紺碧の暖炉   作:ハース/ユウキ

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疲れてきましたー


3、色違いキリト

いつもの昼下がり。一通り午前中の仕事を終え、工房の裏口から少し歩いたところにある雰囲気の良いカフェでお昼ご飯を食べ、温かい紅茶を飲みながら一息ついていたときだった。鈴のような効果音と共に視界の端に手紙のアイコンが点滅する。右手を振ってメニュー画面を呼び出すと慣れた手つきでメッセージ受信欄を見る。《受信:1件 送信元:Asuna》アスナからだった。確か今は丁度最前線、71層のエリアボス討伐が行われているはずではなかったか。緊急の知らせではないことを祈りながら本文に目を移す。

 

『こんにちは!急にごめんね!ついさっきエリアボス討伐は死者0で成功したんだけど、その時に同じパーティーだった人の細剣が焦げたみたいにサビちゃって、リズの店を紹介しておいたからよろしくね!Hearthって名前で、外見を一言で言うと色違いキリトくんって感じ!今日の夕方頃訪ねるって言ってた!』

 

「色違いキリトねぇ…」

 

思わず苦笑いしてしまう。彼も以前アスナの紹介でうちの武具店へ来たのだが、そのときの試し斬りで当時店にある片手剣のうちの最高傑作をポッキリ折られたのは記憶に新しい。了解の旨を伝える返事をアスナへ送信すると、時計は2:52分を指していた。午後の仕事を始めるべく、カフェを後にして工房へ戻る。

 

 

丁度本日7本目の武器を仕上げたところだった。

 

「リズベットさーん!お客様ですよー!」

「はーい、今行きますー」

 

NPCの店員の呼び掛けに答え、鍛冶用のハンマーと手袋を座っていた椅子の上に置き、急いで店先に出る。

 

「あっ。はじまして!僕はハースといいます!えと、血盟騎士団のアスナさんの紹介で伺ったのですが…」

 

そこには、亜麻色のショートヘアーと碧色の瞳、白く線の細い顔に裾が長めなブルーグレーの剣士服風の制服とズボン。焦げ茶色のレザーブーツ。そして剣帯で左腰に細剣を下げている青年の姿があった。彼がさっきアスナから連絡があったHearthさんであることは間違いないだろう。線が細い体格や長い裾を翻す後ろ姿、髪型は確かにキリトっぽさを感じざる終えないが、物腰の柔らかそうな話し方や爽やかな笑顔はキリトの第一印象とは真逆な印象だ。

 

「いらっしゃいませ!ハースさんですね、アスナからお話は伺ってますよ!早速ですがその錆びてしまった細剣を見せて頂いてもよろしいですか?」

「はい、これなんですが…どう、ですかね…」

 

ハースが剣帯と鞘とを繋ぐ金具を外し、左腰に下げていた細剣を鞘ごとリズに差し出す。両手でそれを受けとると、目の前の台に置き、ゆっくりと刀身を抜き─…?抜き………出せない。見かねたハースが手伝おうと手を貸してくれるが細剣はびくともしない。

 

「『うっそぉ……』」

 

二人して脱力する。困った。鑑定スキルで細剣の状態を見ようにも、刀身を直接タップしなければならないのだ。

 

「刀身が見えない事には何も分からなくて手の施しようが無いので、この状態で少し錆を削り落としてみることにしましょう、奥の工房へどうぞ」

 

そう言ってハースを促すと自分も工房へ入る。回転砥石を稼働させ、鞘や柄に傷をつけないように慎重に砥石に当てようとした─その時だった。

 

「リズー!こんにちは!」

「っ!?……」

「あー…ごめん」

 

このタイミングで現れるのは彼女しかいない。

 

「あれっアスナさん!?それからキリトさんまで!?」

「ようリズ、ハース」

 

私も驚いたがハースも相当驚いたようだった。

 

「二人ともどうしてここに!?ギルドの仕事や今回のボス戦での僕達の働きを評価するための会議とかで忙しかったんじゃ…」

「それは一通りもう片付けて来たから大丈夫だ。それよりハース、君に渡したいものがあってね」

 

そう言うと、キリトはハースに真っ赤に光る鉱石を手渡した。

 

「これは…?」

「それは《ラースト・リムーバー》アイテム詳細を開くとそこに書いてあるけど《モンスターの特殊攻撃によって錆び付いた武器の錆を落とし、同時に武器の未強化値を最大まで強化する。また、強化した武器は持ち主専用となる。》っていうアイテムらしい」

「持ち主…専用…?」

「あぁ。分かりやすく言うと、通常の武器なら、もしも武器を落としたりして他の人が拾ったとしたら一定時間で所有権が新しい持ち主に切り替わる。けどこのアイテムを使って錆を落とした武器なら、いつまでたっても元の持ち主に所有権があり続けるってことだ。当然他の人は誰一人その武器を装備できない。完全にユニーク化される」

「おぉ…」

 

すごい。錆を落とすどころかそんなことまで出来るなんて。

 

「ということでリズ、その石を使ってみてくれないか?」

「うん、やってみる」

 

リズベットさんがちらりと僕を見るので、お願いする意思を込めて頷き返す。リズベットさんは砥石を止めると炉の火に僕の細剣を鞘ごと突っ込む。そして赤い鉱石を細剣の側へ放ると─ボゥ!と炉の火が一際大きくなり、火の色が赤から紺碧へと変化する。その直後、紺碧の炎に照らされた鉱石が同色のライトエフェクトに包まれ僕の細剣へと移動し、鍔のところから剣を包むように光が波紋状に広がった。炉の碧い炎が収まると同時にリズベットさんが炉から細剣を取り出した。すると、びっしりついていた錆はキレイにとれ、それどころか鞘や柄の輝きは以前よりも増したように見える。

 

「どうかな、ハース」

 

キリトさんが興味深々で僕に訪ねる。

 

「すごい…」

 

思わずそう漏らしながら、ジャリン!と一気に細剣を鞘から抜き放つ。元々白かった刀身は透明度というか、やはり輝きを増していた。続いて僕はスペックを見ようとアイテム詳細欄を開く。

 

「なっ…」

 

思わず息を飲む。強化されて能力が予想より遥かに底上げされていたことも驚くべきことだか、それよりも─

 

「固有名が…ついてる」

 

僕の細剣は何かのイベント報酬で得たもので固有名はついていなかったはずだ。《フレイムディタミネーション》それが新たに、僕専用に生まれ変わった細剣の名前だった。

 

「決意の…炎…」

 

リズベットさんと相談して相応の代金を払い、キリトさんとアスナさんにはボス攻略で恩を返すと約束をして僕は武具店を後にした。工房でキリトさんから聞いた話だが、どうやら《僕の武器が再度使えるようになるかどうか》が僕たちの攻略組への加入のネックになっていたらしく、今のこの状況だと僕たちの加入は許されるだろう。だが、正直僕たちは攻略組中では最弱だ。経験も無ければレベルも低い。そんなことを考えながら皆が待つ52層にあるギルドホームへ帰ろうとしている時だった。

 

「─…これだ!」

 

52層の転移門横にある掲示板に貼ってある記事を見て、早く他のメンバーにも情報を伝えるべく駆け出した。




そろそろ書きためてたのなくなりまーす
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