インフィニット・ストラトス~Side Class-2~   作:貴武川 紗実

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CHAPTER-3
第14話 新たなる力とそれぞれの想い


 

ピピピピッ・・・ピピピピッ・・・

 

 

 

 

ピピピピッ・・・ピピピピッ・・・

 

 

 

 

 

 

「んっ・・・」

 

心地よく眠っていたが目覚まし時計のアラーム音に叩き起こされた。時計は朝6時を表示していた。今日早く起きたのには理由がある。毎週末は早く起きて学園周辺をランニングしているのだ。まぁ、ちょっとした朝練とも言えるかな。俺は眠い目をこすりベッドから起きていつもの服装に着替え始めた。ちなみに隣はティナではなく一夏だ。・・・そう、部屋の引っ越しをしたのだ。シャルル改めシャルロットが女子だったという訳と絶対一人部屋と頑なに決めていたラウラが何故か(・・・)折れて彼女と相部屋になることになり、一夏と俺でようやく男同士で相部屋になったのだ。ちなみに俺が空いたという事でティナは鈴ちゃんと相部屋になった。俺はお気に入りのジャージに袖を通して着替え終わり部屋を出て行った。その時、部屋に一人不審者(・・・)がいた事を俺はまだ気づかなかった・・・

 

 

 

 

―タッ タッ タッ

 

 

 

 

 

――タッ タッ タッ

 

 

 

 

―――タッ タッ タッ

 

 

 

 

「はぁ・・・はぁ・・・疲れた・・・」

かれこれ30分走っただろうか・・・寮の入り口から武道場までを往復して回った。片道で約3分。推定ながら30往復はしたはず・・・もちろん測っては無い。ISの専用機を持ち始めてからこのトレーニング始めたが体力的にも余裕が生まれた感じはある。戦闘面は他の皆に負けないが問題はどこの代表候補にも入っていないので正直言うと俺はグレーゾーンの立場らしい。もちろん、俺だけでなく一夏もそうだ。学園的にはそれぞれの国の代表候補に入ればいいという話だがそう簡単にはいかないみたいで、各政府との対応が難航してるそう。ま、ここにいる3年間は人権諸々保障されてるからその話はそのうちに解決できるんじゃないかなと俺は思う。武道場の外に設置されてる水道で汗でベタベタした腕と顔を洗い、持っていたタオルで拭いた。その時、武道場の小窓が開いており、そこから足音や何かを振り回している音が聞こえたので気になって小窓から中を覗いた。その先には竹刀を素振りしている箒がいた。最初は全く気付いていなかったが俺と目が合って素振りを止めこっちにやってきた。

 

「よっ。朝練か?」

「むっ。誰かと思えばラッドか。そんな所で何をしている?」

「ランニングしててたまたま通りかかって物音がしたから見に来たってところさ」

「そうか」

 

そう言いながら箒は道場内をキョロキョロ見回してまた俺を見た。

 

「ちょうど誰もいないから中に入れ。お前と話がしたい」

「え?あぁ・・・分かった」

 

俺は箒に言われるまま武道場へ入った。

 

 

 

 

「で、話って何?」

 

広々とした武道場内"板の間"で箒と二人で並んで座っていた。朝の時間帯ということもあって誰もいない。箒曰く、週末は意外と空いてるそうだ。

 

「いや、堅苦しい話ではないが・・・お前にしか聞けないことなのだが・・・」

「ん?何だ?」

「その・・・一夏は私の事何か言っていたか?」

 

箒はモジモジしながら俺に言ってきた。これぐらい大した事ではない話だが恐らく彼女にとっては一大事ってことは理解出来た。

 

「あいつ?特に何も言って無いよ。ただ・・・」

「ただ?」

「箒に付き合ってもらうって言われた事が分からず俺に聞いてきたけどな」

「はぁ・・・で、どう答えた?」

「自分で考えろって返したさ」

 

