インフィニット・ストラトス~Side Class-2~ 作:貴武川 紗実
「あー食った食った!」
「ラッドってホント食うの早いよな」
お昼時間となって俺は食堂へ駆け込んだ。早い時間に行かないと混むし何よりお気に入りの窓際の席が取られてしまうからな。今日のお昼はカツ丼を頼み、ティナはハンバーガーを頼んだ。一夏とシャルルも誘ったのだが箒に呼ばれたらしく2人で屋上に行ったそうだ。
「箒に誘われたのなら2人きりになりたかったんじゃないの?」
食べ終えてコップに入った水を飲みながらティナに愚痴った。
「多分ねー」
ティナは頬張りながら返した。鈴ちゃん曰く『キング・オブ・唐変木』らしい。まぁ・・・味噌汁の件で納得したけどね。
「おっ!いい食べっぷりじゃねぇか!」
バシンと思いっきり背中を叩かれた。その背後にはダリルさんとフォルテさんがいた。
「ダ、ダリルさん痛いっす・・・」
「あー悪りィな!あ、席いいか?」
そう言うと隣に座ってきた。フォルテさんはティナの隣に座った。
「お前ら今度の学年別トーナメントの話は聞いたか?」
今度の月末に行われる毎年恒例行事それが学年別トーナメント。俺はある事は知ってたけど詳細まで聞いてなかった。
「前回がクラス代表でしたけど今度は生徒全員参加の試合っすよね?」
俺より先にティナが返した。
「そうそう。去年までは個人戦だったけど今年は2人組での参加らしいぜ。タッグ戦だってよ」
「タッグ戦?」
「今年は専用機持ちの1年が多いことから学園でより実践的な戦闘を行うために決めたっスよ」
「なるほど、でも学年別だから2人は一緒に組めないですよね?」
「あぁ。だがオレはもう相棒は決まってるぜ」
「私もっス」
そう言うと2人は誰かを呼び出した。数分後、2人の先輩方がやってきた。
「初めましてコンラッドくん!私はグリフィン・レッドラム!よろしくね♪」
「・・・ベルベット・ヘルよ」
水色の髪のお姉様が3年生のグリフィンさん。ブラジルの代表候補生で生徒会長。ダリルさんとは仲良くて"姐御シスターズ"と呼ばれてるらしい。(フォルテさん談)
一方赤髪のお姉様が同じく3年生のベルベットさん。フォルテさんと同じギリシャの代表候補生。彼女とは良きライバルらしい。(ダリルさん談)
「君の噂は聞いてるよ♪この前無人機を一人で倒したんだって?凄いじゃない!」
「え?あぁ・・・まぁ」
「・・・やるじゃない」
ここまで褒めてもらえるのは嬉しいけど、流石にあの時は無意識だったから覚えてないなんて言えなかった。
「グリフィン。こいつはデカくなるぜ。」
とダリルさんがグリフィンさんの肩を寄せて呟いた。
「そうね!いつか一緒に戦ってみたいね♪」
「・・・私も戦ってみたい」
「光栄です!俺も先輩方の力を見てみたいですし」
「ふふっ♪こちらこそ!」
「んじゃ俺らは行くぜ。またな!」
そう言ってダリルさんたちは食堂を出て行った。出る際に周りの女子たちがキャーキャーと騒いでいたから大人気の先輩たちだったのだろう。
「しかしラッドも人気者じゃん」
「まだまだだよ」
ティナもいつの間にか食べ終わっていたので2人で食器を返却して食堂を出た。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
――数日後の土曜日、午後・・・
午前中は授業で、午後からは自由時間となる。毎週土曜日の午後にはアリーナが自由に使えるようになるので俺、ティナ、鈴ちゃんの3人で自主特訓を始めるところだ。俺らのちょっと離れたところでは一夏とシャルルの2人で特訓している。
「ねぇ相変わらずあの二人ずっと一緒じゃない?」
と嫉妬気味に鈴ちゃんが言った。
「まぁまぁ男同士の仲ってやつじゃないか?同じ部屋なんだろ?」
と俺は前屈しながら言った。一夏とは元々箒と同部屋だったのだがシャルルとの交代したそうだ。
「あれぇ?もしかして羨ましい感じ~?」
ティナが前屈中の俺の背中を押しながら聞いてきたので「あぁ・・・まぁ妬いちゃうな~」とノリで返した。こういう時はノリで返せば何とかなるって経験が活かせた。
「あんたたち・・・ホント仲が良いのね」
「まぁね!」
と言い返したところでセシリアさんと箒がやって来た。2人ともブツブツ言いながらだから恐らく一夏のことだろうと察した。当然だけど
「なぁラッド」
「ん?何?」
箒に呼ばれた。
「あいつら見てどう思う?」
「あいつら?一夏たちのことか?」
「そうですわよ!何と言いますか・・・妙にくっつき過ぎではありませんこと!?」
「まぁ確かになー。俺はそんな事今まで無かったから良すぎなのか分からんなー」
「「・・・」」
「ん?」
「「妬いてるのか?(ますの?)」」
「何でティナと同じこと言うの?」
同じこと聞かれた俺を見て鈴ちゃんがツボったみたいで大爆笑してた。まぁ妬く以前に皆気づいていないのだろうか?シャルルは・・・
男じゃないって。
「いや、シャルルは―――」
ドゴーーーーーーン!!!!!
