リリカルなのはvivid―アナザーメモリーズ―   作:NOマル

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毎回、話のタイトルで悩んでしまう……


reminiscence1―なのはとフェイト―

せっかくの休日、各々が楽しい時間を過ごしている筈だった。

しかし今、大人と子供を交えた大人数が、一軒の屋敷に集まっている。

 

「初めまして、魔法学院中等科教師のゼラムと申します」

「高町ヴィヴィオの母、高町なのはです」

「同じく、母親のフェイト・T・ハラオウンです」

「時空管理局所属、八神はやてです」

 

まず、大人達は自己紹介を行った。

場所は客間。テーブルを挟み、ソファーと椅子に腰かけている。なのは達三人はソファーに座らせてもらい、その向かい側にはディアーチェ達三人――そしてユーリ――が座っている。

 

仲介をする様に、ゼラムとユーノが並んで着席しており、ヴィヴィオとアインハルトを始めとした友人達は、ネクサスが自室に連れ、事情――――ディアーチェ達の事のみ説明していた。

 

大人達は、とある重要事件に関わる話題に触れる為、管理局員ではない一般市民である子供達には、聞かせられないという事で別室にしてもらっている。

 

「では、説明していただけるでしょうか?」

「……どこから話したらいいものか」

 

自己紹介を終えた後、フェイトから問いかけられるゼラム。額に手を当て、深く悩んでいるのが分かる。

そこで、ユーノが助け船を出した。

 

「フェイト、僕からも説明するよ」

「もしかして、ユーノ君も、この子達の事知ってたの?」

「我々が、口止めしていたんです。彼女達の存在は、あまり知られる訳にはいかなかったので」

 

なのはに対し、ゼラムはそう答えると、ユーノは黙っていた事に対して、謝罪する。

 

「黙ってて、ごめんね」

「ううん、何か事情があったんでしょ?」

「それだったら、仕方ないよ」

「そうやね」

 

なのは、フェイト、はやての三人は、怒る事なく許した。語れぬ事情があるのだろう、と。

目の前にいる、“自分達と同じ顔”をした少女達を見れば、何となく納得できる。

 

「まあ、こうして出会ってしまったからには、もう隠す意味もなくなった。寧ろ、今まで気付かれなかったのが不思議なくらいだからな」

「そ、そうよね~。まあ、いつかはバレるんだし?遅かれ早かれ――――」

「あんたは口を閉じてろ」

「ハイ、スミマセン」

 

見苦しく言い訳をしようとするキバーラを黙らせるゼラム。

 

「ったく。あんたがついていながら、なんだこの失態は」

「し、ししししししかたないじゃない!間違えちゃったものはさぁ!?」

「言い訳が見苦しいぞ。本当になにやってんだが」

「そ、そこまで言っちゃう~……?」

 

ゼラムから発せられた辛辣な言葉。それに加え、四人の少女達――特にユーリは、胸の方を睨んでいた――からの、責めるかの様な冷たい視線を受け、キバーラは一人いじける。

気を改めて、ゼラムは、茫然とするなのは達と向き合う。

 

「申し訳ありません。お見苦しい所を」

「あっ、いえ…」

「では早速、ここにいる彼女達についてですが、単刀直入に申しましょう――――」

 

 

――――この子達は、あなた方三人のクローンです。

 

ゼラムが発した言葉に、三人は驚愕のあまり目を大きく見開く。一斉に、自分達と同じ顔をしている少女達に視線を向ける。

 

「クローン……?」

「私、達の?」

「ちょ、ちょっと、驚き過ぎて、混乱しとんやけど……」

 

動揺と戸惑いを隠せない三人。更にゼラムは、話を続ける。

 

「皆さん、“イデア”という名を御存知でしょうか?」

 

イデア――――その名を出した瞬間、またもなのは達の表情に変化が起きた。深刻な、どこか重い表情を浮かべている。

 

「知っています。今現在、管理局内で、最大の問題として浮かび上がっている“危険人物”ですから」

 