そう言ったらホッとした表情と共になんだかガッカリした感じだった。そりゃそうだろうな。あいつ交際の意味を分かってないようだし。まぁ、ずっと分からず屋だったらいずれは教えるつもりだがこの事は彼女には黙っておこう。

 

「そうか・・・すまなかったな」

「いいって。それより、あいつと幼馴染みたいだけどいつからなんだ?」

 

そこから箒は一夏との出会い話が続いた。最初に知り合ったのは小学1年の頃で、当時からかわれてた男子たちから助けてもらったことから段々話すことが増え、その後千冬さんに付き合わされる形で箒と同じ道場で剣道始めたそうだ。ある大会で勝負する予定だったのだが箒のお姉さん・・・篠ノ之束博士がISを開発したことを機に2人は離れ離れになってしまいこの学園に入るまで一切連絡が取れなかった・・・とまで聞いたところで施錠の時間が来て2人で武道場を出て寮へ向かった。

 

「そんな事があったのか・・・」

「あぁ。ホントの事言うと一夏にまた会えたのが嬉しかったんだ」

 

そう言った箒は小さく微笑んでいた。いつも仏頂面な彼女だが今はとても優しい顔に見えた。

 

「(あー・・・箒、一夏のこと好きなんだな・・・)」

「おい」

「ん?」

「今、私が言ったことは誰にも言うな。例え一夏でもだぞ!」

「分かってるさ。言わないよ・・・俺は応援してるぞ」

「ありがとう。こうやって胸中を語れたのはお前が初めてだ」

「おっ?そうなのか。そりゃ光栄だな(そういや、ラウラも一夏が好きだとか言ってたよなぁ・・・)」

 

既視感があり、俺は数日前の事を思い出した。よくもまぁ次から次へと女子を惚れさせるなぁあいつは。とまぁ、箒と楽しく帰路に着きかけた時だ。

 

「それより・・・お前はどうなんだ?」

「へっ?何が?」

「ティナとだ。いつも2人でいるから付き合ってるって噂が出てたぞ」

 

そういや気にしてなかったがここ最近、2組だけでなく他のクラスの女子たちにも同じこと言われたな・・・。俺としては友達感覚でいたから特に恋愛感情というのも無かった。ただ箒に言われて気が付いた事があって・・・以前、大浴場解禁日の時にティナが何か言いたがってたのを思い出した。あの時は大浴場の楽しみが勝っていたから気にもしなかった。この事を箒に伝えた。

 

「・・・何をやっているのだ・・・彼女は大事な話をしたかったんではないのか?」

「・・・楽しみを率先してしまいました」

「まぁ、気持ちは分からんでもない。今度会うときはしっかり聞いてやるのだぞ」

 

箒が半ば呆れ顔で言ってきたので「はい」と答えた。今度会ったら聞き返そう。

 

 

 

 

寮に戻り俺の部屋に着いた所で箒とはここで別れた。部屋に入ろうとドアノブに触れようとした時だった。ドアの向こう側から騒がしい音が聞こえた。俺は大急ぎでドアを開けて中に入った。

 

「おい一夏!!!大丈夫か・・・ってなんだぁぁぁぁぁぁ!?」

 

俺はとんでもない光景を見てしまい朝の時間帯にもかかわらず思わず叫んでしまった。その先は不審者すなわち、ラウラ・ボーデヴィッヒが全裸の姿で一夏に襲い掛かっていた。

 

「お、おいラッド!!ちょうど良かった!!こいつを止めてくれ!!」

「何を言うか。夫婦の営みを邪魔をするな」

 

は?え?夫婦・・・?頭の中が「???」って一杯なところで箒が駆けつけてきた。

 

「ラッド!?一体何・・・が・・・」

 

箒も俺と同じ光景を見て持っていた竹刀を落した。あ、これあれだ。シュラバというやつだ・・・。俺は恐る恐る後ろを向くと顔は見えなかったが手が震えていた。いや、これ怒りの震えだ。

 

