アインズ・ウール・ゴウンにおける階層守護者および領域守護者、全統括。
俺が、この世で警戒している奴ランキング常に上位キープのサゲマンである。
何せ、この世界に転移して来た直後、コイツに襲われているのだ。暴行(物理)である。警戒しない訳がない。
無用な軋轢は望む所では無いのでアインズさんには、あえて報告していないが、アルベドは“身内”だと直々に伝えられた筈の俺に対して、闇討ちを仕掛けて来やがった。とんでもない忠臣である。
ー7つだけ言う事を聞け、もしそれができないなら…
1)「モモンガ様だけ…」だと、今、誓え。
2)罪を感じて懺悔をしろ
3)蹴られても抵抗するな。
4)泣いて許しを乞え。
5)そして、言い訳をしろ。
6)次は、いつもの様に甘えてみて
7)それができないのなら、
ここで、今、死んでみせてくれないかしら…。
などと、謳いながら、メンヘラフルスロットルで襲い掛かってきた。<真なる無>を含む完全武装状態であった事から、その本気度は推して知るべし。
そんな苦々しいVSアルベドの結果を言うと、試合に勝って勝負に大敗した。
戦闘自体は、所詮NPC。プレイヤーたる俺の課金力を思い知るが良い的な感じで返り討ちにしてやった。
ビルド相性の関係上、元々が有利な事も手伝って楽勝であった。襲ってきたのがセバスで無くて良かった。もっと言えばコキュートスやマーレも御遠慮願いたい。
まあ、その割に色々と湯水の如く消費した気もするが、課金アイテムなら最終日のヤケクソキャンペーンでお買い物した分がいっぱいある。命あっての物種と言うし、それ自体は良いのだ。
問題はその後。しめやかに行われた“停戦協定”で死ぬ程、搾り取られた。戦に勝利した筈の俺が何に対して“賠償”する必要があったのか……コレガワカラナイ。
アルベドに奪われたアイテムの数々。特に<真・遠隔視の鏡>なんてナニに使ってるんですかねぇ……
対して、俺が得たものと言えば…
ー守護者統括の責任に於いてナザリック内の全ての下僕にデプレジオン様の身分を通達し、我々はデプレジオン様をアインズ様に次ぐ支配者として迎い入れるー
と言うものだった。
だが…先述の通りシャルティアの一件が片付くまで、ほとんどの部下たちが“距離”を取っている様に感じられたし、結局、一番の危険人物が守護者統括だったのだから、実質、何もして貰ってないも同然である。
寧ろ、怖いからもう何もして欲しくない。なるべく関わりあいになりたく無い。
だが……奴は来てしまった…
「アインズ様の身の安全は全てに優先する」
腰から生える黒翼を広げ、おぞましい殺気を放つ守護者統括。…やっぱりな。もうやだコイツ。
「モモン様は本当に恐ろしいお方。普通なら自分が有利なままで戦闘を進め勝利するのが鉄則。それなのに、わざとこうやって私の力を引き上げて不利に追い込まれた自分を楽しんでる」
金色に輝くクレマンティーヌは凄まじいパワーを発揮し、あろう事か力づくでモモンさんを退けている。火事場+2かな?
