たに4匹の猫が屋敷から現れた。
………これ、暗記しなきゃいけないの?
なんてことだ、僕は地雷を踏んだようだ!
月村さんに猫の話題を振ると、全然終わらない…!
「…………………?」
1匹だけ、この群れから離れたところにいる猫がいた。
三毛猫だ。
どうも警戒心がマックスらしい。
……ちょっと近寄ってみる。
「にゃ~にゃ、にゃにゃ~?」
フシャー!ナーゴ、ナーナー!!
「にゃにゃ~?にゃんにゃにゃ~、なごにゃ?」
ナー!ニャゴナー!ニャニャーニャナーゴ!
「ごめん月村さん、怒られた」
「猫としゃべれるの!?」
「雄であることにコンプレックスがあるらしい」
「しゃべれるんだ!?」
「勘だけどな?」
「そこまで正確な勘、初めて見たよ!?」
ちなみに、雄であることは近寄った段階で気付いていたから、適当に合わせているだけである。
「お嬢様、準備が整いました」
「助かった!これで猫談義地獄から解放される!!(わかりました、すぐ行きます)」
「本音と建前が逆になってるよ~!?」
うん、バニングスさんだけじゃなく、彼女もツッコミ役として逸材らしい。
「………………………で、何か話があるんだろ?」
「……………ばれちゃってた?」
「あそこまで追い詰められた顔して、違いますっていうのは無理があり過ぎる」
無理、というより不可能だ。
「そのためにわざわざメイド下げて、二人っきりって状況作ったんだろ?」
緊張が走った気がした。
誰に、ではない。
この場に緊張が走ったのだ。
「フォルテくんに聞きたいことがあるの」
「何でも聞いてくれ、素直に答えるかは別だけどな?」
わざとおちゃらけて見せる意図を正確に感じ取ったらしい月村さんは、一瞬目を閉じて決意を固めたようだった。
「フォルテくん、あなたは――――――
―――――――――――――人間ですか?」
ども!
不思議系主人公フォルテの普通(?)な日常風景でしたww
魔法どこいったって?
まだです!
作品内時系列では一年後です!
でも作品内の時間は作者が勝手に早くしたり遅くしたりしますので、いつフェレットが出没するかは未定です!
コメント待ってます!