魔法少女リリカルなのは!? 「プロジェクト社畜計画」   作:ヘルカイザー

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どうも〜


ではよろしくお願いします。


第2話《歳月》

 タカシが墜ちた日。同じく重傷を負った少女。名を高町 なのは。彼女は気怠い感覚の中、目を覚ました。最初はベットから動くこともできず、全身を激しい痛みが貫いていた。

 しばらく寝たきりが続き、やっと身体が起こせるようになった頃、なのははお見舞いに来ていたヴィータにふと尋ねる。自分が今1番求めている事を。

 

「ヴィータ……ちゃん? 」

 

「あ? どうしたんだよ。急に暗い声出すなよ、らしくねー」

「タカシ君は? 」

 

「…………」

 

 ヴィータはその問いに何も答える事ができずに押し黙る。なのはは全て覚えていた。見えていたのだ。自分が誰に庇われ、一緒に墜ちたのか。ましてや、それが幼馴染となれば尚更心配になると言うもの。

 しかしヴィータには答えられない。ヴィータ自身も分からないのだ。

 

「私……覚えてるの。あの時、私の事を何かが貫いた時……私の前にタカシ君がいた。私を守ろうとしてくれた……でもタカシ君も一緒に……ねぇヴィータちゃん! タカシ君無事なんでしょ!? それだけでも教えてよ!? ……どうして何も言ってくれないの? ヴィータちゃん!! 」

 

「わかんねぇ……」

「え? 」

 

「私にもわかんねんだよ!!! 」

 

 ヴィータはつい大声で、そう吐き捨てる。なのはの状態も忘れ、責任を感じている自分を強く貶めていた。

 

 

 もっとちゃんと確認していれば……

 

 少しでも不自然さに気がついていれば……

 

 

 そう考え始めたら止まらないヴィータは強く拳を握り締める。そんな様子のヴィータになのはは戸惑った。こんなヴィータの状態はなかなか見るものではないからだ。この状態を見た事があるのはかつてなのはがヴィータと敵対していた時。余裕のないヴィータの表情である。

 

「ヴィータちゃん……その」

「行方が……わからねぇ……」

 

「え……」

 

「タカシは……どこかにさらわれた」

 

「何……言ってるの? わ、私ヴィータちゃんの言ってる事……よくわかんない。もっとちゃんと……っ!? ヴィータ……ちゃん…………」

 

「ごべん……ごめ゛ん゛……な゛の゛は……ごめん」

 

 ヴィータはひたすら謝る。泣きながら、あの夜を後悔して。だがなのはは、納得もしていなければ理由もよくわかっていない。しかしヴィータの様子から、それ以上なのはは何も聞けなかった。

 

 

 それから……数年。

 

 

 なのははあの夜の出来事を全て聞かされた。タカシが何者かにさらわれ、行方不明になっているという事を。

 

「タカシ君生きてるよね。私……頑張るから。頑張って体戻してタカシ君の事探すから……だから……だからタカシ君も……」

 

 タカシが写っているみんなとの集合写真。それを見て、なのははそう呟いた。まるで自分に言い聞かせるように。信じた心を折らないように。タカシがまだ生きていると信じて。

 

 

 しかし……タカシの状態は、なのはが思っているよりはるかに残酷で、取り返しがつかない状態であるという事をなのははまだ知らない。

 

 

 あの事件から8年。それまで噛み合わなかったタカシとなのは達の歯車が少しずつ噛み合い始める。

 

 

 

 それはまるで運命であるかのように…………

 

 

 

 

 

 

 

「失礼します! 本日、この隊の清掃をさせて頂く清掃部隊のタカシと申します。早速ですが打ち合わせを」

 

「おう。と言うか別にそこまでかしこまらんでもいいんだぞ? 初対面じゃあるまいし、前もここの清掃お願いしたじゃねーか? 」

 

「えっと……ここの清掃はした事あるのですが……ナカジマ三佐とは初対面の筈では? 」

 

 今日、陸上警備隊第108部隊の部隊長であるゲンヤ・ナカジマは自分の部隊の定期清掃の日であった。決まって清掃に来るのは清掃部隊の部隊長。1人しかいないのだから当たり前だ。

