Fate GO 2016夏イベ舞台裏(願望)   作:あーさぁ

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(ポロリは)ないです。




鯖がスポーツすると大体こうなる(偏見)

 

 砂浜へ突き立てられた2本のポール、その2柱を繋ぐのは網目状に縫われた、いわゆるネット。海に面した砂浜へ"こんなもの"を打ち立てた張本人、ダ・ヴィンチちゃんは日影へ避難しアイスをしゃぶっていた──おい一人でアイス食うな寄越せ。

 

「せっかくマスターが夏イベで出番のなかった聖女様達への機嫌取r……おほんっ……せめてもとお慈悲でオケアノスくんだりまで連れて来て下さいましたのに、わざわざ夏イベ限定鯖として実装された私こと☆5ランサー、タマモちゃんサマーにメンチ切るとか──命が惜しくありませんの?」

 

「ハッ、散々っぱら色モノ扱いされてた女狐が言ってくれますわね。エクステラ発売の件もあって、赤皇帝の"ついでに"、"今だけ"チヤホヤされてるのが分からないのかしら、有頂天になってる勘違いアニマルが吠えないで頂けます?」

 

 ダ・ヴィンチちゃん特設即席ビーチバレーコートの脇で見えない火花を散らすのは、水着姿の玉藻と黒いビキニを着込んだジャンヌ・オルタ──使っている口調こそ変わらないが、言葉の端々にはゲイボルグ()が窺える。今にも一触即発の雰囲気は、二人の傍らへ控えている二人の女性へ苦笑を浮かばせていた。

 

呪術師(ブードゥー)、なぜ貴女はこうも好戦的なのだ──」

 

「オルタさん、マスターが見てますよ……?」

 

 互いに牽制し合う玉藻とジャンヌ・オルタを見かねたのか、これまた水着姿のアルトリアが玉藻へ歩み寄る。その手には水鉄砲ではなく、ビーチボールを小脇に抱えながら──そして、そんな彼女へ付き従う形で白いビキニを着用しているジャンヌ・ダルクも彼女達へ近付いていく。

 

 まぁ、この状況の通り、夏イベで出番のないジャンヌ・ダルクとジャンヌ・オルタを慰めるためにオケアノスまで出張ってきたわけだが、何故かビーチバレーで勝負する流れになっている。何故ビーチバレーかというと、一人だけアイス食ってる空気読めてない自称天才──もとい、天災であるダ・ヴィンチちゃんの一言。

 

『夏、白い砂浜、海、そして美女4人ときたらビーチバレーでしょ。ただプレイするだけじゃつまらないから、どうせならマスターと一夏のアバンチュールを賭けて真剣勝負なんてどうだい?』

 

──だ、そうです(白目)

 

 おかげさまでジャンヌ・オルタと玉藻に縛られた、いわゆる簀巻き状態で日影へ座らされている。逃げるつもりなど毛頭なかったのに、人権無視もいいところだ、もはや彼女達の頭の中ではマスター(賞品)というルビが振ってあるに違いない。

 

「あらあら、ごめんあそばせ。いやはや、セレブらしくありませんでしたわね。ではでは、さっさと始めましょうか──でもって、さくっと小憎たらしいなんちゃって聖女様を()っちゃって、マスターと甘い一夏のアバンチュールをゲッチュです」

 

「ウィ、色欲まみれな万年発情期アニマルがキャンキャン五月蝿いものね。いつまでも居ては見苦しいですし、さっさと負けてもらって早々にご退場(霊基消滅)して頂きたいわ」

 

 最後の最後まで言葉にゲイボルグ()を含ませ宣戦布告した玉藻、ジャンヌ・オルタ両者がコートへと向かう、それを見送るアルトリアとジャンヌ・ダルクの背中は何というか、哀愁が漂っていた──それにしても、嫌な悪寒しかしないのだが、果たしてこの先生きのこることができるのだろうか?

 

 

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

 ジャンヌ・オルタ、ジャンヌ・ダルクの聖女チームと玉藻、アルトリアの新規実装チームに別れて始まったビーチバレー。すでに激しい応酬が(主に玉藻とジャンヌ・オルタによって)繰り広げられているが、それなりに切迫した試合内容。どちらかが点を取れば取られた側が盛り返す、理想的なシーソーゲームだ。

 

 それにしても、というか分かっていたことだが、すごく目のやり場に困る。縦横無尽に走り、跳び、ボールを追いかける美女4人を直視していると──その、まぁ、なんだ、"揺れる"んですよ。彼女達の胸元、少ない布地で隠されたメロン達が。

 

「……くっ、オルタさん……頼みますッ!!」

 

 ライン端を狙って放たれたスパイクへ横っ跳びで飛び付き、勢いよく腕を翻してボールを打ち上げたジャンヌ・ダルク。もちろん視線はボールの行方──ではなく、飛び付いた勢いのまま砂浜を滑る直前に、たゆんっ、と揺れる彼女の乳房。

 

──おっと、いかんいかん

 

「貴女にしてはマシなロブね……ッ……ハッ!!」

 

