帝国の宣言から半月ほど経過した、ある日の事。
「……それで、君たち何やってんの?他人の部屋で」
しばらくサボっていたツケをようやく清算し、明日からは少し楽が出来るぞ〜と、ウキウキ気分で宮廷内の私室にスキップで戻った俺に対して、あまりな仕打ちでは無かろうか。こちとら徹夜明けやぞ……
「お待ちしておりました、デプレジオン様。此方は準備万端、整っております。いつでも出陣の御命令を」
なるほど…サプライズパーティーでは無いようだ。俺の誕生日でも、何かの記念日でも無いしな。
で、あれば…魔法部隊長、傭兵部隊長、戦士長、王女様、侯爵殿、専属秘書官が雁首揃えて何の用だと言うのか……まあ、大体察しは付くが……正直、関わり合いたくない。
「カジット殿。方針も何も定まっていない段階で出陣とは…些か性急では無いか?慎重な貴方らしくも無い」
「いやいやいや、もう半月だよー?宣戦布告されてから。カジッちゃんはともかくとして、気のながーい事で有名な私でさえ辟易しちゃうよー。方針なんて、スッと行ってドスッで良いじゃん」
「クレマンティーヌ殿……真面目に話し合う気は無いのか?」
「無理を言いなさるなストロノーフ殿、こやつは真面目に不真面目が信条なのじゃよ。…困った事にの。それに、クレマンティーヌの言う通り、既に半月が経過しておるのに何も進んでおらぬのは、慎重では無く愚鈍と言う。もはや、軍を動かすのに邪魔者などおらぬだろう?侯は何をしておったんじゃ?」
カジットよ…そう言ってやるな。邪魔者が居ようが居なかろうが、民を徴兵して纏め上げる事がどれだけ大変か……俺には分かるぞレェブン侯。俺だってようやく貯めてた書類整理に一区切りついた身。その作業の辛さは凄く良く分かる。
そもそも、帝国相手に戦争をするのに王国民からの徴兵など全く必要ないのだが、俺たちだけが参戦すると、悪目立ちする事この上ない。
故に、レェブン侯に一般王国民を幾らか徴兵して貰って誤魔化す事にした。帝国に放った“斥候”曰く、寝てても勝てそうな戦力差らしいが…まあ、木を隠す森として1万人位は欲しいところである。
が、レェブン侯の様子を見ると徴兵は難航している様子……無理もない。民草から見れば『死んで来い』と、言われているのと同義である。そんな募集に乗るやつなど居る筈も無い。
「こら、勝手に話を進めてるんじゃないよ。何故に私の部屋で会議を始めてるのだ?会議用の部屋があるだろう?其処でやりなさい其処で」
「申し訳ありません、デプレジオン様。その理由については、私が説明をさせていただきますわ」
「……伺いましょう」
「簡単な事です。この宮殿内…いえ王国内で一番、情報の漏れる心配が無いのがデプレジオン様のお部屋だからですわ。大事なお話ですから」
なるほど…貴様が主犯かラナー王女。やっぱり俺は貴様が嫌いだ。大っ嫌いだ。
「カジット様とクレマンティーヌ様のおっしゃる様に、このまま後手に回るのは得策では無いと思います。本来ならば国王である父がタクトを振るべきなのでしょう…ですが、皆様ご存知の様に…父はこの頃、“体調”がおもわしくありません」
国の行く末を憂う、美しいお姫様(迫真)である。“黄金”の名に恥じぬ女優っぷりだ。いや、イヤラシイ意味では無くて。
「ラナー様……」
おいそこのオッサン。そんな簡単に騙されてるんじゃあないよ…相変わらずのフシアナアイだなストロノーフ君は……