 だがゲンヤ・ナカジマはここでおかしな違和感を覚える。彼とは絶対に初対面ではない。ましてや前の時まではかなり親しく接して来たつもりであった。

 

「は? いやいや、お前……あれ? 本気で言ってんのか? ……まぁ〜いいけどよ。取り敢えずよろしく頼むわ」

 

「はい! お任せください。皆さん仕事はそのまましていてくださって構いませんので」

 

「お、おお。そうだったな。お前の仕事は誰にも真似できないから正直助かる」

 

 つい最近まで、管理局ではある問題が起き、深刻な問題を抱えていた。それは各部隊……その隊舎の清潔具合だ。確かに定期的に各個人では掃除をしているのかもしれない。部隊によっては下っ端の仕事だったりもするだろう。しかしそこでやる掃除などキチンとしたものではない。ましてや、忙しい部隊ともなればそんな事をしている時間などないのだ。

 管理局には元々掃除専門の部署が存在した。ただし、それは存在していたと言うべきもの。様々な次元世界を管理する管理局は人手が乏しく。そこに人を回している余裕はなかった。

 

「えー、108部隊の皆さん! 今日は定期清掃の日ですので多少なりとも僕に協力の程よろしくお願いします! 」

 

「何言ってんだお掃除屋さん! あんたがやってくれるなら協力する間もないだろ? みんな忙しいから助かるぜ。なぁ〜みんな? 」

 

 108部隊の人間はタカシに対して絶大な信頼を持っている。もし仮に清掃業務で邪魔になるような事があれば進んで協力する事もやぶさかでない程だ。

 

「ふふ、みんなお掃除屋さんと久しぶりにあったから嬉しんですよ。私にも何かお手伝いできる事があったら言ってください。って言っても、協力できる事なんかないでしょうけど」

 

「いやぁ、そんな事ないよギンガちゃん。その気持ちだけあれば、気持ちよく仕事ができるし。さて、それじゃ始めますか! 」

 

 108部隊の人間からすれば隊舎の床は汚く見えていない。タカヤが定期的に掃除をしている為だ。それでもタカシからすればこの床は汚い部類に入る。

 

「お掃除屋さんが使ってるそのデッキブラシ珍しいですよね? 持つところからブラシ部分まで全部銀ピカなんて……ちょ、ちょっと持たせて貰えたりなんかして……だめですか? 」

 

「ん? 別にいいけど……持てる? 」

 

 さっきからタカシと親しそうに話しているのはここの部隊長の娘。ギンガ・ナカジマである。彼女は珍しいタカシの道具に興味をそそられ、少し触ってみたくなった。しかしタカシに持てるかと聞かれ、それくらいと思いながらデッキブラシを上に上げようとする。

 

「ふぬっ! ……あれ……ぐぬっ、んー!! ……嘘……上がんない」

 

「あはは、だから言ったのに。これ重いから女性には無理だと思うよ」

 

 ギンガはこの時まさか自分が持てないとは思っていなかった。何故なら特殊な事からギンガは力にはそれなりに自信があったからだ。無論、この部隊で男だろうがギンガに力でかなうものは誰1人としていない。

 さらにはタカシの体つきも服の上からだと普通で、とてもマッチョには見えない。つまりは、自分には持ち上げられないはずがないと言う自身があっての事だったのだ。

 

「よっと! 」

「か、軽そうですね……」

 

「え? う〜ん……そうだね、もう慣れたかな」

 

「へ、へぇー……」

 

 タカシはギンガからデッキブラシを受け取ると、ぐるりと回しながらブラシの方を上のして右肩に乗せた。それを見ていたギンガはあからさまに悔しそうな表情を浮かべ、棒読みで羨ましそうな声を上げる。

 するとタカシは肩に乗せた相棒を左手で左側に『軽く』振り抜いた。ただ振り抜いただけ。だがそれはタカシにとっての軽くであり、実際傍にいる人間からすればそうは見えない。

 

「はへ〜」

 

「どうしたのギンガちゃん? あ、ごめん!? どこかぶつかった? 」

 

「あ、いえ、そうではなくて……凄いなぁ〜て。って言うか……今の仮に直撃したら私死んでる気が…………」

 