向こうから爆音が響いた。その先には自身の専用機を装着したラウラ・ボーデヴィッヒが一夏たちを狙ったようだ。
「あいつ・・・」
俺は咄嗟にペテルギウスを展開して一夏たちの所へ向かった。それを見た鈴ちゃん、セシリアさんも後に続いてきた。
「おいお前!どういうつもりだ!」
俺はボーデヴィッヒに尋ねた。すると一夏の方から俺たちの方を向いた。
「ふん・・・織斑一夏の片割れか」
「か、片割れ・・・」
「ちょっと!その言い方は酷いでしょ!」
「一夏さんだけでなくラッドさんまで侮辱するのは許しませんわ!」
2人が庇ってくれた。特にセシリアさんは一夏が奴に引っ叩いたのを目撃していたのだから尚更だった。しかし片割れ呼ばわりされた俺も流石に腹が立った。
「何のつもりか知らねぇが、一夏を狙うなら俺らも加勢するぜ?」
俺は愛用のロケットランチャー"フレア"を構えた。流石に3人(+2人)相手では勝ち目が無いと思ったのかボーデヴィッヒは展開解除してその場から去って行った。奴が去ったのを見た後2人の元へ向かった。
「2人とも大丈夫か?」
「ああ。皆サンキューな」
「困ったときはお互い様でしょ?ところであいつは何者なんだ?初日に叩かれたんだろ?」
「分からねぇよ。「貴様はあの人の弟とは認めない!」って言われたんだ」
「・・・は?」
あの人とは千冬さんの事だろう。あいつとは何か関係あるのか?だとしても一夏には何の罪も無いじゃないか。
「とにかく、ラッドも気をつけろよ」
「お、おう。俺も片割れ呼ばわりされたから仲良くはなれないな」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
バシュッ
「織斑くん!バクスターくん!デュノアくんいますか!?」
特訓が終わって俺たち3人が着替え終わる所で山田先生がやってきた。
「ええとですね、今月の下旬から大浴場が男子も使えるようになります!本当なら時間帯で分けようと思って考えていたのですけど色々と問題が起きそうなので週2回だけOKになりますよ!」
「本当ですか!?」
「はい!本当で――あっ」
今までは部屋のシャワーのみしか使えなかったが大浴場が使えるようになったそうだ。所謂「ヒミツノハナゾノ」の場所がついに俺たちでも使える時が来た・・・!と喜んでる横で一夏が山田先生の手を握っていた。
「一夏・・・先生の手を握って何しているの?」
と咄嗟に手を放してシャルルの両肩を叩いた。
「喜べシャルル!大浴場が使えるってさ!」
「そう」
「あ、あと織斑くんにもう1件用がありますので一緒に職員室に来てもらえますか?」
「おっ、一夏何かやらかしたか?」
「何もしてねぇよ!」
「あははっ・・・白式に関する書類に織斑くんに書いてほしい所があるだけなので大丈夫ですよ」
「なるほど。じゃあ2人とも先に行っててくれよ。あとシャルル、先にシャワー使ってていいぜ」
「うん。分かったよ」
「分かった。じゃあお先!」
一夏と山田先生を見送り俺とシャルルは先に寮へ向かった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
――シャルル Side
(全く・・・一夏ってば・・・)
僕は何故かイライラしていた。さっきの山田先生の手を握っていた事もそうだし・・・他の女子たちにデレデレしちゃったり。何というか・・・こう・・・ああもう表現出来ないよ・・・
「・・・はぁー・・・」
帰ってシャワーでも浴びてスッキリしよ。
「・・・おい」
僕にはあの人から任された役割があるんだ。それを果たさないと――
「シャルル?」
「ふぇっ!?」
ずっと考え事してて急にラッドに呼ばれ咄嗟に声が出ちゃった。今まで一夏と一緒に帰ってたから他の男子と帰るのは初めてだった。
「大丈夫か?ずっと考え事してたみたいだけど」
「あぁ・・・うん。大丈夫だよ」
「そっか。一夏のことか?」
図星だ。やっぱり顔に出てたのかな?それとも・・・もう悩んでもしょうがない!
