リリカルなのはvivid―アナザーメモリーズ―   作:NOマル

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look alike―自分との遭遇―

所変わり、公園の椅子に座って、一人読書に耽るシュテル。木陰の下、眼鏡をかけながらの読書は、知的な少女を思わせ、とても様になっていた。

読んでいるのは、先程立ち寄った本屋にて購入した小説。鎧を身に纏った戦士が、世界を救わず、あくまで決めた獲物しか狩らない。しかし、道中で出会う仲間達や、運命の悪戯から降りかかる災厄の数々を、己の技量と知識で補い、立ち向かっていく――――といったエピソードとなっている。

シュテルは現在、この小説にハマっており、周りの音が聞こえない程、小説の世界へ入り込んでいる。

 

「にゃあ」

 

ふと、愛らしい鳴き声が耳に届いた。一気に現実へと切り替わり、シュテルは声の主を見つける。一匹の子猫だ。自らの膝に、頬を擦り寄せている。

いや、一匹だけではない。見れば、十匹もの猫が、シュテルの側にいた。

 

「みなさん、日向ぼっこですか?」

 

クスッと笑い、シュテルは猫を撫でてやる。猫は気持ち良さそうに鳴き、更に体を引っ付けてきた。他の猫達も撫でられたいのか、せがむ様に鳴き出す。

 

すると、また一匹、子猫が近寄ってきた。今度は、子猫だけでなく、少女も一緒であった。

 

「待って待って~」

 

走ってきた金髪の少女。左右の瞳が、紅と翠という、虹彩異色。白の長袖にワンピースドレスという可愛らしい服装。

少女こと高町ヴィヴィオは、シュテルに気づくと、そのまま固まってしまった。

 

「あっ」

「………」

 

先程、母達にも話した、なのはそっくりの少女が、目の前にいた。改めて見ると、やはりどこか母に似た面影を感じる。

 

(この人、さっき見かけた……)

(この子は確か、高町なのはの……)

 

シュテルは、ヴィヴィオの事を知っている。ディアーチェ、レヴィ、ユーリも同じ。

高町なのはの養子、娘だという事を。だからこそ、内心焦っていた。

 

(ここは、足早に去るのが賢明ですね)

 

本を閉じ、シュテルは椅子から腰を上げる。

 

しかし、もう遅かった。

 

「ヴィヴィオ~、待って~」

 

そこへ、“母”がやって来た。

そう、高町なのはが。

 

「ふぅ、やっと追いつい、た…………」

「なのはママ……」

「…………」

 

そして、“二人”は出会ってしまった。

 

やって来たなのははというと、茫然とこちらを見ている。

今、目の前に、幼い頃の自分と同じ顔の少女がいた。ヴィヴィオから話を聞かされていたが、確かに似ている。

眼鏡をかけ、髪型も違うが、なのはと並べて見れば、瓜二つだ。

 

「…………」

「…………」

 

周りがざわめく中、二人の間は沈黙が支配していた。

じっと見つめられ、せめてもの足掻きと、シュテルは本で自分の顔を隠す。

なのはが声をかけようとした瞬間、シュテルはその場を走り去る。

 

「あっ、ま、待って!!」

「なのはママ!」

 

思わず、追いかけてしまうなのは。ヴィヴィオも慌てて、その後に続いた。

 

 

◇◆◇◆

 

 

右手にフランクフルト、左手にドーナツを持ち、美味しそうに舌鼓を打つレヴィ。腕にかかっている袋には、腹の中に収めた屋台の食べ物の入れ物やゴミ類が入っている。只今、屋台の制覇に挑戦している所だ。軽く十品を越えているのだが、この少女の腹にはまだまだ入る様子。

 

「はぁ~おいしかった!」

 

両手にあるものも瞬く間に平らげ、一度ゴミを捨てようと、ゴミ捨て場に向かう。設置されているドラム缶――黒のゴミ袋が入っている――に、ゴミ袋を入れた。

 