 実際タカヤが108部隊の仕事の邪魔する事なく清掃をしているのは間違っていない。ただし、それはあくまでタカシが邪魔をしていないのであって、今の光景に目を奪われている部隊員の手が止まっているのとは別の話だ。

 今何が起こっているかと言えば、タカシがデッキブラシを振り抜いた瞬間の事だ。その部屋全体に突風が吹き荒れた。ただタカシの熟練された技により、余計な物は吹き飛ばさず、床や机、部屋にあるありとあらゆる埃をすべて部屋の後ろの壁に叩きつける。

 

「い、いつみても凄いな…………」

「ああ、部屋の埃があの壁に磔だ…………」

 

「さて、壁に集めた埃を掃除しますかね! お仕事お仕事〜」

 

「あはは、私も仕事しよ(お掃除屋さん本当に仕事楽しそうだなぁ〜)」

 

 その後、タカシは部屋の隅から隅まで綺麗にし隊舎はピカピカになった。

 

 

 ただし!

 

 

 ここで勘違いしてはいけない。タカシの仕事はこれで終わりではない。本番はここからだ。それは隊舎の人間が帰った後に行う。タカシがやろうとしているにはワックスがけだ。流石にこれだけは人がいる間にできない為、部隊の仕事が終わった後行う。

 

「はぁ〜終わってしまった……今日の仕事……仕事……もう終わりかぁ……もっとないかな仕事……仕事……あ! そうだ、今日はあそこに行こう! そうしよう! 」

 

 午後20:00。ワックスがけを終えたタカシは、思い立ったように片付けをすると、部屋の荷物を元どおりにし、道具を持ってその場から出た。

 タカシが向かったのは管理局の施設や隊舎ではない。タカシが向かったのは聖王教会だ。理由は単純。仕事だ。タカシは1日の仕事が終わると決まって悲しい気持ちになり、よく仕事を求めてはこの場所へとやってくる。

 

「すいませんシャッハさん、どこかお掃除する所はありませんか? あ! 勿論お給料なんていりませんから」

 

「い、いや……その……ですね。先日もそう言って教会内をピカピカにして貰いましたし……とてもタダ働きして貰った量と質じゃなくて……私としてもそろそろ罪悪感が半端いものに………」

 

「シャッハさん! 」

「は、はい!? 」

 

「お願い……です……人助けだと思って……ぼくに……ぼくにお仕事を……」

 

 ここのシスターであるシャッハと呼ばれる女性は今困っていた。目の前でタダ働きさせてくれと自分の両手を包み込み、泣き目で懇願してくる人間がいるからだ。彼女からしてみれば意味がわからない思考である。誰が好き好んで報酬もない仕事をやりたがるのか。この場合、立場や思っている事がすべて逆転してしまっていた。

 

「そ、その……おねがい……します」

「本当ですか!? ありがとうございます! 」

 

「本当はお礼を言わなきゃいけないのは私の方なんですが…………」

 

 結局押し負けたシャッハは教会内の清掃をお願いした。そしてしばらくタカシの様子を見ていたシャッハだったが、タカシがあまりにも楽しそうに仕事をしている為、邪魔をしまいと持ち場へ戻る。

 一方タカシは気がすむまで掃除を楽しみ、満足するとシャッハにお礼をいい、聖王教会を出る。その時刻深夜0:00。普通なら残業代がついてもおかしくない時間である。

 

「もっと仕事したい……でも眠いからしょうがないよね。寝なきゃ……ん? 」

 

「誰か助けて下さい!? 」

 

 タカシが寝床に戻ろうとしていた時、その途中で襲われている女性を見つけたのだ。血まみれで、その顔に恐怖を滲ませながら、必死に逃げる。後ろからは顔をニヤつかせた男が追いかけてきていた。その手にナイフを持ち。

 

「ヘッヘッヘ、捕まえた」

「いや!? 」

 

「はいそこまで! 」

 

「なっ!? 離せ、なんだてめぇは!? 」

 

 女性が捕まったところでタカシが男をつかみ女性から離した。だが男もこのまま無抵抗でいるわけはない。タカシを押し飛ばし、ナイフを構える。

 

「てめぇ何者だ? 」

 

