リリカルなのはvivid―アナザーメモリーズ―   作:NOマル

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holiday―みんなでお出かけ―

三体のネオファンガイアを撃破して数日後。

アインハルトは、約束通り、ヴィヴィオとの模擬戦へと向かった。ネクサスもついていこうと思ったのだが、用事が出来てしまい、断念する事に。

 

「大丈夫です、ネクサスさん。私も、ちゃんと向き合ってきます」

 

彼女なりに、何か変化があったのか。微笑みながら、ネクサスにそう答える。

とはいえ、彼と一緒に行けない事に少し残念に思いながら、一人で向かった。

 

そして、ネクサスは家の地下にて、用事を済ませていた。

 

「……ナイト、ポーン。どんな感じ?」

 

厳しい面持ちをしながら、キバーラは二人の技師に尋ねる。

 

寝台の上で仰向けに寝転んでいるネクサス。下着一枚となった体の所々に、電極パッドの様な部品が取り付けられており、身体検査を行っている様だった。

 

アインハルトを救出する際、ネオファンガイアだけでなく、イデアとも交戦した。その時に、何かされてないか。異常がないかを確かめる為、こうして入念に検査を行っている。

 

「今の所、体に異常は見当たりませんな」

「キバの鎧も、特に問題はないね」

「そう」

 

ナイトは袖を、ポーンはマフラーを動かし、作業を行っている。

二人の見解は、異常なしとの事。

 

「鎧の調整と、身体検査はこれで終了です」

「ホロンも、メンテナンスしておいたよ」

「ありがとう、ナイト、ポーン」

 

ネクサスは二人に礼を述べ、寝台から起き上がる。取り付けられた器具を取り外し、衣服を着用。

 

「とりあえず、安心して良さそうね」

 

キバーラも、ほっと一息つく。

いつもは二人に対し、下僕の如く辛辣に接しているが、技術の腕は誰よりも信頼している。なにせ、彼女自身が二人の腕を見込み、スカウトしたくらいだ。そして、キバット族と協定関係にあったファンガイア族の(キング)に紹介。後にキバの鎧を作り上げた功績を称えられ、二人はナイトとポーンの称号を得る。光栄の極みと捉えており、自らの名として使う程。

この事から、キバーラに対して大恩があり、二人の頭は上がらない。

 

「それにしても、妙ね……」

「妙、というと?」

「どうしたの、キバーラ様?」

 

腕組みをし、疑問の声を上げるキバーラ。ナイトとポーンが彼女に問いかける。

 

「イデア自身の目的は、何だったんだろうって」

「何って……覇王の女の子を捕まえる為じゃないの?」

「そうね。でも、それだけかしら?」

「もしや、別の目的があったと?」

「奴はいくつもの策を講じる男よ。目的が一つだけっていうのは、あり得ない」

 

キバーラが推測するに、イデアには“もう一つの目的”があったのではないか?という事だ。

 

「そういえば……」

「どうしました、ネクサス殿?」

「何か、心当たりが?」

 

過去を振り返り、何かを思い出したのか、ネクサスが声を漏らす。

 

「アインハルトさんを助けようとして、あのネオファンガイアと戦っていた時、イデアは一切手を出してこなかったって思って」

「そういえば……。戦いに乗じて、ネオファンガイアごと、私達を消し去ろうとしても不思議じゃないものね」

「或いは、自分だけ逃走するとか。でも奴は、全く動こうとしなかった。強いて言うなら“見ていただけ”って事かな」

 

自らの手を出そうとせず、逃げようともせず、イデアはじっと観察していた。キバの戦う姿を。

 

「見ていた……もしや、観察していたというのか?」

「観察って、そりゃあ何度も何度も目にしているだろうけど」

「そう……“何度も何度も目にしている”のよ。奴は」

 

そう言い放つキバーラの言葉で、部屋一体に、重苦しい空気が充満する。

 

(何だろう。何か、嫌な事が待ち受けている様な……)

 

言い知れぬ不安を抱くネクサス。

こうしている間にも、イデアは計画を進めているのかもしれない。

とても、恐ろしい計画を。

 

「あああもうっ!!」

 

急に声を荒げるキバーラ。髪をかきむしる様に、翼で頭を掻いている。

それに驚くネクサスと三体のゴースト。

 

「止め止めっ!あんなクソ野郎なんかのせいでここまで悩むなんて馬鹿げてるわっ!全く誰よ、こんな面倒臭い話題言い出したのは」

「キバーラだね」

「キバーラ様です」

「キバーラ様だよ」

「…………そうだったわね」

 

