インフィニット・ストラトス~Side Class-2~   作:貴武川 紗実

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第7話 クラス対抗戦当日と前日

 

<クラス対抗戦・前日>

 

 

――鈴音 Side

 

 

いよいよ明日、クラス対抗戦!ここまで2人には練習に付き合ってもらった。今日は明日の為に、一夏の代役としてコンラッドに頼んで模擬戦を始めた。

 

「行くわよ!甲龍(シェンロン)!」

「来い!ペテルギウス!」

 

光に包まれ、あたしのIS"甲龍"を展開した。コンラッドも専用機"ペテルギウス"を展開した。初めて見たときはビックリした。まさかあいつも専用機持ってなんて聞いてなかったし。いつから?って聞いたらここ(IS学園)に来てからだって。

 

「あ、そうだ。俺の装備にブレードは無いんだけど」

「無いなら貸すぜ?ほらっ!」

 

ティナは訓練機"打鉄(うちがね)"の装備である近接用ブレード"(あおい)"を渡した。コンラッドは軽く葵を振り回して使い方を練習していた。

 

「・・・剣術系はしたこと無いけど」

「いいのいいの!あんたは一夏になりきってくれたらいいから!」

「わ、分かった。じゃあ、行くよ!」

「さぁ来なさい!」

 

お互い上空へ飛んだ。初めに攻撃したのはラッドだった。葵を思い切り振りかかってきた。

 

「ならあたしも!」

 

と言い大型ブレード双天牙月(そうてんがけつ)を展開して応戦した。

 

 

 

キイィンッッ!

 

 

 

「そうそう!ちゃんとなりきれてるじゃない!」

「それはどうも!」

「なら、これはどうよ!」

 

あたしはもう一つの双天牙月(そうてんがけつ)を展開して連結させた。そう、両剣にもなるのよ!

 

「うおっ!?」

 

下からの攻撃を避けたところでペテルギウスに接近した。そして――

 

 

 

ドンッ!!!

 

 

 

 

「うわぁぁぁ!」

 

肩に着いている大型衝撃砲龍砲(りゅうほう)を撃った。空間を圧縮させて見えない砲弾として相手に攻撃する第3世代の兵器。例えで言うなら、理科の実験とかで作った空気砲がめっちゃ強いって感じ!ホントはエネルギーを一定量溜め込んで撃つんだけどさすがに模擬戦だし相手はラッド。全力で撃つわけにはいかないので軽くぶつけたつもりだったけど、ペテルギウスは向こう側のシールドの壁までふっ飛んだ。

 

「どうよ!」

 

通信越しでコンラッドに言った。

 

「痛たたっ・・・そんな装備あったのかよ」

「まぁね♪ まだいける?」

「ああ。でもそろそろ銃使っていい?」

「だーめ!」

「ですよねー」

 

ま、本気で勝負しようと思ったけどあくまで明日の試合が優先。あいつとはまた今度相手になってもらうわ。何気に強いってティナが言ってたし

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

<クラス対抗戦・当日>

 

――コンラッド Side

 

 

練習に付き合ってから数日後、今日はいよいよクラス対抗戦だ。試合方式はリーグ戦で、学年別で各クラス総当たり戦で一番勝ったクラスが優勝するという。今年は1年生の専用機持ちが多いため観客席はほぼ満員。城塚先生曰く、1年生の試合で満員になるのは初めてな出来事らしい。多分、俺ら男子生徒が目当ての人もいるだろう。クラス代表は鈴ちゃんに譲って俺は応援側に回った。もちろん2組を応援しないといけないが、内心一夏のことを応援している。・・・男子生徒代表として!

 

「じゃあ鈴ちゃん。頑張ってね!」

「負けんじゃねぇぞ」

 

俺とティナは、試合会場である第2アリーナのピットにいる。ここからISを展開して出撃して行く仕組みだ。一覧表が開始前に配られて、1組とは最終戦で戦うことになった。専用機もちは1組と2組のみ、噂じゃ4組にもいるって話だけどクラス代表は辞退したらしい。まずは初戦。相手は3組だ。

 

「2人に練習付き合ってもらったし負けないわよ!!」

 

そう言って彼女はアリーナへ飛び立っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結果は勝利!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

無事にピットへ帰還し、着地してISを展開解除して俺たちの所へ戻ってきた。

 

「おかえり。いい試合だったよ」

「当たり前じゃない!あたしを誰だと思ってんのよ!」

 

そう言って3人でハイタッチした。その後、順調に勝ち続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、いよいよ最終戦。これまでの戦績は4戦全勝。一夏も全勝で同率首位だ。

 

 

「いよいよだな。鈴、大丈夫か?」

「当然よ!あいつをブッ飛ばしてやるんだから!」

 

鈴ちゃんの専用機"甲龍(シェンロン)"を展開し、カタパルトに乗り振り向きざまに言った。

 

「・・・行ってくる!」

「ああ。頑張ってね」

「グッドラック!」

 

甲龍はアリーナへ飛んで行った。ここまで練習してきたんだ。負けるなんてない。そう、俺たちは信じていた。開始直後は一夏が優勢だった。しかし、鈴ちゃんの龍砲が炸裂し一気に逆転した。一夏は回避に精一杯なんだろう。アリーナをぐるぐる飛び回っていた。これなら勝てる!と思ったその時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズドォォォォォォン!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然アリーナが爆発音とともに大きな揺れが起きた。

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

――ティナ Side

 

 

モニター画面越しで鈴と一夏の試合を見ていた。そろそろ決着が付く頃だろうと思った矢先、ふとアリーナから強い揺れと爆発音が起きた。

 

