紺碧の暖炉   作:ハース/ユウキ

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早く結末が書きた過ぎてめっちゃハイペースですw


8、笑う悪魔

─冥暗の洞窟

 

無事にクエストNPCを見つけた僕たちは競うように駆け寄り、パーティーリーダーであるリンリがクエストを受注した。

 

『クリア条件 討伐:バッドイヤードフォックス(0/120) ガーゴイル(0/1)』

 

「え。120…?」

 

リンリが思わず呟く。それと同時にNPCの背後の壁に光る格子状の模様が浮き出てきた。

 

「なんだ…?これ…」

 

レオが光に触れた。すると光は強くなり、瞬時に崩れ落ちた。すると中から羽音が重なった轟音とともに手のひら程の大きさのコウモリの大群が出てきた。

 

「「「うわぁぁぁぁっっ!?」」」

 

僕たちは情けない悲鳴とともに各々武器を振り回す。

 

「もしかしてこれ、さっきの看板は受注後すぐに右の道まで走れってことだったのかな…?」

「そうかもしれない!」

 

モモの言葉に反応し僕は走り出した。モモとレオも続くが…リンリが来ない。

 

「…って!─ゴィ…に、る!!」

 

リンリの声が聞こえたがコウモリの羽音のせいで何を言ってるのか分からない。

 

「なんだって!?」

 

レオが盾を前に構える。コウモリの大群の中を押し通ってリンリのところまで戻るらしい。

そのときだった。

 

「わぁぁっっ──!!?」

 

何か大きな爪のようなものでひっかかれた跡が体に残るリンリがこちらへ吹っ飛ばされて来る。

 

「リンリ!?」

「早く!逃げるよ!ガーゴイルがコウモリ達の向こうにいる!けどここは狭くてまともに戦えない!」

 

リンリの言葉を聞き終えると僕たちは一目散に走る。看板の指示に従って薄暗い道を駆け抜ける。

 

「─!?」

 

僕は先頭を走っていたが、何かを踏んだ気がした。すると行く手の床が沈み込む。慌てて止まろうとするが皆にぶつかって止まれない。………………。

 

「「「「うわぁぁぁぁ───!?」」」」

 

本日二度目の情けない悲鳴をあげる。落とし穴だ。モモの両手槍でもつっかい棒にするのは無理そうな大きさだ。

 

「あっぶな…」

 

着地した僕たちは落下ダメージを受けたがHPゲージは黄色い注意域で止まっていた…リンリを除いて。落とし穴に落ちる前にガーゴイルの攻撃を受けていたリンリのHPは真っ赤な危険域にまで減っていた。

 

「リンリ!早く治癒結晶を!」

 

急いでバックから結晶を取りだしリンリへと手渡そうとした─瞬間。視界右上のマップに赤い点が僕たちを囲むようにいくつも現れた。

 

「ちっ、こんな時に!またガーゴイルか!」

 

レオが威勢よく武器を構える。

 

「ちが…やめ…にげ…」

 

僕たちの中では一番索敵スキルの高いモモが尋常じゃない程怯えている。

 

「…!?レオ!下がれ!」

 

今度は僕の視界にもハッキリ写し出された。あれはモンスター等ではない。通常の緑色ではない色のカーソルを持つプレイヤー達、レッドプレイヤー達だった。全員揃って不気味な暗色のフーデットケープを着込んでいる。その姿は死神を連想させた。すると中央に立つ男がするりと慣れた動作で何かを投げる素振りをする。両端のやつらが投げられた何かを掴む。そのまま三人同時にその手で地面を殴る。

 

「─っ!?」

 

僕もみんなも瞬時に体の力が抜け床へ倒される。全員、HPバーの下に麻痺毒のアイコンが点滅した。

 

「…くっ」

 

よく見ると、レッドプレイヤーたちの手にはピアノ線のようなもので編まれた網が握られていた。恐らくそれに毒が塗ってあったのだろう。

 

「はぇ~…?ほんとに人が落ちて来るとはなぁ」

 

左端で網を持っていた奴が舐め回すように僕達を見ている。

 

「まさか…全部…!」

 

リンリが鋭く叫ぶ。

 

「まぁなぁ。ま、お前は疑ってたみたいだったが、仲間がこれじゃぁなぁ」

「!?…何故…こんなことを…」

「何故ってそりゃー、なるべく新品のアイテムを大量に奪うために決まってんだろ?どうせお前らは死ぬのに下手なモンスター相手にアイテム使われたら俺らの分が減るじゃねーの」

 

恐い。殺される。…脳が痺れたように思考がままならない。まさか…さっきクエストを受けるまで戦闘が無かったのは、こいつらの仲間がモンスターを倒していたから…!?

 

「そうなぁ、まずは…金とアイテムと装備を全員漏れ無く差し出せぇ。お前ら」

「断る」

 

リンリが凛とした声で即答する。

 

「まぁまぁそんな睨むなよ健気なリーダーさんよぉ、全て差し出せばお前らのうち一人の命は助けてやってもいいんだぜ?」

「信用出来ない」

 

またしてもリンリが即答する。

 

「はぁ…そうかぁ。まぁ、じゃ、仕方無いよなぁ?」

 

男が合図をすると取り巻きの男達が僕たち全員にそれぞれ一本ずつナイフを突き刺した。視界の左端に表示されている全員のHPバーがじわりじわりと、しかし確実に減ってゆく。それを見て嘲笑うかのように男達が僕たちの手を持って動かし、トレードウィンドウを介して僕たちのアイテムを奪ってゆく。手を振り切ろうとしても麻痺毒のせいで力が入らない。最後に装備フィギュアまで全解除され、装備類も奪われた。すると僕たちのHPの減り方が異様に早くなった。この分だとHPが尽きる順番はリンリ、僕、モモ、レオの順になりそうだ。嫌だ、恐い。死にたくない。やめろ、やめてくれ、このままじゃ誰もた助からない…誰も…!!そんな思考を受け入れられず、せめてもの抵抗として僕は目を閉じかけた…そのときだった。