 ジャンヌ・ダルクのファインプレーによって打ち上げられたボールは高々と上がる、そこへ飛び上がったのはジャンヌ・オルタ。人とは思えない跳躍、大きく振り上げられた腕、大気を切り裂き翻る腕がボールを叩くと、強烈なスパイクが相手コートへ降っていく。これは、決まるか──は問題ではない。視線は跳び上がった時、スパイクを放つ時、着地した時、胸元で激しく、ぽよんっ、と揺れる彼女の乳房へ。

 

──おっと……

 

「なるほど、良いコースです……しかし、甘いッ!!」

 

 高速で降ってくるスパイク、その先に居たのはアルトリア。下手な受け止め方をすれば弾き飛ばされるであろうボールを、彼女は自ら後方へ倒れることで勢いを殺しつつ絶妙な角度でレシーブ。ほぼ直角に打ち上げられていくボール──視線は……あっ(察し)

 

──あれ、おかしいな、暑いのに寒気が……

 

「さっすがは純正戦闘特化サーヴァントです王サマ、後は私にお任せあれ──このタマモちゃんサマーには、貴女方の弱点など、まるっとお見通しです……ッ……そこォッ!!」

 

 アルトリアが上げた、ほぼ直角に上げられたボールへ跳び上がり追い付いたのは玉藻。モフモフ尻尾を引き中空へ跳び上がった彼女は腕を振り、ジャンヌ・オルタに負けず劣らずの強烈なスパイクを放つ──ええ、見てしまいましたとも。跳び上がる時、スパイクを放つ時に彼女の胸元が、ぼよんっ、と揺れたのを。

 

──あ、そういえばボールは?

 

「ド真ん中? こんなの楽に返せるわ……ッ!!」

 

「このコースなら……取れます……ッ!!」

 

 玉藻が放ったスパイクのコースは真っ正面、ちょうどジャンヌ・ダルクとジャンヌ・オルタの中間地点。十分な加速をもって打ち込まれたスパイクだが、いかんせんコースが悪い、こんなの取れて当たり前──そう思った矢先、見えてしまった。ジャンヌ・ダルクとジャンヌ・オルタが、"ほぼ同時に横っ跳びでボールへ肉薄していく"のを。

 

──注意すべきはボールのコースではなかった

 

──聖女2人の"立ち位置"だったのだ

 

──とはいえ、後の祭、声を上げる暇などなかった

 

「………………は?」

 

「………………え?」

 

──瞬間、ゴンッ、という鈍い音が砂浜へ響いた

 

 互いに横っ跳びしたジャンヌ・ダルクとジャンヌ・オルタが気付いた時には、もう遅かった。磁石が引き合うように二人は、お互いの勢いそのままに頭と頭をぶつけ合ってしまう──うん、あれは痛い。

 

 もちろん衝突事故を起こした彼女達に、打ち込まれたボールを止めれるはずもない。ただただ、コートへ突き刺さったボールの傍らで蹲るジャンヌ・ダルクとジャンヌ・オルタ──あまりの痛さに声も出せないのだろう、ぶつけたであろう頭を押さえ唸っている。

 

呪術師(ブードゥー)……貴女という人は……」

 

「ふふんっ、勝てば官軍です☆ミ」

 

 そこまでやるか、と顔を怪訝に歪めるアルトリアを尻目に、してやったぜ、とドヤ顔ピースの玉藻さん。これはひどい。それより勝敗より衝突事故を起こした二人が気掛かりだ、少し休憩でも、と思い口を挟もうとした、その時だ──

 

「……やってくれたわね、この淫売女狐……」 

 

 ゆらぁっ、と幽鬼のように立ち上がったジャンヌ・オルタが底冷えするほどの怨嗟に染まる呟きを放つ。顔を俯かせているせいで目元は確認できないが、弧を描く口元だけが見えた。とてもこわい。

 

「う"ぅ"ぅ"……」

 

 ジャンヌ・オルタから少し遅れて、涙目のジャンヌ・ダルクも立ち上がった。遠目でしか分からないが、二人とも対した怪我もないようだ──よし、ここは一つ、停戦を持ち掛けよう。彼女達が心配なのもあるけど、なにより凄く嫌な悪寒がする。

 

「聖女サマ、耳を貸しなさい……」

 

「………はい?」

 

 自コートへ突き刺さっていたボールを抜き放つと、ジャンヌ・オルタはジャンヌ・ダルクの耳元へと顔を寄せた。何やら耳打ちしているあたり、作戦会議だろうか──にしても、ジャンヌ・ダルクが「えぇッ!?」と驚いた様子だったけど、何故だ?