「フハハハハ。何度も言ってるだろう。私はただ正直に闘いたいだけだ。それで負けたらそれまでの男だったということ。だからお前も最大にパワーが高まるまで…力尽きるんじゃないぞ〜〜〜〜!」
真正面から迎え討つモモンさん。何キャラだよ…少なくとも戦士の真似事をしている魔法詠唱者が発して良い台詞ではない。
「ちょっと待ちなんし。いくら、おんしと言えど、アインズ様の邪魔立ては見過ごせないでありんす。妾の目が黒い内は、何人たりとも横槍は入れさせないでありんすよ!!」
「ふぅん。シャルティアはそうなのね。アウラとマーレも同じ意見なのかしら」
「シャルティアと同じって言われるのは何か癪だけど、今回はアルベドに賛成って訳にはいかないかな〜」
「あ、あの…こんな時に守護者同士で争うのが、一番いけないんじゃ無いかって…僕は思います」
「ダメージの多寡なんて、問題じゃあないのよ。愛しいアインズ様の脅威になる存在なんて、その可能性すら容認出来ないわ。考えただけで虫酸が走る。守護者たるもの、いえ、私だけでもアインズ様をお守りするのが使命。その結果としてアインズ様の不興を買おうとも、主人の気持ちを汲めない愚か者の謗りを受けようとも、私自身が見限られる事になろうとも、このナザリックが滅びようとも、私は甘んじてそれを受け入れるわ。アインズ様の身の安全は全てに優先する、とはそういう事よ」
長っ!そして怖っ!!ーデプレジを愛しているーに設定されなくて本当に良かった。アインズさんマジドンマイ。
「アルベド……そこまでの覚悟でありんしたか……」
あ、これは俺が何とかしなきゃクレマンティーヌの命は無いパターンだな。おいおい、俺の部下に危害は加えないって約束だったじゃないか……
あいつ4回しか死ねないんだぞ…絶対、反故にする気だ、このメンヘラビッチ。
「なるほど。アルベド、お前の決意は良く分かった。アインズさんもきっと喜ぶ事だろうよ。だが、主人のペットに対してもっと寛大な気持ちを持たなくてはな。ん?まさか嫉妬か?存外、お前も可愛い所があるものだな」
「光栄ですわ。けれど、デプレジオン様は何か誤解なさっているご様子」
「ほう、誤解とは?」
「ええ、誤解で御座います。僭越ながら、デプレジオン様は、私があの愛玩動物に躾でもするのでは…とお考えなのでは?」
躾てお前……明らかにそれ以上の事をする気だろ。贔屓目に見ても、それが虐待の範疇に収まれば御の字って感じだったわ。
「そろそろ決着といこうかーーっ!フハハハハーーッ!くらえーーッダークウォーリアー奥義!モモンズ・グレート・テンペストーーーーッ!」
モモンさんは二対のグレートソードを頭上に掲げ、平行に旋回させた。アレはモモンコプターかな?
結局、力にモノを言わせ振り回しているだけである。酷い奥義があったものだ。
が、あんなんでも人の身で受ければ木っ端微塵になること請け合いである。危うし、クレマンティーヌ。
「ウォア〜〜ッ」
なんとーっ。クレマンティーヌ、自らモモンコプターに突っ込んでいく。
グワガァン
あーーーっと。しかしクレマンティーヌあっさりとはじかれたーーっ!なんとか肉体破壊から逃げることは出来たが、威力はモモンコプターが遥かに上だーーーっ!
アルベドとの問答を一時中断し、試合の観戦に意識を集中する。クライマックスであり見所である為、仕方がない。
決して、アルベドへの返答に困って、心の実況に現実逃避している訳ではない。決して。
「直撃は免れたか!?だが偶然は二度は続かぬぞーーーっ!」
錐揉みしながら上空高くに打ち上げられるクレマンティーヌ。あの高さだと、落下死するんじゃ無かろうか………
「これは偶然じゃない。全て計算のうちなんだよーーっ!今からクレマンティーヌ様のとっておきをお見舞いして、いや、差し上げてやるんだよ〜〜」
化の皮が剥がれ、元の口調がチラ見するクレマンティーヌ。あ〜もう無茶苦茶だよ。こっちの事情も考えろよ、あのバカ……
統括様が御立腹でいらっしゃるよ。見ろよ、見ろよ、この怖〜い表情を。こんなんじゃ美人が台無しだよ。
「望むところよ。全力で嘘偽りなくかかってくるがいいーーっ!」
「ふふふふふ。あの可愛らしい猫ちゃんの爪も牙も、アインズ様には届きませんわ。なので、私が特に思うところも御座いません。重ねて申し上げます。全て誤解で御座います、デプレジオン様」
