リリカルなのはvivid―アナザーメモリーズ― 作:NOマル
笛の音は、少女の耳に、しっかりと届いた。
「――――あっ、ボクの出番だ」
屋敷の自室にて、寝転がっていたレヴィ。寝ている状態から跳ね起き、軽くストレッチする。
『呼ばれた様だな、レヴィよ』
『お気をつけて』
『頑張って下さいね』
「うん、行ってきま~~す!とうっ!」
念話で声をかける三人。
レヴィはビシッ!と敬礼した後、飛び上がる。すると、一瞬で姿が水色の光と変化。
電気を迸らせながら、呼び主の元へと向かった。
◇◆◇◆
僅か数秒で、キバの元へと駆けつけた。水色の光は、まずクラーケンに体当たり。
「グゲッ!?」
当たった瞬間、電流が走る。キバから離れ、そのまま地面に尻餅をつく。
『待ってたわよ、レヴィ!』
『いっくぞ~~!』
レヴィは、上げられたキバの左手目掛け、向かってくる。キバは、その光を掴んだ。
その瞬間、光は形を成していく。
鋭い刃を備える紺色のブーメラン、【魔雷刃・バルフィスライサー】。左腕、胸元を鎖が何重にも巻き付き、弾け飛んだ。
体は、雷を彷彿とさせる形状の鎧へと、瞳は水色へと変化した。
「よっ!」
バルフィスライサーを逆手に持ち変え、触手を断ち切る。絡み付いている残りの触手を捨て、キバは跳ね起きる。
レヴィが憑依する事によって変身した、【キバ・ライトニングフォーム】。スピード、機動性に特化した姿。この時、人格はレヴィ自身となる。
キバは、腰を低くし、武器を肩に担ぎ、相手を見据える。
「さ~てっ……行くぞ~~!!」
スタートダッシュを切り、クラーケンに突撃するキバ。クラーケンも体勢を立て直し、触手を伸ばしていく。
「おりゃおりゃおりゃ~~!!」
ほんの少し体を反らす事でかわし、回避と同時に攻撃を繰り出していく。スピードを緩めず、武器を振るい、数多の触手を切り落としていく。気づけば、もう目前にまで迫ってきていた。
「ギッ、ガァ!!」
「よいしょっ!」
近距離で触手を振るうクラーケン。キバは海老反りでかわし、背後に回る。
「そ~~れっ!」
「ギイッ!?」
下から一気に振り上げ、背中を切り裂いた。クラーケンはすぐに振り向く。しかし、キバの連撃は止まらない。上下左右、斜めと予測不可能な斬撃。その全てが、クラーケンにダメージを与えていく。
「ギギッ!」
「危なっ!?」
咄嗟に、クラーケンは反撃として墨を数発、吐き出す。
キバは反射的にかわし、バックステップで距離を取る。その間に、真っ直ぐになっていたバルフィスライサーを、九十度に折り曲げる。
「とりゃ~~!!」
振りかぶり、相手目掛けて投擲する。風切り音を鳴らしながら、クラーケンに直撃。一撃、二撃、三撃と、追撃を行う。
最後の一撃でクラーケンを怯ませた後、持ち主の元へと返ってくる。まるで、意思を持っているかの様に、予め上げていた左手に収まった。
「レヴィ、とっとと決めちゃって」
「あいさ~」
キバーラの言葉に敬礼で答える。バルフィスライサーを両手で持ち、キバーラの元に近づけた。
「【ライトニングバイト】!」
武器に噛み付き、魔皇力を注ぎ込む。
辺りが闇に包まれ、現れた“水色の三日月”がキバを照らす。
キバはバルフィスライサーを逆手に持ち、腰を低くする。一呼吸置き、閉じていた瞼を、見開いた。
「てりゃあああああっ!!」
一回転振り回し、敵めがけて投擲。ヒュン!と空を切りながら、回転速度を上げていく。
クラーケンはたじろぎながらも、触手を伸ばし、口から墨を吐く。だが、それは無駄な抵抗。それらは悉く切り裂かれ、地面に落ちる。
そして、目前にまで迫っていた。
「グギャッ!?」
まず、胴体を大きく切り裂いた。方向転換し、今度は背中を切りつける。またも旋回し、胴体を。この繰り返しが、何度も行われていた。
そして、十撃目を与えた後、空高く舞い上がるバルフィスライサー。
全身を切り刻まれ、満身創痍のクラーケン。目で追う様に、見上げた。
三日月を背に、キバは高く跳躍。バルフィスライサーを左手で掴み、逆手に持ち替えた。
「おぉりゃあああああ!!」
体を捻りながら、急降下していくキバ。そして、頭から下まで、一刀両断。その軌跡を追い、電撃が迸る。
【ライトニング・スラッシャー】
待機状態のバルニフィカスを模した紋章が浮かび上がり、クラーケンを撃破。その体が、ステンドグラス状に砕け散り、内包されていたライフエナジーが放出される。