「何者って言うか……一応管理局なんだけど……」

「何!? ふ、ふん! だがお前はヒョロそうだ。お前をボコボコにしてから彼女をいたぶるとしようか」

 

「彼女ならもう逃したけど? 」

 

「なに!? ……こ、このぉぉ……」

 

 男は理不尽にも逆上してタカシを睨みつける。そして一瞬でタカシに飛びかかると、馬乗りになりタカシの左肩をナイフで貫いた。

 本来例え犯罪者だろうとタカシは争う事を好まない。故に相手があまりにも手荒な事をしない限りは何もする気がないのだ。

 

「あぐっ!? 」

 

「なんだお前、弱いじゃねーか。本当に管理局なのか? お? 面白いもん持ってんな? よこせよ」

 

「やめっ……それに……触るな……」

 

 男は刺したナイフをグリグリとしながらタカシの腰についているボトルに目を向ける。そこには宝石が虹色に光る宝石が埋め込んである為、興味をもったのだろうが、男にとってはそれは失敗だった。

 ボトルを外そうとタカシの腰に手をかける。

 

「あれ、外れねーな? お? 」

 

 たまたまボトルのダイヤルを回してしまった男。ポンっ! と言う綺麗な音がし、ボトルの蓋が開く。

 

「あ……あぁ……ぁ…………」

 

「ああ? なんだお前、一体どうし、あがっ!? 」

 

 タカシの目から光が消え、その瞬間に男の首を片手で掴む。上へ、上へと男の体が上がり、とうとう足が地面から離れた。するとタカシは男をその辺に投げ捨て、自分のリュックに挿してある愛用のデッキブラシを抜き放つとゆっくり男に近づく。

 

 

 地面を引きずる鋼鉄のブラシが、ギリギリと音を立てながらコンクリートの地面を引っ掻き…………

 

 

 その音が男の方へと恐怖を強く与えながら近づいて行く…………

 

 

 その音はまるで意志のない機械を連想させるかのように…………

 

 

 男を殺しにやって来る…………

 

 

「く、来るな!? 来るな来るな来るな来るな来るな!? あ、ああ……ひっ!? 」

 

 

 男の足を黒い液体が濡らす。それはタカシのボトルから無制限に流れ出す地獄の洗剤。敵を追い詰めるように広がり、捕らえた者の心を壊す恐怖の魔薬。

 

 

「ぎゃぁぁああああああああああああああああぁぁぁぁ…………」

 

 

 断末魔とも言える男の悲鳴は、深夜の空気を一変させた。それから数分後。被害にあった女性の通報で、その場に管理局員が駆けつけた。しかしそこで彼らが見たのは、重症の男。見事に頭蓋骨を割られ、死んでこそいないが瀕死も同じであった。

 

 そして……翌朝

 

 

「こ、これ…………」

 

 この夜の出来事は事件として扱われ、執務官であるフェイトの管轄となったが、彼女は現場を見て驚愕する。その場に残されていた大きなクレーター。街中の公園で、まるで怪物が暴れたかのように残された痕跡。

 

 

「誰が……こんな事を……っ!? ……黒い……液体? 嘘……まさかミッドに……いるの? 」

 

 フェイトが見つけたのは、昔見た黒い液体。この事件が昔とあまりにも酷似した状況である事から、彼女は犯人に目星をつける。

 

「目的は分からないけど……必ず見つける」

 

 

 

 それが……どんな結末をむかえるかもわからぬまま…………

 

 

 

 

 

 

 

「あれ? お掃除屋さん? 昨日は隊舎の清掃ありがとうございました。おかげで私の隊舎ピカピカで、今日も気持ちよく仕事できそうです。それで今日は別の隊の掃除ですか? 」

 

 ギンガは自分の隊舎へ向かう途中、たまたまタカシを見つけ、挨拶をする。いつも通りに、何も変わらず。だが、ギンガは思う。考える。探しても見つからない答えをいつまでも。自分は昨日となにも変わっていないのに。

 

 

 

 そう……なにも変わっていない筈なのに……と。

 

 

 

「……えっと……どこの隊の方でしたっけ? 」

 

 

 




次回もよろしくお願いします。
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