クレマンティーヌの落下スピードがどんどん増していく。<レッドブルック>の火力を限界まで引き出してているのだろう。真っ赤なその姿はまるで<神殺しの槍>の様。
「新武技<風林火山>!!」
お、モモンコプターより格好良いぞ。風と火はともかく、林と山要素がどこにあるのかが、さっぱり分からないが格好良い。
「さあ、最高の力でかかって来るがよいーーーーっ!」
「これが人間の……嘘偽りない全力だあぁーーっ!」
ボンッ
二人の全力が交差する。その直前、クレマンティーヌの肢体が弾け飛び…砕け散った。肉の押し花と化した物体が真下のモモンさんに血のシャワーを容赦無く浴びせる。
ホッホッホ。御覧なさいアルベドさん、シャルティアさん、あんなに綺麗な花火ですよ。…何だコレ……マジかよ。
「つまりはこう言う事ですわ。あの猫ちゃんは余程、デプレジオン様に懐いていたご様子」
「……アルベド、説明しろ」
自分でも驚く程、敵意に満ちた冷たく低い声が漏れた。形容しがたい感情が生まれた。
ただ、そんな感情も次のアルベドの言葉で霧散する。
「…仰せのままに。あの者が使用していたスキル、いえ武技と言うのでしょうか?あれはデプレジオン様のスキル<マナウォール>の模倣で御座いましょう」
「あの最後の……が、か?」
「いいえ、彼女が途中から使っていた武技で御座います。何やら発光しておりました、あれは本来受ける筈のダメージを先送りにして誤魔化していた様子。デプレジオン様の模倣と言うのもおこがましいレベル」
「………。」
「…では御座いますが、原理が全く異なるので御座いましょう。デプレジオン様のスキルには無い特性もある様で御座いました」
「特性だと?」
「はい。武技を使用していた間は少々、力が増大していた様子で御座いました。」
なるほど。要するに先送りにしていたダメージが、一気に反動として襲いかかってきた訳か。そりゃ、ああも無惨な姿に変わり果てるわな……
もし仮に<マナウォール>で相殺したダメージが一気に生身に降りかかって来たとしたら……想像するだに恐ろしい。背筋が凍る思いだ。冗談抜きで死ぬ。
「なるほど、随分と思い切った技だな。とても真似は出来ん」
「左様で御座いますね。至高なる方には相応しくない欠陥だらけの技能では御座いますが……消耗品たる下等生物にしては上出来かと」
次の瞬間。クレマンティーヌだったモノが優しい淡い光を放ち、元の整った姿を取り戻した。
<コンテニューリボーン>
過疎に焦る運営が用意した新規獲得用の育成アイテムであるが、今はこうしてクレマンティーヌを縛るのに活躍している。
クレマンティーヌには“残機追加”に加えて“自殺”を禁じてある。その状態で死ぬまで隷属する事を魂に誓わせた。
そう、彼女を消耗品扱いしているのは、紛れもなく俺自身なのだ。そんな俺が、アルベドに対してこれ以上怒りを覚えるのは我儘と言うものだろう。
「一歩。いえ、数億歩届きませんでした。モモン様、非力な私をお許し下さい」
「フハハハハ。何を言う。私の記憶に名を刻んだ人間はお前が初めてだ。光栄に思うがよい」
結局、アインズさんは英雄モモンをどう言う人物にする気なんだ?どう言う立ち位置のキャラなんだよ……
そうして、クレマンティーヌは起き上がり、モモンさんとガッチリと握手を交わした。死闘の終幕である。
「で、アルベド。アンタは別にあの人間をどうこうするつもりは無いって訳ね」
「ええ。あり得ないわ、そんな事。彼女は立派にナザリックに貢献したのだから。如何に下等生物とは言え、ナザリックに益をもたらす存在には慈悲を。これはアインズ様も同じお考えの筈よ」
慈悲(即死)じゃないだろうな…こう言う事に関しては、アインズさんも油断ならない。
「確かに、アインズ様の練習相手としては申し分なかったよね。…シャルティア。人間だって、そこそこやるでしょ?認識は改めた?」
「そうでありんすなぁ、強さの尺度で言えば3㎝はありんした。かような機会を設けて頂いた事、誠に感謝致しんす」
「あ、ああ。励めよシャルティア」
「はいでありんすっ」
「ふふふ、デプレジオン様は相変わらず謙虚でいらっしゃるのね」
「なにがだ?アルベド」
「デプレジオン様の御手腕、誠に感服致しました。と、同時に至らぬ我が身を非常に恥じております」
言うが否や、足元に跪くアルベド。なんのこっちゃさっぱり分からない俺は面喰らった。
「私が、此方に馳せ参じたのは、デプレジオン様にお詫びする為…誠に申し訳御座いませんでした」
