女子高生と七人のジョーカー   作:ふぁいと犬

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横に振るうだけで、それに合わせるように大量のダーカー達が吹き飛ばされる。

個対多。

 あり得ない筈である物量を、その攻撃力だけで対等に渡り合う。
 いや、対等というにはあまりにも圧倒的にダーカー達は粉々に砕け散っていく。

 圧倒が、目の前に広がっていた。

 映像に映る黒い人型の存在は、辛うじて知っている人物の面影を残していた。

「れ、レオン、さん」

「これが、君が助けると言った化物達の姿だ。ジョーカーという例外であるが、我々アークスとは強大な力を有する、それをだ、カナタ、君程度が助けると言うのか?」 

 大量のダーカーを薙ぎ倒す彼の姿は、いつもの戯けた笑顔の姿は無い。
 自分の居た世界とは違う。
 それも解っていた。
 しかし、解っていても、目の前の純粋なシリアスだけが現実世界。

 一般人であるカナタには、十分過ぎる恐怖が心を震わせる。

「これが現実だ。カナタ」
 後押しする少女の言葉にカナタは言い返す言葉が見つからない。
 それ程までに、目の前の世界に飲まれていた




 俯く彼女に、幼女は小さく息を漏らす。
 虐め過ぎたか。
 しかし、それが現実だ。これが現実だ。

 フィクションも、ファンタジーも、夢も幻も、そして善という甘い存在が認められる程。

 肯定される程、優しい世界では無い。

「それでも」

 黙っていた少女が口を開く。
 それは押し殺したような、無理矢理吐き出したような言葉。

「わ、私は、誰かの敵じゃなくて、誰かの……味方で、いたい」    

 それでも、まだ、彼女の信念が、跳ねる。

 言葉を理解している。状況も、環境も。
 どれ程、理屈で来ても。

 それでも、彼女は、カナタは諦めない。

 駄々をこねる様に、魂に従う。


「……」

 何処か諦めたように幼女はッフっと小さく笑って見せる。
 何処までも、甘い。
 いや、甘いという言葉だけでは到底片付かない領域。

 これが、彼女なのだ。

 絶対にブレない、その芯こそが、彼女なのだ。

「……解った、やってみたら良い、ファランの事は一任しよう」

「え?」

 慌てて顔を挙げたカナタに対し、子供らしからぬ優しい笑みを浮かべていた。
 それは、困らしてしまったと感じてしまう笑み。

「何を驚いている……君がそこまで言うなら任せよう。無理矢理で無く、自ら力を使ってくれる方が効率が良いに決まっている。それを、そこまで自身満々で言えるのであれば、やってみると良い」

「ほ、本当!? ユラさん!!」
 嬉しそうに声を上げるカナタに呆れたように息を吐く。

「ああ、本当だと、も?」
 そこで何かに気づく。
 ん? という具合に首を傾げ、みるみるうちにその可愛らしい顔の眉間に皺が寄る。

「今なんと言った?」

 カナタはニッコリと満面の笑みを向ける。

「流石にそこまで話を聞いたらユラさんだって解るよー! 何でそうなってるか解らないけれど可愛いんでモーマンタイ!」
 カナタの笑顔とは裏腹に、小さな体でその場から崩れ落ちるユラは掠れた声を零す。

「他言無用で頼む……」

「可愛いのにー」

「私のイン……威厳に関わるのだ」







 部屋に戻ると、荒れていた部屋は元通りに戻っていた。


 ファランの上にはシーツが掛けられており、上下に動くそれが、安らかに眠っているのだと理解する。

「リースさんがやってくれたのかな……」
 ぽつりと独り言を零しながらファランの寝ているベッドへと腰掛ける。
 溢れる頭を撫でようと伸ばした手は止まる。

『人に裏切られた欠陥品』

 伸ばしていた手をゆっくりと引っ込める。
 手の甲に巻かれた包帯。
 彼女の引っかかれた傷を、包帯の上から撫でる。

 いつ戻れるのか、無事に元の世界に戻れるのか、はたまた……一生この世界にいるのか等解らない。
 解らないけれど。
 やる事は変わらない。困っている人がいれば助ける。
 だから、ファランちゃんの心を、絶対に、絶対に。


Act.31 レオンVS

「さて、そろそろ頃合いか」

 ユラは机の上に飛び乗ると、その大きすぎる袖が出たままの腕を耳元へと持っていく。

 合わせるように、耳元で電子的な画面が展開される。

 

「後かたずけ開始だ、三人であの馬鹿を回収してくれ」

 

 電子の画面からは高い声が返される。

 

