魔法少女リリカルなのは~月光の鎮魂歌~   作:心は永遠の中学二年生

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遅くなって申し訳ありません!
前もって言っておきます。私はとらいあんぐるハートの知識なんて持ってません。
SSだかFFだかの知識で適当に知っている程度です。
あんまり絡ませるつもりありません。
設定がおかしかったりすれば、笑ってそう言う世界観だと思ってください。
あと、ちょっと書き方変えました。



第五話

 

さて、月村邸に招かれた僕があの後どうなったのか知りたいかい?

まぁ、そのなんだ?

結果だけ言うと、だ…。

僕、フォルテ・L・ブルックリンは月村さん…もとい、すずかと親友になりました!

意味わからない?

わかる!わかるよ?気持ちものすごくよくわかるよ!?

僕自身よくわからないからね?

ただ言えることは、『秘密の共有』って人間関係の強化につながるってことだ。

できれば内密にしておきたかったが、当然翌日にはバニングスさんと高町さんにばれて(秘密の内容は死守)、アリサ、なのはと呼ぶことを強制された。

このことが原因でクラスの男子から私刑(ガチ)って事態になってしまったので、ちょっぴり返り討ちにしてみたんだけど、どこからもこの情報は洩れなかった。

いや、噂くらいにはなってるけどね?

そりゃまあクラスの男子全員で僕一人に負けて痛い思いしました、なんて先生にもクラスメイトにも家族にも言えないだろう。

本音言っていい?

 

 

 

ざ ま ぁ w w w w

 

 

 

さて、遂に一学期が終わり夏休みとなった。

夏休み…それは、学校が一か月ちょっとお休みになるという素敵なイベントです!

夏と言えばやることは一つでしょう?

そう、誰でも知っているだろう?ご存知『読書の夏』!!

夏休み中に市立図書館制覇してやるぜ☆

…………そう思っていた時期が、僕にもありました。

 

「………何故僕は今、山にいる?」

 

山。

平たく言うと、土を他よりちょっとだけ多目に盛っただけの土地。

遭難やら滑落やら色々事故が多発する場所に、なぜ人は好んで足を運ぼうというのか。

 

「ほら何やってんのよ、遊ぶわよ!」

 

「解せぬ…まぁ本はどこでも読めるし、いいかな?」

 

「良いわけないでしょう!遊ぶの!あんたが何して遊ぶか決めていいから!」

 

「読書だ」

 

「却下!!」

 

「じゃあテントの設営が「あんた最初からそっちに行く気なかったでしょうが!だいたい、鮫島もいるから問題ないわよ!」

 

「はい、お嬢様」

 

うん、適切なツッコミどうもありがとう。できればその洞察力を出発前に発揮して、僕が行きたくないことに気付いてほしかった。

何度か言ったけど、僕はどちらかと言えばインドア派だよ?

あと、鮫島さんどう見てもお年なんだから、酷使するのはよくないよ?

いや、鮫島さんが昔なんか武術的なことやってたのは動き見ればわかるけどさ…。

 

「フォルテ、我が愛しい甥っ子よぉ!子供の内はしっかりと遊んでおきなさい。なによりレディーからのお誘いを断るなど、紳士のすることでぇはぁない!!こっちはいいから、遊んできなさい、ほぉら可愛いレディーを待たせているぞ?」

 

「…伯父さんがそう言うなら」

 

紹介しよう。

今どこからともなく突然現れた、とてもガタイのいいこの人が僕の伯父さん、アレックス・ルイ・アームストロングさん。

文字通り脱いだらすごい人で、ことあるごとにマッスルポーズとりたがる筋肉オタク。

流石元軍人(少佐)!

問題はちょっと(?)暑苦しいところだ!

若干アリサ達も引いているが、遊びたかった彼女達(特にアリサ)としてはありがたい援軍だったらしく、特に何も言うことはなかった。

…言えなかったのか?