「あのねラッド」
「ん?」
「い、一夏ってどう思う?」
あ・・・誤解を招く言い方で聞いちゃった・・・
「あいつかー・・・そうだな・・・」
そう言って立ち止まって考え出した。流石に僕のことバレちゃったかな・・・?
「あいつはどこか抜けてるとこがあるかな。ほら、鈴ちゃんや箒たちをよく怒らしてるしな。けどよ、あいつはあいるで良い所もあるぞ。」
「良い所?」
「優しすぎる所だな。シャルルも何回か一緒に着替えようと誘われただろ?多分君のことが心配だから誘ったんじゃないかな」
そうなのかな・・・けど確かに一夏と一緒だと落ち着く気がする。
「だからあいつは悪い奴じゃないぜ。ただあいつに何かされたら俺に言ってくれよ」
「うん!ありがとうラッド」
心のどこかでスッキリした感じがした。ずっと織斑一夏を追っていたから彼はノーマークだった。何せクラスが別だったのもあるしね。ありがとうコンラッド・バクスター。
「じゃあまたね」
「おう!お疲れー」
寮に着きラッドと別れ僕は自分の部屋に入った。バタンと扉が閉まる音が鳴ったあとにまた溜息をついた。
「よし!気分も楽になったしシャワーでも浴びよ」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
――コンラッド Side
シャルルと別れた後、俺は自分の部屋に戻った。帰ったらとりあえず横になろうかな。ところが部屋の鍵は空いていて中でティナたちがトランプして遊んでいた。
「
相変わらずティナはポテチを齧りながら言った。
「あんたは食べながら話すのやめなさいよー・・・。あ、ラッド邪魔してるわ」
メンバーはティナ、鈴ちゃんそして・・・
「あれ?簪ちゃん?」
そこには以前助けた更識簪ちゃんがいた。
「こんにちは・・・私もお邪魔してます・・・」
色々聞くとティナがたまたま見かけて誘ったそうだ。俺らのこと覚えてくれていて3人で遊んでるうちに溶け込んでたみたいだ。
「2人とも簪と知り合いだったのねー」
そう言いながらポテチを頬張った。
「知り合いというか・・・コンラッドくんが私を助けてくれたの」
「へぇーラッドもなかなかやるじゃない!」
「ま、まぁな」
「なぁラッドもやるか?ババ抜き」
「おーババ抜きか!久しぶりにやってみるか!」
「じゃあ早く来なよ」
俺は脱衣所で部屋着のジャージに着替えて3人に混ぜてもらった。ババ抜きなんて小学生以来だ!