「一夏、貴様・・・」

「ご、誤解だ箒っ!」

「何が「誤解だ」だ!?覚悟しろぉぉぉぉ!!」

 

と落した竹刀を再び手に取り、構えて一夏にめがけて振り掛かろうとした。一夏も流石にやばいと思いラウラを突き飛ばして逃げるように部屋から出て行った。箒も鬼の形相で追いかけていった。俺は突き飛ばされ尻餅ついたラウラを起こしてあげた。

 

「おい。大丈夫か」

「あぁ・・・問題ない」

 

と言ってそのまま部屋を出ようとしていた。

 

「待て!!」

「なんだ?」

「服を着ろ!!」

 

 

 

 

「失礼しまーす」

 

騒がしい朝から数時間後、俺は蛇島先生の私室へ向かった。今日は定期的にやっているメディカルチェックの日だ。ISを持ち始めて以降、身体の異常が無いか確かめる為に月に数回診てもらっている。俺としては特に変わったことは無いし他の皆はここまでやってもらってるわけじゃないから正直面倒だが、何故か頑なに俺だけはやらないといけないと蛇島先生だけじゃなく千冬さん・・・じゃなく織斑先生にまで言われてしまい仕方なく行くことに。まぁ、よくある健康診断?感覚で良いと言われたが・・・そもそも健康診断なんて受けたこと無いんだけどね・・・。ドアが開くとそこには見覚えのある先客がいた。

 

「やほーラッド」

「邪魔してるぞ」

 

と、部屋の真ん中のソファーで寛いでるシャルル改めシャルロットとラウラだ。

 

「あれ?2人ともどうしてここに?」

「師匠がいつもここに来てると聞いた。強さの秘訣があると思い――」

「僕は止めたんだけど、ラウラがどうしても来たいからって」

「こらこら。ここは生徒のたまり場じゃないんだぞ・・・」

 

と言いつつ蛇島先生は3人分の麦茶を出してくれた。主任室には基本的には彼1人しか在室していない為、ここにある備品等は全て彼の私物だそうだ。時々、生徒がISに関しての質問をしに短時間で終わるぐらいで長居するのは俺ぐらいしかいない。

 

「そういえば先生って織斑先生と同級生って聞いたんですけど・・・昔はどうだったんですか?」

 

シャルロットが率先して聞いた。先生は腕を組んでかなり悩んでいた。

 

「・・・聞きたい?」

 

3人同時に頷いた。すると先生が俺たちの方へ来て空いているソファーに座った。かなり複雑なのだろうか・・・?表情が固く真剣な眼差しで俺たちを向いた。

 

「・・・今と変わらない」

 

全員ズッコケた。さっきの表情は何だったんだよ。

 

「「「えぇ・・・」」」

「ビックリした?昔は物静かだったと思った?」

「いや・・・それは・・・」

「僕もすごく思い出を振り返ってみたんだけど・・・うん・・・変わらない」

 

俺、シャルロットは苦笑い。ラウラはポカーンとしていた。

 

「さてと、ラッド君。そろそろ始めようか」

「はい!」

「え?何するの?」

「これから彼のメディカルチェックさ」

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

――蛇島 Side

 

「じゃあ始めるよー」

 

そう言って前の端末のボタンを押した。彼のメディカルチェックは月に数回、脳波を調べたり月1回血液検査をしている。本来はする必要は無いが、彼の場合専用機が専用機だからだ。・・・僕は以前見せてもらった時に付いていたあのメモを見て確信を持った。そう・・・送り主が彼女(・・)・・・何か企んでいるはず・・・そう思い千冬ちゃんに直訴して彼の専属メディックに就かせてもらった。ちなみに今日は脳波を調べるだけの日だ。

 

「あの・・・」

「ん?」

 

デュノアさんが尋ねてきた。

 

「いつもこれやってるんですか?」

「まぁね」

 

