花開院家とぬらりひょんの孫   作:よしの桜

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長いので分割しました。


ゆらとリクオの学生生活(前編)

妖はとても酒が好きな種族である。

新築祝いに宴会、快気祝いに宴会、新しい仲間が入れば宴会、何もない日でも宴会。

理由をつけては酒がふるまわれ、宴会に突入するのは人間以上の熱心さだ。

花開院家の3人が来た日にも宴会は当然開かれた。

ゆらは死守した代わりにマミルと竜二は遠慮なく酒を突っ込まれてしまった。

なんとか竜二は自分の部屋に戻れたが、マミルはどうなったかわからない。

翌朝、朝の光が入る部屋で竜二は軽い頭痛を覚えつつ布団から起き出した。

サイドテーブルにコップと水さしが置いてあったので遠慮なく水をいただく。こういう気遣いはできるのに本気で嫌がる酒は遠慮なく飲ませる図太さが妖達にはある。

ため息をついて、ふと掛布団を見る。

 

黒い何かがある。

悪魔的何かであった。

 

「わぁぁ?!」

 

人間は驚きすぎると声だけしか出ない物だと、今日竜二は学んだ。

 

 

 

「アレ? ああ、竜二さんの所に行ったんだ。奴良家最凶の付喪神だよ。脅かし系のね」

「ああ、あやつ、竜二君の所に行ったんか。あの悲鳴はあやつにしか出せん。気の毒にのぉ」

「まぁ、あの付喪神さん竜二さんの所に? ビックリしたでしょう」

 

朝食の席で奴良3人に竜二の所に来た黒いアレの事を問いただすと、リクオと若菜は平然と返し、ぬらりひょんだけは同情してくれた。

マミルは頭痛が治らないのでまだ自室で寝ているが、ゆらは元気に卵かけご飯を口に入れながら黙って聞いている。ゆらも「アレ」が何なのか察しがついたのだろう。突っ込まないだけの分別はあるらしい。

 

「昨日の宴会で竜二さん、脅かし系妖達と平然と飲んでたでしょう。何としてでも脅かすって息巻いていたからね、最凶さんが登場しちゃったんだと思うよ。

いつもの彼はおとなしいんだよ。あの形で誤解されるけど、作った職人さんはなすびの皿のつもりだったからね」

「そうそう、ナスのつもりだったらしいわよね。ちょっと個性的すぎる形だけど」

「かわいそうに、彼は一度も普通の皿として使われることなく付喪神になっちゃったけど」

「ちょっと形がねぇ」

「皿を最初に手にするのは料理をする女だからな・・・」

 

ぬらりひょんとリクオは苦笑いをするが、想像がつく。

あの皿の形はどう見ても黒いゴ○。アレに料理を盛りつけよう等と考える者は皆無だろう。割られなかった事だけでも奇跡に近い。

 

「今度来たら滅する」

 

誓いを新たにする竜二の横で、リクオとゆらは食事が終わったのでごちそうさまと言って席を立つ。

竜二は休校届を出しているのでこれから受験勉強をするだけだが、リクオとゆらは中学2年生、登校時間が迫っている。

 

「・・・奴良くん、学校行ってるん?」

「あれ、知らなかったんだ。しばらく前から行ってるよ」

 

てっきり行っていないと思っていた花開院家2人は驚いてリクオを見つめる。

 

「まぁ、ワシらは学生生活が終わると思っていたんだけどなぁ」

 

ぬらりひょんは苦虫を噛み潰したような表情になって肩を落とす。

リクオも苦笑いして部屋から出る。

ゆらは事情を登校の時に聞こうと思いながら、時計を確認しながら部屋を出た。

 

 

 

 

護衛達と電車に乗るかと思ったら、車に乗って学校の近くで降ろされた。

雪女のつららと車の中で口論してしまったゆらは、学校に着く前に事情が知りたくなってリクオの横に急いで並んで問い正した。

 