 

あと念のため言っておこう。

今すずかがなのはに耳打ちしているような「女の子と遊ぶのが恥ずかしかった」などということでは断じて!かつ!決して!ない!!

僕はインドア派だ!!

それに僕はそんなに子供じゃない!!←小学二年生

 

「決めた。アリサ、鬼ごっこをしよう!」

 

「…案外普通ね。こういう時は、何か山でしかできないことをするもんじゃないの?」

 

「そうか?山という不整地で木や丘や窪地やらが乱立する中で鬼ごっこすると、普段じゃありえない大どんでん返しがあるぞ?」

 

「なにしてるの!なのは、すずか、鬼ごっこするわよ!」

 

…アリサがチョロインな件、なんて言ったら面倒なことになりそうだから黙っていよう、そうしよう。

 

「じゃあ、じゃんけんしよ?」

 

「「「「じゃんけん…ポン!」」」」

 

…女の子って結束力高いな。

なのはが促したじゃんけんで、まさか僕の一人負けとは…。

しゃーない、サッサと数えて狩りに行きますか!

 

「アリサ発見!」

 

「逃げ切ってやるわー!」

 

「と、見せかけてなのはデン!」

 

「やられちゃった!12345678910!」

 

「全力退散!」

 

「フォルテくん、なんで木登り上手なの~!?枝から枝に飛び移るとか反則なの~!!」

 

「なんでやろなぁ?真面目にやってきたからよ!」

 

「引っ越しじゃないから!」

 

「気にするな、ルール上は問題ない!」

 

「ルール以前の問題だから!!」

 

「ちょ!フォルテくん、なんでわたしの方に来るかな!?」

 

「もちろん……生け贄だよ?」

 

「最っ低ー!」

 

まぁ遊びの提示を求められて、自分が不利なものを選ぶわけないよな?

僕は絶賛、不整地ならではの三次元機動で上へ下へ右へ左へ動き回って、最初以降は鬼にはならずに攪乱に徹している。

 

あ、今度はアリサを鬼にしよう、すずか疲れてきてるし距離的にちょうどいいし。ん?なんですずかさんキッと睨んでくるの?なんか、なのはとアリサが頷き合ってる?なんでだろう?ものすごく嫌な予感がするんだけど?

 

「ってちょっ!三人で結託して一人を追い回すとか、フォルテさん的にはさすがに卑怯だと思うんだけど!?」

 

「うっさい!黙って捕まれー!!」

 

「待てー!」

 

「待ってってばー!」

 

「待てと言われて待つ馬鹿はいない!」

 

「すずか、回り込みなさい!」

 

「しかし、更に回り込んでしまった!」

 

「ふぇぇ!?なんですぐ横通って手が届かないのぉ!?」

 

「3倍速だ!」

 

「赤くもないし、仮面も付けてないでしょうが!」

 

「君の父上がいけないのだよ!」

 

「パパは今アメリカよ!」

 

全力を出してみたが、さすがに3対1では追いつかれた。

頑張ったけどね?

女の子の団結力がちょっぴり怖くなったりもしたけど、ものすごく遊んだ。

いや、実は本気で怖かったけどな…?

それ込みにしても、何も考えずに全力で遊んだのはいつ振りだろう?

そのあとも色々内容を変えて遊んだ。

とにかく遊んだんだ。

本当に楽しかった。

でもそれは、もともと砂上の楼閣だということくらい僕にもわかっていた。

それでも僕は…この瞬間が永遠に続くことを願っていた。

それを願うのは罪深いのだろうか?

