僕はその場でへたり込んでしまった。
「ざまぁねぇな。裏切るからこうなる」
「…。」
ここまでか、ここまでなのか…?せっかく覚悟が出来たと思ったのに…結局また何も出来ないのか…僕には…
「それはどーかな」
─!?僕の斜め後ろの建物の屋根から僕の隣へ飛び降りてくる黒衣の剣士が一人。キリトさんだ。
「まだ終わりと決まった訳じゃない」
「黒ずくめ、お前か」
ニヤリと笑うとメニュー画面を操作しながら僕だけに聞こえる声の大きさでキリトさんが言った。
「とりあえずこの状況じゃ君は敵という訳じゃなさそうだな。フレンドリストから位置情報を参照したんだ。リズとアスナはこの街を西側から出てすぐのところにいる。今はなんとか持ちこたえているが早めに行ってくれ。退路を開く」
すると僕の視界にパーティーの申請画面が表示される。…メニュー画面を出しているにも関わらず妙な緊張感が張りつめていて誰も斬りかかってこなかったのはキリトさんが周りに随分と警戒されてているためか…。僕が○ボタンを押すと、視界の左端に3本のHPバーが表示される。僕と一番上、キリトさんのHPはフルだが、アスナさんとリズさんのHPは1/3程減ってしまっていた。鞘を剣帯から外して細剣を持つように構える。
「来ないならこっちから行くぞ」
そういうとキリトさんは西へと続く街道に向けて右手の剣と共に黄緑色の閃光となって跳んでゆく。あれは《ソニックリープ》だ。その後瞬時に左手にも青白い剣が現れ、二本の剣で素早く斬撃を繰り出しながらラフィンコフィンのメンバー達を蹴散らしてゆく。
「ハース!スイッチ!」
「ぅわぁぁぁぁ!!!!」
鞘ではやはりソードスキルは発動しなかったがそれでも僕は包囲網を打破することに成功した。
「行け!ハース!」
キリトさんが僕の隣に立ち叫んだ。
「ありがとうございます!」
僕はそれだけ言うと必死に街道を西へと走った。
「さてと…諸君悪いな、ここは通行止めだ」
…ラフィンコフィンのメンバー達は唖然とした。HPが減らない街中でこの手の取引をするのは少々頭が緩い。なぜなら、半永久的に戦えてしまう上、この人数差じゃ間髪入れずキリトが切り刻まれ、スキルのノックバックで文字通り身動きがとれなくなってしまうこともあり得る。─しかし
「ま、俺を捕らえる程の奴がいたら、だけどな」
この黒の剣士は挑発にのった相手側の攻撃を全て捌き切るつもりでいるのだ。
「後悔すんなよっ!!?」
こうして黒の剣士vsラフィンコフィン多数の終わりの見えない戦いが街で繰り広げられた。
僕はひたすら街道を西に走る。その間にもジワジワと二人のHPは減り続ける。くそっ…もっと速く…速く─!!その時僕の視界に妙な残像めいたものが現れた。
あれは…アスナさん…?とリズさん…?ラフィンコフィンのレッドプレイヤー5人を相手に戦っている。しかし不自然に斜めに傾いている。視界の中の二人が攻撃を受けると視界の左端のHPバーが減る。これは…僕の細剣から見た…視界?するとアスナさん達の前に新たに3人のフーデットケープ姿の男が現れた。…とにかく急がなければ…!!その時だった。僕の足が青く光り始めた。なんだ…これは…?
「ん?え?燃えて…?る?え?わぁっ!?わぁぁぁぁっ!?なんでっ!?」
「ぐっ…!!」
「リズ!大丈夫!?」
私達は街中で吹っ飛ばされたハースを支えきれずに回廊結晶の効果範囲内に入ってしまったため、街中から街を出てすぐの圏外へと飛ばされてしまったのだった。起き抜けに自分の店を出てきてしまったため、鍛練中だった盾と鍛冶用のハンマーしか自分のストレージには入っていなかった。そんな状態でレッドプレイヤー5人と交戦中な訳だが、アスナと一緒だったから今もなんとか持ちこたえているものの、もしも一人で飛ばされていたらと思うと背筋が凍る。人数的にも不利な私達は徐々に街から離されてゆく。じりじりと後退せざるおえない。すると、地面にハースの青く光る愛剣《フレイムディタミネーション》が刺さっていることに気付いた。恐らく私達と一緒に回廊結晶で飛ばされてきたのだろう。咄嗟に私は細剣を引き抜くがユニーク化されているためやはり私には装備出来ない。装備出来たところで細剣スキルを全く上げていない私にとっては何か役に立つ訳でもないのだけれど。
「なんだ、二人か。てっきりいつもの黒づくめも来るんだと思っていたのだがな」
背後から男の声がし、反射的に私とアスナは飛び退きながら振り返る。するとアスナが目を見開いた。
「…っ!!あなたは…PoH…」
プー…?ってまさかあの、殺人ギルド《ラフィンコフィン》の…?
