リリカルなのはvivid―アナザーメモリーズ―   作:NOマル

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regret―過去の真実―

映像が途切れ、現実に戻される。

 

(今のは、クラウスの……“魔王と戦う”直前の、記憶……?)

 

唐突な事で混乱するアインハルト。しかし、目の前で行われたイデアの手による非人道的な行いを目にし、先程の記憶を得た。

 

これが、覇王と魔王の決闘の裏に隠された、真実。

 

「確かに私は処刑人。だが、言っただろう?君にはまだやってもらわなければならない事がある、とね」

 

こちらはこちらで、作業を終えていた。イデアは空いている手で、魔法陣を形成。ミッド、ベルカとは違う、別の術式を思わせる形をしていた。それを、ミノタウロスの頭上に向ける。すると、魔法陣はイデアの手から離れ、宙に浮く。

 

「これくらいかな」

 

イデアは、ミノタウロスの頭から手を離し、後ろへ下がる。

両手は垂れ下がり、膝立ちで俯くミノタウロス。その意識は、もう二度と起きない。人格は、完全に消されてしまった。

徐に、魔法陣が降りていく。それは自我を失った異形の者の肉体を包み込む。まるで、肉体に馴染んでいくかの様に、魔法陣は溶け込んでいった。

 

「立て」

 

唐突に命令するイデア。

すると、その言葉に、素直に応じるミノタウロス。反論もせず、淡々と立ち上がった。

見れば、瞳に生気は宿っていない。動作も鈍く、まるでゾンビの様。

 

「しっかりと働いてもらうぞ?死ぬまでな」

 

今度は、アインハルトに視線を向ける。イデアが近づいてくるにつれ、目付きを鋭くさせるアインハルト。

 

「見苦しい所を見せてしまって申し訳ない。どんな生き物でも、躾は大事だろう?」

「……あなたが」

「ん?」

「あなたが、クラウスを利用して…魔王と戦わせる様に、仕向けた……!」

 

可憐な容姿でありながら、それは正に親の敵を見るかの如く、鋭い眼光だった。

対し、こちらは感嘆の声を漏らす

 

「この様子だと、今気づいた様だな。てっきり、私に対する憎悪があるものだと思っていたのに。まあ、自己紹介の時点で、何となく勘づいてはいたが」

 

腕を組み、自分の中で納得するイデア。アインハルトは、尚も威嚇している。

 

「あなたは許さない……絶対に!!」

「おうおう、怖い怖い。先祖に比べ、愛らしいお嬢さんかと思えば、威勢だけは達者なものだ。“威勢だけ”は、な」

 

肩を揺らし、おどけた様子で語るイデア。その状態で何が出来る?そう言いたげな雰囲気を感じ取り、アインハルトは歯を噛み締める。今の自分は、何も出来ない。実に、無力だ。

 

「これでも、私は覇王の元に仕えていた身でな。ただ、独断の行動を怪しまれたのか、クラウスから呼び出されてね。闇のキバも出現した訳だし、頃合いと思い、親友同士ぶつけてやったという訳さ」

 

結果、覇王は戦いの中で命を落とした。

それを皮切りに、魔王はファンガイア達を率いて、レジェンドルガに宣戦布告。全面戦争が勃発され、互いに滅亡の道へと歩む事となった。

歴史書では“全滅した”、と書かれてはいるが、それは間違いだ。全滅したのはレジェンドルガを含めた魔族。魔王、そして僅か少数にまで減少したファンガイア達は、絶滅の危機を逃れる為、人間達から離れ、歴史の表舞台から姿を消した。

 

「他にも免れた種族が一つ存在する。“ゴースト族”と言うのだが、まあこれは別に説明しなくても良いだろう」

「あなたは……一体、何者なんですか」

 

自分が目にした“あの出来事”は、およそ千年以上も前の事。よくよく考えれば、何故、“今の時代”に、自分の目の前にいるのか?

恐る恐る、アインハルトは問い掛ける。

 

「私はイデア、“次元の探求者”。今は、それだけ伝えれば十分さ」

 

突如、警報音と思わしき、ブザーが鳴り出す。

 

「……何事だ?」

「マスターイデア、侵入者です」

「モニターに写し出せ」

「はっ!」

 

機械を操作し、メフィストは、映像を表示させる。

そこは、この場所とよく似た廃墟。そこにいるのはキバ。フレアフォームとなり、ゲンホウファンガイアを撃破した直後。

 

「ふむ……囚われのお姫様を助けにきたか」

「ネクサスさん……」

 

友人の姿を目にし、安堵するアインハルト。モニターを見ながら、顔のレンズを指でなぞるイデア。

 

「そして、ファンガイアを撃破。うむ、予想通り」

 

そう呟くと、メフィストに代わり、イデアは片手でモニターを操作する。次々にスライドさせ、不意に指を止めた。スイッチらしきパネルを、一回押す。すると、向こうの映像に変化が。

廃墟の一帯に、大きなバリアが張られた。キバもそれに気づくが、時既に遅し。閉じ込められてしまった。

 