こんな僕が………いいや、よそう。

これは僕の胸の中に沈めておけばいい話だ。

これを聡い彼女達に知られるわけにもいかない。

 

どうか、刹那でも長くこの時間が続きますように。

 

この願いがいつか必ず踏み砕かれるとわかっていても、僕はそれを願わずにはいられなかったのだ。

 

 

 

◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□

 

 

 

Side アレックス・ルイ・アームストロング

 

 

「…………この国にまでついてきたのか、人の口になんとやらだな。なんと言うのだったかな?日本語は難しいものだ」

 

溜息と共に、薄暗がりの中で佇む巨漢、アームストロングはゆっくり拳を解いた。

彼の目の前には、中肉中背の男が倒れていた。

目立った外傷はないが、人気もなく、近くに野営があるわけでもない上に真夏とはいえ軽装過ぎる半袖の服を見れば、男に何があってそこに倒れているのか考えるまでもない。

 

彼は懐の携帯電話から連絡を入れた。

こんな山奥で通じる段階で普通の携帯電話でないことは確定である。

 

「私だ。―――そうだ、例の件だ。毎度のことながらすまんな。―――ふむ、わかった約束しよう。―――む?そうか、また連絡しよう。なに、そう待たせはせんさ。―――ああ、わかっているとも。マスタング大佐に礼を伝えておいてくれ、ではな。…………………さて、見ていて楽しい催しができたとは思えませんが?」

 

短い会話の後、通話を切った彼は一瞬もの悲しそうな顔をしたが、そんなことはおくびにも出さずに背後に声をかけた。

木の影…と言っても夜なので影も何もないのだが、そこから一人の男が姿を現した。

上下共に黒い光を反射しにくい衣服に身を包んだ青年だ。

彼らは決して知らない仲ではなかった。否、先程まで一緒に温泉に浸かっていた仲だ。

 

彼は高町恭也………否、不破恭也だろうか?

世界の裏側で名の通っている戦闘者だ。

 

フォルテは侍だと言っていたが、どう見ても忍者なのだが…?

 

いや甥の、フォルテの判断にケチをつけようという気はないのだが。

闇夜に真っ黒な衣服、あまりに上手な気配の消し方といい、どう見ても忍者にしか見えないのは、決してアームストロングの偏見による主観的な理由だけではないと思うのだ。

 

「生憎と、催し物を見に来たわけではないのでな」

 

「では、夜道を散歩ですかな?今日は良い星空が見えますゆえ、良い散歩ができることでしょう」

 

「戯言に付き合うつもりはない。その男とあなたの目的を聞かせてもらいたい」

 

かつて恭也を指して「張りつめた弓弦」とファルテは言っていたが、言い得て妙だとアームストロングは思った。

若さゆえか、あるいは生来の性格によるものかもしれないが、彼の物言いには基本的に余裕というものがほとんど感じられない。

集中していると言えば聞こえはいいが、悪く言えば他が見えていない上に目標を見失えば途端に何もできなくなる。

 

これが、若さというものか…私も知らぬ間に老いたようだな。

 

自らの思考に苦笑しつつも、若干の不満を持って反論した。

 

「その言い方ですと、私とこの男の目的が同じように聞こえますので訂正させていただきたい。“私達”の目的はあくまで平和な生活であり、この男の目的はそれに相反するもの…それだけなのです。今回のことは、あなた方には関係のない出来事です」

 

「それはこちらが判断する」

 

取りつく島もないとはよく言ったものだ。

もしも相手が並大抵の人物なら、あるいは赤の他人であったなら彼はたとえ拷問されたとしても話すことはなかっただろう。

はぐらかすにしても、やりようはあった。

嘘をついていくらでも丸め込めた。

だが相手は世界でも有数の実力者で、大切なフォルテの友人の兄なのだ。

自分の血統やかつての所属の問題もある、ここは譲歩すべきところだろう

 

「…………………………………他言無用に願えるならば」

 

「内容による。確実に父さんには言うことにはなるだろうが…」

 

「それは君がここに来た段階で、半ば想定はしていたことだ。その他には…特に、なのはちゃん達には絶対に言わないでいただきたい。あの子達が“この件”に触れるというのは…子供を育てる一人の保護者として、できない相談なのです」

 