「もう長くはないかも知れません……苦労ばかりだった父の人生の最後くらいは……娘として花を添えてあげたいのです。父に代わって全軍の指揮をお任せ出来るのは…デプレジオン様しかおりません。引き受けては頂けませんか?」
親不孝者ランキング殿堂入りの悪童が何か言ってる…
「いや、“新参者”の私が指揮など取れる筈がない。ここは、古参のレェブン侯か…
「デプレジオン殿!!俺も殿下と同じ気持ちだ。陛下の悲願達成の為、協力して頂けないだろうか。頼むっ」
「え、いや…それは…」
「私も同意見です。私などより、絶大な魔力と叡智を持つデプレジオン殿に投げてしまうのが最も正解だと思います」
「はいはーい。じゃあ話も纏まったみたいだし、どんどん進めて行こうねー。ほら、デプレジオン総指揮官様も座って、座って」
無論、出来レースである。俺が全軍の指揮を執り帝国の侵攻を退けるのは既定路線。後は国王陛下に代わって徐々に王国の全権を……な、訳ねぇーーー
ふ〜ざ〜け〜る〜な〜
何故、俺がそんな面倒な事をしなければならないのか……あの女、押し付ける気だ…ここで指揮官を引き受けたが最後…なし崩し的に国一つ丸ごと俺に押し付ける気で居るに違いない。
売国奴とか、もうそんな次元じゃないぞコレ。不適切商法だよコレ。いきなり商品送りつけて来て、強引に費用請求してくる詐欺紛いの悪徳商法と同じだよコレ。
クーリングオフしたい。と、言うか王国にこの女が居ると知っていれば、最初から帝国の方に行っていた。不幸なボタンの掛け違えがこの有様だよ。あぁ、最初からやり直したい。
誰か、こいつ暗殺してくれないかな〜ラナーが、デミウルゴスの計画に何処まで組み込まれてるかが不明な為、俺自身で直接手を下しにくいのが痛いところである。その結果、俺の仕事量が増えでもしたら、それこそ目も当てられない …
が、それすらも折り込み済みで好き勝手やられてるフシもある。コイツに駆け引き的な事で勝てる気が全くしない。どう転んでも、コイツはニタニタ笑っていそうだ……
と、言うか最後の奴…『投げる』ってなんだよ…ハッキリ言い過ぎじゃないですかね?もう少しオブラートに包めよ。
「あ〜指揮を執るのは…構わないとしてだ。レェブン侯、現段階でどの程度、徴兵出来てるのだ?それすら不明な状態では何も出来んぞ」
こうなったら腹を括るしか無い。俺には最後の手段が残されている。“デミウルゴスおまかせコース”…最悪、アイツに全部、丸投げしてしまおう。
「14万3000人となっております」
「14万!?嘘だろう?」
「いえ、本当です。位置的にも、徴兵に時間が掛かる領地と言うのが御座いまして……」
「ちょっと待て、レェブン侯よ。そなたは一体、どの位の数を集める気でいたのだ?」
「はい。20万程が、今回の戦において妥当な数かと」
はぁ〜つっかえ。使えんわぁ〜コイツ。20万てバカなんじゃないの?この国では珍しく有能な貴族だと聞いていたのに…裏切られた気分だ…
「1万で良い。残りは返してこい」
「な!?何故ですか……この時期になって、兵力を13万も減らすなど…」
「まあ、せっかく集まってくれた義勇に溢れる民達には申し訳ないがな…しかし、要らぬものは要らぬ。帰りの路銀に多少色を付けて渡しておけ」
「で、ですが…」
「まあ、手痛い出費だが仕方あるまい。どの道、そのまま無理に動員した場合の方がコストは掛かるのだ…今ならまだ、傷は浅くて済む」
「いえ、そういう事では無く……」
