リリカルなのはvivid―アナザーメモリーズ―   作:NOマル

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lyrical&materials&vivid―受け入れてくれる人達―

以上、三人の話が終わった。皆、共通して言えるのは、イデアと出会い、“血液を採取”されたこと。

 

「なるほど、そういう事か」

「そして、採集した三人の遺伝子を元に、造り上げられたのが――――」

「我ら、という事だ」

 

ゼラムに続くユーノの言葉を遮り、沈黙していたディアーチェが、口を開いた。

腕を組み、閉じていた瞼を開け、改めて向き合う。

 

「目的は、“優秀な人材”を欲しいからだと、奴は言った。いや、“忠実な道具”の間違いか……」

 

目を伏せ、自嘲気味に呟くディアーチェ。そんな彼女と同感なのか、シュテル、レヴィ、ユーリの三人も、暗い表情で俯いている。

 

「最初に目覚めたのは、我だった。自分が何者なのか、何故生み出されたのか?まだ何も考える事が出来なかった我に対し、奴は言った」

 

 

◇◆◇◆

 

 

暗闇に包まれた研究所。イデアが秘密裏に建設した施設だ。

その一室に配置された、三台のカプセル。液体が充満した中で、三人の少女達が、それぞれのカプセルに入っていた。

 

やがて、一台のカプセルからアラームが鳴る。それを機に、カプセル内部の薬用液が廃棄されていく。

 

「――――」

 

液体が顔より下まで下がった後、その瞳――青に近い緑――が開かれた。

 

 

――――生まれてすぐに我が目にしたのは、暗黒の中で佇む、“あの男”の姿だった。

 

 

みるみる内に空となり、カプセルの蓋が開かれた。

 

「……ごほっ、ごほっ!!」

 

立つこともままならず、“少女”は膝から崩れ落ちる。前のめりに倒れ、少し咳き込む。正に生まれたままの姿で。

地面に手をつき、体を起こして、割座する。寒いのか、未熟な体躯を両手で抱きしめ、震える少女。

 

すると、こちらに近付く足音が聞こえ、視界に足が見えた。それに気づき、少女は上を見上げる。

 

「初めまして、“我が娘”よ。これから私の事を、“父”、もしくは“主”。或いは“マスター”と呼びなさい」

「…………」

「返事は、“はい”だ。いいね?“は”、“い”。言ってごらん?」

「ぁ……は……っ……い……」

「うむ、宜しい。私は君の事を“マテリアルD”と呼ぶ。いいかい“D”?それが、君の識別名だ」

「…ぇ……で……でぃ…ぃ…」

「そう、Dだ。分かったね?」

 

単眼を思わせるレンズに映る、虚ろな瞳の無垢な少女。促される様に、覚束ない口調に、舌足らずな状態で復唱する。赤ん坊が、初めて言葉を発声するかの様に。

イデアは膝をつき、少女の頭を撫でる。

 

すると、“一人の男性”が、手術着と毛布を手にやって来た。

 

「ドクターイデア、こちらを。このままでは風邪を引いてしまう」

「おっといけないいけない。さあ、これを着て。毛布もあるよ」

 

思い出したかの様に、イデアは助手と思われる男性から、子供サイズの手術着を手渡され、少女こと“D”に着せた。上から乱雑に毛布を被せ、髪を拭いていく。

 

「いいかい、D。今回、君は“あの二人”よりも早く目覚めた。一番上、つまり君が“王様”だ」

「お…ぉ……さ、ま……」

「二人も、もう少しで完成する。その時こそ、お前は――――いや、“お前達”三人は、私の物だ」

 

髪を拭き終え、機械の両手で、尚もこちらを見つめているDの両頬を、イデアは触れる。目を反らさず、自身の姿をレンズに焼き付ける様に、そう語った。

 

「お前達は私の娘。つまり、父親である私の為に働く義務がある。子は親の為の道具なんだよ」

「ど……ぉ……ぐ…」

「私の忠実なる手足として、しっかりと“教育”してあげるからねぇ?なぁに大丈夫。この私が教えるんだ、何も問題はない。まあ、お前達が出来損ないなら話は別だがな」

「……まだ分からないのでは?精神年齢は5歳時と同じなのですから」

「なぁに、ちゃんと“分からせる”さ。その為の教育だ」

(どうだが……それに、貴方の場合は教育ではなく、洗脳でしょう)