「………いいだろう、どの道子供に聞かせるような話であるとは思えん」

 

苦渋の決断。そう表現するに一切の躊躇いはない。

もしも話さずに済ませることのできる相手であったなら、彼は迷わずそうしたことだろう。

そして、話し終えたとき恭也は「約束は守る」とだけ言って再びその姿を闇に紛れさせた。

その背がどこか急いで見えたのは、おそらくは罪悪感。

知ってはいけない、本来なら踏み込むべきではない部分に踏み込んだことへの後ろめたさ。

若く純粋で優しすぎる青年だとアームストロングは思ったが、あえてそれを口にすることはしなかった。

ただ一言、恭也の消えた夜闇に向かって「ありがとう」とだけ言い、彼は倒れていた男を担いで歩き出した。

彼の言葉は暗い森に吸い込まれて消えて行ったが、なぜか彼にはその言葉が届いたという確信のようなものがあった。

 

 

 

◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□◇□

 

 

 

Side 八神はやて

 

 

雨が降っていた。

滝のような雨粒の一粒一粒が、強力は突破力を持つ銃弾のように強く大地に叩きつける。

風の勢いも凄まじいものだ。

妙に甲高い音と共に、雨粒がその威力のほどを叫んでいる。

こんな悪天候の中、少女、八神はやては当然のことながら自宅待機をしていた。

数日前から接近していた台風が、今猛威を振るっているのだ。

予定ではテレビでも見て時間を潰して、台風が通り過ぎるまで凌いでいるつもりだった。

しかし、今日は本当に運が悪い。

 

「アンテナになんかぶつかってテレビ見られへんようになるわ、停電するわ、懐中電灯の電池ないわ、あげく雨漏りかいな!イジメか?イジメなんか!?」

 

真っ暗な八神家の中で、彼女は蝋燭を片手に車椅子で駆けずり回る…といっても、彼女にできるのはせいぜいバケツでも置いて回ることくらいだ。

本格的な修理は台風が去った後、業者にでも頼むとしよう。

 

「にしてもホンマ、風強いなぁ」

 

さっきからあちこちでドンドンとうるさい。

風が雨水を叩きつける音、風向きが変わって窓が殴られているような音、言うなればそう…断続的に扉を叩くような音が聞こえるのだ。

正直、何度か玄関へ向かいそうになった。

 

「………あれ?」

 

今何か聞こえたような…?

 

気のせいだろう。

こんな雨の中、どこからか自分を呼ぶ声が聞こえたような…そんな気がしたのだ。

 

「危ないにもほどがあるやろ!」

 

嵐の夜に自分を呼ぶ声がする…などと言えば、ホラーかミステリー、または感動モノの童話あたりだろう。

どの予測にしても、自分の命が危険になるパターンでしかない。

パ○ラッシュと「もう眠いんだ」と言って一緒に眠りにつく気はないのだ。

 

「気のせい気のせい!」

 

とにかく、まだどこで雨漏りをしている可能性があるのだ。

急がねばならない。

 

………

………………

………………………………

 

「ようやく終わったんかな?」

 

一通りバケツやら茶碗やらを並べたはやては、ようやくリビングで落ち着くことができたた。

残念ながら停電はまだ復旧しておらず、テレビもラジオ(コンセント式)もただの置物状態のまま。

電池がないのも変化がないので、明かりは相変わらず小さな蝋燭…これでは本も読めない。

いっそのこと寝てしまおうかとも思ったのだが、あまり不健康な生活をしてふ、ふと……ふ、と………のも、あまりよろしくはない。そ、そう、女の子として!相手が誰とかなんて想像もしていない!

 

「?……………………………………なんやろ?」

 

またどこからか、自分を呼ぶ声が聞こえたような気がしたのだ。

停電のせいでテレビも電話もラジオも置物だし、目覚まし時計なんてセットしていないし、携帯電話はまだ持っていない。

 

「………うん、うちのどこにも音鳴るようなもん、ないはずやんな?」

 

となるとやはり気のせいか?

