女子高生と七人のジョーカー   作:ふぁいと犬

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「あいだだだだだだだだ!!!」

「……何やってんですかユラさん」

「カ、カナタ! 助けてくれ!!」

 ユラの部屋に入った時、カナタの目に映ったのは涙目になっている巨大な女性。
 後ろへ束ねた長い紫色の髪が、二人の小さな少女に引っ張られていた。

「遊んで遊んで遊んで遊んで遊んで遊んでユラ姉ちゃん! ユラ姉ちゃァーん!!」

「ユーちゃんが遊んでくれるよ? 遊んでくれるよ? それってとってもとっても嬉しいな! 幸せだな!」

 美しい紫の長い髪は、二人に引っ張られ二つの枝分れのようになりボサボサになっていた。
 一応トップとして君臨している筈の部屋が、何故託児所のようになっているのだろう。
 あれ、本来の彼女の姿ならば間違っていないのだろうか? 等と妙な事を考えているカナタに悲痛な声が再び飛ぶ。

「早く助けてくれ!」

「わ、解りました! ちょっと待ってて下さいね!!」

「は! 早くしてくれ! く! 『背丈』になる!」

 確かにこれだけ背が高いと背丈になると言っても良いのだろうか。
 多分枝毛。









「いや……すまない助かったよ、リースに少し預かって欲しいと言われたのだが……難しいな子供の相手と言うのは」
 机で頬杖を付く彼女は大きく溜息を零しながらチラリと二人の少女に目を向ける。
 地べたに座り、今は大人しくカナタが持ってきたケーキをもむもむと食べているアリスとサーシャ。

「子供って自由ですから」

「あれに加えてユカリまで世話をしているリースは本当大したものだな……」

「あっちの姿だったら上手く行ったかもしれませんね?」
 ……無言で睨まれてしまった。

「ア、アハハー……」
 慌てて話を逸らす様に乾いた笑みを零すカナタに、ユラはまた小さく溜息をもらす。

「……まぁ良い。夜に騒いですまなかったな」

「もう良いんですか?」

「ああ、私はこれでも艦を任されたものだ! 子供二人ぐらい任せろ!」
 自身満々に不適な笑みを浮かべているが、それをリースにも向けたのだろうと言う事をカナタは容易に想像出来ていた。
 本人が大丈夫だと言うのなら大丈夫だろう。そう思い込む事にしておく。

「そうだな、カナタもここに来て随分と経つ。この星の空を見た事はあるか?」

「いいえ?」
 夜は危険だと言われて外に出る事は無かった。
 昼間ですらここに来てから出た事は無い。

「今の時間に外に出てみると良い、良い気晴らしになるんじゃないか?」

 この艦に来てから外に出る事は無かった。
 ここが危険である事は変わらないから。外に出る事が出来るのは戦えるものだけだと聞いていた。
 勿論カナタもそれに習った。

「危険なんじゃ無いんですか?」

「少しぐらいなら大丈夫さ……最近少し落ち込んでいただろう? 気晴らしをしてくると良い」
 そう言いながらユラは優しく微笑む。
 ……そんなに解り易かったのだろうか。
 艦を束ねる物、と言うのも伊達では無いらしい。

 良く見ている。



Act.40 「私は、ここに居ていいんでしょうか」

 電子的な扉はあっさりと開く。

 危険と言う割には危機感の無いとカナタは感じる。

 広い甲板への道が開き、先端へと歩を進める。

 久しぶりの外。

 

「寒い……」

 

 冷たい風に、カナタはぶるりと体を震わせる。

 視線から見えるのは何処までも続く砂の世界。

 ほう、と吐息は白色が風に乗せられ消えていく。

 

 照らされる満月は、不気味に赤く光っていた。

 

「うーん、見ようによっては……綺麗、かな?」

 軽く苦笑しながらもカナタは大きく伸びをしていた。 

 確かに、久しぶりの外は、気晴らしには良かった。

 

 この世界に来てから、一月が経とうとしていた。

 世界に慣れている自分が居た。アークスの人達とも楽しく話せるようになっていた。

 必要としてくれている人が居る。

 

 無論、元の世界にも必要としてくれている人は沢山居た。

 

 彼女、彼等は大丈夫だろうか。

 そこで、ふと思う。

 私が、元の世界に戻る事が出来たら、出来たのなら。

 

 こっちの世界の私を必要としてくれている人は、どうするのだろう。

 脳裏に浮かぶのは桃色の髪の少女。

 そして、食堂で笑顔を向けて料理を頼んでくれる人達。

 ルーファの事も脳裏に浮かぶが、彼女は、そういう風に思っていないだろうと、ぶんぶんと首を振る。

 

「私は、どうなるのだろう……」

 ポツリと零した声は冷たい風に乗る。

 誰が聞くでも無い彼女の声は夜の闇に消え去って行く。

 