 

助手らしき男性は、呆れた様な面持ちのまま、心中で愚痴を溢す。

 

イデアの助手として早数年が経った。元は、“とある委員会”の最高責任者として、惑星の再生研究に取り組んでいた男性。しかし、それは表向きの事。裏では予算の横領、違法な軍事兵器の研究、軍事団体との裏取引等を行っていたのだ。

それらが政府に気付かれ、逮捕される事に。そんな彼を救出したのが、イデアだ。

事前にイデアの方からコンタクトをとり、提案と交渉に応じ、今に至る。

 

「ふふふ、お父さんの期待を裏切らないでくれよ?言うこともちゃんと聞く事。いいね?」

「……は、い」

「うん、良い子だ」

 

イデアは、Dをそっと抱き締める。愛情の欠片もない、形だけの抱擁。

ふと、後ろにいる助手に声をかけた。

 

「お前も裏切ってくれるなよ?」

「裏切るなんて、ご冗談を。研究が続けられなくなるじゃないですか」

「ふむ、それもそうか」

「それに、そうやって押し付けがましい愛情もどうかと」

「お前にだけは言われたくない」

「そうですか」

 

書類をまとめながら、上司と話す助手。この男を裏切るなど、命知らずか馬鹿しかいないだろう。“今は”、言う通りにしておいた方が利口だ。

二人の科学者が会話する中、Dはイデアの肩越しに、向こう側を見つめていた。

 

 

闇を思わせる色合いの巨大な結晶。その結晶の内部にて、Dと同様に生まれたままの姿で眠っている少女がいた。

Dよりも幼く、クリームに近い金髪が、結晶の中にいる為か、空に舞う様にして固まっている。

 

 

 

――――永遠結晶エグザミア。ユーリが目覚めたのは、シュテルとレヴィが目覚めた一週間後。我からすれば、二週間になるな。

――――それからは、奴による教育……いや、洗脳だな……。戦闘能力向上の為の戦闘訓練。身体の異常検査。訳の分からん薬品を打ち込まれ、性能を試す実験台。

 

――――奴との日々は……地獄だった。

 

 

◇◆◇◆

 

 

重々しい声音で語るディアーチェ。イデアとの関係性について、大方話し終えた。まだまだ語り尽くせてはいないが、今の所はここまでが答えられる。

 

思い出したくもない過去の記憶。それはディアーチェだけでなく、シュテル、レヴィ、ユーリの三人にもある。浮かんでいる重々しい表情が、物語っていた。

 

「……そんな事があったんだね」

 

沈黙の中、口を開いたのは、なのはだった。

どこか悲しげな、優しい面持ちをしている。

 

「……我等の事を、どう思う?」

「「「えっ?」」」

「私達は、あなた方三名の遺伝子から造り上げられた存在。兵器として利用する為に生み出されました」

「やっぱり……ボクやシュテるんや王様みたいにそっくりな奴がいたら、気持ち悪い?」

 

不安そうに、上目でレヴィは尋ねる。自分達が異質な存在だというのは、理解している。それでも、ネクサスやキバーラ達は受け入れてくれた。

果たして、オリジナルである彼女達は――――。

 

「そんな事、思う訳ないよ」

 

そっと、レヴィの頭に手を乗せ、優しく撫でるフェイト。母性溢れる微笑みを目にし、レヴィは擽ったそうに肩を竦める。

 

「あなた達は、造られた存在かもしれない。でも、だからといってあなた達を否定する理由なんかないよ」

 

かつて、プロジェクトFによって産み出された自分。クローンという事であれば、目の前にいる少女達とは似通った部分がある。

しかし、自分は自分。フェイト・T・ハラオウンとして、今を生きている。高町なのはという大親友との出会いが、自分をここまで変えてくれた。更には“恋をする”事もできた。

だからこそ、フェイトは三人に、自分は自分らしく、自由且つ正しく生きてほしいと考えている。

 

「そやそや。それに、こうして見たら、なんや妹が出来たみたいでええかもしれんな♪」

「ふん!貴様の妹になど誰がなるか」

「そんな~いけずな事言わんといてぇな、王様」

「おい、そう呼んでいいと言った覚えはないぞ“子鴉”!」

「誰が子鴉やねん!」

 