流石に疑問は持つだろう。いくら専用機持ちとはいえ生徒としていられる場合は基本的には行う必要は無いからね。でも、彼の事はまだ言うべきじゃないと思い言葉を閉まった。

 

「なに。すぐ終わるさ――ほら」

 

そう言ってる間に検査が終了のアラームが鳴りだし、ラッド君の頭のたくさんのケーブルが繋がってるヘルメットが取り外された。

 

「ふう・・・終わった」

「お疲れ様!」

 

さっきまで不安そうな顔をしていたデュノアさんだったが、ホッとした表情に変わり彼のもとへ駆け寄った。

 

「ところで先生。これは何だ?」

 

とボーデヴィッヒさんが例の機械(・・・・)を指した。

 

「あぁそれね、彼のISに必要なやつさ。これを使えば――」

「他のISの装備をコピー出来る・・・か?」

 

詳しく説明しようとしたが話が早かった。さすが軍人。察しが良い。

 

「その通りさ。」

「それにしても・・・ISの装備をコピー出来るなんて聞いたことないよ」

「従来・・・はね。フッ・・・でも実際その常識を覆した機体がここにいるんだよね」

 

と視線を彼に向けた。

 

「確かにそうだな。・・・師匠、今使える装備は?」

「んーと、今の装備はセシリアさんのブルーティアーズと鈴ちゃんの双天牙月の2つだけだ」

「じゃあ、私と戦った時のが全てか」

「そういうこと」

「私はてっきり一夏の装備もあると思っていたのだが」

「あー・・・あいつのはまだ試してなかった」

 

ボーデヴィッヒさんに唐突に聞かれたラッド君は装備ウインドウを開いて見せてあげた。彼女も何だか興味津々に彼のディスプレイを凝視していた。

 

「・・・デュノアさん。ちょっといい?」

「はい?何でしょう?」

「ずっと気になっていたんだけど・・・師匠ってのは彼の事かい?」

 

と彼を指したら彼女は2度頷き、事の発端を聞かせてくれた。

 

 

 

 

「なるほどねー中々面白い話じゃないか」

「でもそれ以降丸くなったのは良いんですけど・・・色々ズレていうか何というか・・・あははは」

 

苦笑いにつられて僕も笑ってしまった。これは中々のクセ者だなぁと。

 

「先生ー!ラウラがデータくれるって言ってます!!」

 

あー・・・え?え??

 

「ホ、ホントかい?」

「もちろんだ。私も気になる・・・その武装複製とやらを見てみたいのだ」

「そ、そうかい・・・じゃあ早速取り掛かるとしよう」

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

――コンラッド Side

 

シュヴァルツェア・レーゲンのデータ取得完了・・・・・・・・・複製完了。

 

「さぁて何が出来たかなー?」

「そうだな。私も気になる!」

 

お互いのISを解除し蛇島先生の元へ向かった。

 

「"ガーディアン・シールド"・・・どうやら、ボーデヴィッヒさんのAICが複製出来たみたいだね」

ガーディアン・シールド(守護神の盾)・・・うむ!中々カッコいい名前だ!」

「ま、まぁな」

「性能を見るとその名の通り銃弾とかを防ぐみたいだね」

「私の(AIC)とはどう違うのだ?」

「そうだね。ラッド君のはあくまで複製・・・言い方を変えればAICを真似た紛い物。動きを止めたりは出来ないし持続力も劣る。だからあくまでも防御装備って事さ」

「そっかぁ・・・」

 

俺はガッカリした。彼女のAICように使えるならこの前のラウラが鈴ちゃんらとの戦ってる時みたいに楽勝に出来ると思ったんだけどね。

 

「そう落ち込むな師匠。いざとなれば私が守ろう」

「へへっ、頼もしいな。その時は頼むぜ」

 

とラウラは胸に手を当ててドヤ顔気味に言ってきたので俺も返した。これでもつい最近まで敵対関係だったとは思えない・・・!微笑ましく見てる蛇島先生の隣でシャルロットが何やら言いたそうな顔をしていた。