先程から、風が雨水を叩きつける音、風向きが変わって窓が殴られているような音…継続的に扉を叩くような音以外は何の音も聞こえないのだ。

 

念のために玄関を開けてみるべき?

 

ほんの少しだけそんな思考がよぎるが、あまり乗り気にはならない。

こんな雨の日に、誰が好き好んで扉を開けたがるというのか。

風がきついせいで、家の外へ出なくても濡れてしまう可能性が高い。

でも気になりは、する…。

 

好奇心に負けたはやては一度だけ外を覗くことにした。

決して恐怖心に負けたわけでも、怖いもの見たさでもない。

 

そしてはやては玄関を少し開ける。

車椅子に乗っている以上、のぞき窓には届かないのだ。

するとそこには鯉のぼりがいた。

…いや、冗談ではなく鯉のぼりだ。

電柱に上下の口の先をくっつけて舌を出した、やや短めの青い鯉のぼり。

風が強いおかげでバサバサと言いながら元気に低空を泳いでいる。

あ、風が弱くなって地面に落ちた。

ベチャッと妙に重い音と共に、鯉のぼりは地面に打ち上げられた。

 

「ようやく開けたな!」

 

鯉のぼり…ではなく青い合羽を着こんだフォルテは、ものすごく怒った顔で叫んだ。

 

………

………………

………………………………

 

「ガスが生きてて本当に助かった…」

 

ずぶ濡れになっていた鯉のぼり…改めフォルテは、持参していた服に着替えてのんびり髪を拭いていた。

シャワーというか、風呂は人類の英知の結晶である。

 

「フォルテくんの声、天気のせいか聞こえへんくてなぁ…気ぃつかんでホンマにごめんな?でもこれだけは言わしてほしいねん。こんな嵐の中でなんで鯉のぼりごっこしとるんや!?」

 

「誰が好き好んでそんな命懸けの遊びなんぞするか!!大体なんだその鯉のぼりごっこって!?そのままお空の向こうに昇ってっちゃうだろうがっ!?遊びに来ただけじゃんかよ!!」

 

「この嵐の中!?今台風が来てんねんで!?暴風警報出てたやろ!?」

 

「…なにそれ?」

 

「あかん…何かこう…根本的なところでなんかそう、あかんわ…」

 

とても真剣に何をしていたのかわからなかったはやてとしては、命懸けの謎の遊びをしていたと言われる方がまだ納得いったのだ。

自宅前の電柱で鯉のぼりになっている知り合いを見る、なんて奇抜な経験をする人間なんて、おそらく歴史上はやてが初めてだろう。

さすがに遊びに来たとか、暴風警報が出てるのを知らないとか、ちょっと予想外だが。

 

「つーかさ…家の人は?」

 

「あー…今仕事でイギリスに…」

 

「そっか、ならちょうど良かったかな?」

 

「なにが?」

 

ガサゴソとフォルテは持ってきたリュックサックを漁りだした。

登山にでも行くのかと聞きたくなるような大きなリュックの中から出てきたのは、ランタン(電池式)、ラジオ(電池式)、非常用食料、ガスバーナー、水、着替え、非常用毛布、タオル、トランプ等の玩具、無線機、小型端末以下よくわからない謎の機械複数。

 

「どんだけ入っとんねん!?四次元リュックか!?」

 

「いや…さすがにそれは作れなくね?科学技術的にはあと五百年は無理だよ?」

 

フォルテは呆れ顔でそう言うが、あきらかにリュックに入る総質量を超えている。

 

なんやねんその小型冷蔵庫らしい機械は?

発電機?ああ、確かに大事やな。今みたいに停電してるときには。

そっちの掃除機みたいな機械は?