ネオファンガイアを操り、アインハルトを誘拐、ネクサス達と交戦した、謎の男――――イデア。

その名は、管理局の上層部にも報告が入っている。無論、悪い意味で。

表だって活動してはいない。あくまで、“影の協力者”として、数多の犯罪者達のサポートをしているのだ。その協力の内容はというと、計画の助言、仮の斥候、そして“兵士”の提供。その兵士というのが、なのは達にも見覚えのある存在だった。

 

“PT事件”の傀儡兵。

“闇の書事件”の仮面の戦士――リーゼ姉妹ではない――ファウストとメフィスト。

“JS事件”のAMF搭載ガジェット兵器。

 

違う所と言えば、全てが黒――闇を思わせる――を基本に塗装されているという所だろうか。

どれも、かつて次元世界を揺るがす大事件に関わる存在だ。

それが今、新たな野望の手足となって動いている。

 

「ネオファンガイア以外で、頻繁に起こっている犯罪事件。そのほとんどが、先程の人物が裏で糸を引いていたという情報があります」

 

難しい表情を浮かべ、執務官としての言葉を述べるフェイト。

 

「そのイデアっていうのも、かなり用心深いんか、痕跡を全くと言っていい程残さへん。立つ鳥後を濁さずっというか。必死に情報を集めて、ようやっと分かったんが、三つ」

 

はやても加わり、指を三つ立てる。

 

「一つ、イデアという名前だという事。二つ、マスクを被った人物。三つ、多くの事件を、影から動かしている。そして最後、かなり手強い奴や――――あっ、四つやな」

 

そう考え、はやては四つ目の指を立てる。それを聞いて、なのはとフェイトも、納得した様に頷いた。

 

「その様子だと、三人共、イデアと戦った事があるんだね?」

 

ユーノが聞くと、三人は同時に頷いた。

 

 

◇◆◇◆

 

 

――――私の時は、突然向こうからやって来たの。訓練の時に、ね。

 

 

戦技訓練の最中、突如として黒い物体が出現。近くにいた新人局員達を蹴散らし、高町なのはを飲み込んだ。

不意をつかれ、そのまま飲み込まれながらも、なのははなんとか体勢を整えた。

 

自分が今いる場所を確認。辺り一面が、暗闇に包まれている。にも関わらず、視界ははっきりとしていた。

 

すると突然、“奴”は現れた。空中で、何もない所を、“歩いて”来たのだ。

 

「初めまして、空戦魔導師、高町なのは二等空尉。お目にかかれて光栄の極み」

 

深々と礼をし、本音か口先だけかも分からない言葉を述べる。

次から次へと理解不能な事態に見舞われるが、なのはは至って冷静に、相手を見据えていた。

 

「あなたは?」

「私の名前はイデア。どうぞ、お見知りおきを」

「イデア……」

「では、早速――――お前の力を見せてくれ」

 

告げた瞬間、イデアは攻撃を開始した。

 

 

――――そのまま、戦闘に入っちゃってね。自分で言うのもなんだけど、ほぼ互角だったと思う。ううん、多分、あっちは本気を出してなかった。何か、“品定め”する様な感じだったし。

 

 

こちらに合わせるかの様に、あちらも魔力弾を放った。しかも、威力も合わせてだ。そのせいか、こちらが放った全ての砲撃が、相殺される事となった。

 

 

――――これはバスター……いや、ブレイカーを撃ち込んでやろうか、って思っちゃってね。正直かなり焦ったかも……。そんな時だったの。

 

 

「ディバイン・バスターッ!!」

 

足元に魔法陣が描かれ、なのははデバイスであるレイジングハートから、直射型の砲撃を放った。

 

そして、それがイデアに直撃――――したのだが。

 

「――――品定めはこれくらいでいいか」

 

透明な魔力障壁で、イデアはそれを防いだ。

並みの防御魔法なら容易く貫く魔法を受け止められ、一瞬動揺してしまうなのは。その隙をつき、イデアは周りを取り囲んでいる黒い物体――――ジェノムに命じる。ジェノムは動き出し、なのは目掛けて突進した。

 