 

 戦意、というか殺意満々のジャンヌ・オルタがサーブのため後方へ下がっていく。その背中を見送るジャンヌ・ダルクは、いかにも嫌そうな顔をしていたのが気になる──なんて考えていたら、完全に機を逸してしまった。休憩を挟むことなく、試合は再開されてしまう。

 

「………ッ……ハァッ!!」

 

 ジャンヌ・オルタのサーブ、弧を描き相手コートへ突き進む鋭い一撃。コースも悪くない、だがレシーバーは戦闘センスが高いアルトリア。楽々とコースを読み切り、砂塵を起こしながらボールの着弾点へ到達すると──数分前と同じように、絶妙な角度のレシーブを上げた。

 

「この程度では、抜かせません……ッ……呪術師(ブードゥー)ッ!!」

 

「あいあいさー、いざ受けやがれ、タマモちゃんサマー全力スパーイクッ!!」

 

 先の二の舞だ、アルトリアによって絶妙な角度、高さで上げられたボールへ跳び付くタマモ。これでもかと腕を振りかぶり、ズドンッ、と人がボールを叩いた音とは思えない轟音を響かせると──ボールは一直線に、相手コート中央。ジャンヌ・ダルクと、ジャンヌ・オルタの中間へと向かい疾走する。

 

 だが、ふと──ジャンヌ・オルタが、にたぁ、と嗤う。

 

 それと同時に、突如として聖女チームのコートへ不可視の波紋が広がっていく。それは魔力の奔流、徐々に渦を成していく中心に居るのはジャンヌ・オルタ──ではなく、レシーブの構えに入っていた、ジャンヌ・ダルクの方だった。

 

「どうなっても知りませんからね……ッ……我が旗よ、我が同胞を守りたまえ……『旗はないけど全開レシーブ』(リュミノジテ・エテルネッル)……ッ!!」

 

 

 

──なにそれ完全に宝具じゃないですかやだー

 

──ルビ、ガバガバじゃねーかッ!!

 

 

 

「……ッ……何ですとぉッ!? ちょ、それ反則……ッ!!」

 

 ぎょっ、と狼狽える玉藻。

 

「……勝てば官軍、と言ったのは貴女でしょうに……」

 

 光のない、虚ろな目を明後日の方向へ逸らすアルトリア。

 

 呆気に取られる新規実装チーム(主に玉藻)を他所に、ジャンヌ・ダルクの宝具が展開される。それは絶対の守護、何者も其を崩すこと叶わぬ不可侵の護り。例外はない、そう、たとえ──全体重が乗った、あらん限りの力で打ち込まれた、とんでもないスピードのボールであれ、だ。

 

 触れるまでもなく弾かれるボール、それは玉藻のスパイクの勢いを残したまま高々と跳ね上がった。その時、太陽をバックに力なく浮遊するボールへ肉薄する黒い影──待ってましたとばかりに大跳躍を果たした、ジャンヌ・オルタの姿。

 

「見るがいいわ、女狐……ッ……これは憎悪によって磨かれた我が魂の咆哮……『オルタちゃん全力スパイク(ラ・グロンドメント・デュ・ヘイン)』……ッ!!」

 

──お ま え も か

 

──っていうか、もう隠す気ゼロだよね?

 

 先ほどの玉藻が放ったスパイクの非ではない威力、スピードのスパイクがジャンヌ・オルタから放たれる。見間違いでなければスパイクを放つ直前、翻ったジャンヌ・オルタの腕に黒い炎が見えた──というか、新規実装チームのコートへ突っ込んでくボールが黒い炎に包まれてるんですがそれは……

 

「……ちょ、無理、無理ッ!! 王サマ、へるぷぷりーずッ!!」

 

「すまない、呪術師(ブードゥー)。私がセイバーであったなら、もしくは鞘があれば何とかなったかもしれないが──アーチャーである今の私には"あれ"を止める術がない。ところで貴女は、人を呪わば穴二つという言葉を知っているか?」

 

 ガクガクとアルトリアを涙目で揺らす玉藻、対してアルトリアは死んだ魚のような目で無反応、無表情──そんな2人などお構いなしに、天から堕ちてくる黒炎を纏ったボールは、まるで隕石の如きスピードで新規実装チームのコートへ降り注いでいく。

 

 

 

──着弾した瞬間、ずどぉぉんっ、てどういう音?

 

──もはやボールの着弾音じゃねーよ

 

──むしろ、それでも原形留めてるどころか無事なボールすげぇ

 

 

 

 着弾の余波で巻き上がる砂塵、ふと聖女チームの方へ視線を向けるとジャンヌ・ダルクが「うわぁ」と露骨に顔をしかめていた──「良かったんでしょうか?」なんて心配顔のジャンヌ・ダルクだったが、砂塵の向こうから現れたジャンヌ・オルタはドヤ顔で言い放った。

 

「いいのいいの、ジャンヌルールその3、ジャンヌは三回まで色々やっていい、の権利を行使しただけだもの──だいたい勝てば官軍とか言ったのは女狐が先じゃない、私は悪くないわ」

 

──と

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 え? 一夏のアバンチュール? ないです。

 

 その後は新規実装チームが武器を取り出してガチ戦闘開始、多数のクレーターを砂浜へ形成していく4人を眺めるだけになったけど何か質問ある?

 

「お、当ったりー。ロマン、棒アイス追加よろしくー」

 

『ホント君、良い性格してるよね……』

 

──ヘイワダナー

 

 

 







ジャンヌ・オルタの水着が見たい人生だった(死亡)


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