「まあ、不満は残るだろうな。せっかく集まって貰ったのに、何もせずに帰らされるのだから……ストロノーフ殿から聞いたよ。彼らは今日を精一杯に生きているのだろう?暇など無い筈だ。そんな中で何とか時間を作って集まってくれた者達に対して、ひどい仕打ちかも知れぬ。だが、綺麗事だけで戦はままならぬのだ。私に指揮を任せると言った以上は、レェブン侯にだって嫌な役を引き受けて貰わなくてわな。『諸君らの勇気は次回に頼らせて頂く』と、伝えておいてくれ」
「レェブン侯……ここは折れるしかありません。デプレジオン殿はこういう方なのです」
ストロノーフが何やら熱を帯びた視線をこちらに向けてくる。おい、やめろ気色の悪い。俺にそんな趣味はない。それだけはハッキリと真実を伝えなければ……
「なっ…ガゼフ殿っ!?では、そなたは出来るのか?たった1万の兵力で、帝国の侵攻を退ける様な奇策が有るのか?」
「レェブン侯…出来る出来ないでは無く……やるしか無いのです。陛下と…陛下が愛して下さる者達の為に」
「無理を言うな!如何に周辺国最強の戦士長であっても一騎当千が限度。万の軍勢をひっくり返す事など不可能だ」
あ、なるほど。彼はそういう話をしていたのか……通りでさっきから、微妙に話が噛み合わないと思った。
「レェブン侯よ。少し落ち着け。我々が事前に調べた情報によれば……帝国の軍勢は6万程だと言う話だが……何が、そんなに不安なのだ?私に教えてくれないか?」
それから彼は帝国騎士団について語ってくれた。八つの軍団に分かれ一軍団につき、万の兵力がある事。これまでの争いにおいて参戦したのは最大で四軍団。今回は、その1.5倍である為、帝国の本気度が窺い知れる…などなど。
レェブン侯が教えてくれた情報の中には個人的に知りたい情報が結構あった。前言撤回。なかなか出来るオッサンでは無いか。
「なるほど…その帝国騎士と言うのが如何程の強さであるのか…その辺りは、お前達の方が詳しかろう。それを踏まえて……六軍団とは恐るゝに足るのか?」
「はい、全く問題になりません。預けて頂いた兵達であれば…儂の軍だけで殲滅は容易に御座います」
「右に同じ。私の方でも楽勝だと思うよーむしろ、あちらさんが可哀想かなー」
「だ、そうだ。何か質問は?」
「な、何者なのだ?そなた達は……」
「魔法部隊長に傭兵部隊長だな。何者かと問われても答えに困るな…雇われの身ではあるが……余り詮索はして欲しくない」
「彼らの言うことは全て真実です、レェブン侯。陛下が新しく編成された“魔法部隊”に“傭兵部隊”たった二百に過ぎぬ数ですが……所属するものは、全員が私よりも強い。先程、頂いた周辺国家最強と言う評価は誤りです。ですが、一騎当千と言われた方が真実であれば…計算は合います」
無茶苦茶言ってるよこの人……実際、そうだけど……そんな事言っちゃったら、俺らのパワーバランスが壊れちゃうだろ。あと、お前んトコの戦士団も、当然リニューアル済だからな。気付いてないみたいだけど。
「な……確かに、腐敗した貴族共を廃した際の武勇は……血も凍る様だったと聞いているが……まさか、それ程までとは…」
ああ、そんな事もありましたね。クレマンティーヌ無双でしたね……
「あー楽しかったねーあの時は。けど、羽虫を貪り喰った井の中の蛙はさー結局、大海に散っちゃうんだー喜劇だよねーー」
おお、クレマンティーヌよ死んでしまうとは情け無い。目のハイライトが消えてるじゃないか……ソリュシャンのモノマネかな?