「わぁーさっすがヘッドぉ!有名人ん~!?」
「黙れ、どうにもお前のその口調は好かん」
「ちぇー、だってこれからっすよー?ワクワクしないんすかぁ?ねぇ、ザザさぁん?」
プー…ザザ…とくれば恐らく緊張感の無い口調のもう一人はジョニーブラックだろう…《ラフィンコフィン》の幹部達だ。
「血盟騎士団の副団長までいるのか」
ザザがそう言うと突然ジョニーがアスナ目掛けてバタフライナイフを突き出しながら飛び掛かる。
『ギィン─!』
アスナがそれを細剣で受けた─のだが、直後地面へ倒れる。
「アスナ!?」
「ダメじゃないっすかー副団長さぁん?右手にばっか気をとられたら左からぶすーっ。麻痺毒かかっちゃいますよー?あれれ、言うの遅かったですかねー?」
そんな…私は恐怖で動けなかった。アスナを連れて逃げなければと本能が告げているが足に力が入らない。恐い…助けて…
「恨みは無いが死ね。鍛冶屋」
ザザが右手に握った細剣を引き絞る。
「さらば」
誰か…っ
『ゴォォォォォ─……』
「!?」
突如リズが握っていた《フレイムディタミネーション》の青い光が強まる。そしてその光は炎のように変化し、大きくなる。
「なんっ…うぉぉぉ!!!」
ザザがたじろきながらもソードスキルを発動させる。
「うぉぉぉぁぁぁぁっっ!!!」
大きくなった炎が人型へ変化してゆく。そして─
ザザのスキルが終わった時リズとザザの間にはスキルを受けた跡が残る、鞘を構えたハースの姿があった。
「ハー…ス…?」
「早く!!」
ハースはリズと、近くに倒れていたアスナを抱えると一目散に街を目指す。
「ハース!?あんた今どうやってここに!?」
「わかりません!走ってたら急に体が燃えて!そしたらあそこに!」
あと20m─あと少しで街にー…
「っ─!?」
突如僕の足が動かなくなる。思わず抱えてた二人を放る。二人とも小さい悲鳴をあげながらごろごろと転がった。手荒くなってしまったがどうにか二人を街中の圏内へ送り届けられたようだ。
「─また、麻痺だ」
圏内に入った二人が驚きと恐怖が入り交じった顔で僕を見ている。
「ダメーーーっ!!」
リズさんが絶叫した。こちらに走り出そうとするのを、いつのまにか現れたキリトさんが後ろから制止している。なんだというのだ、もう安全な場所に…
『キィィィィン───……』
これは…ソードスキルの音…僕の背後から聞こえる。あぁ…多分これは…──避けきれない
『ズバァァッッ──』
凄まじい衝撃と共に僕は前方へ吹っ飛ばされる。ごろごろと転がった後に止まった場所は、もう街まで1mあるかないかの位置だった。すくそこにリズさんがいる…
『ピピーッ』
…?
「あぁ…そうか」
僕が顔を上げると、真っ赤に染まる視界の中でリズさんがへたり込むように座り、驚いたような、悲しいような、なんとも言えない表情をして僕を見下ろしていた。しかしその顔の前に…
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〈 You are dead 〉
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僕のHPは0になった。僕は死んだのだ。
必死に右手を伸ばし、リズさんの膝の上に愛剣を置く。するとリズさんの左手がその手を上から包み込むように添えられた。
「すみません…洞窟から戻ったら皆と…店に行くと……約束……守れなくて……、僕の…心は…いつ…でも…あなたの…手の中に…──」
僕の意識はここで途切れた。
次ラストぉー…かな?w