コホン、とわざとらしく咳をする。

 

「と、とにかく!この話題は頭の片隅にでも置いときましょ!念の為ね、うん!さぁて、そろそろあの子達が買い物から帰ってくる頃かしらね~」

「分かりやすく誤魔化したよね」

「見苦しい事この上ないですな」

「昔から変わらないよね、あの人」

「聞こえてるわよそこぉっ!!」

 

先程の重苦しい空気から一変。とても賑やかな雰囲気となった。

ネクサス達は、地下室からリビングに戻る。そこへ、一本の電話が入った。

 

「あれ、ジャンからだ」

 

友達からの連絡だと確認し、ネクサスは受話器を取った。

 

 

◇◆◇◆

 

 

移住先である家の自室にて、ゼラムは椅子に腰掛け、深刻な面持ちを見せる。

 

「イデア……覇王の末裔に接触するとは」

「奴の事よ。良からぬ事なのは確実でしょうね」

 

腕を組み、深いため息をつくゼラム。

端末が写し出している画面越しに、キバーラが報告を行っている。それにより、イデアがアインハルトと接触した事を知った。

ただの人質か、始末対象だったのかは、まだ分からない。

しかし、何かを企んでいるのは確かだ。

 

「他に、変わった事は?」

「ネオファンガイアを差し向けたのと、ジェノムで襲いかかってきたのと……分かってるのはこれくらいかしらね」

「そうか」

「……あっ」

 

何かを思い出したのか、キバーラが声を漏らし、ゼラムは再度尋ねる。

 

「どうした?」

「ネクサスから聞いて、私もそうなんだけど……三体のネオファンガイアと戦ってた時、“視線”を感じたのよね」

「視線、というと?」

「イカもどきと戦ってた時、どこからか見られてる様な感じがして。あのハチ女の時とか、特に顕著だったのが、あの暴走牛の時かしらね」

「…………」

「まあ、ほんの少~しだけ気になるかなぁ?っていうぐらい、小さな感じというか……」

「その視線……イデアによるものという事は?」

「…………そうじゃない事を祈りたいけど、あの不快で気持ち悪い視線は奴しか有り得ないわね」

 

キバーラからの新たな報告に、ゼラムは思考する。

ネクサスによれば、クラーケン、ゲンホウ、ミノタウロスの三体と戦闘になった際、何者かに観察されている様な気配を感じたとの事。

これが、件のイデアによるものではないか、という話になった。

 

「ストラトスとの事だけでなく、ネクサスにまで目を付けているのか」

「あの子は絶対渡さないわ。何があっても、必ず私が守ってみせる。命を懸けてでも」

「キバーラ、落ち着け」

「……ごめんなさい」

 

ネクサスの話題となり、過剰に反応するキバーラ。並々ならぬ様子を見て、ゼラムが何とか鎮める。

 

「とりあえず、報告は以上よ」

「ああ、了解した」

「それじゃ、私はこれから四人と一緒お出かけするから」

「…………ちゃんと確認したんだろうな?」

「もちろんよ!“彼女達”は今日、管理局にいる筈。出くわす事はないわ」

「ならいいが」

「それじゃあね~」

 

翼を振り、キバーラは通信を切る。

 

端末を仕舞い、ゼラムは一息つく。

 

「ん?」

 

直後、端末に着信が入る。端末を手にし、メール画面を開いた。

 

【“例の物が完成。至急、連絡を頼むよ”】

 

文章を目にし、ゼラムは気持ちを引き締める。

 

(ついに来たか……)

 

その送り主の名は、【ユーノ・スクライア】と表示されていた。

 

 

◇◆◇◆

 

 

休日、ネクサスは待ち合わせ場所にて、友人達と合流していた。

昨日、ジャンからの電話で、遊びに誘われていたのだ。何でも、近くの自然公園にて、ちょっとした催し物があるとの事。

ネクサスはこれを承諾。そして、せっかくの機会にと“もう一人”誘った。

 

「アインハルトさん、僕の友達の三人で……」

「俺、ジャン・ウェズリー!ジャンでいいぜ!」

「アイザ・コルフォード。まあ、よろしく」

 

まず、二人が自己紹介を行った。見て分かる様に、実に対照的だ。

 

「じゃあ改めて、同じクラスのユミナ・アンクレイヴです」

「アインハルト・ストラトスです……」

 

ユミナも名前を述べ、アインハルトも遠慮気味に自己紹介を行う。

 

