女子高生と七人のジョーカー   作:ふぁいと犬

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 ファランに起こされた時間は早朝だったよう。
 もっと交流を深めようと思っていたけれど、少女は直ぐに部屋に戻りいつもの定位置へ。
 何を話しかけても返事をしてくれる様子は無い。
 ただ埋めている顔は見えないけれど、真っ赤な耳に少しにやけてしまう。

 取り合えず、向かうように言われていた食堂へと向かう事にした。

 地図も貰っていたし、キョロキョロとしながら到達。
 厨房には、中年くらいの女性が立っていた。
 どうやら待ってくれていた様子。
 始めて敵意の無い笑顔を向けられていた。
 三角巾にエプロン、カナタの世界にもいそうなおばちゃん。

 まず何か好きに作ってご覧、と言われ少し考える。
 
「じゃあ……体を動かすようなので、カツ丼で!!」

「かつどん?」

 ……この世界のカツ丼は無いらしい。




 毛の生えている肉。
 何故調味料が光っているのだろう。
 良く解らない食材が並んでいた。

 と、取り敢えず、はい、置いてあるという事は、はい。
 た、食べれるのだろう。

 台所はまだカナタの世界のあるものと何ら変わらずホッとする。

 見よう見まねから作ったカツ丼。
 食材不明だけれど、カツ丼!
 胸を張ってそう言う事にする。

「まぁーいい匂いだねえ!」
 隣で笑顔でそう言ってくれるおばちゃんの言葉だけが救いだった。

 厨房と繋がっているホール上になっている大きな食堂が騒がしくなり始めていた。

 やれる事はやった!

 多分……。



Act.14 最初の一日

「な、なんだアレ、かつどーん? かつどーんってなんだよ!?」

 

「お、おいなんだあのカラッとした感じの肉は」

 

「上に乗せられた茶色いドロドロとした液体も奇怪だ!」

 

「見ろよ! 肉の下に草が入ってるぞ! やっぱり俺達に毒を盛り込もうとしてるんじゃ……」

 

 そこら中から好き勝手に聞こえる言葉はカナタの心を強く傷つけていた。

 

「美味しそうに見えるけどねぇ」と後ろで言ってくれている声にだけは救われていた。

 

 三角巾にエプロンをつけているカナタは大きく溜息を吐く。

 こちらに向けられる視線は変わらない。

 恐怖や、奇怪な物を見るような視線。

 元来、あまり嫌われたこと無いカナタからすれば十分にダメージを食らってしまう。

 

 折角作ったのだけれど、と思いながら嫌な視線から逃げるように盆へと手を掛ける。

 

 食器を下げようと持ち上げる。

 

 その盆を、突然一人のアークスが逆側から掴んでいた。

 

「んぇ?」

 妙な声が漏れながらも顔を上げる。

 視線の先の人物はニッコリと笑いかけていた。

 

 ……ま、待って。待って待って。

 

 高い身長。ユラ程では無いが威圧感を与えられるぐらいには十分に高い。

 何よりも、その見た目は身長異常にも威圧感を与えていた。

 

 褐色の肌。

 サラサラでありながら、金色の派手な髪。

 茶色がかったレンズのサングラス。

 片耳につけているイヤリング。

 黒い背びろに赤いシャツ。

 カナタを見つめる色の違う瞳。

 

 そしてカナタが固まった最大の理由は片側に記された顔半分に施された入れ墨。

 

 

 その見た目はカナタの世界で見れば到底近づきたくない風体。

 

 ア、アークスの世界にも不良とか、そういう概念があると言う事なのだろうか。

 

 と、失礼な事を考えながらカナタはあんぐりと口を開けてしまう。

 そんな男性に突然目の前に立たれた女子高生。

 轟轟しい体つきの男は、固まったままのカナタから盆を受け取ると、全員が見つめる中、座った。

 まるで全員が見える位置に行くかのような大きな机へ。

 

「お、おい、レオン死ぬ気か!」

 

 どよめくギャラリーから悲痛な声が飛び出す。

 カツ丼で死んだ人なんて聞いたことありません。

 と、カナタは心の中で突っ込むがそんなことをアークスたちが知る由もない。

 