「ちょっと前に我が家に文部省のお役人と教育長と警察署長と校長先生と担任の先生が来てね」

「ほぉぉ~」

「・・・学校通ってください、って泣きつかれた」

「なんで?」

 

あの奴良家に5人の大人が雁首並べてお辞儀をする様を想像してから首をひねる。

リクオとしても、あの時の図を今一度味わいたいとは思っていないので簡素に説明、というよりわかりやすいだろう目の前の人物を指さした。

 

校門の前で仁王立ちしている男子学生が一人。

最近見たお坊ちゃま、いや皇太子の息子の桐生少年だった。

 

「彼、僕達の一つ下なんだって」

「・・・えっと、確か桐生殿下って皇族御用達のあの学校に通ってはったよね?」

「そうだよ、転校してきたんだよ」

 

軽く笑うリクオを見て桐生少年を見る事2度、リクオはともかく殿下はリクオをロックオンしている様に見える。

桐生少年の横や後ろには結構多くの野次馬がいる。

 

「来たな、リクオ君! 今日こそ当てて見せる!!」

 

あと数歩という所でリクオが止まったのでゆらも止まると、それを合図にしたのか、桐生がオーバーアクションで考えるポーズをとる。

3秒後にオーバーアクションでリクオを指さす。

 

「君は猫娘ならぬ、猫息子だ!」

「全然違います。 というか初めに会った時にソレ、言いましたよね」

「あああ! 欲望が口に出てしまった! 猫息子なら良いんじゃないかって! 猫耳とか猫シッポとか、出てくれたら触れるのにぃ!!」

 

泣き崩れる桐生を見終わった野次馬達も三々五々散り始めた。

リクオはどうしようか迷うそぶりをしてから、桐生の横を通り過ぎようとして復活した桐生に肩を掴まれた。

 

「明日こそ、君の妖としての種族を当てて見せる。というか、今日もお昼は一緒に食べよう」

「・・・クラスの子達と食べた方がいいと思うんだけど」

「ははは、400年も待ったんだよ、僕達皇族はこの機会を! ではまたお昼に!」

 

清継を思わる強引さを見せながら、桐生は小走りに下駄箱へと去って行く。

時間を見れば、確かに教室に向かわなければいけない時間だ。

 

「もしかして、毎日アレやってはるの?」

「1日1回に限定にしてもらったけどね。

さすがは皇族、かなりの数の鬼の個体名言って確認してくるよ。ボクの頭に角無いのにねぇ」

「鬼かぁ・・・」

 

夜のリクオを想像してゆらは苦笑いした。確かに過去の自分はリクオの種族がわからなかった。自己紹介が無ければわからなかったかもしれない。

 

「鬼種じゃないって前回言ったから、違う妖が出てくると思ったんだけど、猫ねぇ」

「リクオ様が猫とか、どうしたらあの貧弱種族に見えるんですか!」

「人間からしたら、鬼以外だったら何でもいいんじゃないかなぁ」

 

ぷんすか怒り気味のつららに宥めて言うリクオの言葉にゆらも納得する。

ゆらも陰陽術師だ。仕事先で鬼の仕業と言えば青ざめるが、猫やネズミの妖が加害者と言えば妙に居丈高に退治を主張する依頼主は数多く見て来たからだ。

 

リクオの浮世絵町での生活は、桐生殿下の乱入で平和になっているようだった。

 

 

昼休みになると、桐生は宣言通りにリクオのクラスに現れ、リクオとなぜか突入してきた清継と他クラスメイト達がわいわい昼食を囲んでいる。

それを横目に、ゆらはノートを見ながらため息をついた。

 

「あああ。英語と化学と数学がついて行けてないぃぃ」

「ま、まぁまぁ、その内追いつくよ」

「うんうん、頑張って」

「ノート、コピーしていいから。リクオ君も3日で取り返したから」

 

