女子高生と七人のジョーカー   作:ふぁいと犬

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 熱い風が頬を撫でる。

 息をするのが苦しい。

 咳き込みながら、彼女は目覚めた。

 重い体をゆっくりと起き上がらせる。

 頭は、ぼぅっ……と、霧が掛かったような状態。
 その状態が考えさせる事をさせない。

 私は何を、していたのだっけ。

 熱い風と同時に、細かい砂の様な物が舞った。
 目に入る細かい異物に痛みが走る。
 霧が掛かっていた頭はようやく動き出した。
 慌てて目を擦る。

「こ、ここは、何……?」

 霞む瞳で辺りを見渡す。
 そこに広がっていたのは、大量の砂。

 カナタ自体始めて見るそれは、始めて見なくても知っている物。

「さ、砂漠?」

 異常な広さは先等見えず、金色の砂が広がる。
 カナタの暮らしていた都会に、こんな場所はある筈が無く。
 別次元の世界に目を丸くする。

 広大な世界。
 空に輝く暑苦しい太陽は目障りなまでに眩しい。
 噎せ返るような暑さも、紛れも無く本物で。

 カナタの知らない世界が広がっていた。


Act.2 ARKS

 終わらない砂漠を歩き続ける。

 何処かも解らない灼熱の世界はカナタの心を不安に駆り立てていた。

 締め付けられるような心細さが募る中でも、歩くしか方法は無い。

 真っ直ぐ進んでいるのか、この道があっているのかも解らないまま広大な砂漠を進む。

 

 どれくらい経ったのか解らない。

 それでも考えるには十分な時間は過ぎていた。

 

 確かに、夜の公園に居た筈だった。

 都会の住宅街。学校の帰り道の途中にある公園。

 砂場で泣いていた子供。

 同じ顔の二人の子供。

 

 その二人の異形な片腕に、カナタは食い千切られた。

 あの生々しい血も、肉片もハッキリと覚えている。

 食い千切られた喉元や、上半身の部分に触れる。

 そこには無くなった筈の部分は存在していた。

 

 夢では無かった。

 

 確かにカナタは死んだと思っていた。

 状況を理解出来る筈の無いカナタは、無心に歩く事しか出来なかった。

 暫く歩くと砂漠の山が目前に見える。

 決して上れないサイズでは無いが砂に足を取られ体力が限界であるカナタには心を折るには十分なサイズ。

 山の頂上からなら辺りも見渡せる、何か砂漠以外の物を見つける事が出来るかもしれない。

 自ら自分に言い聞かせながら小さくため息を零し、砂の斜面に足を踏み込んだ。

 

 数歩歩くと、足が砂に埋もれて顔から派手に転んでしまう。

 勢い良く埋もれた顔を慌てて引き抜く。

 っぺっぺ、と口に入る砂を吐き出し、ジワリと瞳に涙が溜まった。

 

 何でこんな目に……。

 

 カナタの心も限界が近づいていた。

 それでも泣き喚くわけにも行かず、再び砂の山に足を掛ける。

 

 石で切ったのか、斜面を進む度に膝に痛みが走る。

 黄色い砂に、ポタポタと血が零れていた。

 

 食い千切られた時には痛みは無かったのに、今は怪我に対して痛みを感じる。

 それが頬をつねったように夢で無い事を解らせる事が余計に心を締め付ける。

 

 砂漠の頂上にようやく到達すると、その場で座り込んだ。

 

 スカートに砂が付く事を気にする余裕も無く、カナタは蹲る。

 

「もう……なんなのよ……」

 

 零す言葉は誰に聞こえる事も無く風に乗せられ消えていく。

 頂上からなら何か見えるかもしれないという考えは幻想に終わり、どこまでも砂漠が続いているだけでしかない。

 

「何で私がこんな目に……」

 

 ずっと思っていた事がつい口に出る。

 数日後には友達に勉強を教える約束をしていた。

 帰ったら親にお小遣いについて話をしようと思っていた。

 当たり前の幸せが、もう霞んでいる。

 無意識的に零れる涙を必死で拭う。

 それでも零れ続ける涙に、もう彼女自身が限界でしか無かった。

 

 瞬間、彼女は慌てたように顔を上げる。

 音が聞こえた。

 

 それは人の声。

 