「よしっ!次は何をしよっかな~?」

 

まだまだ時間はある。次はゲームでもして遊ぼうか。

そう意気込み、レヴィは踵を返す。

振り返った瞬間、顔に柔らかい感触を感じた。

 

「ぷわっ!」

 

ポヨン!と、中々の弾力で、押し負けてしまった。尻餅をついてしまい、目の前にいる“女性”が、レヴィに謝罪する。

 

「あっ、ごめんなさい!大丈夫!?」

「う、うん。大丈夫大丈、夫……」

 

レヴィは顔を上げ、ぶつかってしまった女性――――フェイトと顔を合わせてしまった。

 

「…………」

「…………」

 

フェイトは、硬直しているレヴィの顔から、目が離せなかった。

小さい頃の自分と、あまりにも瓜二つだったからだ。

対するレヴィは、完全にパニック状態。動揺を隠しきれず、多くの汗が流れ出ている。

 

両者共、目を見開いて、驚きを隠せない。

 

「君は、一体……」

「っ!!」

「あっ、ちょっと!」

 

フェイトから声をかけられたが、レヴィは慌ててその場から逃走。人込みの間を駆け抜ける。

どうも気になってしまう。何かを感じ取り、フェイトは追跡を開始した。

 

「うおっ!?」

「あっ、ごめんね!?」

 

緋色の髪をした少年とぶつかりそうになるも、何とか回避。フェイトは一言謝り、追跡を再開する。

 

「あぁもう、しつこいなぁ……!」

 

焦ったレヴィは、振り切ろうと魔法を行使、身体強化を行った。体が水色の魔法光で包み込まれ、一気に加速。人込みの間を駆け巡る。

 

(あの機動力……あの女の子、只者じゃない)

 

目の前で目撃し、フェイトは驚きを露にする。しかし、一瞬で顔を引き締め、自らも魔法を行使する。

魔力光である金色で体を包み、高速移動。

 

水色と金色の光の追走劇が、幕を開けた。

 

「な、何だぁ?」

 

それを目の当たりにした少年――――ジャンは、茫然と眺めていた。

 

 

◇◆◇◆

 

 

屋台には、古着屋も参加していた。簡易式の大きめのテントの下にて商売を行っている。値段もそれなりに安く、メンズとレディース両方の衣服が豊富に並べられていた。

その店に、はやてはやって来た。

 

「へぇ、結構色々あるんやね」

 

商品の服を手に取り、じっくりと眺める。

 

「これはシグナムに似合いそうやな。この清楚系は、シャマルやね。ザフィーラは、動きやすそうなもんがええかな」

 

自分の家族であるヴォルケンリッターの衣類になりそうな物を拝見する。似合いそうな物が一つ、二つとあり、中々に迷っていた。

 

「おっ、スーツなんてあるんや」

 

見つけたのは、やや深い、翠と青の中間色に染まっているスーツ。

これを目にし、“とある青年”の事を思い浮かべる。

 

「これ、ユーノ君に合うんとちゃう?」

 

手に取り、頭の中で青年――――ユーノに着せて見せる。

眼鏡をかけている事もあり、知的な美青年の完成だ。

 

「ええやんええやん!ごっつええや~ん」

 

はやての中では、かなり似合っている様だ。更に“恋する乙女”フィルターにより、かなり美化されているが。

そして、ユーノとデートするという妄想にまで走ってしまう。

 

「やぁ~ん、ユーノ君ったら、家に帰さへんって、どうする気なんよもぉ~~」

 

両手で頬を触り、くねくねと悶える。魔導騎士、元機動六課の司令官とは思えない醜態だ。

 

「はっ!あかんあかん!これ以上は、色々まずいわ……」

 

一体、何がまずいのだろうか?

