女子高生と七人のジョーカー   作:ふぁいと犬

9 / 91
「……首が飛んだくらいで気絶するだなんて、一体何処のお嬢様でしょう」
 小さくそう零した後、目を細め周りを見渡していた。

 その瞳に合わせるように、再び冷たい空気が流れる。

 黒い霧が周りに舞い出していた。
 数体では終わらない。
 数十という黒いダーカーが形を象っていく。
 虫の形をした様々なダーカー達は、ルーファ達を取り囲むように蠢く。
 その中には先程倒した人型のカマキリのような物も存在していた。
 虫達は、殺意を込めた赤黒い目をギラつかせ、鋭い爪をルーファ達に向ける。

 不気味なその光景を前に、ルーファは眉一つ動かす様子は無い。

「あの姿を消すダーカー……仲間を呼んでたわけですか」
 一人でうんうんと納得するように頷いている姿は状況には妙に不釣合いに映っていた。
 ダーカー達はルーファに向けて一斉に飛び掛る。

 一瞬のスロー。
 ルーファがゆっくりと姿勢を低くするのと同時。

 その細く白い指先が柄に触れた瞬間。

 空気を切り裂く音だけが辺りに響いていた。

 合わせる様に、ダーカー達の体が細切れへと変わっていく。
 彼女の異常な速さが成せる技は、刀の刀身すら見せる事をしなかった。

 先程戦っていた時とは、また違う色の灯らない瞳。
 それは彼女が知っている虫達ばかりでしか無く、彼女の興味に繋がる筈も無かった。
 
 風が舞うと共に、欠片が宙に舞う。
 同時に黒い霧へと変わっていき消えて行く。
 再び、何事も無かったように砂漠だけが広がる。

「つまらない……」
 落胆の声を零す。
 倒れたカナタや死体に見向きもせず彼女は背を向ける。
 何事も無かったかのように歩き出す彼女は、数歩進んた所で「あ」と、小さく声を零す。

 彼女の脳裏にロランの言葉が浮かぶ。

『この子……保護して、くれ』

 顔だけを振り返らせ、数メートル先で倒れているカナタに視線を向ける。
 カナタの直ぐ近くで首の無い死体の方にも目が動く。
 細まる瞳が、数秒見つめる。
 長い黒髪を揺らしながら彼女は踵を返す。

「最初で最後ですよ」
 溜息混じりに零す言葉は舞う砂と共に風の中へと消えて行く。 


Act.8  ジョーカー《負の遺産》

 アークス達が最も撃退を目的とする、ダークファルスと呼ばれるダーカーを使役する巨悪の権化。

 

 

 

 ルーサー。

 

 

 

 ダークファルスが1人。

 

 

 

 

 

 敵対する筈のアークスに紛れ込み、ダークファルスにして人類の絶対的権力者として君臨していた。

 

 非人道な実験がルーサーにより秘密裏に繰り返され。

 

 人が。

 

 生物が。

 

 星が。

 

 多くのものが犠牲になっていた。

 

 そこに住む人達は、気づくこともなく、ゆっくりと破滅の道を辿っていた。

 

 そんな中、勇気ある者達が行動を示した。

 ルーサーの正体を見破り、そこに住む者たちの目を覚まさせた。

 正体を表したルーサーは、ダークファルスルーサー《敗者》としてシップ毎、全てを破壊しようとする。

 

 勇敢なアークス達は、力を合わせ、見事ルーサーを討ち取る事に成功する。

 

 ルーサー亡き後に、新たな平和が訪れていた。

 

 しかし。

 

 ルーサーが消え去ろうと数多くの実験が無かった事になる訳ではない。

 実験により生み出された、負の存在と言われた者達。

 

 一人一人が意思を持ち、巨大な力を持つ彼ら、彼女らは、新たな驚異として警戒される事になる。

 

 ルーサー討伐の際にも大きな力となり、他にも様々な危険な任務をこなしてきた彼等彼女等の実質的な貢献は大きく。

 

 そんな彼等、彼女等を無下に扱う事も出来ず、強過ぎる力に扱いあぐねていた。

 

 同じアークスであって、同じアークスでは無い。

 

 畏怖の存在として、差別の対象として。

 

 彼等、彼女等は。

 

 こう呼ばれる。

 

 

 ジョーカー《負の遺産》

 

 

 これは。

 

 ダークファルスルーサーが討伐されてから半年後の話。

 

 ルーサーの脅威は。

 

 まだ終わっていない。

 

 

 

--------------------------------------

 

 

 

 

「また、訳のわからないものを拾って来たな」

大きな楕円状の机。

 

 会議室を思わせる広い部屋、照らす上からの弱いライトが二人を照らす。

 

机を挟み相対している相手に、ルーファは視線を送る。

薄紫の長い髪が揺れる。

 髪の色より濃い青紫な瞳を眠たげに擦っていた。

 

 現在の時刻は、監視のアークスを除けば殆ど眠りについている時間だ。

大人びた女性は、呆れと焦燥の感じる瞳を向ける。

本人にその気はないが、その動作だけでも艶やかに見える美しい女性。

 そんな女性に、ルーファはつまらなさそうな瞳を向ける。

 その瞳に対し、女性は疲れたようなため息で返す。

 

