リリカルなのはvivid―アナザーメモリーズ―   作:NOマル

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少女に忍び寄る魔の手。その時、主人公の秘密が、明らかとなる……!

運命の鎖を解き放て!



wake up―運命―

【ストライクアーツ】

 

ここ、ミッドチルダで最も周知されている打撃系の徒手格闘技。

 

ヴィヴィオ達三人も、元ナンバーズであるノーヴェ・ナカジマの指導の元、練習に励んでいる。

 

ミッドチルダの中央第四区に位置するストライクアーツ練習場。今日も、三人はそこで鍛練を行っている。

 

特に今日は、他の利用者の注目を集めていた。

 

十歳になったヴィヴィオは、それを機に、母である高町なのは、フェイト・T・ハラオウンから、専用の愛機(デバイス)を渡された。

 

クリスタルタイプに、可愛らしいウサギのぬいぐるみで包んだデバイス。ヴィヴィオは名付けた。

 

正式名称【セイクリッドハート】

 

愛称【クリス】

 

更に、大人形態に変身出来る様にもなった。これには、フェイトも驚きの余り腰を抜かしてしまった。

 

魔法や格闘の技術を高める為に得た、大人形態への変身。

ノーヴェとの組手も、よりレベルの高いものとなった。

 

 

 

 

練習が終わり、ヴィヴィオ達は帰途の道を歩く。暫く歩いていると、ノーヴェは付き添いで来たウェンディに頼み込む。

 

「悪ぃ、チビ達を送ってってやってくれるか?」

「あ、了解ッス。なんかご用事?」

「いや、救助隊。装備調整だってさ。じゃ、またな」

 

お疲れ様でした、と一同に別れを告げ、ノーヴェはその場を後にした。

 

 

街灯に照らされた夜道を、ノーヴェは一人、歩いていた。

 

かつて、“JS事件”の加害者として、やや荒れていた彼女。しかし、他のナンバーズと同様、今を真っ直ぐに生きている。

その証拠に、ヴィヴィオ、リオ、コロナから先生と呼び慕われている。

 

そんな彼女も、今となってはすっかりコーチとして身に付いてきた。

 

 

そんな時――――

 

 

「――――ストライクアーツ有段者。ノーヴェ・ナカジマさんとお見受けします」

 

声を聞き、空を見上げる。

 

月光を背に、街灯に立っている一人の女性。ツーサイドアップの美しい碧銀の長髪。スラリとした体型に、白を基調とした戦闘服を身に纏っている。

顔には素顔を隠すためか、アイバイザーがかけられている。

 

「貴方に幾つか伺いたい事と、確かめさせて頂きたい事が」

「質問すんならバイザー外して名を名乗れ」

「……失礼しました」

 

ノーヴェの言葉に従い、女性はバイザーを、外した。

 

青系統の虹彩異色が、露になる。

 

「カイザーアーツ正統、ハイディ・E・S・インクヴァルト。覇王を名乗らせて頂いています」

 

女性は静かに、そう名乗った。

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

夕食のカレーライスも食べ終え、食器類も洗い、片付けも終わった。

 

西洋風の居間。アンティークなテーブルに座り、ネクサス達は自由な時間を過ごしている。

 

「ぬぬぬぬぬぬぬ……!」

「……………………」

「よしっ……これだぁ!!」

「残念、ババです」

「やられた~~!!」

 

ババ抜きの真っ最中。唸りに唸ったレヴィは、シュテルの手札から一枚のカードを引き抜く。しかし、カードはジョーカー。ババを引いてしまい、仰向けに倒れ込む。

対してシュテルは無表情……に見えるが、微かに口角が上がっていた。

 

「うぐぐぐ……!シュテるん強すぎるよ~」

「ふっ、そう簡単には勝たせませんよ」

「確かに、シュテルはポーカーフェイスが上手いから」

「レヴィ、お主は分かりやす過ぎるぞ」

「私も中々揃いません……」

 

ネクサス、シュテル、ディアーチェ、ユーリの四人は、相手に悟られないよう、手札を隠している。レヴィは尚も倒れたままだ。

 

楽しい風景を、キバーラとホロンは側で見守っていた。

 

「うふふ、平和ね~」

 

用意された手刷りにぶら下がりながら、優しく微笑むキバーラ。喋る事が出来ない為、ジェスチャー等で意志疎通を行うホロン。腕を組んで、うんうんと頷いている。

ネクサス達五人はまた、ババ抜きに専念する。

 

――――その時だった。

 