 

「ん?どうしたんだシャルロット?」

「あの・・・良かったら僕のISも使っていいよ」

「え?マジで?」

「うん!ラウラのを見てたら僕も気になっちゃったんだ」

「だって先生」

「よしっやりますかね!じゃあ、デュノアさんも展開して」

 

そう言われ、シャルロットも自身のIS"ラファール・リヴァイヴ・カスタムII(ツー)"を展開して端子を繋ぎ始めた。そして、蛇島先生がパソコンでデータ取得の作業に取り掛かった。と、まぁ作業も複製もすぐ終わった。

 

 

 

 

「ワスプジャベリン・・・」

「こっちも良い名前じゃないか!なぁシャルロット?」

 

シャルロットは、真剣な眼差しで表示されたディスプレイを見ながらラウラ問いに頷いた。そりゃ従来のISには無かった機能だから興味湧くはずだよな。

 

「これが僕のISから出来た武器・・・あっ」

「どうした?」

「これの複製元分かっちゃったよ!」

 

視線をディスプレイから俺に変えて言った。そして少し距離を取ってまたISを展開した。

 

「これじゃないかな?」

 

と取り出したのは"灰色の鱗殻(グレー・スケール)"と呼ばれるパイルバンカーだ。

 

「パイルバンカー?どうしてだ?」

 

ラウラは分かって無かったが俺と先生はそれを見て納得した。

 

「ふむ。ジャベリン・・・つまり杭繋がりって事だね」

「なるほどな」

「じゃあ俺も早速――」

 

と皆と距離を取ってペテルギウスを展開した。一気に2つも装備が増えたからワクワクが止まらなかった。まずはラウラから複製した"ガーディアン・シールド"を取り出した。だがその装備は他の物とは何だか違った。

 

「何だこれ?手袋?」

「それがガーディアン・シールドか。中々似合ってるぞ師匠!」

「はははっ。そりゃどうも」

 

取り出したものの、両手にはラウラのISを見立てた感じの漆黒で人用なら人気が出そうなデザインの手袋だ。で、これでどうやってシールド張れるんだ?と考えながら手を広げながら腕を前に伸ばしたその時、いきなり俺の前に等身大ぐらいの大きさの結界が出現した。

 

「うわっ出た!?」

「「「おぉ!」」」

 

偶然出たシールドを見て全員が驚いた。だがこれは紛い物で長時間の使用は禁物って事だ。腕を戻したらシールドが消えたので今度はワスプジャベリンを取り出した。見た目はシャルロットが見せた物に似ているが突出してる杭は外側、内側に切り替えが出来るみたいだ近接が得意な俺にとっては最高の装備になりそうだ。後ここで気づいたんだけど、取り出した瞬間手袋が消えたので重複で使えないって事が分かった。

 

「こっちも両手に装備物か」

「そうみたいだね。試しにダミー機体出してみるから撃ってみるかい?」

「そんなこと出来るんですか!?もっと早く言ってくださいよぉ!」

 

先生がごめんごめんと言いながら俺とシャルロットの前に訓練機を模倣したダミーを出してくれた。鈴ちゃんやセシリアさんの時に言ってくれたらすぐ試せたのに・・・。

 

「じゃあラッド。やってみて!」

「おう!」

 

と動かないダミーに突っ込んで懐に入った。

 

「うおぉぉぉぉぉりゃぁぁぁぁ!!」

 

ダミーの胸部に思いっきり右ストレートを浴びせ壁際まで吹っ飛んだ。

 

「わぁ・・・凄いね・・・!」

「これがパイルバンカーというやつか。・・・あれ?」

 

吹っ飛ばしたのは良いものの、ついさっきまで尖っていた杭が折れて先端が無くなっていた。

 

「衝撃で折れちゃったみたいだね」

「えーじゃあ使ったら終わりかよ・・・シャルロットのはまさか連続で・・・?」

「出来るよ」

 