「それに、武勇と言うのなら…今回はバルブロ王子がいらっしゃる。あの方であれば…それこそ、一軍団をお一人で殲滅してしまわれるのでは?」
ドキッ……
「おお、第一王子……かの王子こそ、まさに狂乱の鬼公子でした。陛下が反王派の貴族が雇った暗殺者に狙われた際、鬼神の如き強さで暗殺者共を返り討ちにしたとか……。正直に言って私は、王族が剣の腕が立ったところで何の意味があるか、と思っていましたが…あの人智を超えた強さには畏怖の念を禁じ得ません。ですが、元々武勇に優れた方ではいましたが…あそこまででは無かった。何か理由があって隠しておられたのだろうか?」
ドキドキッ
「“生れながらの異能”と言うやつでは無いかな?生命の危機に際して、覚醒されたのだろう。おそらくは“棍棒を握ると100倍強くなる”とか、そう言った類の能力をお持ちなのでは無いかな?」
頼む、そう言う事にしておいてくれ。
「そんな突拍子も無い“生れながらの異能”など….存在するのであろうか?」
「一国の第一王子様だからな。我々とはモノが違うだろう。私は“生れながらの異能”など持っていないから羨ましい限りだ」
「またご謙遜を。デプレジオン殿には魔法があるではありませんか。噂では“第6位階”まで使いこなすとか……その上で“生れながらの異能”まで欲されては、欲張りと言うもの」
「ハハハハハ。そうだな、そんな勇猛で知られる王子様がいらっしゃるのだ。如何だろう?彼に全軍の指揮を執って頂くと言うのは。陛下の代わりだと言うなら、彼こそ次期王の第一候補なのだし」
子を売る親の屑がこの野郎……と、思われるかも知れないが……やりたくないものはやりたくないのだ。サボる為なら汚くもなろう。無様にもなろう。俺は休暇をリスペクトしている。
「ダメです」
流石のブロッキングである。
「確かに素敵なお兄様ではありますが……デプレジオン様に比べれば、経験浅く若輩者に御座います。それに次期王を教育する“爺や”であるデプレジオン様が手本を見せてあげる方が、兄にとっても実になる筈」
爺やだと…お兄さんだルルォ!?一体、俺を幾つだと思ってるんだ?そんなに老けてみえてるのか……
「あ、はい」
「デプレジオン様ーいい加減に観念しなよーぱっぱと済ませちゃえば良いんだよー。私も及ばずながら、お力になるからさー」
「ああ、そうだな。それでレェブン侯、今度は私から質問だが……この戦争、馬鹿正直に真正面から戦わなければならないのか?」
俺はかねてよりの疑問を口にした。
「と、言われますと?」
「つまり、私が今から帝国に転移してだな、皇帝陛下を“説得”してくる……とかは、ダメなのか?」
「ダメです」
おお、レェブンお前もか。
「戦争には法がございます。無論、国家の間で正式に文を交わしたものでは、ありませんが…それでも暗黙のルールと言うものが御座います。戦争は“布告時に指定した戦場においてのみ認められる行為”と認識しております。要は“何処でも誰でも…”を認めてしまえば最初は民間人が犠牲になり、果ては国そのものが…いえ、人類そのものが滅びてしまう故」
人類そのもの…ねぇ。そうなる前にスレイン法国が介入して来るだろうな。が、あそこの国とはまだ“国交”を持ちたくない。俺はクレマンティーヌから法国の話を聞いて、色々と察してしまった事がある。恐らくは、あの件と法国が何らかの関係を持っている事……順番を間違えるとそれこそ、この世界の人類が滅ぶ。アインズさん、かな〜りキレてたからなぁ……
法国には、もう少し静観をお願いしたい。そんな二つも三つも同時に処理出来る程、俺の頭は良く出来てないのだ。
「なるほど、そう言うものか…人類が滅ぶのは困るな。“らめーん”が食べられなくなってしまうでは無いか。あれは私の好物なのだから」
「そうなんですの?“らめーん”が無ければ“おうろん”を食べれば良いではないですか」
お前……中々、似合いの台詞だが…断頭台に掛けられたいのか?と、言うか味も食感も全然違うだろうが……勿論、うどんも好きだけどな。麺類全般を愛している。
「なるほど、デプレジオン殿は“らめーん”がお好き…と。で、あれば先程の軍縮をご提案なさったのは…さては、麦の収穫高を心配しての事ですな?」
「ハハハ、流石はレェブン侯。見抜いているな」