「こうして話すのは、初めてだね。ストラトスさん」

「あ、えっと……」

 

ユミナが話かけると、アインハルトは思わず言葉が詰まってしまう。

 

(アインハルトさん)

 

念話でアインハルトに話しかけるネクサス。心の中で、頑張れとエールを送る。それを受け取ったのか、アインハルトは一呼吸置き、ユミナと向き合った。

 

「――――改めまして、今日は一緒に行動させてもらいます」

「ストラトスさんたら、そんなに畏まらなくてもいいのに」

「そうそう!楽しくやろうぜ?」

「確かに、固くなり過ぎてもやりづらいだろ。こいつ程明るくなられるのは困るけどな」

「はあっ!?」

 

いつもの二人の掛け合いに、ネクサスとユミナは笑い出す。

それを見たアインハルトは、思わず呆気にとられる。

 

「まあ、取り敢えずは行こうぜ!」

「そうだな」

「うん、行こう」

 

男子三人が、歩き出し、女子も後を追う。

 

「ストラトスさんも行こ?」

「はい。あの、アンクレイヴさん」

「ん?」

 

急に呼び止め、ユミナと向き合うアインハルト。

 

「その……私の事は、“アインハルト”と、呼んでもらって、いいです……」

 

勇気を振り絞り、精一杯の声音で、アインハルトは言い切った。顔を赤くし、やや上目遣いで。

その仕草に、同性であるユミナも、思わず見惚れてしまった。だが、すぐ我に帰り、笑顔を浮かべる。

 

「うん!ありがとう“アインハルト”さん!じゃあ私の事も“ユミナ”って呼んで」

「はい……“ユミナ”、さん」

「ほら、一緒に行こ?」

「は、はい」

 

名前を呼び合う。これだけでも、アインハルトにとっては、かなりの前進だった。ユミナも、快く受け入れてくれた。ネクサス以外の、初めての同性の友達が出来た。

 

この瞬間だけでも、アインハルトは、来て良かったと心から思う。

 

ジャンやアイザとも名前で呼び合える様になり、ネクサス達は、目的地まで町中を歩いていった。

 

 

 

その後を、柱の陰から見ている四人の少女と一人の女性。

 

「よぉし、標的(ターゲット)はお友達と合流したわね。さっ、私達も行くわよ」

「おぉ~!」

「おぉ~」

「お、おぉ~……」

 

サングラスをかけた女性――――人間に変化したキバーラは、ネクサス達の後を追う。レヴィ、シュテル、ユーリも彼女に続く。

春服をイメージした服装を身につけ、白銀の長髪を靡かせるキバーラ。つば広ハットとサングラスも様になっており、道行く男性の目を引き付けている。もっとも、向けられている視線の理由は、彼女の美しい容姿だけではないだろうが。

更に言えば、四人の美少女達にも視線が向けられている。

 

「いいなぁ~、ボクもネクと一緒に回りたかったよぉ」

 

羨ましそうに眺めるレヴィ。

紺色のシャツに、黒い半ズボン。いつものツインテールから髪を下ろし、水色のニット帽を被っていた。

 

「レヴィ、また今度お願いしてみたらどうです?無論、私も同行しますが」

 

レヴィにそう提案するシュテル。

衣装は黒の長袖に、サロペットのショートパンツとニーハイソックス。キャスケットを被り、眼鏡を装着していた。

 

「な、なら、私も……」

 

そんな二人の同意するユーリ。

桃色のパーカーと、少し裾を上げたボトムスパンツ。ポシェットを肩から提げ、ウェーブのかかった髪はツインテールに束ねている。

 

「じゃあ、今度みんなでお出掛けでもしよっか。お忍びだけれどね」

「さんせぇ~!」

「良いですね」

「楽しみです♪」

「それにしても、みんな似合ってるわねぇ~。可愛いから何でも着こなせちゃうんだもん。我ながら良いコーデじゃない?どう、ディアちゃん?」

 

キバーラは、ディアーチェに声をかける。その本人は、腕を組み、こちらを見据えていた。

 

紫のシャツの上にデニムジャケットを羽織り、下半身はジーンズとショートブーツ。

髪は短いポニーテールにし、無地のキャップを被っている。

 

全体的に、ボーイッシュ寄りな印象のコーディネートとなった四人。キバーラの言う通り、容姿も良い為、かなり様になっている読者モデルにスカウトされてもおかしくないレベルだ。

 

