・相変わらずのgdgd加減
・ウォルターがちょっといつものウォルターじゃない
・エド・ドロン視点
・レイフォンがちょっとツンデレっぽい
・最後だけ元に戻る
「あ。よう、ドロンじゃねぇの」
「あ…、ウォルター、先輩」
オレ……エド・ドロンは驚いた。
いや、彼がここにいること自体はおかしい訳ではない。
彼はこの学園でオレの先輩だし、オレの友達(だとあまり思いたくないモテるヤツだが)の小隊の先輩でもある。
しかしこの先輩、意外にも変わった趣味…と言うか、好みがあるのだ。
この人、イケメンとか男前とか言われるが、以外に乙女趣味だったりする。
「アルセイフは一緒じゃねぇの?」
「そういつも一緒って訳じゃないですよ」
「そうか? ……まぁ、良いンだが…」
先輩はふむ、と手をあごに当てて考えた。
オレといえば先輩に突如声をかけられて驚愕の一言だ。
彼と一切面識が無いという訳では無く、レイフォンと一緒に居た時に袋いっぱいのチョコレートを抱えて居る彼と遭遇した事があった。
その時に色々と話をした(といってもレイフォンがほぼ不機嫌にしていた)だけなんだが。
「先輩はどういう用事でこっちに…?」
「ん~、いやぁ、いいね、今日は」
「?」
珍しくテンションの高い彼の手には大きな袋が抱えられていた。
「いやぁ、今日はお菓子類が大安売りでさー、大奮発しちゃってなぁ」
「はぁ……。作るんですか?」
「うん? あぁ、そのつもりだ」
先輩は珍しくにこにこと笑みを湛えて袋をかさかさと叩いた。
だけど、だからなんだ? 正直それだった。
そう思っていると先輩が口を開く。
「ってことでさ、ちょっと食べてくれねぇかな」
「は…っ?!」
「あ、いや、大量に作るからさー。アルセイフは甘いもの苦手だし、ロスはまぁまぁだしアントークは微妙だし…、消費者が近くにいねぇのよね」
「要するに、食え、と」
「そ」
にまぁ、と笑みを浮かべる先輩はちょっと新鮮で良い感じかと思いきや寧ろちょっと怖いかもしれない。
いや、こういう笑みに女子は釣られるのだろうか。
こういう笑みをイケメンがするから、女子はこういうヤツに寄っていく為に余計に女子がイケメンによって行ってそしてその為にモテるヤツが出来る。
普段のギャップとかそういうものっぽいっていう……
「おーい、ドロン、どうする? オレだけでも消費できるからどっちでもいいぞ」
「あー……じゃあ、ちょっとレイフォンでも連れて行きます」
「あいつ嫌いだろ? 甘いもの」
「嫌いですけど」
「……まぁ、あいつを連れてくるって言うならオレは甘くないモンも作っておくかな。あ、場所は学校の調理実習室だから、よろしく」
―――――オレだけっていうのは、怖い
あまり慣れていないのに、この人といきなり2人きりっていう空間は……辛い。
そこまで思って、ん? と首を傾げた。
「学校の調理室?」
「そう。だって家だと金かかるだろ?」
「……あぁ……」
この人もこの人でレイフォンと似たような人だ、と思う。
正直オレとしてはレイフォンが先輩を嫌っているのは所謂同族嫌悪だと思っている。
「よく借りられましたね」
「いやぁ、担当に言ってもしょうがねぇなぁと思って生徒会長に」
「…………ともかく、連れて行きますんで」
「うん、了解」
やや頬が引きつるオレに、ウォルター先輩がにこやかに手をふって去っていく。
オレは緊張という圧力からようやく開放され、ふぅと息を吐く。
どっと汗が出る。
「びっくりした…。いきなり声かけて来るんだもんな」
悪い人じゃないとわかりきっているからいいが、普段の態度を見ているとある種の不良に見られてもおかしくはない態度だ。
ただ、レイフォンから聞くほど完全に悪逆非道の人であるとは思わない。
実際接してみると、接し方が雑なだけで良い人ではあるのだ。
「さて、呼びに行こう」
ともかく、現在レイフォンはおそらく教室に居るだろうと見当をつけ、オレが教室に踏み入れるとビンゴ、居た。
ついでに、レイフォンとよく一緒に居る3人組女子も。
……このモテめ
「レイフォン」
「あ、エド。どうしたの?」
声をかけるとこちらを向いたレイフォンに、オレが先程のあった事と、来ないかという事を告げるとかつて無いほど嫌な顔をされた。
「……嫌です……!」
「えげつない言い方だな」
ものすごく低く、その上若干の――と言っていいのかはっきりしないのだが―――殺意を込めた声でそう言われた。
なんか、これオレが傷つくわ。
この状態のレイフォンといつも居るウォルター先輩マジ先輩
「レイフォン用の甘くない菓子も作るって言ってたぞ」
「…………………」
「あと、簡単な料理も作るって」
「……………………………………」