 

「みんな…!!逃げて…生き延びるんだよ!!」

 

リンリが叫んだ。その声に僕はハッとしてリンリを見る。ここからは全てスローモーションのように見えた。仲間を鼓舞する叫びを嘲笑うかのようにレッドプレイヤー達が声をあげて笑っている。しかし次の一瞬、その笑い声が途切れた。僕らと同じ様に、麻痺させられて動けないはずのリンリが動いたのだ。踏み込んだ足はしっかりと体を支え、伸ばした拳は目の前にいた男の頬へと命中した。……のだが、もう片方の足が着地するよりもリンリのHPが尽きる方が早かった。頰を殴られ倒れ込む男の手前で、リンリはいつもの頼り甲斐のある背中を僕たちに向けながら静かにその体を爆散させて淡く輝くポリゴン片となった。何も声が出ない。目に映る光景を脳が拒んでいる。リンリが居た方を呆然と見ることしか出来ない。嘘だ…嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!!!直後、腿に何かが当たる感触がした。

 

「ヒール…」

 

突如、僕のHPバーだけが全回復する。さっき僕がリンリに渡そうとして落としたままになっていた回復結晶を拾ったモモが、僕に使ったのだ。自分で使うのではなく、僕に。

 

「なん…で、僕に…」

「リンリの言葉を…守るに、は、私たちの、中で、一番、速、く動ける、ハース…が…」

 

やめろ。やめてくれ、もうやめろ!!先程のリンリと同じ様にモモが体を爆散させる。僕の頭は完全に恐怖に飲まれて思考を放棄していた。何も感じない。何も分からない。

 

「あれ?なんだ?コイツの剣装備出来ないっすよ」

 

僕からアイテムを奪った男が中央に立つ男に話かける。

 

「あ?お前武器の装備の仕方も忘れたのか?」

「違いますよー、ユニーク化とか警告文が出て装備出来ないっすよ」

 

その瞬間、止まったはずの思考が最後の力を振り絞って警鐘を鳴らした。ツ ギ ニ コ ロ サ レ ル ノ ハ ボ ク ダ。このアインクラッドのシステムは分からないが、他のMMORPGならユニーク対象になっているキャラクターが消滅すると装備類のユニーク化は解除されるものが多いからだ。

 

「残念…だったな。この浮遊城じゃ持ち主を殺してもユニーク化は解けない…ぞ」

 

レオが中央の男を睨みながら言った。

 

「ほう…?おいデカいの。その根拠は?」

「ここじゃキャラが新規…作成され…ないからな。ユニーク化が解ける利点が…無い」

 

…僕を庇おうとしてくれたのかもしれないが、僕にはどうしてもその行動を起こせるレオが分からない。もうレオのHPは数ミリしか残っていないのだ。どうして、どうしてそこまで…何故。レオが体を爆散させたところで、完全に僕の思考は止まってしまった。

 

「どーしますぅ?」

「武器のスペックは」

「うっへぇめちゃくちゃっすよこの剣。ヤベーっす」

 

そう言うとレッドプレイヤー二人は僕の剣のスペックが書いてあるウィンドウを覗く。

 

「ふむ…まぁ仕方ない。丁度ビーグルも一人欠員が出たしな」

「欠員って!殺っちゃったんじゃないすかー」

 

なんの話だろう…もう…おしまいにしてくれ。その思いとは裏腹に、僕の左鎖骨の下辺りに入れ墨のようなものが施された。不思議と痛みは感じなかった。

 

「おい、細剣使い。お前は今からビーグルだ」

 

奪われた装備の代わりに、今までの装備よ2ランク程下の装備を上下あてがわれ、武器もNPCの武器屋が売っている未強化の細剣を渡された。未だに麻痺毒は解けないままだったが。

 

─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─

 

「おい。お前、大丈夫か」

 

体を揺すられ目を開ける。すると、仰向けに寝かされているであろう僕の顔を覗きこむフワっとした白髪の少女と目が合った。よくみると今の僕と同じ様な装備を着ている。

 

「あれ、僕は…。君は?」

「私の名はlux(ルクス)。このギルドのビーグルと呼ばれる奴らのまとめ役だ」

 

“このギルド”という言葉がひっかかり、ふと思い出して自分の左鎖骨の辺りを見る。そこには、腕がはみ出した棺桶、その蓋には気味の悪い笑顔──ラフィン・コフィンが描かれていた。

ルクスさんの話を聞くとどうやら時折僕たちのように、命を奪わない代わりに強制的にギルドに加入させられ、カーソルの色を保ったまま街へ入り、レッドプレイヤー達の食料や装備品のメンテをする仕事を請け負う者。通称“ビーグル”と呼ばれる人がいるらしい。そして早速これから僕はルクスさんと一緒に街に買い出しに向かわされるようだ。

 

「…おい、お前ら。予定より早いがここを引き払うぞ」

 

僕たちが襲撃された時に中央に居た、リーダー格っぽい男が指示を出す。急いで男達の後について僕も洞窟を後にする。ふと振り替えると、白と黒の小さな点がものすごいスピードでこちらへ向かってくるのが見えた。あれはきっと─…

 

「んぶっ」

 

ルクスさんに強引に袖を引っ張られ転びそうになる。慌てて起き上がり振り替えるともう既に白衣と黒衣の二人は洞窟の中へ消えていた。




ふぅ…
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