 レオンと呼ばれた男はギャラリーに向けてグッと親指を立てて見せていた。

 

「こんな可愛い子がよぉ! 作った料理で死ねるなら……本望ってもんだろう!野郎共!!」

 見た目通りの低く猛々しい声。

 

 

「か……可愛い?」

 突然の言葉にカナタは思わず視線を下に向ける。

 顔が熱くなったのが嫌でも解る。

 突然そんな事を言われれば女子高生は皆そんな反応をしてしまうだろう。多分。

 

「な、なんて男らしいんだ!馬鹿だけど!」

 

「ダーカーかもしれないのに可愛いが基準とか流石過ぎる!馬鹿だけど!」

 

「見ろよあいつの熱い瞳!死ぬ直前の瞳じゃねぇ!果てしなく馬鹿だけど!」

 

 レオンはざわめくギャラリーを左手で制する。

 まるで今から戦うのかと言うような真剣な面持ちにギャラリー達も思わず唾を飲み込む。

 震える手で食器を手にすると、上に乗っている肉をそっと持ち上げた。

 

 プルプルと震える肉をゆっくりと口元へと、運ぶ。

 

「ぐ、あ、ぁぁ……」

 決心が揺らいでいるのか口を開けながら真剣な表情で彼は固まっていた。

 カナタから見ればカツ丼の肉を、食おうか食うまいかを真剣な表情でしているのは滑稽にしか見えず頬が引き攣る。

 

 意を決したようにレオンが肉を口に放り込んだ。

 

「食った!食ったぞ!」

 

 再びどよめくギャラリー。

 なぜ自分の作ったものでここまで盛り上がっているのかと、一人蚊帳の外でカナタは泣きそうになる。

 

「ぐ! ぐうううう!?」

 呻くレオンにギャラリー達はどよめく。

 

「大丈夫かレオン!!」

 歓声に答えるようにレオンはプルプルと震えながら親指を立てて見せる。

 

「まだだ……まだちょこっとじゃわからねぇ!うおおおお!!」

 雄叫びをあげながらレオンはカツ丼を親の敵の様に乱暴にかきこんでいた。

 

「すげぇ!すげぇよ!あそこまで全力で飯食ってるやつ見たことねぇよ!」

 ……ああ、アークスでもこういう光景は普通見ないのね。

 ものの10秒で平らげると勝利宣言とでも言うよに丼を勢い良く机に置いた。

 

「どうだレオン!!」

 

「まだだ!! まだわからねぇ!もういっぱいだ!」

 コメ粒を口元に付けながらそう言うと、ビシィ!と力強くカナタを指差していた。

 

「え、あ、はい」

 終始現状を見ていたカナタは突然の矛先に適当な相槌を打ってしまう。

 

「レオン……お前ってやつは……」

 今度は感動的な雰囲気があたりを包む。

 ああ、アークスって愉快な人の集まりなんだな。と心の中で完結に理解した。

 

「あ、今度は肉更に増し増しで上に乗ってたドロドロしたのも多めに掛けてね」

             

 

「気に入ってるじゃないのっ!」

 

「イッテっ!」

 スパァン!というこ気味のいい音と共にレオンが思いっきり叩かれていた。

 

「女の子の料理で遊ぶんじゃないの!」

 

 レオンを殴った女性は優しくカナタに向けて微笑む。

 綺麗な女性だ。

 ルーファやユラとは違う、柔らかそうな美人、という風に受け止める。

 金色の髪に尖った耳。淡い金色の瞳は思わず見惚れてしまうような魅力を感じる。

 

 

「私にも、同じの貰える? 少なめにしてくれるとありがたいけれど」

 済んだ大人びた声に、惚けていたカナタは慌てて返事をすると厨房に引っ込む。

 

「てんめリース何すんだよ!!」

 

「はいはい、ほら横空けて私も頂くから」

 

 カナタはすぐに戻ってくると、リースの前に皿を置いた。

 今度は薄い円上の皿に小さく切り分けたカツと、サラダを分けて可愛らしく盛り付けていた。

 それを見たリースは、まぁまぁと口元に手を当てる仕草をする。

 