なんなんだよもう……コイツ。息を吐くように嘘ついてんじゃねーよ。いつも通り、鏡越しに覗き見してたら、我慢出来なくなって転移して来ただけだろうが。
「あの…何の話でありんすか?いい加減、外野を無視するのは止めなんし」
そう、そうなんだよシャルティア。俺だってそんな風に聞き返したい。けど、いつの間にか、何でも知ってて当然みたいな扱いにされてて聞くに聞けなかったんだ。ああ、あの時、お前を助けて本当に良かった。ありがとうシャルティア。生きててくれて。
「デプレジオン様は私たちが見落としていた部分を、あの女を使う事でフォローして下さっていたのよ」
あ、またこのパターンか。良いよ来いよ。今回はどんな超理論で攻めてくるのか逆に楽しみになってきたわ。
「つ、つまりどういう事でありんす?」
「シャルティア、貴女は今のアインズ様のお姿を見て、何か感じる事は無いかしら?」
「う〜ん……いつも通り、凛々しいお姿でありんすが?」
「ちょっと、聞き方が悪かったかしらね…じゃあ、こう考えてみて。貴女はアインズ様が戦う姿を直接見ていない。その状態で、あのアインズ様のお姿を初めて見たとしたら?」
「!?」
「どうかしら?アインズ様をあんな痛ましいお姿にした存在を許す事が出来る?」
「ぜ、絶対に許せないでありんす。地獄の果てまで追い詰めて…それはもうぐっちょんぐっちょんの刑にしてやるでありんす」
「八つ裂きだよね」
「持ち運びしやすくして恐怖公さんのトコへ持って行く…かな」
改めてひでぇよコイツら。マジで。
「そういう事よ。昨夜、アインズ様は英雄モモンとして、百のモンスターの群勢を相手に街を守り切った訳だけど……それだけじゃあドラマが足りないのよ。簡単に街を守った英雄と、その身を犠牲に街を守り抜いた英雄では、愚かな下等生物共の感じ方が変わってくるわ。少なくとも、アインズ様はそうお考えの筈よ。その証拠に、御自身の魔力で簡単に生み出せるにも関わらず、わざわざ鍛冶長に依頼した鎧をお召しになっている」
ふんふん。それで?それで?
「けど、苦戦しようにもアインズ様があんな一山いくらの有象無象に苦戦出来る筈が無い。そこでデプレジオン様は、アインズ様に必要最小限の傷を負わす事が出来るレベルまで育てた人間に武器をお与えになり……後は皆の知る通りね。実際、英雄の全身鎧に刻まれた苦戦の傷跡は芸術と呼んでも差し支えのないクオリティだわ。あの鎧を見れば、どんなに想像力のない人間であっても、壮絶な英雄の死闘を想い描くわ。それが、ひいてはモモン様、やがてはアインズ様の名声となるのよ」
おう、そうだな。
「くっ。そうだったんでありんすか…そうと知っていれば妾は…」
「知っていれば…どうしていたのかしら?」
「決まっていんす。厳選した人形に鎧を着せて、私自身の爪で最高傑作を仕立て上げたでありんすよ!!」
そうと知っていれば、そんな呪われそうな全身鎧は頼まれても着ないだろうな。アインズさんも気の毒に。
「私も似た様な事をしていたでしょうね。でも結局、私たちは誰一人として、アインズ様のご期待に添える事は出来なかった…これじゃあ臣下失格と言われても、申し開きの仕様も無いわ」
『ッ…』
「重ねて申し上げます、デプレジオン様。この度は至らぬ我が身を救って頂き、感謝に堪えません」
なるほど、今回はこう言う路線だったか。どんな狂った思考回路してたら、こんな攻めた発想になるのだろうか……
アルベド以外の3人もいつの間にか平伏していたが…もう見なかった事にした。今日はもう、はやくお家に帰りたい。またコレかぁ…いつもこうだよ。疲れるなぁ
-その後、
「ひっぐ……うぇええ………ひっ……ひぅ…」
「おーよしよしよし。クレマンティーヌは強い子だぁ〜<ディスペル>痛いの痛いの飛んでいけ〜<キュアレイション>」
クレマンティーヌは半狂乱状態でガチ泣きしていた。ちっ、これバッドステータスじゃねぇのかよ……もういい加減、泣き止めよ。
「その…なんと言うか……すまなかった」
せっかく、良い感じで終わってたのに…空気を読まない英雄様は延長戦を申し込んだ。
-ポーションデスマッチ-
モモンさんが提案した特別ルール。
ポーションプールに足場を浮かべた特設リングでの戦闘。人間であるクレマンティーヌはリング外に転落すれば回復するし、アンデッドたるモモンさんはダメージを受けるハンディキャップ戦。