脳内を電流が走ったかの様な感覚に見舞われる。その場にいた全員が、目を見開いた。楽しい雰囲気から一変、張り詰めた空気に変わる。

 

ネクサスは、そっと手札のカードをテーブルに置いた。

 

「……行こう」

「ええ」

 

椅子から立ち上がるネクサス。キバーラも翼を羽ばたかせて、側に寄る。

 

「来たか……」

「その様ですね」

「いってらっしゃい、ネク」

「気を付けて下さいね」

「うん、いってきます」

 

四人とホロン――ジェスチャーで執事の様に一礼する――の見送りを受け、ネクサスは、扉を開いた。

 

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

 

――――弱さは罪。

 

 

――――弱い拳では誰も守れない。

 

 

 

ノーヴェ・ナカジマとの戦い、辛くも凌いだが、彼女の一撃は確実に当たっていた。

 

呼吸が微かに荒く、足取りも弱々しい。

 

満身創痍の状態で、覇王――――アインハルトは目的地に辿り着いた。

 

自分が利用している、人が滅多に通らない、コインロッカーが設置された古い場所。彼女は背中でもたれながら天井を見る。

 

「今日は、早く戻って休もう……。そして、また――――」

 

『無茶は、しないでね?』

 

「…………」

 

少年の言葉が、脳裏を過った。

 

彼とは、初等部の頃に出会った。覇王としての宿命、その記憶を受け継いだせいか、周りと馴染めずに孤独な過去を過ごしてきたアインハルト。

 

そんな時、何かと声をかけてくれたのが、ネクサスだった。ちょっとした話題を出したり、気にかけてくれた。

 

おかげで、学校生活が楽しいと思える様になった。彼といるだけで、心が安らぐ。

 

感謝しても仕切れない。だからこそ、心配をかけたくはなかった。

 

しかし――――

 

「……すみません、ネクサスさん。私には、どうしても果たさねばならない事があるんです」

 

自分にも譲れないモノがある。それは、彼に言われても変わることはない。

 

奮い立たせる様に、体に鞭を打つ。立ち上がろうとした瞬間、

 

「――――見つけたぞ」

 

背筋が凍り付く程の殺気。それを感じ取り、瞬時に振り向く。そして、目を見開いた。

 

暗闇に包まれた道。そこから、こちらへゆっくりと歩み寄る一つの影。

 

それは、人間ではない。

 

白と青を織り混ぜたステンドガラスの体表。頭部には、一本の鋭い角が生えている。姿形は神話に出てくるユニコーンそのものだ。

 

「覇王の血を受け継ぎし末裔に、こんな場で会えるとはな」

「あなたは――――ファンガイア!」

 

かつて、古代ベルカの時代にその存在を誇示していた魔族の一つ。人間の持つライフエナジーを主食とし、他国を蹂躙してきた。

 

その魔族が、目の前にいる。

 

「何故……遥か昔、全滅した筈じゃ……」

「確かに……“ファンガイア”は絶滅した。だがな、俺はファンガイアではない」

 

ファンガイアに似た怪人は、唐突に走り出した。鋭利な角を研ぎ澄ませ、こちらに突進してくる。アインハルトも対応し、すぐに体を反らして回避する。先程まで彼女がいた壁に、角がズドンッ!!と勢いよく突き刺さる。

怪人は角を引き抜き、アインハルトと向き合う。しかし、彼女は既に迎撃の準備を整えていた。

 

「はぁあっ!!」

 

低く構え、渾身の一撃を込めた拳を、怪人の胸元目掛けて突き出した。大気を切り裂き、見事に命中。

 

だが、ノーヴェ・ナカジマとの戦いにおけるダメージが蓄積したままの状態で放った一撃。体の節々が痛み、思う様に動けなかった。

 

その結果、怪人の体が少しよろめく程度に終わった。怪人は鼻で笑い、彼女の細い首を掴み上げる。

 

「覇王の子孫といえ、この程度とはな」

「がっ、は……!」

 

力強く締められ、呼吸が思うように出来ない。そのまま壁に叩きつけられる。肺が圧迫され、頭が少し揺れ動く。

 

「我々は進化したのだ。魔族の頂点に達し得る筈だった存在。ファンガイア……そしてレジェンドルガ。その二つの存在を融合させて誕生したのが我等――――」

 

――――“ネオファンガイア”

 

「ネオ……ファンガイア……!?」

「貴様からは良い悲鳴は聞こえそうにないな……。その代わりライフエナジーに期待するとしよう」

 

