女子高生と七人のジョーカー   作:ふぁいと犬

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Act.49 ホルンVS ・・・・・ 1⃣

 二人の人影が砂煙を上げて走る。

 

 力強い脚力で人が到底出せない速度で走る大男と、一歩一歩を蹴り上げて飛ぶ様に大男と併走する小柄な少年

 

「なんだってんだよ!! さっきのでっけぇのはよぉ!!!」

 いつにない険しい表情でレオンが吠える。

 遠くからでもその異様な威力は目視出来ていた。

 その方向の先、考えるよりも二人は先に走り出していた。

 

「ユラ!! おいこら! クソ!! 誰でも良い応答しろ‼」

 触れるインカムからは一切の反応は無くホルンは大きな舌打ちをしていた。

 

「師匠! 前見ろ! あれ!!」

 ホルンが視線を上げる。

 

 奥の奥、視線の先。

 どこまでも広がっている筈の砂漠の色が変わっていた。

 茶色から黒へ、大量の蠢く黒へ。

 その一部だけ広がっている大きな砂煙、所々見え隠れする紫と青。

 

 そして手前に砂煙で見づらくなっているシップが薄く見える。

 半分が形を崩し、もげるようなずれ方をしているそれが。

 

 遠目から見ても状況は瞬時に理解出来ていた。

 

「このタイミングでダーカーってタイミング良すぎだろ!!」

 

「……全くだ」

 頷くホルンは何故かレオンよりも一歩前へ先に出る。

 そのままホルンは空中に飛び上がり体を横へと回転させていた。

 遠心力のついたホルンの体はそのままレオンの横っ面に蹴りを食えわえていた。

 

「おぼはぁーー!?」

 奇怪な声をあげながらレオンはそのまま擦り下ろされるように砂漠の海へ飛び込んでいた。

 

 瞬間、丁度レオンがいた場所から砂が巻き上がり巨大な赤い壁

 現れていた。赤黒い触手のような物が纏わりつく壁。

 ホルンはその壁にも見覚えがあった。

 

 ダーカーウォール。

 

 アークスの行く手を阻む強力な分厚い壁。

 ダーカーの攻撃だけを通す絶対的なアークス拒絶の壁。

 突然、まるでレオンとホルンを分けるような現れ方。

 

「偶然にしちゃぁ、出来すぎじゃねーか」

 

「て! てめぇ! このミジンコ何しゃ……うお!! ダーカーウォール!? どういうことだよこれミドリムシ!!」

 赤い壁の向こう側で起き上がるレオンにホルンは一度ため息を零す。

 

「せめて微細胞か単細胞か決めろクソ馬鹿!!」

 

「うるせー!!! 何がどうなってんだよ! こんな壁ぶっ壊してやらァ!!」

 構えようとするレオンを、ホルンは片手で静止する。

 

「馬鹿かお前本当馬鹿か! バーカバーカ!!」

 

「言い過ぎじゃね!?」

 

「態々船側に蹴ってやったんだ!! 急げ! こんなのに時間掛けてる場合じゃねーだろ殺すぞ!!」

 

 一瞬躊躇うも、直ぐにレオンは踵を返す。

 一度も振り返る事もせずに真っ直ぐ走る。

 何処までも真っ直ぐな男。

 

「それでいい」

 人前で出す事の無い柔らかい独り言を零すと、ホルンは見渡す。

 壁は横に長く伸びていた。

 回りこむには時間が掛かる。見上げた先も、視線が続く先まで壁は続いていた。

 どういう構造なのか理解に苦しむが、きっちりと分断されてしまっている。

 

「やはり、時間が掛かるが壊すのが得策か? ……あまりにも用意周到過ぎンな。他に何かありそうだが」

 

「その通りだよ? せーんせ!」

 

 思わず俯いていた表情をあげた。

 目が見開く。

 その声は良く聞いていた声。

 近くで、何度も、何度も。

 

 一瞬、全てを忘れて振り向いてしまう。

 

 

 誰かの真似をしたような白い髪。

 ショートカット。

 169センチ。

 屈託の無い笑顔が特徴。

 ホルンと違い、誰にでも優しい声を掛けられる。

 レオンやリースと同い年。

 エリートとして進める実力を持ちながら、態々ホルンに付いてきた物好き。

 

「シ、ルカ」

 

「せーんせ、久しぶりだね。せーんせ……」

 屈託な笑顔も変わらない。

 白い髪も変わらない。

 胸の部分に不気味輝く目玉のような赤いコアを除けば。

 

「お、前、何で、ど、どうし、て」

 いつもの仏頂面はそこには無い。

 いつもの不機嫌そうな様子はそこには無い。

 

 口の中が乾く。 走馬灯のように続くのはシルカとの思い出。

 どれだけ突き放しても付いて来た彼女との思い出。

 

 

「……せーんせ、大好き。ずっと、ね? 一緒に、久しぶり、せーんせ……せーんせ……」

 空ろな瞳は何処を見ているのか解らない。

 うわ言のように繰り返す言葉に意思疎通が出来るとは思えない。

 それでも、それでもホルンは震える声を向ける。

 

「来るな!! やめろ!! クソ!! クソ!! ふざけんな!! ふざけんなよ!!」

 

 必死なホルンの声が聞こえる様子は無い。

 フラフラと、その歩を進める。

 

 音が聞こえる程に強く歯を食い縛る。

 

「私の……大事な、大事な、あれ? 何が?」

 その場で首を傾げるシルカは笑顔のまま、再びホルンへと顔を向ける。

 

「せんせー、何が、大事?」

 

「シルカ……」

 

 ちきしょう。

 心の中で何度でも悪態を付く。

 何度も、何度でも。

 その中で一つだけ別の感情も動く。

 

 見事だ。

 

 怒りの中で小さく賞賛する。

 これが足止めだとするならば、あまりにも効果的すぎる。

 

 ジョーカー。

 

 最強であり最悪であり災害である化け物集団。

 まともに相対して勝てる存在では無い。

 

 倒す方法。

 エスパーダという無力化専門の部隊。

 その実力すらも掻き消す戦略。作戦。

 そしてジョーカーの唯一の人間性の部分を攻める。

 

 何にしても正攻法で勝てる存在では無い。

 

 何処の誰だか解らないが、それを知っている。

 ジョーカーの事を知っている。

 

「っは、裏切り者がいるってのはマジかよ」

 吐き捨てるように叫ぶと、ホルンの視線は真っ直ぐにシルカを見つめる。

 

「…………ちきしょう」




三人体制でやってます。

小説 ふぁいと犬 ツイッター   @adainu1
http://mypage.syosetu.com/3821/

挿絵担当 ルースン@もみあげ姫  @momiagehimee 

曲  黒紫            @kuroyukari0412
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