えらく機嫌が良さそうに話すレェブン侯。これは王国流の激ウマギャグ…つまりは、リ・エスティーゼジョークなのか?笑いどころがさっぱり分からん。そもそも、小麦の収穫高なぞ知らんわい。え、マジで影響あんの?値上げとかあったらキレるぞ……この世界の独特の味わいはナザリックでは、まだ再現出来て無いのだ……値上げは困る。
「それで、その戦場と言うのは、何処なんだ?」
「カッツェ平野で御座います」
「おお、やはりそうか」
「ん?何か知っているのか?カジット」
「はい。デプレジオン様。カッツェ平野とは通称、“血染めの大地”や“死の大地”などと呼ばれる場所で御座いまして……儂の様な魔法詠唱者にとっては、少々、テンションが上がってしまいますな」
「ほう、カジットがか…珍しいな」
「それはもう……許されるのであれば、かの大地にマイホームを建てるのが夢で御座います」
恍惚とした表情で、ねっとりと熱く語るカジット。
「か、変わった趣味をお持ちなのですな……カジット殿」
「そう、露骨に引いてやるな…レェブン侯。趣味は人それぞれだろう?」
「ぷぷっ…カジッちゃんの趣味は置いといてさーとりあえず、どうやって戦うのか決めてかない?兵士君達に全部おまかせって訳にはいかないんでしょー?」
「そうだな。とりあえず陣形とか兵糧の確保とか補給経路とか、色々と決めなきゃならない」
他にも色々と、あるんだろうが……全然何も思いつかん。俺に軍師の真似事なんか出来る訳無いだろ……
--発言をお許し下さい、デプレジオン様。私めが1万の生贄から<死者の軍勢>を展開させて頂き…カジットに制御させましょう。現在のカジットであれば“死の螺旋”…その本来の効力を有意義に活用出来ると、愚考致します。
存在しない筈の、8人目の“声”が、全員の頭に直接、流れこんだ。
おい、カジット。ちゃんと管理しろって…あれ程、念押しして返したのに……何がインテリジェンスアイテムだよ。全然、ポンコツじゃないか。
「あ…あの…カジット殿?」
「い…今のは、儂の特技“腹話術”でな。ハハ……気にせんで下され」
何で、このタイミングで腹話術を?ってなるだろうがお前……どんな言い訳だよ全く。
「ふーん、けど確かにカジッちゃんの儀式なら、訓練と兵糧の心配は全くしなくて良いねー。1万の民兵君達は残らず全滅だけどねーあーあ、カワイソー」
「クレマンティーヌ殿まで……」
「ガゼフ殿。戦死者1万で、帝国六軍を撃退出来るのであれば…決して悪くない……悪くない戦果だ」
「な、貴方まで何を言うのですかレェブン侯ッ!!」
「ですが、大の為に小を切り捨てる様な策はあまり好きではありません。兵糧ならば十分過ぎる程に備えてあります。元々、20万人分の予定でしたから……それでも、どうしてもと言うなら、その1万の兵は…私が、陛下よりお預かりしている地から、選出させて頂きます」
あ、そう言えば集めちゃった兵糧どうすんだろ?食べきれなきゃ腐るよな〜絶対。徴兵されてる村人達にちょっとずつ持って帰って貰うか?お土産みたいなノリで……う〜ん。
何とかしないと、また買取やら廃棄やらの手続きの処理が俺に回ってくる……断固、阻止しなければ……
「無論、その様な案は却下だともレェブン侯。大切な王国民をその様な形で消費する事は本意では無いと知れ。それに、その様な戦術を取るならば、生きた人間である必要は無い。適当にその辺りの墓から持ってくれば良い。特に…今年は墓場も満杯だろう?色々、あったからな」
最低でも、1万食は食べて貰う。出来れば、2万食…その位は消費して欲しい。あ、戦後の打ち上げとかに流用するか?大体、兵糧ってどんな感じの食べ物なんだ?美味いのだろうか……
「ひとつ、よろしいでしょうか?デプレジオン様」
「何ですか?ラナー王女。あぁ、勿論、墓を暴くなど褒められた行為では無いですが……生きた人間を犠牲にするよりは、マシでしょう?」
「いえ、そうではなく……そのカジット様の儀式と言うのは、帝国騎士団を使う事は出来ないのですか?」
「ん?アンデッドの素体にですか?」
「はい。それでしたら一石二鳥では無いか…と、思いまして。どうなのでしょう?その様な事が出来るものなのですか?」