「あらあら、気を使わせたかな?ありがとう 」

 柔らかい物腰、見れば見るほどに清楚な様子に顔を赤らめ視線を落としてしまう。

 

「そ、そんな、エヘヘ……」

 不貞腐れた表情でリースを見ているレオンは、今は大人しい。

 二人がどういう関係なのか解らないが、大人しいのは隣で座っているリースが理由のようだ。

 

 優しくカナタに笑いかけた後、彼女は上品にナイフとフォークを使いゆっくりと口に入れる。

 目を瞑り吟味するように数秒。

 その後、強く目を見開いていた。

 

「あら、本当に美味しい……」

 上品な様子は変わらないが少しだけ食事のペースが速まる。

 

「おーおー誰かさんもがっついてますなァ」

 隣でレオンがリースに嫌な笑みを浮かべていた。

 それに気づいたのかリースは慌ててナイフとフォークを机に置く。

 他のアークスとは様子が違う彼女はナプキンで口元を吹いていた。

 先程の行動が失態だと思っているのか頬が薄っすらと赤い。

 

「お、俺も食ってみようかな……」

 二人の様子に一人のアークスがポツリと零す。

 その一言からギャラリー達はまたざわざわと騒ぎ出していた。

 思わず、と言った具合に一人のアークスが前に出る。

 

「カナタちゃん、だっけ? 俺もそれ1つ!」

 その言葉に呼応するようにほかのアークス達も口々に喋り出す。

 

「俺も!そのキャタ丼っての!」

 

「ばっかちげーよカベ丼だよ!」

 

「何その新しい愛が始まりそうな単語、カビゴンでしょ?」

 

「何でもいいからこっちにもそれ一つ!」

 

 突然のアークス達の様子にカナタは面食らってしまっていた。

固まっているカナタの肩をぽんっ、と優しく誰かが叩く。

 

「それじゃ、頑張ろうかねぇ!」

 豪快に笑うおばちゃんに、カナタも同じように笑顔を返した。

 

「はいっ!」

 パタパタと嬉しそうにカナタは食堂の奥へと消えていく。

 その様子を優しく見つめる二つの視線には気づかない。

 

 リースは悪戯っぽくレオンに笑いかける。

 

「お人好し」

 

「俺は可愛い子の味方だから仕方ねェーよな!」

 力強くリースに親指を立てて見せるも、リースはそれを、はいはい、と簡単にあしらう。

 

「っつーかてめえ等! 先におかわり頼んだのは俺だボケ!どけ!」

 食堂窓口に詰め寄り出したアークス達の大群の中にレオンも嬉々として飛び込んでいった。

 それを呆れた様子で見つめながら、皿に残る肉をリーフはまた口に運ぶ。

 肉の旨みと上に掛かっていた甘辛い液体が口の中で再び踊る。

 

「こんなに美味しいモノ作れるのがダーカーなわけないものね……」

 彼女はそう零すと、また優しく笑う。

 慌しく食堂奥で動いているカナタに暖かい瞳を向けていた。

 

 

 

 

 そんな慌ただしい様子を、遠くから見つめる色の違う瞳の少年。

 白髪の少年がジッと見つめる。

 

「気にくわねェガキだ」

 

「なーに言ってんのセーンセ! すーぐ悪口言っちゃメッでしょー?」

 その隣の能天気な女性。

 同じく白髪だが身長は白髪の少年よりも高い。

 明るい笑顔の似合う女性。

 




三人体制でやってます。

小説 ふぁいと犬 ツイッター   @adainu1
「リースとレオンの見た目はこんな感じなようです! 見た目にかなり考えてるので変わるかも?

【挿絵表示】

【挿絵表示】

ファラン挿絵も追加されてますー」
8/29※追記)下の挿絵が間違えていました本当に申し訳ございません汗
act13 ファラン に挿絵追加ですー!

【挿絵表示】

http://mypage.syosetu.com/3821/



挿絵担当 ルースン@もみあげ姫  @momiagehimee 
「リースとレオンはワイが育てたわけちゃうで」

曲  黒紫            @kuroyukari0412
「うちの家のリンスはライオン製」
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