なのはは攻撃に備え、前方に防御壁を張った。それにより、ジェノムの突進を防ぐ事に成功。

しかし、首元に痛みが生じた。思わず手を当てて見ると、指に血と“黒い物体”が付着していた。前方に気を取られ、気付けなかった。出血しているのが分かったが、致命傷になる程ではない。そう確認した直後、黒い物体が消えた。

そして、ふと前を向けば、黒い物体はイデアの手中にあった。カプセルの様な物に姿を変え、イデアは指で摘まむと、暫し眺めた。

 

「採取成功。貴重なサンプルが手に入った」

 

カプセルを懐に仕舞い、再度、なのはと向き合うイデア。

 

「訓練中、騒がせて申し訳ないね。では失礼」

 

その言葉の直後、なのは魔力壁を発動させたまま、暗闇に包まれていった。

 

 

――――で、気が付けば訓練場の上空にいて、イデアはいなくなってたの。

 

 

◇◆◇◆

 

 

――――私は当時、ある犯罪組織を追っていたの。強盗、殺人、横領の罪を暴く証拠も揃って、やっと逮捕できる所まで行ってね。他の局員達の協力を得て、一斉逮捕に乗り出したの。

 

 

場所は、とある高層ビル。隠れ家にしては、かなり目立つ。フェイトは局員達を連れ、一気に乗り込んだ。

すると当然、犯罪組織は銃器で抵抗する。それを防御し、フェイトは次々に相手を無力化していった。

そして、残るは組織のボスといえる存在。立てこもっているのか、自室から出ようとしない。

仕方なくドアを蹴破り、フェイトは中へ突入した。社長室に相応しい部屋、デスクの向こうにて、例の人物が座椅子に腰かけて背を向けている。

 

「管理局の者です。今、あなたは完全に包囲されています」

「…………」

「無駄な抵抗は止めて、投降して下さい」

「…………」

「抵抗するなら、実力を行使します」

「…………」

 

応答が全くない。

デバイスを手にしているフェイトに対し、背を向けてたままだ。微かに肘の部分が見える為、いるにはいるんだろう。だが、危機的状況だというのに、慌てた様子を見せない。

度胸があるのか、それとも諦めているのか。

すると突然、拍手が聞こえた。

 

「ここまで来るとは、流石は凄腕の執務官ですな。ハラオウン――――いや、敢えて“テスタロッサ”と呼ぼうか?」

 

その名字を呼ばれ、フェイトは息を呑むと同時に、身構える。その口ぶりは、まるで“知っている”かの様だった。

 

「あなたは一体……この組織の首領じゃ――――」

「いや、違うね。私はただのアドバイザーさ。だが本当によく辿り着いたものだね。それは褒め称えてやろう」

「…………」

「だが、残念な事に……君に、組織の首領を逮捕する事は出来ない」

「なぜ、そう言い切れるのですか」

 

フェイトが聞くと、椅子に座っている人物は、横を指差した。その指につられ、その方向を目にする。そして、驚愕した。

探していた人物が、変わり果てた姿になっていたからだ。

 

「まったく、困ったものだ。交わした契約は、あくまで兵士の提供。それ以上の支援はしない。だというのに、見苦しく命乞いをするわ、尚も上から目線で命令するわ、何よりこちらを銃器ごときで脅してくる等と。色々と腹立たしかったので、始末してしまったよ」

 

やや苛立ちを込めた声音で語りだす。

その首領はというと、両手、胸、口を杭らしき物で串刺しにされており、壁に磔になっていた。変わり果てた姿を目にし、その凄惨な光景に茫然とするフェイト。

 

「逮捕に協力出来なくて申し訳ない。これは、せめてものお詫びだ」

 

座椅子を回し、こちらに姿を見せた。顔を機械のマスクで包んだ、その人物は束となった書類、何かのメモリーカードをデスクの上に放る。

フェイトが遠目に見ると、そこにはまだこちらが把握しきれていない、更なる証拠となる情報が記されていた。恐らく、メモリーカードも証拠の類いなのだろう。

フェイトは目の前の人物に警戒しながら、書類に手を伸ばす。その人物は、座椅子から立ち上がり、体を伸ばして後ろで手を組んだ。

 

書類に目を遠し、フェイトは疑問を抱く。何故、自分にこれを見せたのか?何故、自供したのか?