「あんまりため息零すとシワが増えますよユラ」

 ルーファの言葉に、ユラと呼ばれた女性は怒りを向ける事もなく淡々と返す

 

「私を挑発して来る馬鹿者はお前ぐらいだルーファ」

 ゆっくりと立ち上がる。

 スラリと伸びた足、美しい曲線美を見せる綺麗な女性。

 ルーファとの並行していた視線は見る見ると上がっていく。

 2メートル強はある身長が、ルーファの肌を震わせる。

 

「ひねり潰すぞ小娘……」                 

 ドスの効いた低い声はルーファの心を揺らす。

 その威圧感を楽しむようにルーファ色の籠らない瞳が光る。

 重力を感じるような重苦しい殺意を放つユラに対し、ルーファの周りの空気も揺れる。

 ユラの殺意に対し、ルーファが放つ殺気は刃物を突き付けるような危なげな空気を漂わせる。

 

 不穏な空気が、会議室に立ち込めていた。

 

 暫くの無言の後、ユラが小さな溜息を零してみせた。

 

「さて、冗談はこの変にして、報告を」

 先程まで漂っていた重苦しい空気はあっさりと消え去る。

 ユラはどっかりと再び席に着くと、めんどくさそうに欠伸をして見せる。

 

「座標はシップから数時間先の所……未発見のダーカーを確認。姿を消すダーカー、ロランを失うも撃退」

 

 ユラは小さく「……そうか」と、声を零す。

 その声に少し暗がりが掛かる。

 

 

「ロランはいい奴だったんだがな」

 

 

「五月蝿いのが減っただけな気もしますけどね」

 

 

「……すまん、話が逸れたな。して、姿を消すダーカーとは?」

 

 

「見た目はプレディカーダ、姿の消し方はウォパルの惑星で見た事がありますね」

 

 

「ダーカーと別の星を組み合わせた例は既にこの星に来てから幾つか見ている」

 

 

「まぁ一番の情報は、これですけどネ」

 そう言うとルーファの手に持たれた黒い袋が長机の上に乗せられた。

 重苦しいゴトリと言う音の後、袋が開く。

 

「………」

 目の前に現れたものは、ユラもよく知っている物、いや者が居た。

 そこにロランの首が転がっていた。

 顔の半分は黒いダーカーへと変貌した姿のまま。

 それを見たユラの瞳は一瞬だけ強い光を見せる。

 しかしそれは一瞬に過ぎず、直ぐに冷たい視線へと変わる。

 

「ダーカーに侵食されているのか……いや同化していると言っても過言ではないな」

「唯一侵食を受けずにダーカーと戦えるのが私達の筈なのですがね」

 

「やはり、この星は何処か変だな……ご苦労だった。その首は……研究材料としてヴォイド《研究機関》の二人に渡しておいてくれ」

 

「……ええ」

 無表情のまま、ルーファは首を丁寧に布で隠す。

 

「さて、もう一人の件だが……」

 

「ああ……あの子供。私が来た時にはロランが保護していたようですし、どういう状況でこんな星のど真ん中に居たのかは謎です」

 

『子供』という言い方に「お前も同い年ぐらいでは無いか」とユラは小さく苦笑する。

 気にする素振りを見せない彼女にユラはそのまま続ける。

 

「あの者に関して検索を掛けても存在が出ない、つまりは我々側の人間ではないだろう……しかし、そういった人間の前例が無いわけではない、様子を見よう」

 以前にそういった女性が居たのをユラは知っている。

 そしてその者がルーサーとの戦いの際に、大きなキーパーソンになった事も。

 

「大丈夫ですよ……妙な動きがあれば私が殺す」

 そう言いながら、ルーファは細い指を自分の首元で斬るようなジェスチャーをして見せる。

 赤い瞳が残酷に光る。頼もしさと奇妙さを持つ彼女をユラは冷たい瞳で見つめる。

 

「……ご苦労だったな、ゆっくり休んでくれ」

 

「おやすみユラ」と、簡単に言うとロランだった物を袋に戻す。

 それを手に持ち、別手でヒラヒラと手を仰ぎながら部屋を出る。

 

 取り残された部屋で、ユラは小さく溜息を零す。

 

 

 

「……仲間が死ぬというのは、慣れないものだな」

 

 大きな、大きな溜息が零れる。

 零す声は誰に言うでも無く、最高責任者の女性は、項垂れる。




三人体制でやってます。

小説 ふぁいと犬 ツイッター   @adainu1

「PSO2を知らないとダークファルスという単語はピンと来ないかもしれない!ぶっちゃけラスボスポジみたいな奴だよ! なんかそんなのがいっぱいいるよ!ちなみに挿絵担当の方が書いてくれました。今回の紫髪の女性はこんな感じです。
【挿絵表示】

http://mypage.syosetu.com/3821/


挿絵担当 ルースン@もみあげ姫  @momiagehimee 

「フンバルト・ヘーデルって有名作曲者みたいな名前だけど
踏ん張ると屁ー出る人なんやな。」


曲  黒紫            @kuroyukari0412

「それでは湯葉と10回言ってみよう!!ゆばゆばゆばゆばゆばゆばゆばゆばゆばゆば
今回出てきた新キャラは?
ゆば!!!
-その後彼の行方を知るものは、誰もいなかった」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。