紺碧の暖炉   作:ハース/ユウキ

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台風と共に吹き荒れるよー(願望)


5、冥暗の洞窟

「今日は7時に店を閉める予定だから…そのあと…なら」

 

─え。えぇ?え、これってOKされた?うそぉ?ほんとに?えぇ!?ってか声小さっ!?

 

「ああありがとうございま─」

「とりあえずメンテ」

 

そう言って振り向いたリズさんが僕に手を向かって伸ばす。…ん?な、なんだ?パニックで意味がよく分からずリズさんの手を両手で握り返し握手をする。

 

「…ちょ、違う!メンテ!剣!!」

 

あ。あぁぁ!!食事に誘うことで頭がいっぱいになってしまっていたため武器のメンテをお願いするのを忘れていた。慌てて剣帯から鞘ごと細剣を外しリズさんに手渡す。

 

「お、お願いします…!」

「もう。そろそろ7時になるしもう少し待ってて」

 

そう言うとリズさんは剣を持って工房へ消え、暫くすると輝きを取り戻した細剣と共に戻ってきた。

 

代金を支払い、店の戸締まりを手伝うと、僕たちはぎこちない会話をしながら69層の主街区にあるレストランへ向かった。この層は一言で言うと北欧の森のようなフィールドで、針葉樹が生い茂り空気も少しひんやりしている。木造の建物のレストランへ入ると適当にシチューのようなものやミートボールのような料理を頼む。

「それで…明日から当分店に来られないっていうのは?」

運ばれてきたシチューに口をつけながらリズさんが言った。

 

「あぁ、えっとですね。僕たち明日から66層にある《冥暗の洞窟》に行くんです」

「66層?最前線の攻略は?」

「それも攻略組としてはやらないといけないんだけどまだ正式には加入させて貰えてないし、僕らのレベルだと少し狩り効率が悪いので71層でレべリングするよりも洞窟で手に入る装飾品アイテムをとりに言ったほうが効率良く強くなれるんです!」

 

へぇー、という感じでリズさんは僕の話を聞いていた。

 

「…なるほどね、けどその洞窟に行くのと店に来られなくなって連絡もとれなくなるっていうのは何の関係があるの?」

「えっとそれはですね…洞窟で受けられる装飾品のクエストが平均3~5日かかってしまうものらしいんですが、クエスト完了までそのマップから出られないみたいなんです。転移結晶も使えないようですし、マップにいる間はフレンド間メールも含め、パーティー外の人との通信も一切できなくなるみたいなんですよ」

「えっ…それじゃぁ何日もフィールドに出っぱなしってこと!?」

「はい、そうなりますね」

 

リズさんは心配そうに僕を見つめている。

 

「大丈夫ですよ!リズさんに鍛えて貰ったこの剣だってありますし、必ずみんなで帰ってきます。そうだ、戻ってきたらギルドの皆も紹介しますね!武具のメンテもかねて」

少しでも心配を拭うように僕は笑顔で続けた。

「…そうね!ボス攻略よりは危なくない!…と、思うし、頑張って来なさいよ」

 

リズさんも笑顔で返してくれる。その後ひとしきりお喋りをしながら料理を平らげる。

 

「ほんとに今日は突然だったのにありがとうございました!」

「いーえ!私も楽しかったわ!ありがとうハース、洞窟のクエスト頑張りなさい!」

 

NPCの店員に二人分の料金を支払うと店を出る。すっかり遅くなってしまったのでリズさんをリンダースの店へと送り届けてからギルドホームへ戻る。

 

「ただいまー…」

 

どの部屋も明かりはついていなく、皆は先に寝てしまっているようだ。皆を起こさないよう注意しながら自室へ戻り、明日へ備えて僕も寝る。

 

翌朝──

 

「おはよう~」

「おは…ぐぅ」

「おはよう!?おいレオ起きろ!?」

 

レオの寝起きが悪いのはいつものことだ。

 

「おはよー!皆の者ー準備はいいかー!?」

「元気だなぁ、リンリ」

 

リンリが元気なのもいつものことだ。こんな調子でギルドホーム近くのワゴンでホットドックを買い朝食を済ませ、洞窟へ出発する前の最終確認をする。装備品OK、アイテムも上限いっぱいと…確認が完了したらそれぞれ目配せをする。

 

「それじゃ、行きますか!」

「「「おー!」」」

 

リンリの掛け声とともに僕たちは転移門へと歩きだした。

 

 

─66層北、荒野

 

僕たちは主街区を出て、ゴツゴツとした岩場や枯れ木だらけの道を洞窟目指して進んでいた。運が良いことに洞窟へ着くまで敵mobにはほぼ出くわさなかった。

 

「お、あれじゃないか?」

 

レオが指を差す。その先には、岩と岩の間が狭く、しかし細長く開いた洞窟の入り口らしきものがあった。

 

「思ったより狭い入り口だね…」

 

洞窟の中には何mかごとに松明が掲げられていて、多少薄暗いが中の様子が伺い知れた。モモが自分の両手槍を空へ向かって突き上げながら入り口の高さを測ろうとする。高さは槍の先端が触れるか触れないかということろか。モモがそのまま洞窟の中へと入ろうとする。

 

「待って。」

 

リンリがモモを呼び止めた。

 

「狭い上に、中の地形も分からない。どんなモンスターがいるかも分からないから最初に盾持ちで攻撃も小回りが効く私が入る。大丈夫そうだったら呼ぶから、そしたらみんなも入って来て」

「分かった。じゃぁ何かあった時にすぐ駆け付けられるように二番目は僕が行くね。その後にレオ、モモの順で中に入ろう」

 

リンリの言葉に続けるように僕も他メンバーに指示を出す…といってもリンリと僕を抜かせば残りは二人だけど。モモが数歩下がり、代わりにリンリと僕が一歩踏み出す。

 

「リンリ、どう?」

「うーん、大丈夫みたい!中は案外広いし今のところモンスターも見つからないよ!」

「…行こうみんな」

 

モモとレオを連れて三人で洞窟の中に入る。そのまま道なりに奥へと進む。

 

「…ねぇ、少しおかしくない?」

 

リンリが少し怪訝そうな顔をして話しだす。

 

「これだけ進んでも、コウモリ型のモンスター一匹でさえ出くわさないなんて」

 

確かにそうだ。主街区付近のフィールドならまだしも、ここは街から離れた奥地の洞窟、言わばダンジョンなのだ。

 

「確かになぁ。でも良いじゃないか!そのうち嫌でも戦闘続きの日が何日か続くんだ。装備の温存だ温存!ちゃっちゃとクエストNPCのとこまで行って、サクッと装飾品貰って帰ろうぜ!」

「そうだね!」

「おぅおぅ、んでもってリズベットさんがどんな人なのかも拝まなくっちゃな、な?ハース?」

「うんそぅ……は!?なんで僕!?」

 

こんな緊張感が無い会話を繰り広げながら、なおも僕たちは洞窟の奥へと進んだ。リンリだけは怪訝そうな顔をしたままだったが。




そろそろいい感じになってこさせるつもりでーすw
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