女子高生と七人のジョーカー   作:ふぁいと犬

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「よし! 終わり! 仕事終わり!!」
 高らかにそう叫ぶカナタは翻るようにエプロンを外していた。

「どんだけ急いでるんだいアンタは……」

「どんだけでもです!!」
 不振な目を向けるおばちゃんにカナタは何故か自身満々な返しをしている。

「まぁやる事はやってくれてるから良いんだけどねェ……しかし本当に仲良くなってくれたんだねえ」
 バタバタと出て行こうとするカナタは振り向くと、年相応の屈託のない笑顔を向ける。

「はい! 仲良しです!」
 それだけ言うとカナタは食堂から慌しげに出て行く。
 その後ろ姿を、優しく見つめる。
 思わず、その動きに小さく笑い声を上げてしまっていた。

「あの子を見てると……危険な星に居る事を忘れちまうねえ……」







 あの子が最後に見せた目が気になっていた。
 最初に見た時も、そんな目をしていた気がする。
 色のない空虚な瞳。
 久々に、見た。
 
 早足で廊下を歩く彼女には、アークス達の視線が集まる。

「おー! カナタァ! またあれ手伝ってくれよー!」

「カナちゃん~またお菓子一緒に食べましょ~」

 歩くカナタに何人ものアークス達が声を掛けてくれる。
 向ける笑顔にはカナタに対して好意が見えるだろう。
 そんなアークス達にカナタは「また後でね!」「うん約束ですよ!」と同じく笑顔で返していく。

 彼女が来てからの時間。
 リースやシルカ等の気を使ってくれるアークスも勿論居る。
 しかし、それだけでは彼女に対する扱いは変わらないだろう。
 彼女の性格が大きく関わっていた。
 シップに来てからも彼女の行動は変わらない。
 困っているアークスがいれば、尻尾が生えていようが、ロボットであろうが、男女だろうが関係なく助けていた。
 自分に出来ない事だろうと、必死に共に考えて手伝おうとしていた。

 アークス達にとって、最初は違和感のあった彼女の熱心な様子は、距離が詰まるには十分な物だった。
 未だカナタを警戒するものはいる。
 それでも、少しづつ心を開いてくれる人が増えていくのはカナタにとって嬉しい事だった。 

 ファランも含めて。

 そして、別の意味合いでもファランを含めて、皆と笑いたい。



Act.43 「え、少女の汗ですよ?」

 カナタの視線の先に、見覚えのある黒髪が見えた。

 優雅に歩く少女。

 カナタと同じくらいの年にも関わらず、その姿はカナタのような子供らしい雰囲気は無く、鋭い印象を受ける女性。。

 何処か危険な雰囲気。

 腰に据える、揺れる純黒の刀。

 

 思わずカナタの表情は「げ」と言葉の一文字を吐き出したような顔つきになる。

 

 無機質な表情のルーファと目が合ってしまう。

 

 慌てて視線を外すと、速足だった足は更に早くなる。

 彼女の隣を通ろうとした真横の瞬間、がっしりと腕を掴まれていた。

 

「なんです? 人の顔見て喧嘩売ってるんですか?」

 思わず振り返った先のルーファの視線に彼女は焦る。

 敵意ばっちりに向けられてもカナタは視線を外すぐらいの事しか出来ない。

 

「売ってないですよ! 今はちょっと急いでます!」

 直ぐに前を向くと腕を振り払う。

 更に足の速度を速める。

 勿論このまま横をさささと抜けるつもり。

 

「待ちなさい偽善者バカ」

 勢いをそのままにすれ違う瞬間、カナタの首根っこをルーファが思いっきり掴んでいた。

「ぐえ」という解かり易い音と共にカナタはそのまま尻餅をついてしまう。

 勿論掴まれたまま。

 

「丁度良かったですねーちょぉーっと付き合いなさい」

 