本来なら破格の条件だったのだが、あろう事か英雄様はスキル解禁に加え<完璧なる戦士>まで発動された。レベル100戦士の力を惜しみなく披露なさったのである。
ポーションプールのおかげで死ぬ事すら出来ないクレマンティーヌにとっては、生き地獄以外の何物でも無い。かつての“ナインズ・オウン・ゴール”が敵としていた悪質な初心者PKの姿がそこにはあった。なんて酷い事をしてくれるのだ……
「どう責任を取って頂けるんですかねぇ?」
この時ばかりは流石の俺もジト目で睨んだ。
「許してくれ。なんでも…はしないが、可能な限り望みを叶えよう。今回の礼と詫びを兼ねてな。故に、多少の高望みはしても構わんぞ」
涙とポーションでズブズブのクレマンティーヌは答えない。無言で俺の胸に顔を埋め、震えている。可哀想に。
位置関係上、彼女の胸が俺の下腹部に当たっているのだが……全身ポーション塗れのクレマンティーヌボディは何だかヌルヌルして気持ちが良い。
ポーションマットヘルス、そう言うのもあるのか……国営の“新事業”としてひとつ、真剣に考えてみるものアリだな。何せ、財政再建が急務だしなぁ…あの不良債権王国は。
「だ、そうだぞクレマンティーヌ。何か適当にお願いしとけ」
「…ごろじてぐだざい…もぅラグにぢでェ」
「……ク、クレマンティーヌはまだ少し混乱している様だな……うむ、ではこの件は一旦保留とし後日としよう」
「あぁ、モモンさん。明日は王都へお越し頂く予定だったと思いますが、その鎧を着て来て下さいね」
「ん、何故だ?見ての通りボロボロなのだが……」
「その方が、昨夜の激闘にリアリティが増すでしょう、とアルベドが申しておりました」
さり気なく、アルベドに押し付け…いや、返しておいた。
「ほう、流石はアルベドだ。気が利くな。では、そうするとしよう」
アルベド以下、守護者達は、もうこの場には居ない。それぞれ自分の持ち場へ帰って行った。名残惜しそうにしていたが、流石にこれ以上、私事で仕事に穴をあける訳には行かないらしい。
立派な社畜根性である。と、いうかシャルティアは謹慎中とか言って無かったか?何の仕事があると言うのだろう……
「我々も解散としよう。クレマンティーヌよ、大義であった。褒美の件はデプレジオンに伝えておいてくれれば良い、追って沙汰を出そう。ではさらばだ…」
-そして、誰も居なくなった。おいおい、どうすんだよコレ。
「さあ、俺たちも帰るぞ。お疲れ様。てか、もう泣き止め」
明日からは、またあのクソッタレな王国を立て直す日々が始まるよ。俺の仕事だって、決して楽では無いのだ。早く帰って休まないと身体に障る。
もう全部破壊して、一旦更地に戻して違う国を興した方が早い気がしてならない。と、言うか最悪、その路線で進行しよう。
こんな事なら、最初から引き受けるんじゃなかったな……全部、あの女が悪い。アイツにハメられた様なモノだ……
俺が、この世で警戒してる奴ランキング常に上位キープの化物。下ネタみたいな二つ名を持つ姫君の…嫌らしい笑みが、脳裏に浮かんだ。
俺は、よくよく女性に毟られる宿命にあるらしい。あぁ、こんな宿命は“笏”で切断してしまいたい。
「ご褒美貰えるなら……今日は一緒に寝て欲しい……ナンデモして良いから」
「は?」
「お願い。怖くて、独りじゃ…眠れない…悪魔が夢に出て来そう」
「おう、ナニもしなくて良いなら考えてやるよ。どうしても、怖くて寝れないと言うなら…まあ、手ぐらいは繋いでやろう」
「ありがと…ご主人様…」
余程、ショックだったのだろう。キャラ崩壊と言うか…人格が変わってしまってるじゃないか…お前はクレマンティーヌ?
何だかやたらと汐らしくなってるが、コレ明日からちゃんと仕事出来るんだろうな……?
あと、安請け合いしてしまったが、冷静に考えると気恥ずかしいぞ…コレ。
何か適当に身代わり立てるか?<ニモロイド>のパーツがまだ幾つかあった筈だ…組み立てとくか…?
いや、止めとくか。何かの間違いで部屋を爆破されても困るしな。頑張って働いた部下を多少、労っても罰は当たるまい。
勿論、こんな事を仕出かした張本人には罰を当てるが。“慈悲深き純白の色情魔”でも寝室に、放っておこう。
「では、帰るぞ。ベッドメイキングしないとな」
とりあえず、ベッドの脇に<完全なる狂騒>を仕掛けるのは確定として…避妊具は、無くて良いな。どうせ無くなってんだから。後は、アルベドに早めに仕事を切り上げる様に伝えて……その後は……
こうして、俺の貴重な休日は消費されていったのだった。