と笑みを零しながら自身の物を構えた。よく見るとあっちはリボルバー式で連続で打てる仕組みになっているようだ。

 

「はぁ・・・これがオリジナルとの相違って事か」

 

と愚痴をこぼし展開しているISを解除した。

 

 

 

 

「いやぁ、2人ともありがとね」

 

蛇島先生はお礼のつもりなのか冷蔵庫からプリンを出し彼女たちにあげた。(先生曰く「僕の秘蔵のおやつ」だそう)

 

「いえいえ。こちらこそ良いもの見せてくれてありがとうございました」

「事後になるんだけど・・・本当に大丈夫だったのかい?いくら学園内は身分は守られているとはいえそれぞれの国の代表候補生だから勝手にデータを渡すのは――」

 

先生の疑問に食べ終えたラウラは即答した。

 

「問題無い!私は軍人だ。何かあれば私の部隊が対処する」

「僕も大丈夫です。・・・僕は・・・」

「僕は?」

「もう(フランス)には帰りません」

「ッ!?」

 

シャルロットのとんでもない発言に飲んでいた麦茶を吹きそうになった。2人は驚いていた。

 

「え・・・マジで?」

「どういうことだ!?」

「・・・ちょっと詳しく聞かせてもらっていいかな?」

 

先生の問いに彼女は小さく頷いた。どうやらここ(IS学園)に来た本当の理由は、デュノア社の社長・・・シャルロットの親父さんの命令で男に変装し、一夏の専用機"白式"のデータを盗むという事だった。つまり彼女はスパイだったのだ。だが、ある時に一夏に女性だとバレてしまい学園を去ろうと決めたが一夏の説得により学園に留まることを決意し父親と決別すると決めた。・・・という訳だ。

 

「ひでぇ父親だな」

「うん・・・でもいいの。僕は僕らしく生きるって決めたんだ」

「そうか。それにしても、何故白式だけなんだろ?」

「さぁ?存在を知らなかっただけかも」

「はぁ、まぁいいか。・・・しかしあいつも良い事言うなぁ」

「流石私の嫁だ。これぐらいは朝飯前だろう」

「・・・ラウラの言う事はよく分からんが。ここにいる間は大丈夫だけど、もし親父さんから何かされそうになったら俺たちが守るよ」

「私もだ」

「うん。2人共ありがとう」

「僕も君のサポートをするよ。力になれるか分からないけど、これでもIS学園(ここ)の先生だからね」

「先生もありがとうございます」

「・・・あっ!」

 

暗い雰囲気を変えるかのように先生がパンッと手を叩いた。

 

「そういえば、来週臨海学校あるけどもう準備したかい?」

 

臨海学校・・・2泊3日で海沿いのとある旅館を貸し切ってISの特訓を受ける云わば合宿みたいなものだ。そのうち初日だけは自由時間を設けられていて女子たちは海水浴をするという事で水着の話ばっかりしていた。

 

「ラッドはどうするの?」

「流石に水着は持ってきてなかったしなぁ・・・買いに行くしかないよな」

 

水着自体は実家にはあるのだが臨海学校あるのは知らされていなかったので持ってきてなかった。仕方ないから今度の休みの日に行くか。

 

「私はあるぞ!」

「言っておくけどスク水で行くはダメだよ」

「なっ・・・!」

「図星かよ」

「はははっ!折角の海に行くのにスクール水着はまずいよ」

 

全員から突っ込まれたラウラは膨れ顔になった。

 

「そういや先生も来るんですか?」

「あぁー。僕も行こうと考えてたんだけどねぇ・・・千冬ちゃんに「私が行くからお前は留守番しろ」だってさ」

「「「あー・・・」」」

「お土産楽しみにしてるよ。・・・あ、でも特訓とかで何かあればリモートで参加はするつもりさ」

 

と髪を掻きながらぼやいていた蛇島先生でした。ホントお気の毒だよ・・・。

 

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