ネオファンガイアの一人――――ユニコーンファンガイアは、更に締め付ける力を強くする。

アインハルトは両手で相手の腕を押さえ、抵抗を試みる。しかし、相手は未知の怪物。力は計り知れず、びくともしない。

 

「ここで……倒れる、訳には……!」

「諦めの悪い奴だ――――ふん!」

「がはっ!」

 

空いていた片手で拳を作り、無防備の腹部に一撃を入れる。呻き声を上げ、アインハルトは顔を苦痛に歪める。

それだけでは終わらない。

数発殴り、膝蹴りを二、三発。髪の毛を強引に掴み、壁に何度も何度も叩きつける。

 

頭から血が流れ、青色の瞳に垂れ落ちる。意識が朦朧とし、抵抗も弱まり、ついに武装形態が解けてしまった。

 

白のワンピースに身を包んだ少女の姿に戻ったアインハルト。

 

「ぅ、ぁ……ぁぁ……」

「ふん!ようやく、くたばったか」

 

掴み上げられたまま、意識が遠のきかける。最早、抗う力すらない。

 

「く、ははは……!覇王の血、頂くぞ」

 

気持ちが高ぶり、興奮気味に言うと、アインハルトの首元に、鋭い半透明の物体が二つ出現。ファンガイアが補食の際に召喚する“吸命牙”。二つの牙が、細くしなやかな首に接近していく。

 

「……っ!」

 

歯を噛み締め、瞼をぎゅっと閉じる。

 

自分はここで終わってしまうのか。

 

悔しさを募らせながら、アインハルトは拳を握り締めた。

 

 

 

 

突然、その動きを止めた。

 

何かの視線を感じ取り、辺りを見渡すユニコーン。やがて、足音が聞こえる方向に視線を向ける。

 

一人の少年が、こちらに向かって歩いている。少年――――ネクサスの側には、一匹の白いコウモリが飛び回っている。

 

普段の彼を知る者は、目を疑うだろう。いつもの穏やかな表情ではない。威嚇する様に、こちらを睨み付けていた。鋭い眼光が、敵を射ぬく。

たかが人間、普通なら嘲笑の対象になる筈が、今回はそれに当てはまらなかった。

 

得体の知れない“なにか”を感じ取り、ユニコーンは完全に動きを止めてしまった。

 

「――――キバーラ」

「ええ、キバッて行くわよ」

 

ネクサスに呼ばれ、キバーラは彼の左手に収まる。そして、牙を光らせながら、口を開いた。

 

「カァ~プッ♪」

 

キバーラは、ネクサスの右手に噛みついた。刺された牙から魔皇力が注がれ、顔の下顎部分にステンドガラス状の模様が浮かび上がる。同時に、彼の琥珀色の瞳。その右目が赤黒く染まる。

 

腰回りに突如出現した数本の鎖。それが重なりあい、帯の様に巻かれ、深紅のベルトに変化した。

 

「変身!」

 

そう叫び、バックル部分にキバーラを装着。キバーラを中心に波紋が広がり、ネクサスの体が、“鎧”を纏う。

 

その姿を目の当たりにし、ユニコーンは驚愕する。

 

「お、お前は!?」

 

代々ファンガイアの王に受け継がれ、身に纏った者に絶大な力を与える、伝説の鎧。

 

――――魔王“キバ”。

 

キバはユニコーン目掛けて走り出す。

 

「はあッ!!」

「ぐおっ!?」

 

ユニコーンの顔面を掴み、そのまま前進する。その際、アインハルトは拘束から解き放たれた。壁にもたれたまま、ズルズルと地面に落ちる。

 

視界が霞んでいく中、その後ろ姿を収めていた。

 

「……キバ…………」

 

限界に達し、ついに意識を失った。

 

 

 

 

元いた場所から遠ざかり、暗い場所から外に移動した。助走の勢いを利用し、そのままユニコーンを投げ飛ばした。

吹き飛ばされ、地面に投げ出される。

 

「ぐっ、おのれぇ……後、もう少しだったのに……!」

「…………」

 

怒りを露にするユニコーン。対してキバは戦闘体勢のままだ。息を荒くしながら、自らも構える。

 

「うおおおっ!!」

 

駆け出し、拳を振るう。右、左と繰り出される拳打。キバはそれを受け流す様に、かわしていく。そして、敵の両手を外側へと払い除け、無防備となった体に拳を連続でぶつける。最後に右ストレート。ユニコーンは後方に飛ばされる。