 低いその声に、カナタは慌てて視線を向ける。

 視線は頂上から下に向けて。

 奥しか見ていなかったカナタには気づけなかった。

 砂漠の山。

 下の少し先に声の主が居た。 

 遠くとも男性の背中である事が解る。

 背中に大きな鉄のような物を背負っていた。

 大きな剣にも見える気もするが、そんな事は今の彼女には関係が無い。

 それよりも人が居た事に安堵の笑みが零れる。

 

「良かった……良かった……!」

 

 不安で押し潰されていたカナタは慌てて立ち上がると駆け出していた。

 

「すいませぇーん!」

 ブンブンと手を振りながらカナタが大声を向ける。

 その声に背中の人物はビクッと肩を震わせ、慌てた様子で彼女の方を見上げるように振り向く。

 

 急いで向かおうとすると同時に、再び砂に足がもつれる。

 

「ウェッ!?」

 短い悲鳴と共に砂の頂上から思いっきり飛び込むようなダイブ。

 投げ出された体は斜面にぶつかると、そのまま二転、三転と勢い良く転がっていく。

 

「ひぃぃぃぃぃああああぁぁぁぁぁ!?」

 

 間抜けな悲鳴を挙げながら砂煙を上げ斜面を転がる。

 ずざーっと、勢い良く音を立てて滑り込むように男性の目の前で砂煙は止まる。

 長い髪や、服を砂だらけにして間抜けな状態で転がっていた。

 

 一瞬の沈黙。

 

 その不可解な悲鳴と砂煙に、大剣の塚に手を掛けていた男性が、間抜けな様子に塚から手を放していた。

 

「ダーカーかと思ったじゃねーかよ……まーこんな間抜けなダーカーいるわけねぇーか」 

 

「ダ、ダーカー……?」

 男の言葉の意味を理解出来ず、砂まみれのままカナタは顔を挙げる。

 そこに、彼女、屑木星空くずき かなたに笑いかける男性が居た。

 

「大丈夫か嬢ちゃん。何処に敵が居るか解らない状態でこんな派手に登場するアークス何て始めて見たぜ」

 笑いながら男性は手を貸して立ち上がらせてくれる。

 

「あ、あの、ありがとうございます……」

 言葉の意味が解らず、立ち上がると取り合えず礼を零す。

 そこでようやく男性の全体が目に映る。

 男性は低い声とは裏腹に、見た目は若い青年。

 鎧と言うにはスレンダーで。未来的に見える姿。

 素人目でもそれが戦闘の為の物だと解る。

 背中に背負わされた身の丈程の大きな剣。

 そんな戦闘に特化した姿の割りに、青年は優しい笑みをカナタに向けてくれる。

 跳ねたツンツンの髪型は、見た目通りであれば活発な青年という印象を受けた。

 

「嬢ちゃん。名前は?」

 

 優しい言葉に、安堵しながらも落ち着いた様子で質問に答える。

 

「私は、屑木(くずき) 星空(かなた)です」

 彼女、カナタの言葉に青年は首を傾げる。

 

「クズキカナタ? 随分と長い名前だな? そんなに長い名前を聞いたのは六防均衡の小娘以来だ」

 やはり青年の言葉の意味が解らない。

 カナタの不思議そうにしている様子に青年は気づく。

 

「お前もしかして原生生物か? それにしては見た目は俺達と変わらねーし、フォトンの力も感じる」

 不思議そうにカナタを見つめる青年の視線は、カナタからすれば訝しく見られている様に感じた。

 やっと見つけた話せる人物に不安感を持たせたくないとカナタは慌てて口を開く。

 

「あ、あの私! 気づいたらココに居て何が何だか解らなくて、一体ココはどこなんですか!?」

 

 捲くし立てる言葉に、青年は少し困った表情をする。

 

「残念だが、それは俺にも答えられない」

 その言い方に、心が再び暗闇へと突き飛ばされた感覚に陥る。

 確かに突然現れた人間を警戒されても仕方が無いかもしれない。

 それでも縋るしか無いのだけれど。

 

「俺にも解らんからな!!」

 元気良く親指を立てて言われてしまう。

 

 ……縋り難い人だった。

 

 

【挿絵表示】

 

 




三人体制でやってます。

小説 ふぁいと犬 ツイッター   @adainu1

「オンライン・シャッフルも全く同じタイミングで別世界へ……幽霊娘も宜しく!」
http://mypage.syosetu.com/3821/


挿絵担当 ルースン@もみあげ姫  @momiagehimee 

「森永のアイス、MOWの小豆味おいしかったです」


曲  黒紫            @kuroyukari0412

「僕の家の洗剤はダイオン」

http://www.nicovideo.jp/mylist/35049795
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