レイフォンの顔が「レイフォン用」という言葉で段々崩れてきた。
すると突然、いつもは引っ込み思案なメイシェン・トリンデンがぐっと前に出てきた。
「レイとん、行こ」
「……メイ?」
「行かないと損だよ!」
「メイっち、お菓子と料理のこととなると眼の色変えるからねー」
隣に居たミィフィ・ロッテンがのんきにそう言った。
それを見ていたナルキ・ゲルニは諦めているようで、呆れた顔をしている。
「行くしか無いみたいだぞ、レイとん」
「あー……うん。そうだね。メイが行きたいみたいだし…、それに、残ると食べ物がもったいないしね」
「レイフォン…、素直に行きたいって言ってもいいんだぞ? 誰も茶化さねぇよ」
「ち、違います! 誰が進んであの人のところになんて! 違いますからね、決して行きたいわけじゃないです!」
―――――なんだ、ただのツンデレか
つか、レイフォンでもこうなるって言うのは割と珍しいなぁとオレは何気なく思うわけだけど、だからってモテが許せるわけじゃない。
ここ重要。
「じゃあーウォルター先輩のところにレッツラゴー!」
ミィフィが元気よくそう叫んだ。
「……で? 別に構わないンだがねぇ」
「別に、来たかった訳じゃないです」
「はいはい」
レイフォンのむすっとした表情に苦笑を返し、ウォルター先輩がオレ、レイフォンと、ついてきた三人組にプラスして更に居る他のメンツに眼をやった。
「で、アントーク達はなンで?」
「迷惑だったか?」
「いや、消費者が出来て嬉しい限りなンだが…、何処で捕まえてきた、と」
そう呟いて先輩がオレを見た。
オレはどう答えようかやや戸惑いつつ、口を開く。
「えっと、廊下で合流しました」
「あぁ……そう。端的な説明ありがとよ。…ま、いいけどな。適当に座れよ。ある程度できてるから」
そう言って先輩が冷蔵庫に足を向け、言われたオレ達は適当に机に座った。
なんとなくオレ達一年組と先輩組で机につくと、先輩が左手にケーキやらクッキーやらを持ってきて、右手に料理類を乗せてきた。
「受け取ってー」
「分かった」
「分かりましたー」
二年生軍と1年生軍に受け取ってもらうと、先輩はまだあるらしい皿を冷蔵庫に取りに行った。
机にどんどん並んでいく料理と菓子類に机に着席したオレたちは唖然とした。
「……これ、この短時間で……?」
「同時進行って辛いよなー」
「笑顔ですか!」
レイフォンがツッこむが現在の先輩には効力が無いらしい。
ふわふわと花が飛んでいるかと思う程テンションのふわふわな先輩作成の菓子に手を付ける。
「……!! これ、は……!!」
「どうだ?」
「うまい! うまいぞ…!!」
十七小隊隊長、ニーナ先輩がいままさにきゅぴーん! というような反応をして眼を輝かせた。
先輩がいま食べたのは生クリームケーキだ。
ちなみにオレも食べたが、さっぱりとしたくちあたりで、しつこい甘さも無い。
甘党だと聞いていたのでもっと甘ったるいケーキかと思っていたらそうでもなかった、どころかものすごくうまい。
フォークが止まらない。
「アルセイフ、お前はこっちにしておいたほうがいいンじゃねぇの?」
「…なにがですか?」
「ほら、これは砂糖使ってないから。あんまり」
「…………………」
そう言ってショートケーキサイズのケーキをウォルター先輩が差し出して、オレの隣に座るレイフォンに渡した。
レイフォンはフォークでひとくちサイズに切り取って、恐る恐る口に入れた。
「……………………………………!」
レイフォンが眼を見開く。
その様子を少し心配そうにウォルター先輩が見やっていた。
「…………………美味しい……です」
「そりゃ良かった」
ウォルター先輩が普段では見られないような笑顔を浮かべてレイフォンの頭をぽんぽんと撫でた。
「イオ先輩」
「どうした? ロス」
「取れません……」
「切るのへ、」
「なんです……?」
「いやなんでも」
へた、と言おうとしたのだろうがウォルター先輩はフェリ先輩に睨まれて口をつぐむ、そしてフェリ先輩が切り取れなかったケーキを切り取ってあげていた。
ふとウォルター先輩が「あ」と呟いた。
「……どうしたんですか?」
意外にもレイフォンがもぐもぐとケーキを食べながらウォルター先輩に問いかけた。
「いや、アイス出し忘れた」
「まだあんのか」
さすがにどうなんだとシャーニッド先輩がツッコんだ。
それ、オレも言いたいです。
「美味しいね……さすがウォルター先輩」
向かいに座っていたロッテンが口を開いた。
そしてそのロッテンの隣に座るトリンデンも口を開く。
「……うぅ、ちょっと悔しいかも……。わたしのより美味しい…」
やはり同じ菓子を作る、料理を作る者として悔しいようだ。