濾過装置?ああ、確かに大事やな。水道が使われへんくなったらな。

 

「あんたが備えてんのはアルマゲドンか!?避難所行かんでもしばらく生きて行けるやんか!」

 

「失礼な、せめて防空壕でもないとさすがに僕でも死ぬ」

 

「それ以外に足りひんもんないやないか!!」

 

「あるぞ?具体的には軍事装備一式」

 

「立ち位置が軍人側かい!民間人ちゃうんかいな!?」

 

「アルマゲドンで生き残るには民間人じゃきつくない?」

 

なんて言うたらええんか…ボケ要員として逸材級とちゃう?

ホンマに日本に来て間もないんか!?

 

「もう一度言うけど、暇だったから遊びに来た」

 

「…嘘やろそれ、この嵐の中やで?そもそもその荷物が普通ちゃうし…」

 

「遊びたいもんは遊びたいんだ。この荷物のことなら心配性の伯父さんに言ってほしい。心配の方向性について激しく問い詰めたかったけど、『せめてこれだけは持っていきなさい』ってさ」

 

「…フォルテくんの伯父さん絶対おかしい」

 

「気が合う、僕もそう思ってた………筋肉フェチだし」

 

「凄まじいネタキャラなんは今の一言でようわかった、フォルテくんも苦労してるんやなぁ」

 

ホンマにちょっと泣けてきた。

フォルテくんはホンマにまともな家庭環境で暮らせてるんか?

伯父さんが筋肉フェチとか嫌やで!?

………グレアムおじさんはちゃうやんな?会ったことないから心配になってきてんけど?

 

「ひょっとして、実はフォルテくんもの凄く鍛えてたりするん?」

 

「筋肉達磨になる予定はないよ?技だけ…力を使わない柔術とかだけちょっとやってる」

 

「筋肉達磨って…うん、なんかごめんな?」

 

あかん、本格的に泣けてきた。

 

「さてと…八神さんはどうしたい?何して遊ぶ?」

 

そう言うと、フォルテくんはトランプやUNOなどの玩具を指さした。

なにか箱のような物体があったから聞いてみたところ、フランスの人生ゲームだそうだ。

 

「じゃあ、人生ゲームで…でもフランス語読まれへんで?」

 

「オッケー、翻訳するよ」

 

「どっか手作りっぽい感じするな…」

 

「かなり田舎で見つけたやつだからね。あの地方発祥の人生ゲームで、大枠のルールだけが決まっていて、細かいルールは自分達で作って遊ぶらしい。これは細かいルールも向こうで書いてもらってるやつだけど」

 

もの凄く面白そうな田舎だった。

しばらくルーレットを回して稼ぐことに専念する。

でも専念しすぎて………

 

「なんで小学生で5億稼ぐねん!?この人生ゲームおかしいやろ!」

 

「僕なんて、まだ幼稚園卒園してもいないのに100億の借金あるんだよ…?人生詰んでるだろ…どうやって挽回すればいいのこれ?」

 

更にルーレットを回して………

 

「何がどうなっとるんや…なんで無人島なんて強制で買わされなあかんねん!?なんで一晩で沈んでんな、20億の無人島~~~~!!!!」

 

「あ、あれ?やけになって買った株が、ものすごい額に跳ね上がっただ、と…?バブルなのかこれ?この国の経済、どうなってんだ…?なんで1万で買って80億になるんだ…?」

 

更に更にルーレットを回して………

 

「う、宇宙人が攻めてきたやて?しかもそのせいで油田が干上がったぁ?ちょ~~待ちいや!どんな人生や!?これ地球ちゃうんか!?」

 

「なぜだ………200兆の借金背負ったまま一国の大統領だと?この国の国民は本当に何を考えてるんだ!?この国本気で終了するぞっ!?」

 

更に更に更にルーレットを回して………

 

「よっしゃ!コロニー開発事業で大儲けや!もうこの世界について考えたらアカンな!そうしよ!そうせなアカンわ!」

 