「なぁキバーラ。一言良いか?」

「なぁに、ディアちゃん?」

「はっきり言おう、怪し過ぎる」

 

はっきり言ったディアーチェ。柱からこそこそと覗き見するなど、傍から見れば不審者以外の何者でもない。

 

「な~に言ってるのよディアちゃん。見つからない様に追跡する為に、陰から観察するのは基本中の基本よ?」

「いいから止めんか!見ろ、周りからジロジロと見られているではないか!」

「あれま」

 

漸く気づいたのか、キバーラは辺りを見渡す。

先程からチラチラと視線を感じ取っており、何度他人のふりをしたかった事かと、ディアーチェはため息をつく。

 

「ほら、きっと四人が可愛いから見惚れちゃってるのよ。あっ、それとも私に見惚れちゃってるのかしら!?いや~ん、照れるわ~♪」

 

両手を頬に置き、恥ずかしそうにもじもじするキバーラ。

 

「歳を考えろ歳を」

「いけない事言うのはこの口かしらぁ?」

「むぐぁがががが!?」

 

ボソッと小さく毒を吐くディアーチェだったが、それを聞き逃さないのがキバーラ。無表情でディアーチェの両頬を掴み、左右に引っ張り上げる。

 

「キ、キバーラ!ほら、ネクサス達が行っちゃいますよ!?」

「あら、ほんと。さっ、行くわよ皆!」

「おぉ~!」

「おぉ~」

 

ユーリの言葉に、キバーラは再度追跡を行う。彼女の後に続くレディとシュテル。

 

「ぐぬぬ、思いっきり引っ張りおって……!」

「ほぉら、早くする!」

「は、は~い!」

「分かっておるわ!」

 

痛む両頬を擦りながら、恨めしげにキバーラを睨むディアーチェ。ユーリに側にいてもらいながら、キバーラについていく。

 

 

◇◆◇◆

 

 

管理局の一室。一人の女性が、デスクにて、パソコンと向き合っていた。

長い金髪が、とても良く似合う美女。黒を基調とした制服を着こなしており、敏腕のキャリアウーマンという名が相応しい。

その名を、【フェイト・T・ハラオウン】。AAAクラスの魔導師てあると同時に、凄腕の執務官としても活躍している。

 

「――――データ送信、と」

 

キーボードを打ち、書類整理を終えた。

フェイトは固まった体を伸ばし、脱力する。伸ばした際、彼女の豊かな胸元が強調されたのは言うまでもない。

 

「すみませんフェイトさん。せっかくの休日なのに……」

「ううん、直ぐに終わったから、気にしないで」

 

書類整理のし直しという事で、少しの休日出勤となってしまった。

だが、これで完全にオフだ。

 

「それじゃあ、お疲れ様」

「はい、お疲れ様でした」

 

女性局員に一言告げ、フェイトは鞄を手に、局から退社する。

 

「あっ、フェイトちゃんやん」

「はやて、今日はもう帰り?」

「うん、さっき報告書出してきたから」

 

帰り道の最中、親友の一人である、【八神はやて】と会う。

茶色の短髪で、笑顔が似合う美人。最高クラスであるSSクラスに属する魔導騎士。

 

管理局で知らない者はいないと言われている二人。知らない人から見れば、かなり希少な光景だろう。

そんな二人だが、友達同士で楽しく談笑している。

 

「フェイトちゃんは?」

「私も、ついさっき終わってね。これからなのはとヴィヴィオの所に行くの」

「ああ、前に言うとったね」

 

ミッドチルダにある自然公園にて、小さな催し物があるとの事。小規模だが、屋台などの出店が豊富だ。

 

「そうだ、仕事が終わったのなら、はやても一緒にどうかな?」

 

実は前に、目前の親友から誘いを受けてはいたのだ。

だが、タイミングの悪い事に、その日は仕事が入っていた為、断っていた。

しかし、予定よりも遥かに早く終わってしまった為、完全に予定が空いてしまった。

 

「そうやね~、仕事ももうないし。ほんなら、行かせてもらおかな?」

「うん、一緒に行こうよ」

 

久々に、親友二人と可愛い娘との楽しい時間を過ごせる。フェイトは思わず微笑み、はやてもつられて笑う。

 

「それじゃあ、なのはにも連絡しておくね?」

「うん、お願いするわ」

 

端末を起動させ、親友である、高町なのはに連絡した。返事は、もちろんOKである。

 

こうして、二人はなのはとヴィヴィオの元へと向かう。

 

 

 

そこで、“驚きの出会い”を果たすとも知らずに。

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