「じゃあやるぜーあ、負けたやつジュース1本奢りな!」
「「「えっ!?」」」
突然始まったジュース賭けたババ抜き対決。負けるわけにはいかねぇ・・・・・・・・・・・・・・
「あ゛っ・・・」
負けた。ちなみに順位は
1位 簪ちゃん
2位 ティナ
3位 鈴ちゃん
4位 俺
「・・・やった!」
と小さく喜ぶ簪ちゃん。
「しゃあ!」
と大きくガッツポーズしたティナ。
「危っぶな・・・!」
ヒヤヒヤしながら呟いた鈴ちゃん。
「・・・」
左手に残ったジョーカーのカードを見ながら唖然してる俺。
「ていう訳で後でジュース1本な!」
「にひひ!サンキュー!」
「・・・ありがとうね」
「・・・またリベンジさせろよな・・・!!」
時間が時間だったので4人で夕食を食べに食堂へ向かった。ジュースはその帰りにだそうだ・・・。
こうして友達がまた一人増えた。更識簪・・・4組のクラス代表で日本の代表候補生の一人。あと1つ上のお姉さんがいて2年生だとさ。
◇
「おやおやー両手に華じゃないか」
その帰りに一夏とバッタリ会った。左にはセシリアさん、右には箒が腕を組んでいた。
「いやお前もだろうが」
「俺は別に腕なんか組まれて・・・うぉ!?」
ガシッ
否定した矢先に鈴ちゃんが右腕を、ティナが左腕を組んできた。
「あらまぁ!ラッドさんも両手に華ですわ」
「あ・・あぁ・・・そうだな」
「一夏ぁ?羨ましい??」
「これで同じだな!」
2人はニヤニヤしながら一夏に言った。
「べ、別に羨ましくねぇよ!」
「はいはい。じゃあラッド行くわよー」
「あぁじゃあ3人ともごゆっくりなー」
俺は2人に引っ張られながら一夏たちと別れた。しばらく行った先に生徒用の自動販売機があってそこでババ抜きの罰ゲームのジュースを買わされた。ティナはコーラ、鈴ちゃんは烏龍茶、簪ちゃんは緑茶を選んだ。
「・・・」
2人は買ったらすぐ開けて飲み始めたが簪ちゃんの様子が変だ。
「どうした?さっきから静かだけど」
「・・・今の人って織斑一夏・・・だよね」
「ああ。俺と同じISを動かせた男子の一人だよ」
「知ってる。でも私は・・・あの人が嫌い・・・」
「え?」
突然のカミングアウトに俺だけじゃなく後ろで飲んでた2人も聞こえたらしく簪に聞き始めた。
「簪・・・一夏に何かされたの!?あいつ・・・!!」
鈴ちゃんが聞いて飲み干した缶を握りつぶした。
「待って!違うの・・・」
一夏の元へ行こうとした鈴ちゃんを簪ちゃんが止めた。
「じゃあ他に理由が?」
「実は・・・」
ティナが聞いたところで簪ちゃんが全て話してくれた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
簪 Side――
私の専用機"
「信じがたい話だな・・・無茶苦茶だよ」
「だなー・・・ひでぇ大人たちだよな」
「それであんたが自力で作るのね」
私は小さく頷いた。
「逆恨みと思われても仕方ないことだよね。皆・・・聞いてくれてありがとう」
3人にお礼をして自分の部屋に帰ろうとした。その時だった。
「ねぇ!」
振り向いたらコンラッドくんが目の前で立っていた。
「それ、俺らも協力するよ」
「ありがとう・・・でも大丈夫。これは私自身が決めたことなの。いや・・・やらなきゃいけないの」
「そっか。分かった!でも困ったことあればいつでも言いなよ!だって俺らもう友達だろ?」
「ふふっ・・・うん!」
「それと・・・一夏のこと悪く思わないでね。あいつはああ見えて優しい奴だからさ」
「・・・分かった」
無意識でコンラッドくんに抱きついてた。凄い暖かい・・・ここまで私の事を思ってくれた人・・・。
「お、おい・・・?」
一言を聞いて我に返って彼から離れた。
「あ・・・ごめん」
「大丈夫だよ。とりあえず今日は部屋で休みなよ」
「ありがとう・・・コンラッドくん」
「あーこれからはラッドでいいよ」
「分かった・・・ラッド」
そう言って3人と離れ自室に戻った。メガネを外しベッドに横になった。そして愛用のタブレットを開いてお気に入りのヒーロードラマを見始めた。
「ヒーローか・・・私の前にも会えたかな」
気が付いたら寝落ちしてしまった。自動再生していたから当然ドラマも一気に終わってしまった・・・。
でも凹む事は無かった。私には頼りになる