 

何とか妄想を押さえ込んだはやて。そんな彼女は、他の衣服を選んでいく。

 

 

 

 

そして“もう一人”、この店に来ている少女がいた。

 

「何やら騒がしい奴がいるな。まったく、羞恥心というものはないのか」

 

大声は、こちらの耳にまで聞こえていた。話の内容までは聞こえなかったが。

姿の見えない客に悪態をつくディアーチェ。

 

「しかし、古着屋か」

 

少女――――ディアーチェは腕を組みながら、店内を歩く。どこへ行こうかとふらついていた際、ふと目に止まった為、入店したのだ。

 

(こういう衣服等は、キバーラの専門だからな……)

 

正直、自分ではあまり良いコーディネートが出来そうにない。こういったオシャレには疎い。

そう思いながらも店内を見回るディアーチェ。

 

「この落ち着いた色合いはシュテル、このシャツとズボンはレヴィに合うかもな。おぉ、このワンピースはキバーラにピッタリではないか?」

 

何だかんだ言いながら、家族に似合いそうな服を選んでいるディアーチェ。こうして手に取るだけでも、何だか楽しくなってくるものだ。

 

「んっ?」

 

そんな時、目についたのは、二体のマネキン。

メンズとレディースで、どうやらカップルをモチーフにしている様だ。デートに行く際のコーディネートとの事。

 

「…………」

 

ふと、ディアーチェは想像してしまう。

この服を着た自分とネクサスが、デートをしている場面を。遊園地に遊びに行き、楽しい食事を行い、会話を弾ませ、そしてデートの終わる直前、二人の顔が接近し――――

 

(って!ななななななな、何を考えておるのだ我はっ!?)

 

真っ赤に染まるを冷まさせるかの如く、首を左右に振る。頬を小さく叩き、落ち着きを取り戻した。

 

(ネ、ネクサスと、あんな……ま、まあしかし!あいつが、どうしてもというのであれば、考えなくもないがなっ!うむっ!)

 

終いには、心中で訳の分からない言い訳をしだす。恋する乙女の仄かな願いを妄想しながらも、店内を歩く。

 

そして、またも衣服に目が止まった。

 

 

白を基調とした、フリル付きのワンピース。春服をイメージしているらしく、とても可愛らしいデザインとなっていた。

サイズ的に、少女向けとの事。

 

(おっ、これヴィータにええんとちゃうか?)

 

はやてはそう考え、そのワンピースに手を伸ばす。

 

(これは、ユーリに似合うのではないだろうか?)

 

ディアーチェはそう考え、そのワンピースに手を伸ばす。

 

「「あっ」」

 

同時に、手が触れ合った。そして、目と目が合った。

 

「「…………」」

 

はやては、驚愕していた。

何故なら、今目が合っている少女は、自分の幼い頃の姿とそっくりだったからだ。

 

ディアーチェは動揺していた。

何故なら、今この場にはいないであろう女性が、ここにいるのだから。

 

「馬鹿な……“夜天の書”の最後の」

「えっ、何で……」

「っ!」

「あっ、ちょぉ待って!」

 

我に帰り、帽子を目深に被り直して、その場を去ろうとするディアーチェ。その手を、はやては咄嗟に掴んでしまう。

“夜天の書”という言葉に反応してしまったからだ。

 

「は、離せっ!離さんか貴様っ!」

「待ってぇな!ちょっと、聞きたい事が出来たんやから!」

 

必死に逃げようと、地面を踏みしめるディアーチェ。対するはやては逃がすまいと両手でしがみついていた。

 

「語る事など何もないっ!いいから離せっ!」

「離さへん!ちょっと話すだけやんか!」

「“はなすのか”“はなさないのか”どっちなのだ!?」

「ダジャレ言うとんちゃうねん!真剣な話しよう言うてんねん!」

「見ず知らずの相手に図々しい!何なら誘拐で訴えるぞ!」

「人聞きの悪い事言わんといて!職失うやないかっ!」

 

店内にいる他の客に注目されながら、どっちも譲ろうとしない。はやてとディアーチェの引っ張り合いは、まだまだ続きそうだ。

 

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