それから追撃とばかりに、飛び掛かって膝蹴りを食らわせる。顔面に食らい、またもよろめくが、キバは更に腹部へと膝蹴りをお見舞いする。数発与え、横向きに投げ飛ばした。

 

「く、くそっ!」

 

舌打ちをし、荒々しく叫びだす。今度は体勢を低くし、角の先端をキバに向ける。そして、そのまま突進。

 

「死ねぇ!!」

 

対して、キバは動かない。その場で立ち尽くしたままだ。恐れを成したのか、とユニコーンは勢いを殺す事なく体当たりをしてくる。

 

角の先端が、キバの腹部まで後五センチ。いや、四センチ。三……二センチ――――

 

一センチになった途端、キバは体を捻らせて回避。行き場を無くした角は、そのままコンクリートの壁に突き刺さってしまった。

 

「っ!」

 

上から肘鉄、下から膝を上げ、挟み込む様にして、角をへし折った。バキィッ!とガラスの破片が飛び散る。

 

「なっ、あああ!?」

「はっ!!」

 

動揺するユニコーンに、キバは拳を連続で打ち付ける。そして、回し蹴りを顔面に目掛けて振り向く。最後、腹部に蹴りを入れた。

 

ユニコーンは吹き飛ばされ、仰向けに倒れる。呻き声を上げながら、よろよろと立ち上がるが、体力を消耗しているのが分かる。

 

コツ、コツ……と地面を踏みしめ、ゆっくりと近づくキバ。ある程度の距離まで行くと、その場で立ち止まった。

 

「…………」

 

キバは、ベルトの右部分に装填されている、小さい赤い笛らしき物を、キバーラの口に装着。キバーラは覚醒笛フエッスルの魔の音色を奏でた。

 

「ウェイクアップ!」

 

その言葉と共に、辺りを赤い霧が包み込む。やがて、その場は漆黒の闇に包まれ、三日月が照らし出している。

 

キバは低く構える。両手を外側へ勢い良く広げた後、内側へとゆっくり持っていく。拳が交差し、今度は右足を振り上げた。

 

右足の回りをキバーラが飛び交い、拘束していたカテナを解き放つ。解放された、三つの魔皇石が埋め込まれた右足、ヘルズゲート。紅の翼を開かせる右足を上げたまま、左足で空高く跳躍した。

 

三日月を背に、キバは蹴りの姿勢を取る。ユニコーン目掛けて、飛び蹴りを食らわせる。

 

【ダークネスムーンブレイク】

 

「ぐあああっ!!」

 

見事に命中、ユニコーンはそのまま壁に押し込まれた。その際、背後の壁にキバの紋章が刻み込まれる。

ヘルズゲートの碧色の魔皇石が瞬き、ユニコーンの体にステンドガラスの模様が浮かび上がる。やがて力尽き、粉々に砕け散った。

 

終わりを迎え、カテナによってヘルズゲートは封印された。

 

ファンガイアの残骸とも言える光球、ライフエナジーが浮遊していた。

 

すると、どこからか龍の雄叫びが聞こえてきた。それは段々と大きくなっていく。

 

 

そして、その姿を表した。

 

 

魔族の一つである、ドラン族。その中でも最強と称される個体、【グレートワイバーン】。そのドラゴンを捕獲、ファンガイア族が改造した、生きた城。

西洋の城から、ドラゴンの首と手足、翼が生えた様な姿。

 

それがこの移動要塞【キャッスルドラン】だ。

 

「ギャオオオオッ!!!」

 

キャッスルドランは雄叫びを上げながら、地面に着地。餌であるライフエナジーをそのまま一口で補食した。げふ、と息を吐いた後、どこかへと飛び去っていった。

 

暗闇が消え、世界が正常の夜へと変わる。静寂に満ちた空間、一人佇むキバ。

 

やがて、その姿は一人の少年へと変えていく。

 

「…………ふぅ」

「お疲れさま、ネクサス」

 

変身解除したネクサスに、労いの言葉をかけるキバーラ。

 

「……そうだ!」

「ちょっと、ネクサス!?」

 

思い出したかの様に、ネクサスは踵を返す。キバーラも慌てて追いかける。

 

ユニコーンと戦う際、視界の隅に入っていた一人の少女。それが気がかりとなり、ネクサスは急いで現場に向かう。

 

コインロッカーが並べられている場所に着き、壁にもたれている一人の少女を見つけた。

 

「アインハルトさん!」

「あら、知り合い?」

「学校の、クラスメートだよ……。アインハルトさん、しっかりして!」

「うっ……」

 