歩み寄るはやてだが、猫の様に威嚇し、距離を取るディアーチェ。

 

そんな二人の会話を眺め、なのはとシュテルは、ふと向き合う。

 

「何だか、不思議な感じだね。こうして、顔を合わせるの」

「ええ、そうですね。てっきり、もっと気味悪がるのかと思ってました」

「確かにびっくりはしたよ。でも、顔が似てるってだけで、そんな風に思ったりなんかしないよ。さっきの話を聞いたら、尚更ね」

 

そう言うと、なのはは立ち上がった。そして、徐に手を差し出す。

 

「改めまして、高町なのはです。よろしくね」

「……はい。改めまして、シュテル・ローライトと申します。以後お見知りおきを、なのは」

 

こちらも立ち上がり、シュテルはなのはの手を取った。握手を交わし、相手の存在を認識し合う。その間に、険悪な空気など、微塵もなかった。

 

二人を見て、フェイトとレヴィは顔を見合わせる。フェイトが握手しようとすると、レヴィは胸元目掛けて抱きついてきた。

 

「おっと」

「えへへ、よろしくね“へいと”」

「うん、よろしくレヴィ。後、へいとじゃなくて、フェイトね?」

 

フェイトは優しく抱き止め、頭を撫でる。人懐っこい猫の様に、レヴィは身を委ねる。

 

「私は八神はやて。よろしゅうしてな、王様」

「ふん、我はよろしくしないぞ子鴉」

「もう、そんな照れんでもええやんか~」

「照れてなどおらんわ、たわけ!」

 

はやてが距離を縮めようとすると、ディアーチェが離れる。こちらは、少々時間がかかる様だ。

 

(無難に、終わった様だな)

(よかった、三人共受け入れてくれて)

 

傍観していたゼラムとユーノは、ほっと安堵する。彼女達を疑う訳ではないのだが、こうしてコンタクトが取れて、良い結果となった。

 

そして、残ったのがただ一人。

 

「そうだ!シュテル達の事は、分かったんだけど……その子は?」

 

思い出したかの様に、なのははユーリの事を口にする。

フェイトとはやても気が付き、ユーリの方に視線を向けた。

視線が集まり、やや慌てるも、ユーリは落ち着いた様子で、立ち上がる。

 

「私の名前は、ユーリと言います。夜天の書と同時期に生み出された別のプログラム。それが私です」

「っ!?」

 

ユーリの口から告げられた言葉に、一番動揺していたのは、はやてだ。まさか、夜天の書と関わりがあるとは思いもしなかった。

 

「や、夜天の書て……そんなん、聞いた事ないで?」

「魔力の無限連環システムとして生み出された私ですが、この力は誰にも制御する事が叶わず、やむを得ず封じられました」

「魔力を完全に遮断、更に何重にも仕掛けられた隠蔽魔法によって、その存在は隠されてきた。長年に渡り、誰一人として知られなかったのだが……“奴の手”によって、その封印が解かれた」

「……奴とは、もしかして」

 

ゼラムの言葉から、フェイトは察した。彼は頷き、名を言った。

 

「そう、イデアです」

「あいつほんまにようさん出るなぁ。色んな所におるやんけ」

「まったく、鬱陶しい事この上ない」

「なぁ、王様?」

「これに関しては子鴉と同意見だ」

 

珍しく、ディアーチェははやてに同意し、二人して頷き合っている。

 

「あの人は、私の力をも支配下に置こうとしました。でも、ディアーチェ達と違って、私自身は不出来だったので、上手くいかず……完全な制御が出来なかったんです。実験の最中で暴走し、何度も、ディアーチェ達を傷付けてしまいました」

 

ユーリは俯き、膝の上に乗せている手に、力が入る。怯えが見え、やや小刻みに震えていた。

 

「それで……あの人が怒って……それで……それで――――」

「ユーリ、もういいから。ね?」

 

不意に、キバーラはユーリを抱き締める。

温かな感覚に包まれ、ユーリは心を落ち着かせる。

その姿を見て、なのは達三人は、薄々と察した。あの非道な人物の元にいたのだ。まともな事は、まずないだろう。

 

「誰にも止められる事が出来ないと……そう思っていた私を、ネクサスが助けてくれたんです」

 