「こんな言葉がある。“飛んで火に入る夏の虫”っとね。害虫諸共吹き飛ばすつもりだったが、これはこれで好都合」

 

再度、モニターを操作、赤い色のパネルを前に持っていく。見るからに、危険な信号のパネルを目にするアインハルト。

 

「な、何を……」

「ん~?気になるかい?」

 

顔だけを動かし、アインハルトと目を合わせる。バイザーで表情は見えないが、邪悪な笑みを浮かべている事だろう。

 

「簡単だよ。これを押すだけで、彼の体がバラバラに吹き飛ぶ。それだけ言えば、分かるよねぇ?」

「そ、そんな……」

「さて、盛大な花火を上げようか」

 

パネルに指を押し、ロックを解除する。後は、もう一度、押すだけ。

それを、黙って見過ごせる訳がない。アインハルトは、直ぐ様立ち上がり、止めるべく、走り出す。

しかし、それ以上前に進めなかった。

 

「ううっ!!」

「邪魔をするな」

 

少女を縛る鎖が、真っ直ぐに張る。メフィストは片手で鎖を手にし、動きを止めていた。

それでも、アインハルトは足を踏み込み、前を目指す。だが、力及ばず、金属の音がジャラジャラと鳴るだけだ。それでも、歯を食い縛り、足を踏み込む。

突然、腹に衝撃が走った。

 

「がはっ……!?」

 

懐に膝蹴りを入れられ、膝から崩れ落ちる。ファウストは、追撃と言わんばかりか、再度蹴り上げた。顔を歪ませ、激しく咳き込むアインハルトは、地面を転がる。痛みに何とか耐えつつ、モニターに視線を向ける。

 

機械の指が、パネルに触れた。

 

「やめてぇええええええ!!!」

 

少女の叫びをかき消すかの如く、爆発音が轟いた。

 

モニターに映っていた廃墟が、まるで積み立てた積み木を崩すかの如く、崩壊していく。煙が立ち込め、瞬く間に瓦礫と化した。

 

「そんな……いやぁ……!」

 

絶望に満ちた表情を浮かべるアインハルト。蒼と紫の瞳から、光が失われていく。

 

「うむ、火薬の量が多すぎたかね。まあ、鎧自体に傷は付かないにせよ、あれほどの瓦礫に埋もれては、身動き取れまい」

 

小さく笑いながら、茫然とするアインハルトの側に寄るイデア。

 

「残念だったなぁ。白馬の王子様は現れなかった様だよ」

 

面白がる様に、耳元で囁く。アインハルトは、虚ろな表情を浮かべたまま、反応がない。

 

「馬鹿だよなぁ?あそこに来なければ、あんな目に遭わずに済んだものを。何故ここに来たのだろう?原因は?」

「…………」

「君しかいないよなぁ?」

 

虚ろな表情を浮かべるアインハルトに指を指すイデア。彼女はただただ、茫然としているだけだ。

 

「君も愚かだよなぁ。真実を知らずに、何の関係もない男の子と戦い、無惨に死なせるなんて」

「わ、わ……私は……」

「違う、とでもいいたいのかい?いいや、彼は君を助けに来たからあんな目に遭ったんだ。先祖の野望に縛られた挙げ句、君は友人を見殺しにしたんだよ」

 

イデアからの執拗な追い討ち。言葉の一つ一つが、少女の心を蝕んでいく。

彼は、死んでしまったのか……。原因は、自分だ。彼は必死に呼び掛けてくれたのに、自分はそれを拒んだ。自分から突き放して、拳を振るった。

しかし今、彼は自分を助けようとして、瓦礫の下敷きに。

 

「酷い娘だなぁ、本当に」

「…………」

「反論する余力もないか。まぁいい」

 

そう吐き捨て、アインハルトに近づくイデア。すると、掌から黒い塵の様な物質が溢れ出る。その物質――――ジェノムは、蛇の様な形状を取り、アインハルトの首元に噛み付く。

 

「っ!?」

 

思わず顔を歪めるアインハルト。

ジェノムはイデアの掌へと戻り、今度は小型のカプセルへと変化した。それを摘まみ、暫し眺めるイデア。満足した様に、それを懐に仕舞った。

 

「これで良し。後は――――」

 

突如、イデアの右の掌に電流が迸る。それは、やがて形を成していき、90センチ程の長さの刃となる。歪な所などない、見事に研磨された光の刀身。しかし、その輝きは実に暗く、深淵の闇を思わせる。

 

「データも取れた事だし、目的を果たした今、君はもう用済みだ」

 

興味なさげに、淡々と告げるイデア。ゆっくりと、刃を振り上げる。今、正に処刑が行われようとしていた。

 

「さようなら、覇王の末裔よ」

 

闇の刃が、振り下ろされた。迫り来る凶刃に、アインハルトは抵抗する意思を持てずにいる。

首元を押さえたまま、ぎゅっと瞳を閉じた。

 

 

 

 

――――ウェイクアップッ!!

 

 

 

 

“彼”が、やって来た。

 

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