 

「どういう、事ですか?」

「どうもこうもない。言っただろう?せめてものお詫びだ、と」

「……容疑者を殺した事について、ですか?」

「それもある、が……一番の理由は――――これから教えよう」

 

その直後、紫色の光刃が振るわれた。

 

「っ!!」

 

バルディッシュで防ぎ、刃が首に到達する事はなかった。もっとも、後数センチという所ではあったが。

 

「ふむ、やはり防いだか。反応速度も良い」

(速い……腕の動作すらも、全然見えなかった……!)

 

隙を見せてしまったとはいえ、唐突の攻撃に驚きを隠せないフェイト。こちらが両手持ちでデバイスを持っているのに対し、相手は片手だ。しかも、それほど力を入れている素振りは見せておらず、見た目に似合わない程の力を感じる。まるで二人がかりで押されているかの様だった。

 

「あなたは、一体……!」

「私の名は、イデア。それ以外には何もない」

「イデア……あなたを、共犯の容疑で連行します」

「ほう……やれるものならやってみるがいい」

 

イデアは、空いている片方にも光刃を発生させ、突きを繰り出す。フェイトはデバイスで弾き、反撃として横薙ぎに振るった。

 

「ここでは狭すぎる。君の本領を発揮させる為にも、場所を変えるとしようか」

 

イデアは容易にかわすと、窓を割り、外へ逃走する。

 

「待ちなさいっ!!」

 

それを逃さず、フェイトも後を追った。

 

 

 

――――必死に追跡しながら、戦闘に入った。長斧(アサルトフォーム)(ハーケンフォーム)を駆使して攻撃したけど、奴は受け流したり、易々と刃を受け止めた。

それで、大剣(ザンバーフォーム)に切り替えようとしたんだけど………。

 

 

「はぁっ!!」

 

バルディッシュを大剣に変え、フェイトは一気に振り下ろす。黄金の刃が迫る中、イデアは両手から紫の光刃を二本発動し、そのまま受け止めた。

 

「ほぉ……速度に特化していると同時に、(パワー)も素晴らしい。流石だなぁ、執務官殿?」

「っ!」

 

こちらが力を振り絞っているにも関わらず、イデアは余裕綽々といった風に声を出した。冷静に分析を行っているらしく、本心か世辞なのか分からない言葉を投げ掛けてくる。

それが苛立ちを助長させ、フェイトの心に怒りが積もりだしていた。

 

「うむ、予定通り。君にしよう」

 

刃を滑らせ、そのまま懐に入るイデア。

フェイトは咄嗟に体を後退させ、回避を行う。しかし、イデアは逃がさなかった。

ジェノムを発動させ、フェイトの両手足に絡み付く。更に機械の手が、彼女の白く細い首を掴み、そのまま締め上げた。

 

「ぐっ!」

「捕まえた……ふふふ」

 

不気味な笑いをし、イデアはフェイトの首にかけている手に力を入れる。

苦悶の表情を浮かべながら、フェイトは拘束を解こうと力を入れる。しかし、ジェノムの力は想像以上で、身動きが全く取れない。

 

「では、早速」

 

イデアがそう言った直後、フェイトは首筋に痛みを感じた。

 

「っ!?」

 

顔をしかめ、痛みに耐える。数秒後、イデアはフェイトの首から手を離した。その手には、いつの間にかカプセルが握られており、掴まれていたフェイトの首筋に、注射器の様な跡が残っている。

 

「一体、何を……!?」

「目的は達成した。もう君に用はない」

 

そう言い終え、イデアはフェイトから離れる。するとジェノムは大きく動き、フェイトを投げ飛ばした。

 

「きゃああああっ!!」

 

成す術なく、遠方へと吹き飛ばされてしまった。

 

 

 

――――すぐに体勢を立て直して、戻ってみたんだけど、そこに奴の姿はなかった。

 

 

 

敵を見失い、拳を強く、強く握り締めるフェイト。彼女の悔しさが、目に見えて分かる。

 




次回は、はやての回想になります。
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