ゆらのグチをカナと巻と鳥居が慰めてくれる。

というか、リクオは先程英語の授業で当てられてもスラスラ答えていた。ゆらと同程度の休校率なはずなのに。

 

「奴良くん、私を置いて行かはった。ショックや、仲間と油断してたわ」

「勉強に仲間も何もないのよ・・・所詮はライバルって奴よね」

「ゆらちゃん、あと1カ月で学力テストあるよ。がんば」

「1か月後の事より明日の英語の小テストが大変そうだけど」

「この世に英語と化学と数学がなかったらぁぁ!!」

 

ゆらは学生が必ず言う呪いを吐きながら机に沈没したが、すぐに復帰して弁当を出した。

 

「おお、ゆらちゃんが弁当を出してきた! 自分で作ったの?」

「いつもはパンなのに・・・」

「いや、コレは奴良くんの・・・」

 

ハタ、と気づいて口を閉じた。しかしすでに遅し、巻は訝し気に鳥居は楽し気に、そしてカナが真剣にゆらを見つめている。

 

「いやいやいや、奴良くんのお弁当を参考に、自分で作ったんや!」

 

苦しく繋いでみたが、3人共目が怪しいと言っている。

3人の視線を知らぬ顔とつくろってゆらは弁当を開ける。

開けて中を見ると、そこにあるのは中学生が作ったとは思えない弁当だった。

 

「い、今は冷凍食品多いんやで。私でもこんな弁当作れちゃうもんや!」

「へぇ、ゆらちゃんお小遣い、増えたんだ」

「まあな! 私はこれでも花開院家当主や!」

 

3人共、自分で弁当を作らないので冷凍のくだりで納得してくれたらしい。

厚焼き玉子を口に入れる。言えなかったが美味しい。自分で作るよりも。いや、ゆらは厚焼き玉子の形に成功したことはない。いつもそぼろ卵だ。

それにわかる。コレを作ったのはきっとつららだ。

 

「え、ゆらちゃんなんで泣いてるの?」

 

ギョっとしたカナに言われて気付いた。ゆらは泣いていたのだ。

感動の涙? 違う、これは悔し涙だ。

 

ゆらは勘が鋭い。この厚焼き玉子につららの宣言を感じ取ったのだ。

 

『ふふふ、私の厚焼き玉子を食べてみなさい。

所詮アナタの卵そぼろとは比べ物にならない味と食感。

ほーっほっほっほ、これがアナタと私の差よ!!』

 

人間、いや食を愛する者の差よ、と高笑いする幻のつららにゆらは敗北した。

敗北しつつも厚焼き玉子を美味しく完食した。

 

「そんなに厚焼き玉子が好きだったんだ・・・はい、じゃぁ私のもあげる」

「おおきに」

 

カナに生暖かい目で見られながらお弁当箱に入れられた厚焼き玉子に、ゆらは食いついた。

これも美味しい。しかし、ゆらは勘が鋭い少女だった。

この厚焼き玉子、わかる、これはカナが作ったものだ。

 

『ふふふ、私でもこれ位の厚焼き玉子が作れるのよ、え、ゆらちゃんの卵そぼろ?

・・・がんば!』

「あ、この厚焼き玉子はあたしが作って・・・ゆ、ゆらちゃん、どうしたの、さっきより泣いているよ?!」

 

完敗だった。

 

しかし、ゆらだって負けない。

 

「いいんや、私は陰陽術師の女、食べ専なんや。こないに美味しく作れなくても良いんや。

悔しゅうない。これは美味しい物を食べた感動の涙や。悔しゅうない、悔しゅう・・・」

 

負けてない。

 

 

 




ゆらちゃんのお弁当は若菜さんの手作りお弁当です。厚焼き玉子のみ、つらら作。
最後まで読んでいただきありがとうございます。続きます(笑
色々訂正しました。
2016.10/7
気使い×→気遣い
なして×→なんで
御用達し×→御用達
所々の文末
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