側に駆けつけ、必死に呼び掛ける。しかし、目覚める気配もない。頭からは血を流しており、肌も傷ついている。

呼吸も弱々しく、見るからに痛々しい様だった。

いい案が思い浮かばない。だからと言って、大切なクラスメートを見捨てるなんて出来るわけがない。

 

「どうしよう……何か……出来る事は……」

「……ネクサス」

 

狼狽えるネクサスに、キバーラは耳元で囁く。真剣な声音で、はっきりと。

 

「“アレ”……しかないでしょ?」

「ええっ!?いや、でも……流石にそれは…………」

「一刻を争うのよ?それに、これは人工呼吸と同じ様なもんじゃない。“あの子達”を助けた時だって、その方法が効果抜群だったし」

「いや、人工呼吸だって普通やりにくいでしょ!?それにあの時は、その……仕方かったというか……」

「いいから!ほら、男ならさっさとやる!その子を助けてあげたいんでしょ!」

 

唸りに唸るネクサス。その表情は思い詰めており、頬が微かに赤くなっていた。

しかし、クラスメートの命が掛かっているのだ。迷っている暇はない。意を決して、ネクサスは顔を引き締める。

 

「……キバーラ、向こう向いてて」

「は~い♪」

 

キバーラが横を向いた事を確認。アインハルトに視線を向ける。罪悪感を感じながら、深呼吸し、決意を改める。

 

「アインハルトさん……ごめんね」

 

ネクサスは、アインハルトを上半身を抱き上げ、こちらに寄せる。綺麗な碧銀の髪をかき上げ、首筋を露出させる。染み一つない、白い肌。

不謹慎ながら、思わず魅入ってしまう。

 

「って、違う違う!これは、応急処置であって、別に……下心がある訳じゃ、断じてない!」

(早くしなさいよ……)

 

ネクサスは、口を開く。琥珀色の瞳が、またも紅く染まり、鋭い犬歯が生えていた。

 

そして――――無防備となった首筋に、噛みついた。

 

「…っ…あっ……!」

 

少女の口から漏れだす、微かに悶える吐息。彼女が倒れないように、しっかりと両手で支えている。向こうも無意識なのか、ネクサスの衣服をぎゅっと掴んでいた。

 

「くっ……ぁっ……んっ……ああ……!」

 

彼女の体に、変化が起きた。

彼女の額に流れていた血が、無くなっていたのだ。それだけではない。擦り傷や、打撲の跡などが、みるみる内に消えていく。数分後には、彼女の体から傷が消えて無くなっていた。

 

「――――はあ……」

 

首元から口を離し、呼吸を整えるネクサス。アインハルトの体には、外傷は見当たらない。

滅多に使わない、正に最後の手段でもある為、不安もあった。しかし、どうやら何とか成功した様だ。

彼女は、穏やかな寝息を立てている。

 

「何とか、なったか……」

「ん……」

 

ネクサスはふと、疑問に思っていた。

 

彼女は何故、こんな場所にいたのだろうか?人通りの少ない、こんな場所に。

 

すると、キバーラが話し掛けてくる。

 

「ネクサス、急いで出るわよ。誰かが来るみたい」

「えっ?」

「見て、発信器があるわ。恐らく、管理局関係の人間ね」

「でも、アインハルトさんは……」

「大丈夫、きっと保護してくれるわよ、ほら、行きましょう」

 

渋々といった風に、ネクサスはその場を去っていく。もう一度、謝罪してから。

 

「はあ……どうしよう。明日、顔合わせづらいな……」

「そりゃあねぇ。顔真っ赤にして、あんな夢中に吸い付いてたもの。そんなに美味しかったの?」

「いや、助けなきゃって思って、無我夢中でやってたから――――ってキバーラ、もしかして……!」

「……てへっ♪」

「み、見たなっ!?」

「ごっめ~~ん♪だって気になっちゃったんだも~~ん」

「キバーラあああああ!!」

 

羞恥のあまり、顔を紅潮させながら、キバーラを追い掛ける。それをからかいながら、キバーラは夜空を飛び交う。

 

 

 

 

 

魔王、キバの鎧を受け継ぎし少年――――ネクサス・ローライト。

 

 

 

 

 

そう遠くない未来。定められた戦いの火蓋が、切って落とされる。

 

 




はい、という訳でですね。仮面ライダーキバが登場いたしました。因みに、フォームチェンジは全てオリジナルです。原作は一切出ません。

これから、優しく見守って頂けたらな、と思っております。
次回も、お楽しみに!
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