女子高生と七人のジョーカー   作:ふぁいと犬

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Act.12 カナタとルーファ

 

 

 部屋を出たのはそれから3時間後の事だった。

 不毛に続く馬鹿にされているとすら思われる紙芝居と、更についでにアークスの常識なるものまで叩き込まれてしまう始末。

 

 ……なんか頭痛い。

 

 げんなりとした表情で自動ドアを通ると、壁にもたれているルーファと目が合う。

 

「……後10分遅かったらドア切り刻んでましたよ」

 物騒な事を言うルーファに頬が引き攣る。

 

「ま、待っててくれたんですか?」

 不思議に聞くカナタにルーファは特に気にする様子も無く答える。

 

「……待っていると言いませんでしたか」

間違いなく言っていない。

 しかし、少し以外に感じてしまう。

あれ程の戦闘をする人が、あれ程冷徹に戦う人が、3時間もドアの前で待ってくれていた。

 

「ルーファさんって……良い人なんですか? 悪い人なんですか?」

 

「あら、お目が高い。宜しい高値で買いましょう」

 

「いや別に喧嘩売ってるわけじゃないですからね!?」

 

 珍しく微笑を浮かべるその威圧感に押されながら慌てて訂正をしておく。

 

「そうですか、では行きましょう」

 アッサリと引いてくれたルーファはさっさと歩き出す。

 何処に行くのか解らないが、ルーファの後を慌てて追う。

 

 自分よりも少し背の高い後姿の黒髪の女性を、マジマジと見てしまう。

 ラックルが言っていた言葉が脳裏に過ぎる。

 作られた存在。

 目の前の女性は、燐とした姿勢で歩く。

 その細い足や腕からは想像の出来ない戦いをカナタは目の当たりにしていた。

 知らない世界の嘘等解るわけも無い。

 それでもにわかに信じられない。

 

「口に出して言って頂いても宜しいですか?」

 

 振り向かずに言われた言葉に思わず変な声を出してしまう。

その後、足を止めルーファはくるりと振り返る。

 振り向いた表情は目を細め、不審そうに見つめて来る。

 

「そんな舐めるように見られたら誰でも気づきます」

 

 その瞳に気圧されて目を逸らす。

 ユラやレターの様子を見れば、あまり聞いていいものでは無いというイメージを持ってしまっていた。

 しかし、ルーファの瞳も逃がしてくれる様子は無い。

 

「あーえっと……ルーファさんがジョーカーだって話を聞いてですね」

 しどろもどろに零すカナタの言葉に、ルーファはそんな事か、と言うように軽く鼻を鳴らすと直ぐに視線を前へ戻し歩き出す。

慌てて着いていくカナタ等気にせずにルーファは淡々とした様子で口を開く。

 

「ええ、私はジョーカーの一人です」

 あまりにもアッサリとした回答に少し拍子抜けしてしまう。

 

「あの、あまり聞いて良い事では無いと思ってしまってつい見てしまっていたんですけど」

 

「見解は間違えていません。 自身の正体が他のアークスにバレる事を好ましく感じないジョーカーは多数居ますが、私はその程度の事一々気にしませんので」

 

「そんなに居るんですか?」

 アークスとしての一般常識はある程度教えて貰ったものの、ジョーカーに関しては一切触れられる事は無かった。やはり教えてもらえない部分だったのだとカナタは把握する。

 そんな言ってはいけないであろう事を、当たり前の様にルーファは語りだす。

 

「ジョーカーと言うのは、ルーサーが『興味』というふざけた理由で改造されたアークスや生まれる筈の無かった生命体達の事です」

 

 ルーサー。

 

 レター達からルーサーという存在の話も聞いていた。

 要約すれば、数体居るダーカーという敵の親玉が一人、ルーサーはアークスに混じり。内側から腐敗させ様とした存在だと聞いている。

 虚空機関(ヴォイド)という研究機関を作り出した一人だという事も、レターは教えてくれた。

 その時、視線を外したレターがどういう気持ちで教えてくれたのかは知らないが、現虚空機関(ヴォイド)の一人として思う所があるのかもしれない。

 最早、半年前の話。終わった話だとレターは言っていたが。

 