しかしそれでも尊敬として悔しいらしく、笑みを浮かべていた。
最も、トリンデンが激しく悔しがるという姿は想像しがたいのだけれど。
出された料理も菓子類も皆で食べきり、残ったのは空っぽになった皿だけだった。
「おー、みんなよく食べたなー」
「ごちそうさまだった」
「ごちそうさまでした」
丁寧に全員がそういう。
やや微笑を湛えながら皿を片付けるウォルター先輩は、すでに普段通りの先輩だった。
先に帰っていいぞ、と言われたレイフォン達は先に帰路についていた。
「美味しかったですねー」
「あいつあぁいうことは本当に得意だからな。…そういえば、合宿はこれで出来るかもしれないな」
「合宿ですか?」
「あぁ、近々合宿をしようと考えているんだ」
「いいんじゃね? あいつの飯はなんだかんだ言ってうまいし」
廃都市でもその腕前を振るっていた事をシャーニッドが言う、それにレイフォンはやや眉をよせてシャーニッドを見た。
「僕も作ってましたけどね」
「あー、そうだったな。いやいや、お前が作ってたこと忘れてた訳じゃねぇぞ」
「忘れてたんですね。別にいいですけど。どうせ僕よりウォルターの方が料理の腕は上ですし」
「いやいや、ひがむなよ」
シャーニッドが苦笑を浮かべてレイフォンを見たが、レイフォンは「ひがんでません」とふてくされてそっぽを向いていた。
しかしレイフォンは、すぐに違うことに思考を巡らせた。
「…ウォルター」
「ん? アルセイフ。どうした?」
翌日の昼、レイフォンはウォルターを捕まえてずいっと布包の四角い箱を差し出した。
「……え、なに? 毒薬?」
ガンッ。
レイフォンがすっとぼけた言葉を言うウォルターの頭を手刀で強打した。
「いってぇな、なにすンだ」
「あなたこそ人が作って来たものになんてこと言ってくれるんですか」
「いやいや、おまえからどんな心代わりだと思ってな」
うっかり戦慄したぜ、とウォルターがわざとらしく汗を拭う動作をした。
レイフォンはそれに頬を引きつらせつつ、箱を押し付けた。
「で、なンだよ、これ」
「開ければ分かります」
「…………………弁当?」
「………そうですよ」
「なンでまた」
ウォルターが怪訝にレイフォンを見た。
レイフォンは決してウォルターと眼を合わせずにそっぽをむいていう。
「昨日、色々ごちそうになったので」
「……律儀だなー」
「うるさいです、さっさと食べればいいです」
「それ軽い死刑宣告?」
再びレイフォンの手刀がウォルターの頭を直撃した。
ウォルターはからかうことを諦めて蓋を開けておかずを口に入れた。
「……お、うまい」
「…それは良かったです」
「うまいな、これ。どういう風に作ったンだ?」
「教えてあげません」
「辛辣―」
「ついでに言うとそれ昨日の残り物なんで」
「辛辣だわ、それも」
ウォルターはやや真顔でそう言うと、弁当を食べることに集中した。
そこへエドがやってきた。
「お、ドロン」
「先輩。昨日はごちそうさまでした」
「いいや、気にすンな」
「あれ、その弁当…」
「ん? 昨日の残り物お礼もらった」
ウォルターが食べていた弁当の説明に、エドが首を傾げた。
同時にぴしりとレイフォンが隣で固まったのでどういうことかと思い、エドに再びウォルターが問いをかける。
「アルセイフからはそう聞いたンだが」
「……だってそれ、今日レイフォンが夜中に作ったけど自信作だって言って、」
「エド、それ以上何か言うのはやめようか」
「むぐむぐむぐ」
レイフォンが神速でエドに近寄ると輝かしい笑顔でエドの口を塞いだ。
ウォルターはぽかんとしてレイフォンを見ていた、その視線に気付いたらしいレイフォンはバツが悪いという顔をしてウォルターに向かって叫んだ。
「違いますよ! 自信作はそっちじゃなくて僕の弁当の方……!!」
「いや、違うだろ? だってその布の方だった……」
「変えたの!!」
「いや、見てない……」
「見てない所で!」
「移動教室とか基本今日ずっと一緒だったから見てなかった時は無かったとおも、」
「あったの!!」
ウォルターはやはりぽかんとして、それから苦笑した。
「…はいはい、残りモンだな」
「そう、そうなんです、そうですよ!!」
「了解、了解。だからそンなドロンの首締めるな」
数日前のレイフォンの言葉を思い出して、ウォルターは苦笑しか出来なかった。
―――――相変わらず素直じゃねぇでやンの
くつくつと笑みをこぼして、ウォルターは弁当に手を付ける。
ようやく落ち着いたらしいレイフォンも弁当を食べはじめ、開放されたエドも食べ始めた。
もぐ、と口を動かして、何気なく呟く。
「んー、うまい」
ただの平凡な学生生活。
(そんな何気ないことだけど、喧騒の日々では何気ないことを一番大切にしたい)