「何?この揺れ・・・?」

 

会場がざわついていた。するといきなりモニター画面が切れ、試合中断のアナウンスが入った。どうやらアリーナ内に侵入者が入ったみたいだ。非常事態のため、ピットのゲートも閉鎖するということになった。

 

「鈴ちゃん!一夏っ!ゲートが閉まる!早く戻ってこい!!・・・ちくしょうっ・・・」

 

ラッドが鈴に通信しているが応答が無いらしい。ついにゲートが閉まりアリーナの出入り口は全て閉鎖された。

 

「とりあえず私たちも避難しよ!」

「そうだな!」

 

私たちもピットを離れた。辺りは暗くて女子たちの悲鳴と非常灯が赤く灯ってるだけだ。とりあえず他の皆と合流するために階段へ向かった。途中、誰かがいた。よく見ると水色の髪の女子が右足を支えながら壁にもたれかかって座っていた。

 

「ねぇ、大丈夫か?」

「誰?・・・痛っ」

 

どうやら逃げ遅れた子のようだ。話を聞くと、避難の途中で躓いて足を痛めたという。気が付くと周りには誰もいなくて助けも呼べなかったそうだ。

 

「誰も助けてくれないから・・・私は・・・ひとりぼっち・・・」

 

彼女が泣き出しそうだった。

 

「もう大丈夫だから!とにかく、一緒にここを離れよう!」

「しかし足の怪我は酷そうだな・・・」

「よし、俺の背中に乗って」

「うん・・・ありがとう」

 

ラッドはその子をおんぶして、3人で階段を降り出口へ向かった。

 

 

 

 

「マジかよ・・・」

 

しかし、通路の途中でシャッターが閉められていた。侵入者を防ぐ目的のために設けられた防犯用シャッターなのだが、非常セキュリティが作動して閉まったようだ。迂回できる手段はないか考えたその時、誰かが呼んでる声が聞こえた。

 

「・・・おい!・・・そこに誰かいるか!?」

 

私は辺りを見回した。するとさっき降りてきた階段の向こうから私たちを呼んでいた。ひとまず戻って声のする方へ向かった。暗くて見にくかったが2人組の人たちだった。

 

「お前ら!大丈夫か!」

「ええ。けど、この子が・・・」

 

私は状況を説明した。

 

「なるほどな。けど、まだここに残ってた奴もいたとは俺たちも逃げ遅れたからな。ひとまずそいつを医務室に連れてくぞ」

「こっちに迂回できる道があるっス!皆ついてくるっス!」

 

2人に案内されて別の通路に出た。薄暗いが、さっきの通路よりはまだ明るかった。私たちを呼んでいた人たちの姿をやっと見ることが出来た。片方は3年でもう一人は2年生のようだ。

 

「助かりました・・・あなた方は?」

 

ラッドは一旦彼女を降ろし、肩を回しながら2人に尋ねた。

 

「俺はダリル・ケイシーだ。で、こっちはフォルテ・サファイアだ」

「フォルテっス。よろしくっス!」

 

ダリルさんが3年生でフォルテさんが2年生だ。

 

「2人とも先輩だったのですか!俺はコンラッド・バクスターです」

「私はティナ・ハミルトン」

「よろしくな!で、お前は?」

 

私を含め4人はその子を見た。連れてきたのはいいが名前を聞いていなかった。

 

「更識・・・簪です」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズドォォォォォォン!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全員の自己紹介が終わった瞬間、爆発とともに通路の壁が壊された。あの巨大な機械だった。

 

「さっき見た奴とは違う・・・」

 

ラッドが呟いた。そう、モニター画面で見たのとは姿が違う。そして今回のは明らかに私たちを狙った感じに見えた。ひとまず全員、奴の死角に隠れた。出口まであと少しだったが奴のせいで動けない。私たちは作戦を立てようとした矢先にダリルさんが口を開いた。

 

「あいつはISだ。しかも無人機だ」

「む、無人機?ISは人がいないと動かないんじゃあ・・・?」

 

そう、本来はISは人が操縦して動くもの。無人ではまだ研究段階で実用はまだ可能な話は聞いたことない。だけど、今実際に無人で動いているということになる。

 

「クソッ・・・こんな時にISが使えないなんてな・・・」

「え?先輩たち専用機持ってるんですか!?」

「もちろんっス!だけど、私たちのは故障しちゃって今は修理中っス・・・」

「そういうことだ。悪りィな・・・助けられなくて・・・」

 

フォルテさんはもじもじしながら、ダリルさんは長い髪を掻きながら言った。先輩たちは戦えない状態・・・ってことは今戦えるのは・・・!

 

「ラッド・・・」

 

とラッドに囁いた。

 

「あぁ、分かってる」

 

同じ考えだったみたいで待機状態の腕時計を見つめながら返事をした。だけど、今までは模擬戦だけ経験しか無く実戦は初めてだ。しかも相手は所属の分からない無人機。最悪、怪我じゃ済まされない可能性もあり得る。

 

「皆はここ待ってて。俺が行きます」

 

ラッドは通路に戻ろうとした。

 

「は?お前どうやって?」

「俺も、持ってるんで!」

 

4人にあの腕時計を見せつけあの無人機のところへ向かった。

 

「・・・そうか。だが無茶するな!気を抜いたらやられるぞ」

 

ダリルさんにアドバイスを聞いて頷き、無人機の前に立った。そして左手を前に出した。

 

「来いっ!ペテルギウスっ!!!」

 

通路が光に包まれた。暫くすると、その先にはアメシストのような輝きをしたIS”ペテルギウス”がいた。・・・頼んだわよ。ラッド!

 


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