そんな、献立の変更を頼む様な気軽さで言う事か?いつもの様に、表情と台詞がまるであっていない。
「勿論、可能で御座います。それに、王国の新しい法により、罪人であっても死体の埋葬は念入りに処理を施して御座います。墓を掘り返しても満足な素体を得る事は…非常に難しいでしょう」
「そうなのか?」
「はい。これまでの様に雑な埋葬をして、街中でのアンデッド騒ぎなどは、御免被りたいですから…儂の責任に於いて、管理をさせて頂いておりました」
クレマンティーヌが信じられないモノを見る様な目でカジットを見ていた。まあ、気持ちは解る。だが、腕の良いハッカーがセキュリティープログラムの開発にスカウトされる例もあるしな……専門家とは、そう言うものなんだろうよ。
「ふ〜む成る程な……良し分かった。ならば開幕戦として、私が適当な魔法を敵の軍団に打ち込もう。なるべく、綺麗な状態で死体が残る様な魔法を厳選してな。確か、一軍団が一万と言う話だったな。ならばコレで2万対5万となるから……後は、流れで何とかするとしよう」
名付けて“当たりは強く後は流れでお願いします作戦”。と、言うかこれ以上の作戦練るなんて俺にはムリ。お願い許して。
「勿論、後方支援やら補給の問題、兵糧の問題、戦場への移動……その他諸々、問題は山積みだが…その辺りは全てレェブン侯に一任したいと思うが……構わないか?」
「私が…で御座いますか?」
「ああ、既に兵糧の問題は着手しているのだろう?それに私は今から開戦まで瞑想に入らねばならない。一撃で1万もの命を奪う大魔法など、そう易々と撃てるものでは無いのだ(大嘘)。分かってくれるだろう?」
「畏まりました。謹んで拝命致します」
「うむ。頼りにしているぞレェブン侯。他に異論のあるものはいるか」
ゆ、許された。へっ、甘ちゃんがよ。ペッ。
しかもしかも、面倒臭さそうな事をぜ〜んぶレェブン侯に押し付けれたぞ。自分の智謀が怖くなるな……実は軍師の才能があったのかも知れない。この戦……勝ったな。
「無いようだ。ならば、これで会議は解散とする、後は各々の判断で行動し、陛下に勝利を捧げよ」
『はっ!国王陛下に栄光あれ、リ・エスティーズ王国万歳!!』
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「ふぅ…なんとかなったな」
ぬわぁああああん。疲れたもぉおおん。辞めたくなりますよ〜上位者ロール。
「お疲れ様で御座います。デプレジオン様」
ソリュシャン…君、今回は一言も喋らなかったね……会議中の秘書ってのは、そう言うものなのだろうか?
「あ、もうちょい右…うん、いい気持ちだ」
1日の疲れを癒す至福の時間。ソリュシャンの“ぷるぷる整体マッサージ”も癖になってきたな…いや、かなり病み付きになってきた。
「力加減も、弱かったり強かったりしたら、遠慮なく仰って下さいませ」
「ああ、ありがとう。いつも通り抜群の力加減だよ。ずっとこの時間が続けば良いのに」
「まあ、嬉しくなってしまいますわ。デプレジオン様……新しく、ローションマッサージなどお試しになってみませんか?」
「ローション?」
「はい。デプレジオン様にもっと、気持ち良くなって頂きたくて……私の体内で特製のローションを製造しておりました……」
お前……それ風営法に引っかかる奴だろ。マズイ、想像したら……今はうつ伏せだから、ソリュシャンには悟られない筈だが……
「大丈夫なやつなのか?ソレ」
個人的には凄く興味あるが……色々とマズイでしょうよ…段階すっ飛ばし過ぎィ。確かにソリュシャンは超美人で、好みのタイプでもあり、完璧な理想の女性像の一つと言っても過言では無い。
でも、俺はナーベラルが……ナーベラル狙いなのに……良いのか…今、誘惑に負けてしまって…後悔…しないか?
「はい。私、こう見えて“ポイズンメーカー”の職業を納めておりますの。きっと、ご満足頂けますわ。お試しになりませんこと?」
ん?ポイズンメーカー?確か、毒を精製する職業か…一部の薬品も作れたんだっけか?
「ソリュシャンよ。私の身体は、お前に委ねる」
「はい。お任せ下さい、デプレジオン様。最高の快楽に…その御身体を包んで差し上げますわ」
その後、めちゃくちゃマッサージされた。安心して下さい。最後まで履いてましたよ。