『えっ……と、今?』

 踏ん切りが付かないような高い声に、珍しいとユラは感じる。

 

「リース、何をしているか知らないが外で暴れているバカを優先だ、こちらに矛先が向く前に止めるんだ」

 

 数秒の沈黙の後、『了解』という短い声が返される。最後に付け足したように『ごめんね……』という声がマイクを拾っていた。

 特に気にする様子も無く、小さな体から発せられてるとは思えない凛とした声が響く。

 

「『エスパーダ』の出動を許可する。迅速にあのバカを回収して来るんだ」

 

 生きた災害とまで言われるジョーカー。

 

 無論、彼等が災害と言うのであれば、彼等を乗せるシップには、災害を止める力も存在していた。

 

 元々『彼女達』はジョーカーを作る際に偶発的に生まれた副産物。

 彼女達は結果的には失敗作という扱いにされていた。

 ジョーカーとは、ダーカー殲滅の為だけに人工的に作られた者達。

 失敗は死を意味し、非人道的な搾取によって生まれた者達。

 

 そんな中、死ななかった失敗作。

 

 偶発的に作られた彼女達が手にした力は、彼女達が手にした力は、ダーカーでは無く。アークスに対して力を発揮する物だった。

 偶然に生まれた彼女達は、数少ないジョーカーというアークスを止める事が出来るアークス。

 

 数少ない彼女達はエスパーダという部隊で結成された。

 

 対ダーカー専用のジョーカーに際し、対ジョーカー専用の部隊。

 

 

 ■

 

 

 ダーカーの死骸を踏み締める黒いレオンの数メートル後ろに青白い転送の光が舞っていた。

 光が消え去り、白く長い2つ結びの髪が風に舞う。

 少女らしからぬ裂けた笑みを浮かべる。

 手に持つのは彼女の小さな体には不釣り合いな巨大な。

 

 巨大な巨大なハサミ。

 

 自分のサイズをも超えるハサミを器用にその場でクルクルと回す。

 数回転と共に砂を巻き上げるようにハサミを突き

 

 キラキラと子供らしく目を輝かせ、その可愛らしい視線は目の前の黒い物体に向けられていた。

 レオンは禍々しく光る赤い目をアスへと向ける。

 粉々になり、既に砂に紛れた破片のようなダーカー達から、次の獲物を見つけたように、一歩ぎこちなくレオンは足を動かしていた。

 

「わーぁぁー! 黒レオちゃんだァ久しぶりィ」

 

 おどけた言葉を向けるアリスに、躊躇い無くレオンはその手に持つ巨大な赤黒い槍を振るう。

 小さなアリスの体に向けて、巨大な黒い斬激が飛ばされる。

 自身の数倍以上の脅威が、ダーカーすらも一撃で粉々にする高威力がアリスに放たれていた。

 地面を割り、けたたましい音を上げるそれにアリスは首を傾げるだけ。

 

 そんなアリスの耳に付けられたインカムから可愛らしい声が聞こえていた。

 

『横に二歩、後ろに三歩だよアーちゃんー』

 おっとりとした声に合わせるようにステップを踏むようにアリスは言われた通りに歩を動かす。

 後ろへの丁度三歩目に合わせる様に、禍々しい黒がアリスの直ぐ隣を通過して行く。

 アリスの白い髪が大きく揺れる程の風圧を感じているにも関わらず、アリスの表情が変わる事は無い。

 

「今度はこっちから! こっちから!」

 笑顔のまま地を蹴った。

 見た目からは想像出来ない異様な瞬発力に砂が巻き上がる。

 一瞬で距離を詰めるアリスに、レオンは槍を振おうと振り被る。

 

『横に大きく四歩、そのまま前に二歩ー』

 状況と不釣り合いなやんわりとした声に合わせてアリスは再びステップを踏む。

 振りかぶられた攻撃が紙一重の形でアリスを横切って行き、そこから後ろに強烈な衝撃波の砂埃を上げる。

 一度でも擦ればアリスの体は粉々の肉片と化す。

 アリス自身もそれを解っていた。

 解っている上で戦っていた。

 インカムの先の彼女への強い信頼がそうさせていた。

 戦闘型のアリスに対してインカムの先に居るサーシャは補助型の役割を担っていた。

 

 ファラン程の、広範囲の感知能力があるわけでは無いが、一体に対してならば行動を先読みする程の高い感知能力を担っていた。

 戦闘能力の高いジョーカーに対して、驚異的な身体能力のアリスとサーシャは二人で一人。

 

 その為のジョーカー、ないしアークス専用型とまで言われた二人。

 