胸の前で手を握り、その出来事を思い出しているのか、ユーリは微笑みながら話す。

 

「彼のおかげで、私は力を抑える事が出来た。大事な物を壊す事もなくなって、キバーラみたいな、優しいお姉さんとも巡り会えました」

「嬉しい事言ってくれるじゃな~い♪」

「えへへ」

 

頬を綻ばせ、キバーラに頬擦りされるユーリ。嫌がる素振りは見られず、嬉しそうに受け入れている。

 

「まあ、年増な上に人使いが荒いがな」

「生意気な事言ってくれるじゃな~い?」

「むぐぁがががががが!?」

 

目元が笑っていないキバーラに頬をつねられ、悲鳴を上げるディアーチェ。もう見慣れた風景なのか、他三人はやれやれと言わんばかりに、ため息をつく。

 

「って事は、あなたが保護者さんですか?」

「ええ、その通りでございます。あと申し遅れました。(わたくし)、こういう者でして」

 

身なりを整え、キバーラは懐から名刺を取り出し、なのは達に手渡す。

 

(ハンディ)(ガイスト)(サービス)……って、確か人材を派遣する会社でしたよね?」

「その通りでございます。ありとあらゆる分野に秀でた専門家達を、お客様の依頼に応じて派遣し、お手伝いをする。猫の手ならぬ幽霊の手も借りたい方にうってつけの、まあ何でも屋みたいなものですよ」

 

キバーラは、なのはにそう説明する。

 

因みに、社員は皆ゴースト族で構成されており、仕事時は人間の姿で取り組んでいる。武芸、科学、芸術などの専門家達がおり、依頼客の間では、評判になっているのだ。現に、今でも依頼が十件も殺到する事も。

そしてキバーラは、そのHGSの“二代目”社長として――スケジュール管理や依頼の調整など――働いている。

 

「すっごい評判ええみたいやで。管理局でも良い人材が派遣されたって話も聞いとるわ」

「依頼人の皆様のお役に立つ事が、我々の義務ですからね」

 

そう話している最中、ドアがノックされた。

 

「話の方は、済みましたか?」

「ああ、問題ないよ」

 

ユーノが言うと、ネクサスは部屋に入る。ヴィヴィオとアインハルト達も、後に続く。

 

「やっぱり、なのはママ達にそっくりだぁ……」

「……あまりジロジロ見るでない」

「ああ、ごめんなさい」

 

反省し、ヴィヴィオは四人と向き合う。

 

「ネクさんから、全部聞きました。ネクさんのご家族なんですね」

「まあ、そうだな」

「そうですね」

「そうだよ~」

「はい、そうです」

「私、高町ヴィヴィオって言います!ネクさんには、お世話になっております」

 

ヴィヴィオは自己紹介を行い、お辞儀をする。

 

「じゃあ俺達も。俺は、ジャン・ウェズリー」

「アイザ・コルフォード。よろしく」

「ユミナ・アンクレイヴです。ネクサス君と、アインハルトさんのクラスメートです」

 

ネクサスの友人達三人も紹介し終え、ディアーチェ達は目を丸くする。

 

「お主ら、我らの事は全て聞いたか?」

「おう!クローンだのなんだの難しい事はアレだけど、要はネクの家族で、管理局の有名人のそっくりさんって訳だろ?」

「随分省略したな……まあでも、良い家族っていう認識に間違いないよな」

「そうそう、ネクサス君からも聞いたよ。とっても大事な家族だってね」

 

ユミナがそう言うと、側にいるネクサスは、頬を仄かに赤くし、恥ずかしそうに顔を反らす。

ネクサスから事情を聞き、四人は友好的な感情を露にしていた。

 

(……変わった奴らだな)

(でも、良い人そうだよ)

(ええ、杞憂に終わって何よりかと)

(また、お友達が増えますね)

 

毛嫌いされるか、拒絶されるか、不安に思っていたが、四人は難なく受け入れていた。

この事実に、四人は心の底から安堵する。

そして、またも自己紹介を行った。

 

(良かったよ、本当に)

(ええ、この子達も嬉しそうにしちゃって……)

 

自己紹介を行うディアーチェ達を、横から見守るネクサスとキバーラ。

なのはやユーノ達が見守る中、子供達は名前を呼び合い、親交を深めていった。

 

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