それに反応するかの様に、キャッスルドランが出現。
「やっほ~~キャッスルドラ~~ン!」
気楽に手を振ると、咆哮で返事をするキャッスルドラン。ライフエナジーを食事した後、そのまま飛び去っていった。
闇が晴れ、元の天候に戻る。太陽はほんの少し姿を見せており、空には一番星が光っていた。
「ふぅ、終わった終わった」
『助かったよ、レヴィ』
「いいっていいって」
念話で労うネクサス。その言葉にレヴィは喜び、武器を器用に回す。
『そうだ!レヴィ、アインハルトさんが』
「ん?ああ、そういえば一緒に買い物してたんだったっけ?」
アインハルトの事を思い出し、レヴィは彼女を探す。そして、見つけた。
「あ、いたいた」
「…………」
クラーケンからの攻撃を受け、痛手を負っているにも関わらず、アインハルトは立っていた。レヴィは、そのまま歩み寄る。
しかし、歩みを止めた。
「……許さない」
怒り、憎悪といった、負の感情が込められた瞳で、キバを睨み付けた。歯を食い縛り、拳を握り締める。
不意に、一歩ずつ歩み出すアインハルト。やがてそれは、徐に速くなっていく。
「――――武装形態」
魔法陣を展開。大人の姿となり、高く跳躍した。
「キバァアアアアアア!!!」
覇王は咆哮し、魔王めがけて拳を振り下ろす。
「うわっ!?」
「でやあっ!!」
「危なっ!」
間一髪、回避する事に成功。唐突な事で予測できず、尻餅をついてしまうレヴィ。
アインハルトの攻撃は収まらない。次に蹴り、裏拳。更に踵落とし。覇王の猛攻は、空を切り、地面を削る。
家で楽しく過ごしていた時の彼女とは、まるで別人の様だ。あまりの変貌ぶりに戸惑いながらも、レヴィは避けていく。
出来る限り、彼女の攻撃が当たらない様に。
「ちょっ、待った待った!やめてよ!」
「うあああ!!」
「まっ、待ってってば!!」
必死に声をかけるも、拳が止まる事はない。寧ろ、段々と素早さと鋭さが増している様にも思える。
それに対して、未知の敵――――ネオファンガイアと渡り合える位の攻撃力と、並の武器では傷一つ付かない程の防御力を誇るキバの鎧。無論、人間の拳など、威力は皆無に等しい。例え、魔力で強化されたとしてもだ。寧ろ、攻撃した方が、痛手を負う羽目になる。
「だから、落ち着いてって!」
「くっ!」
何とか隙を突き、後ろに回り込んで羽交い締めにする。アインハルトは表情を険しくしながら、激しく抵抗。
力を強くしたら、彼女の体を壊してしまう。弱くしたら、また猛攻の嵐に巻き込まれる。
中々に難しい、力の微調整を行いながら、レヴィは何とか取り押さえていた。
『レヴィ!僕と変わって!』
『ネ、ネクッ!?でも』
『いいから早く!』
『う……うん!』
念話に驚きながらも、ここはネクサスに任せる事にした。キバの人格が、レヴィからネクサスに変わる。そして、ライトニングフォームから、通常のキバフォームに。
「はあっ!」
「うわっ!」
形態変化の隙を狙い、アインハルトは拘束から抜け出し、キバの頭を掴んで背負い投げをお見舞いする。
視界が一回転し、地面に叩きつけられてしまう。すぐに眼前を拳が迫るが、顔を反らして回避。そのまま起き上がり、アインハルトから距離を取る。
「ちょっとちょっと、どうすんのよこれ……!」
やがて、海辺の手すりに追いやられる。
アインハルトは、依然として狙いを定めたままだ。何やら、ぶつぶつと何かを呟いている。
「よくも、クラウスを……オリヴィエを……仲間を……」
「…………」
「彼は貴方を信じていた。
その言葉に、キバーラは表情を曇らせる。
睥睨したまま、アインハルトはキバに突進。走りながら、“構え”を取った。
この“構え”には、身に覚えがある。かつて、彼女が見せてくれた技だ。
彼女との距離は、もう目前にまで迫っている。左右に回避しきれない。だからといって、真っ向から受けたら、彼女の拳を壊してしまう。
『キバーラ……変身を解除して』
『はぁ!?そんな事出来る訳ないでしょ!?』
『他に方法が思い付かない!頼むキバーラ!』
『駄目よ!絶対に駄目!そんな事したらタダじゃ済まな――――』
有無を言わせず、ネクサスはバックルからキバーラを強引に取り外した。そのまま、横に放る。
「覇王――――」
やがて、キバの鎧は消失していく。
「断空――――」
変身が、解除された。
「
奥義が、解き放たれた。