「それで……兵器」

 思わず出た言葉に、慌てて口元を押さえる。

 しかしルーファがその言葉で苛立つという様子は無いようであった。

 寧ろ吹き出すような声が前から聞こえた。

 

「……兵器、ですか。言い得て妙ですね。最後に残った強すぎる兵器を持ちあぐねているって言うのは、中々滑稽だと思いませんか」

 その表現に、ジョーカーとうい存在を理解する。

 強さも目の当たりにしている。

 自信の世界の『核』という巨大な存在が脳裏を過ぎる。

 制御し切れない程の強すぎる力……。

 それが今、人の形をしているのならば、『そう行った扱い』は必然のなのかもしれない。

 

 どの世界にも、差別という物はあるようだ。

 

 少し、寂しく感じる。

 

「……何を考えているか知りませんが、貴方の基準で私達ジョーカーを図らない方が宜しいですよ」

 

 ルーファさんを見てたら図るなんて出来ませんよ。という言葉を何とか飲み込む。

 

 心に思うのは、それでも、という感情。

 カナタという少女がそういう人間である以上、言葉を零してしまう。

 

「それでも、そんなの、何だか……可哀想です……」

 

 

 その言葉に彼女はピタリと足を止めた。

 

「……可哀想? 今、貴女は可哀想と言ったんですか?」

 

ルーファは再び振り返る。

 覗き込む二つの瞳は、面白い物を見るように、興味深げにカナタを覗き込む。

 

「久々に、そんな言葉を聞きました。しかもジョーカーに向かって?私達、化物に向かって? 負の遺産とまで言われた私達に? 」

 

口数が少ない方なんだと思っていた。

そんな彼女が、カナタに詰め寄りながら捲し立てる。

気圧されるカナタは仰け反りながら固まってしまう。

その覗かれる二つの瞳に、深淵のような暗い瞳から、目が離せない。

 

「優しいという一言で貴方を括るには、難しいでしょう。どれ程のぬるま湯の世界に居たのか知りませんが、貴女はこの世界を理解出来ていない。」

 

 彼女の言葉は止まらない。

 

「確かに、アークスとは違う。この世界とは違う。貴方と出会う他のジョーカー達はどういった反応をするのでしょうね」

 笑う。薄く笑う。

 あまり表情の変わらない人なのだと思っていた。

 興味深げに見つめる瞳がカナタから外れる。

 

「私はジョーカー、【最悪(エンド)】の【人間失格(ピリオド)】」

 それだけ言うと彼女は、自身を別の名で呼んだ彼女は、カナタへ背を向ける。

 

「自己紹介です。私たちジョーカーの自己紹介をしましょう。この船に居る兵器は、化物は、私を含めて『七人』。【最悪(エンド)】【最善(ガーデン)】【最強(スペシャル)】そして、【最害(サーカス)】に分類される七人。その甘さに、彼等彼女等がどういう風に反応するのか、楽しみですよ」

 

 理解が出来るわけも無いカナタを無視してルーファは後ろ手で手を振りながら歩き出す。

 

「甘ちゃんの貴方が、どこまでその性格を続けられるのか、楽しみです。」

 

 彼女の独り語りが終わり、そこに無音が訪れる。

 固まったままのカナタに、ル―ファの言葉等、理解出来るわけも無い。

 呆然としていたカナタは大きく息を吸い、そして吐き出す。

 

「な、何なんですか……」

 疲れ切ったカナタは辺りを見回し、そこで気づく。

 そこが自身の最初に寝ていた部屋のドアの前である事に。

 思わず廊下の先を見る。

 既に彼女は見えない。

 

「み、道案内をしてくれて、た……?」

 良い人なのか、悪い人なのか、ルーファという女性が読めない。

 出会った事の無いタイプの女性。

 

 ぐるぐると回る頭の中。

 ただ一言、彼女が言った言葉が鮮明に脳裏に残る。

 

「甘ちゃん……別に、私は……」

 優しい少女の言葉は、誰もいない廊下に薄っすらと響いていた。




三人体制でやってます。

小説 ふぁいと犬 ツイッター   @adainu1
http://mypage.syosetu.com/3821/

挿絵担当 ルースン@もみあげ姫  @momiagehimee 

曲  黒紫            @kuroyukari0412
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