女子高生と七人のジョーカー   作:ふぁいと犬

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Act.5 ルーファ

 

 

 

「な、何だ、これ……」

 

 理解が追いついていない驚愕の表情のまま崩れるようにロランはその場にヒザを着いていた。

 

「ロランさんッ!」

 慌ててカナタが駆け寄る。

 装甲を貫いている穴は栓が抜けたように血が噴出す。

 

「や、やだ! どうしよう! どうしよう!」

 うろたえたままカナタはオロオロと辺りを見渡す。

 何が起こったのか解らない。

 周りに何かがあるわけでもない。

 いきなり、ロランの体に穴が空いた。

 カナタは制服のポケットからハンカチを取り出すと、ロランの傷口に当てる。

 血を止める事を先に考えた。

 それぐらいしか、思いつかなかった。

 

「ロ、ロランさん! しっかりして下さい!」

 カナタの必死な声掛けに、脂汗を流しながらロランが引きつった笑みを向ける。

 

「全然余裕だっての! 風通し良くなって気持ち良いわボケナス!」

 

「何バカなこと言ってるんですか!! は、早く何とかしないと!!」

 慌ててるカナタとは別に、ロランは苦痛に表情を歪めるものの、冷静に頭を働かせていた。

 

 全く気配を感じる事が出来なかった。

 何処から攻撃されたか全く解らない。

 撃たれた感じでは無い。

 感覚的には何かに刺された様な感覚。

 

「アァ? 居ねえよわっけ解ンねェ……」

 ロランの視線が辺りを見渡す。

 砂ばかりが舞う中に、妙な物が一瞬目に映る。

 空中で小さなノイズが走った。

 小さなノイズは繰り返し何度か走る。

 

 そのノイズが、徐々に近づいていた。

 必死に目の前でロランの傷口を抑えているカナタの後ろに、ノイズが近づく。

 

「……ッ! どけカナタ!」

 叫ぶと同時にカナタを横に突き飛ばしていた。

 非力なカナタはアッサリと悲鳴を挙げながら宙へと飛ぶ。

 

 空を切る音と共に、カナタが居た場所。

 地面に小さな亀裂が走って居た。

 亀裂と言うより斬ったような後、再びノイズが走る。

 今度は先程よりも大きく。

 ノイズは形を取り、姿を見せ始めていた。

 

 カナタは目を見開く。

 姿を見せたソレは自身よりも、ロランよりも大きい。

 

 3メートルはある黒い体。

 先程のクモ達のような鎧のような甲殻。

 違うのは人の形をしていた。

 二本足で歩き、両の手は巨大な大鎌。その片方の鎌が地面に突き立てられていた。

 カナタが見た事のある印象で一番近いものはカマキリ。

 黒いカマキリはギョロギョロと赤い瞳を動かす。

 

「は、ハァ!? コ、コイツが!? ずっと見えねーなんて聞いた事ねーぞ!!」

 ロランの驚愕の声に反応したのか、巨大なカマキリは再びノイズと共に姿を消した。

 よろめきながらロランが立ち上がる。

 胸から血を流しながら大剣を構える。

 

「や、やべぇ……見えない敵なんてどうすんだよ」

 

 ロランの額から、だらだらと嫌な汗が流れ始めていた。

 

 知っている敵だ。当然何度も倒した事のある敵。

 しかし、『コイツは知らない』。

 強化された存在等、知らない。

 

 視線は横で尻餅を付いたまま震えているカナタへと動く。

 守り様が無い。

 

 困惑しているロランの大剣が横に弾かれる。

 遊ばれたように大剣を弾かれたのだとスグに理解した。

 よろめきながら、慌てて大剣を横に振るう。

 手応えを感じる事も無く大きな空を切る音が響く。

 胸の傷のせいで思うように体が動ききれて居ない。

 

 瞬時にロランは構え直す。

 大剣を頭上に掲げると同時に再び青い光が舞っていた。

 血が噴き出す、しかしその瞳の闘志は消えていない。

 