「え!? ちょ! ちょ! ちょっと待って下さい! ルーファさん! ちょ! ひきづらないで!」

 尻餅をついているカナタの言葉などルーファは聞こえていないのか。

 そのままずるずると人間一人を片手で軽々と引っ張っていた。

 

「お尻痛いです! スカート捲れちゃいますから! 自分で歩きますから! 聞いてるんですかルーファさん!?」

 

「あら。カナタってば結構えっちぃですね」

 

「離して下さいってば! バカ! バカ! 変人! 刀好き! 戦闘狂!」

 

「何とでもどうぞ」

 

「子供体系!」

 

「……あ?」

 

「ななななんでそこで止まるんですか…………ご、ごめんなさい……」

 

 

 

 

 目の前に広がるのはドーム状の空間。

 カナタがここに来るのは二度目だった。

 始めて来た時は、ホルンと始めて出会った時。

 あれ以来ここに来る事は無かった。二度と自分が来る事は無いだろうと思っていたから。

 広いトレーニング場の空間には少女が二人。

 一人は壁に保たれた状態で三角座りの形になっていた。

 後ろで円状に二つの円を作る長い髪の少女。

 頭に付いている獣耳がピョコピョコと動くと同時に視線はカナタ達の方を向く。

 

 少女はカナタ達の方に気づくと嬉しそうに手を振っていた。

 

「カーナちゃんだぁ! ルーちゃんも居るねぇ!」

 可愛い。

 サーシャの屈託の無い笑顔にカナタは何故かぐっと強く拳を握り締めていた。

 そんなカナタの様子に冷たい視線を向けているルーファの事など知らずにカナタの視線はもう一人の少女に向いていた。

 

 同じく長く、色は白色の髪。

 普段キラキラと輝く真紅の瞳は今は閉じられ、その幼い顔立ちは空を仰ぐように見つめていた。

 サーシャとは違うケアがされていないようなボサボサの髪質。

 乱雑に左右に大きく結んでいる髪は、二つの束を形成していた。

 その身長とは裏腹に、片手にぶらさげるように持っているのは巨大なハサミ。

 少女は薄っすらと目を開く。

 普段の騒がしい様子とは違う落ち着いた仕草と共に、少女はゆっくりとカナタ達の方を向けられる。

 

「…………えへへぇ、お姉さまーカナちゃーん! 遅いよぉ」

 無邪気な笑顔。

 ハートを打ち抜かれるような感覚がカナタを襲っていた。

 

「……」

 特に発言をしないルーファにカナタは不思議に感じてしまう。

 何故こんな可愛い子に反応しないんだと不思議に思い、カナタは首根っこを掴まれた状態でルーファを見上げる。

 

 無機質だった表情。

 その筈だった表情が、口の端がひくひくと動いていた。

 何かを我慢しているようにしているその様子。

 無理矢理にこらえているのか中々の形相になっている。

 

「ちょ、ルーファさん、何かキモイ事になってますよ」

 

「まさか貴方にそれを言われる日が来るとは思わなかったですね……今死にます? 一分後に死にます?」

 

「それ選択肢って言わないですゴメンナサイ……」

 振るえ気味の声のままカナタは続ける。

 

「それで何で私は呼ばれたんですか?」

 

 カナタが聞こうとした言葉は二つの元気な声にかき消されてしまう。

 

「カーナちゃん! おっねえっさまー!」

「カーナちゃーん! るーぅちゃーん!」

 可愛らしくパタパタと近寄って来る2人の少女にカナタの頬が再び緩む。

 カナタは抱きついてくるサーシャを優しく受け止め、アリスの方はルーファに片手で頭を抑えられてしまい抱きつけなかったようだ。

 

「なんでなんでなんでなんで!!おねえさまなんでなんで!!」

 

 ぶんぶんとアリスが手を動かすもルーファには届かない。

 何か某お笑い舞台で見たことがある気がする。

 

「さっきトレーニングしてたでしょうアリス。服に汗付くじゃないですか」

 

「え、少女の汗ですよ?」

 