 風が吹く。冷たい風が頬を撫でる。

 冷たい……。

 ぶるりと体を震わせる風に、別の匂いが鼻を燻る。

 あまり好きでは無い害悪な臭いに思わずその場で咽る。

 こちらに来てからあまり嗅ぐことの無かった臭い。

 突然の臭いに頭の中が疑問だらけの中、人の声が聞こえていた。

 声と言うよりは「クックック」というような含んだような笑い声。

 

 声の先に視線を向ける。いつの間に居たのか、甲板の中央に人が居た。高い身長の男性。

 すっぽりと被る鍔の広い帽子で顔は見えないが、口元が楽しそうに笑い、咥えているタバコが鼻を燻った物なのだと直ぐに気づいた。

 カナタの世界で良く見たようなオシャレ帽子な男性。

 

 髪を後ろに縛る男性の髪は赤い。

 

 紅い。

 

 まるで、血のように。

 

 それが、カナタが最初に強く感じた彼の印象。

 

 紅髪の男性は低い声を、夜風に乗せる。

 

「誰も居ないと思っていたのだがな……失礼」

 低くも、それでもまだ若さを感じる声に、20代後半ぐらいだろうかと推測する。

 しかし、こんな目立つ男性をカナタは見た事が無かった。

 軽く目を回しつつも会釈をして見せる。

 

 男は口から煙を空へと吐く。

 その様子は離れていても気遣いをしてくれているのだと感じた。

 

「ああ、君が噂の少女か……成程、綺麗な瞳だ」

 

「え、あ、あの、あ、ありがとう、です?」

 突然褒められたカナタは思わずかしこまってしまう。

 その様子に男はまた楽しそうに「くく」と笑う。

 

「これは何度も失礼した……そうだな、君で言う所のジョーカーの一人だと言ったら、納得はいくだろうか。私はブレイン、何処にでもいそうな名前だろう?」

 酷く落ち着いた声色は、離れていても芯に響くように感じていた。

 

 ジョーカー。それはカナタが知る限りの四人目。

 

「は、始めて会いました……私はカ、カナタと言います」

 何を言っていいか解らないカナタは思わずまごつく。

 

「知ってるさ」

 そう言いながらまた含むように笑う。

 その仕草に恥ずかしくなってしまい、思わずカナタは肩を縮こませる。

 

「ああ、そうだ」

 ポン、と業とらしく右手で掌を作りその上に縦のコブシを乗せる古臭い様子。

 

「私が居るのは秘密だった。この事は内密にお嬢さん」

 しぃーっと人差し指を唇に当てる仕草に、緊張していたカナタも思わずクスリと笑ってしまう。

 

「フフ……他のジョーカーの方々とは違って落ち着いた方なんですね」

 

「お褒めに預かり光栄だよ、まぁ奴等が個性豊かなだけな気もするがね」

 笑う揺れる動作で、帽子から片目が見える。

 濃い金色の瞳。

 暗がりの中でも輝く瞳は、優しくカナタを見つめていた。

 

「さて、お嬢さん……君はどうなるんだい?」

 

 その台詞に先程の言葉が聞かれていた事に突然恥ずかしくなる。

 顔を赤めるカナタに、男はまた笑う。

 

「お嬢さん。不安を零す事は、決して悪い事じゃあ無いんだ。恥ずかしがる事じゃあ無い……酷く人を助けるそうじゃないか。別の世界のお人好しさん。人を助ける事、それは素敵な事じゃあ無いか。ならば、君を助けるのは誰だろう、助けられる人間は助けられてはいけないなんて事は無いだろう?」

 ハッと言葉を区切るとブレインは片手で謝罪の形をしてみせる。

 

「あー……ああ、済まない。久しぶりに人と喋るんだ、つい饒舌になってしまったな」

 

「い! いえ! 良いんです! 凄く……興味深いです」

 まるで、全てを見透かすような言葉に聞き入っていた。

 自分の心を吐き出されているような、そんな違和感。

 

 カナタの言葉に男は「そうか、良かった」と笑いかけてくれる。

 

「さて、お嬢さん、私は本当は知られては行けない存在だ。たった一夜の幻想に、相談して見るのも一興じゃあ無いかね?」

 その低い声は、酷く落ち着く声。

 思わず、カナタの心は大きく揺れていた。

 

 距離を開けた二人の空間。

 そんな空間とは別に、心の距離を詰める様にカナタは真っ直ぐに男を見つめる。

 

 煙を吐くブレインに、カナタはゆっくりと口を開いた。

 

「……あの、ブレイン、さん」

 

「何だい、別の世界のお人良しさん」

 

「私は、ここに居ていいんでしょうか」




三人体制でやってます。

小説 ふぁいと犬 ツイッター   @adainu1
http://mypage.syosetu.com/3821/

「今回登場したブレインはこういう感じの人です挿絵担当さんが書いてくれました。」

【挿絵表示】


「そして戦闘シーンのリースとアリスのイメージ映像も書いて頂きました。」

【挿絵表示】

【挿絵表示】


挿絵担当 ルースン@もみあげ姫  @momiagehimee 


曲  黒紫            @kuroyukari0412
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