 悪意あるアークスの削除等を続けてた『裏の仕事』が長い彼女達しか出来ないチームプレー。

 

 攻撃動作の大きいレオンへ、アリスはその場で回転しながら横腹へと巨大なハサミを無理矢理に振るう。

 ガパリと開いたハサミの巨大な刃がレオンへ触れると、鉄を叩くような音を響かせるだけでそれ以上に先へと進まない。

 

 同時に石に触れたような衝撃がビリビリとアリスの手に響いていた。

 

「にゃぁーーーん、手いったーいぃージョーカーってずるぃー」

 返す刀で振るわれる槍をインカムの指示で避けながらアリスは頬を膨らませる。

 瞬時に後ろへと二歩離れるとアリスはレオンの足元を抉るようにハサミを振るう。

 砂を大きく巻き上げながら、削られる地面に、ぐらりとレオンの体制が崩れる。

 

 アリスの表情が不気味に歪む。

 

 殺意が込められた瞳に躊躇い等は無い。

 

「ジョーカーでもねーェー? 首だったら死んじゃうですですぅー?」                   

 

 舞うように孤を描く動きは確実にレオンの首へとハサミを振るう。

 瞬間的にレオンは体制を後ろへと傾ける。

 始めての回避行動は、意識の無いレオンでも無意識に危険視する程の殺意がそうさせていた。

 首元へ振り切られた鎌は皮一枚斬りつけていた。

 浅い斬撃に首元 から軽く血が吹き出す。

 

 外れた事に舌打ちしながらも表情の笑みは変わらない。

 

「うややーんー! 血が出たらぁー殺せるねェー! わぁい……」

 

 よろめくレオンは瞬時に体制を立て直す。

 獰猛な瞳をそのままにレオンは後ろへ数歩飛んでいた。

 本能的に、レオンという人間が攻撃をする為に繰り返してきた動きが無意識にそうさせていた。

 

 先程よりも大きく、大きく、槍を頭上へ掲げる。

 禍々しく舞う黒いフォトンがレオンの槍へと集約されていく。

 振り切る動作は、一瞬の空気、音を無音にさせる程の駿撃。

 

 槍を、縦へ、振り被る。

 

 その動きは先程の大量のダーカー達を根こそぎ吹き飛ばした超威力。

 

 

 感覚が薄いアリスにも伝わる空気の揺れは既に遅いと直感的に理解していた。

 

 それは、小さな少女など、少女の並外れた運動神経で飛び出そうと、到底避けられる筈の無い巨大な殺意の塊。

 アリスに向かう禍々しい黒いフォトンの塊を前にしても、アリスは困ったような表情を浮かべるだけ。

 

「サーちゃーんどうしよー?」

 子供らしくインカムへ零す声に、やんわりとした声が返される。

 

『アーちゃん、ダメだよぉーどこに行っても当たっちゃうー 』

 他人事のような言葉にアリスは怒る様子も見せずに、ううん、と首を傾げる。

 

「どーしよー」

 

 狙いを定めた超火力は避ける範囲すら与えない大規模な領域。

 間抜けな声に合わせると共に小さな少女が飲み込まれる。

 

 数秒続く黒い衝撃波の跡。

 

 巻き上がる砂の中に少女がいない。

 小さな少女がまともに当たれば形すら残らないだろう。

 

 しかし、レオンの視線を周りを見渡す。

 

 アリスの独特のフォトンを、レオンの体が本能的に察知していた。

 まだ死んでいない事を、体が教えていた。

 不意にレオンの赤い瞳は頭上を向く。

 

 逆光から見えたのは、一つの大きな影。

 

 それが子供をぎゅっと抱き寄せている誰かなのだと、レオンが認識する事は無い。

 

 生きている。だから殺す。それだけが彼の行動原理。

 

「良かった間に合った……」

 ほぅと安堵のため息を零す女性は腕の中の少女にキッ!と強い視線を向ける。

 

「何で先に行くの!!」

 空中で金色の髪と白い髪の毛が舞う中、アリスはキョトンとしていた表情を満面の笑みへと輝かせる。

 

「りーちゃんだ!」

 腕の中でキャッキャと楽しそうにしているアリスに、インカムから聞こえる『りーちゃんないすぅー』というおっとりとした口調。

 二人の状況を理解していない様子にリースは呆れた笑みを浮かべてしまう




三人体制でやってます。

小説 ふぁいと犬 ツイッター   @adainu1
http://mypage.syosetu.com/3821/

「毎日更新出来ませんでした……とうとう綻びが……」


挿絵担当 ルースン@もみあげ姫  @momiagehimee 


曲  黒紫            @kuroyukari0412
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