「……貴方は何で『何言ってるんだこいつは?』って目で見てんですかね。それは私が今あなたに向けるべき目よ、お人好しバカ」

 

「で、私はなんで呼ばれたんですか!」

 カナタはがっしりと手の中にサーシャを収めながら何故か強気な視線を向けてくる。

 呆れた目線を向けながらルーファはため息混じりに応える。

 

「ちょっとサーシャとトレーニングするからその間アリスの話相手になってて貰えます?」

 

「えっと、アリスちゃんじゃなくて、サーシャちゃん……ですか?」

 

「そうですよ。ってゆーか私達ジョーカーがトレーニングなんてしたら船沈めちゃいますからね、サーシャじゃないと、トレーニングも出来ないっつーわけ」

 

「ううん? 要点が掴めませんよルーファさん」

 

「あーそうでしたね。アナタ知らないんでしたね、サーシャは唯一全力を出しても良い相手なんですよ」

 

「こ、こんな小さな子に?」

 

 腕の中できゃっきゃと可愛らしく声を上げている少女に視線を向ける。

 ニッコリと向けられる満面の笑みに思わずこちらも頬が緩む。

 

「まあ見てりゃ解りますよ。サーシャ、良い?」

 

「うんー!」

 

 腕の中でピョンピョンと跳ねていたサーシャはカナタの手から離れトテトテと歩き出すと歩き出すルーファの後を追う。

 名残惜しそうにそんなサーシャの背中を見送っているとスカートの裾を引っ張られている事に気づく。

 足元の視線を向けると、上目遣いの少女と目が合う。

 

「カナちゃあん……汗臭い? アリスは臭いの?」

 何処か落ち込んだ様子の元気っ子。

 普段とのギャップが、堪らん。

 瞬間的に口の中に広がる唾液をカナタは慌てて拭っていた。

 

「そんなことないよー? 大好きなぺった……ルーファさんに言われてちょっと凹んじゃったのかなー? お姉さんと一緒にあっちでちょっと待ってよっかー?」

 

「カナちゃんハァハァしてるの? くるしーの?」

 

「いや寧ろ元気になっギャイン!?」

 カナタが言い終わる前に、頭に突然響く衝撃に顔が後ろへと下がる。

 涙目で当たったであろうソレに視線を向ける。

 カランと音を立てて転がったのは黒い鞘。

 

「次はこっち投げますよ、お人好しバカナタ」

 そう言いながら遠くから刀身をひゅんひゅんと空を切らせて見せていた。

 遠くから睨むルーファの視線にカナタは鼻を抑えながら思わず愛想笑いを向けてしまう。

 

「じょ、冗談ですよー……ア、アハ、アハハ」

 

 遠くからでも聞こえてくる巨大な舌打ちにカナタは思わず身震いする。

 そこでふとした疑問が脳裏を過ぎっていた。

 

「てゆーかルーファさーん! もしかして私はアリスちゃん見るためだけに呼んだんですかー?」

 

遠くのルーファに聞こえるように張り上げた声は、直ぐに同じ大きさで返ってくる。

 

「サーシャを借りちゃうとアリスが1人っきりになってしまうでしょう! あまり時間は掛けませんから! 頼みましたよー!」

 

 ははぁ。成程。

 その場で頷くカナタは理解する。

 

「そっけない態度取る癖にルーファさんも結構親バカですよねー」

 

「おやばかってなーにー? 」

 

「フフフ、ロリコンっことで……ごめんなさいごめんなさい!! お願いですから刀を槍みたいに振りかぶるのやめてください死んじゃいますから! 死んじゃいますからァァァ!!!」




三人体制でやってます。

小説 ふぁいと犬 ツイッター   @adainu1
http://mypage.syosetu.com/3821/
「少し忙しい環境になってしまい、毎日更新が難しくなる可能性があります。最悪2,3日内には更新できるようにします!!」


挿絵担当 ルースン@もみあげ姫  @momiagehimee 



曲  黒紫            @kuroyukari0412
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