「正気か…?国は破産寸前なのに近隣国に戦争しかけやがった…戦争の結果はルーレット回してっと………7?7だと…はぁ!?新兵器の開発に成功して勝利したぁっ!?近隣国どんだけ弱いんだよ!?この国もよく新兵器開発する余力あったな!兵士なんて一人も雇う余裕ないんだぞ!?」

 

更に更に更に更にルーレットを回して………

 

「………コロニー落し?え、うちのコロニー公社は…?壊滅?宇宙海賊に新事業の資源衛星も制圧された?………討伐軍編成や!フォルテくん、軍出して!資金はなんとでもなるわ!!」

 

「討伐軍は良いんだけど八神さん…ちょっと見てくれ。こっちにはコロニーが落ちてきたんだ。なのに僕の国、なぜかコロニーが落ちてきた星でバブル経済になっているんだけど…どうしよう?この国の国家事業がものすごく心配なんだけど…なにやってるんだろうな、僕の国?」

 

とてつもなくカオスな人生を送りつつも、二人してとても楽しく一日を過ごした。

 

…正直、こんな人生嫌やけどな?

カオスすぎるで…フランスの田舎って。

 

「さて…八神さん、いつものおまじないの時間だ」

 

「あー…ホンマに律儀というか、なんというか…正直恥ずかしいねんで?」

 

「気にしないで、僕は気にしない」

 

そういう問題ちゃうねんけどなぁ。

 

そんな想いを秘めつつも、フォルテと触れ合うことに抵抗があるわけでもないので素直に両手を差し出した。

若干顔が赤くなったことには運良く気づかれなかったようだ。

はやての両手を握り、フォルテはいつものように呪文を唱え始めた。

…英語でもおまじないは呪文、と誰に向けている訳でもない言い訳をしながら。

別に英語の意味がわからないとか、そういうのを気にしている訳では断じてない。

 

「………The feelings should always reinforce your body. I try to guarantee.…おしまい。」

 

「ふぅー…なんか、おまじないのたびに脚がこそばいような気がするんは、やっぱり気のせいとちゃうと思うんやけど…いっぺん、石田先生の前でこれやってみせてくれへん?」

 

「嫌」

 

ものすっっっごく、あっさりと拒否しおった。

これ、実際なんか知ってますって言うてるようなもんとちゃうか?

 

「他人の前で出来るほど肝は座ってない。あと、医者はあんまり好きじゃない」

 

「あー…」

 

納得。

恥ずかしいと思ってたんは意外やし、さっきの「気にしてない」発言との矛盾についても物言いたかったけど、「医者はあんまり好きじゃない」って言葉から意味がわかってもうた。

フォルテくんの親も事故で死んでる。

事故の内容までは聞いてないけど、事故の後の流れに医者は絶対いる。

搬送された病院で治療されても助からなかったのか、ひょっとしたら死亡確認しかしていないのかもしれない。

うちはもう覚えてることがほとんどないから共感できるとは言われへんけど、親を助けてくれなかった、あるいは何もしなかったのが医者、という印象から医者嫌いになるのは自然な流れ。

特に自分もそうなので人のことを言えはしないけど、まだ子供…8歳で親が既にいないというのはそれなりに大きい出来事に分類される。

親のことをほとんど覚えていない自分はまだしも、フォルテくんはしっかり覚えてるように見える。

…確認はしていないけど。

だから医者はあんまり好きじゃない、と。

 

「難儀な…ホンマにフォルテくん、ますます医者になったほうがええ気がしてくるわ」

 

「却下。僕の夢は科学者、ところにより一時テロリストだ」

 

「まだ言うとったんか…」

 

いつまでネタを引っ張る気なのかちょっと気になる。

 

この後もしばらく遊んで、夕方になるとフォルテくんは帰っていった。

本当に遊びに来ただけだったのか…とちょっと気が抜けたのは内緒だ。

 

 

 




まだちょっとだけ日常(?)回は続きます。
ユーノ?時系列的には来年です。
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