「見えねえんなら‼ 丸ごとぶっとばしゃーいいんだろうが‼」

 怒りの声を上げながら、青い光が集まる数秒。

 瞬間的に、青い光が更に強く輝いた。

 

 

 

 突然だった。

 

 

 踏み締めていた筈の地面が近づいていた。空が反転する感覚。

 

「あぇ?」

 間抜けな声が漏れる。

 カナタの悲鳴声がロランの耳に響く。

 視界に見える離れ行く下半身。

 そして、逆さまになっている視界は同時に自身の後ろを捉えていた。

 

 一瞬見えるノイズが、丁度巨大な鎌を振り切った化け物を見せる。

 

 頭が真っ白になっていくロランは気づく。

 

 見えない二匹目。

 

 

「イヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」

 叫び声が響く。

 目の前で、胴と下が離れて行く人間を、カナタの人生で見た事がある筈が無い。

 グロテスクな世界が広がる。

 先程まで笑っていた人が。

 先程まで馬鹿していた人が。

 先程まで、守ってくれると言った人が。

 

 血飛沫を挙げて地面に落ちる。

 

「ロランさん!! ロランさん!!」

 震えながら駆け寄るカナタは必死にロランに声をかける。

 

「ガ、あ、カナ、タ、逃げろ。二匹、居る」

 

 口から血を吹き出しながらも、彼はカナタの事を心配していた。

 虚ろな瞳と、カナタの涙で濡れた瞳が交差する。

 

「そんな事!! 出来るわけない!!」

 恐ろしいと感じたのは一瞬、叫び声に硬直したのは一瞬。

 非力な少女はロランの太い腕を掴むと必死に引っ張る。

 ずるずると数センチ。

 

「おま、え」

 

 動いた小さな数センチ場所に、ヒュンッという風を斬る音と共に直線の切り傷が砂漠に刻まれていた。

 

 それはまだそこにいる。

 

「ヒィィ!!」

 悲鳴を上げるも、カナタの手はロランの腕から離れない。

 歯をガチガチと鳴らしながらも全力で引っ張る。

 

「見捨てるもんか! 見捨てるもんか!!」

 彼女は逃げない。

 策なんてあるわけじゃない、そうしたいから、そうする。

 恐怖とは別の信念がそうさせる。

 優しい優しい少女は逃げない。

 

 ずるずると引っ張られながら、虚ろな瞳はカナタを見上げる。

 その姿は、信念のままに行動するその姿は、ロランは、良く知っている人物と似ていた。

 

「なぁんだぁ……お前……ルーファにそっくりじゃねーか」

 

 零れる声は必死なカナタには聞こえるわけが無い。

 代わりに答えるのは二つの不気味な鳴き声。

 気味の悪い羽音のような声。

 

 

「こーんーにーちーはっ」

 

 

 そして、空から降る声。

 

 

 間延びした声。

 状況には不釣合いな高い声。

 無意識にカナタは声の先を見上げる。

 風に舞う緩やかな長い黒髪。

 

 白い肌。

 

 綺麗に整った顔立ちには少し不釣り合いに感じるような白いリボンが同じく黒髪と靡く。

 空の太陽を背にする彼女の表情は良くは見えていない。

 

 ただ一つ見える瞳は感情の籠らない瞳。

 彼女とカナタの瞳と絡み合う。

 

 涙で顔を染めるカナタとは正反対の、色の無い瞳と絡み合う。

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 




三人体制でやってます。

小説 ふぁいと犬 ツイッター   @adainu1

「やめたげてよぉ!」
http://mypage.syosetu.com/3821/


挿絵担当 ルースン@もみあげ姫  @momiagehimee 

「ローランwwwwwローランwwwwww
ドッコイショーwwwwドッコイショーwwwwwwwwwww」


曲  黒紫            @kuroyukari0412

「斬鉄剣!!」
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