魔法少女リリカルなのは!? 「プロジェクト社畜計画」   作:ヘルカイザー

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ども〜



ではよろしくお願いします!


第3話《共有できぬ再会》

 ある日の事、リンディはタカシに通信を入れていた。話さなければならない事があるからだ。

 

「急に連絡入れてごめんなさいねタカシ君。それで……ちょっと相談があるのだけどいいかしら? 」

 

 《はい! お仕事ですか? 今度はどこの……リンディさん? 》

 

「はやてさん、わかるわよね? タカシ君のお友達よ? もう何年も会ってないと思うのだけど。と言うか……私が会わせなかったのよね」

 

 リンディは申し訳なさそうに話を続ける。内容はある場所の清掃。それも一定期間専属のものだ。

 リンディはこの時、タカシが話を理解している前提で進めていた。だがそれはタカシにとってまず問いたい事がある内容であった。

 

 《すいませんリンディさん? はやてさんって誰ですか? 》

 

「え……何……言ってるの? はやてさんよ? あなたのお友達の……まさか……あ、貴方使ったわね!? それは……それはどんな事があってももう回しちゃダメだって、開けちゃダメだって言ったでしょ!!! 」

 

 《え、えっと……それも覚えてなくて…… 》

 

 身に覚えのない事にタカシは困惑する。タカシは何を忘れたのか自覚していない。例え今リンディに怒られているとしてもわからない事はわからない。タカシにはあの事件の記憶など残されてはいないのだから。

 

「はぁ……ごめんなさい。しょうがないわよね。それじゃ……もういいわ。今回の話しは無し。もうどうしようもないから」

 

 《ごめんなさいリンディさん、僕のせいで》

 

「いいのよ。それじゃ……仕事頑張ってね」

 

 《はい! 》

 

 リンディは気にしていないと言わんばかりに作り笑いをし、それで通信を落とした。そして、通信が切れた途端に目の前の机を叩く。その顔は悲しみに満ち溢れていた。

 どうする事もできない無力感。それが今のリンディを襲っている。

 

「どうするのよ……唯一覚えてたはやてさんの事まで忘れて……このままじゃ……」

 

 

 

 

 

 

 場所は変わり、タカシは仕事でとある施設に来ていた。勿論そこは管理局の施設だが、そこでは今日、Bランクの昇格をかけた試験が行われる予定である。

 タカシはまずそこの担当者に挨拶をしに向かった。掃除をするにしても場所を聞かなければどうしようもないからだ。

 

「あ、すいません。高町 教導官でよろしいでしょうか? 」

 

「え? あ、はい。ご苦労様です! それで……」

 

「清掃部隊の者です。ここの清掃と伺ってますが……」

「ああ〜、はい! 伺ってます。えっと……お預かりしてる資料をお渡ししますので後はお任せします」

 

 今日この施設を担当しているのはなのはだ。彼女は教導官である為、昇格試験の試験管を務めている。

 

「あの……」

 

「はい? 」

 

 なのはは無意識か、タカシに再度声をかける。なのははタカシから他人のそれとは違うものを感じとっていた。まるで前から知っているようなそんな感覚を。

 

「どこかであった事……ありませんか? 」

 

「いえ、初対面の筈……ですよ? 」

 

「そ、そうですよね!? ごめんなさい、あはは…………」

 

 タカシとなのはが顔を見ずにもう8年が経過している。いくら面影があろうとも、なのははそれがタカシだとは気付けなかった。もしここで気づいていれば後々の物語は別のものになっていたかもしれない。

 

【マスター? どうかなさいましたか? 】

 

「……ううん。なんでもないよレイジングハート。ただ……なんとなくタカシ君かなぁ……って思っちゃって。そんなはず無いのに…………」

 

【マスター、彼はきっと生きてます】

 

「うん、そうだよね。タカシ君意外としぶといし。ありがとうレイジングハート」

 

 

 

 

 

 

 なのはから資料を受け取ったタカシは清掃場所へと移動した。しかしその場所は外であり、何やら瓦礫や廃墟があったりと普通の場所ではなかった。

 タカシが受け取った資料をいくら見てもこの場所に間違いは無い。するとタカシの前に1人の局員が現れる。バリアジャケットを羽織り、あからさまに今戦闘の真っ最中だと見てとれた。

 

「う〜ん……もしかして……手違いかな? え、ちょっ!? 」

 

「何よ、人型がいるなんて聞いてないわよ! 」

 

 今現れたオレンジ髪の女性はタカシに向け攻撃を開始した。彼女の名はティアナ・ランスター。

 実は彼女、もう1人と今この施設で昇格試験をしている最中であった。だがタカシを試験の一部だと勘違いし、攻撃を始めたのだ。

 

「待って、待って!? 」

 

 タカシは逃げた。全速力で逃げ、攻撃を避ける。しかしいつまでも逃げ続けられるものでは無い。タカシは建物の袋小路に追い込まれた。

 

「はぁはぁ……追い詰めた。さぁ! 覚悟しなさい? 」

 

「だから僕何もしてないだろ!? 」

 

「そんな手には乗らないわ! それともそうやって惑わすのも試験なのかしら。まぁ、いいわ。これで終わりよ! 」

 

「くっ」

 

 ティアナはタカシ銃口を向け、トリガーを引いた。1発の弾がタカシに迫る。タカシはこの時、説明するのを諦めた。代わりに自分の道具の中からデッキブラシを取り出すと、それでティアナの弾を叩き割る。

 

「仕方ない……フッ、せいっ! 」

 

「なっ!? 」

 

 タカシは愛用のデッキブラシを高く振り上げ、そのまま目の前の地面に叩きつける。勿論ティアナは何をするつもりなのかと警戒するが、その刹那、その場は爆発した。

 正確にはデッキブラシの持つ絶大な荷重とタカシの力により、地面を砕き、巨大なクレーターを作る事によって、あたかも爆発が起きたように見せただけ。現にタカシはその隙に逃げ出していた。

 

「もう! 仕事しに来ただけなのに」

「スバル今よ! 」

 

「っ!? しまっ!? 」

「うおぉぉおおおおおお!!! 」

 

 気がつけば脱げていたタカシの真横から青髪の女性が突っ込んできていた。タカシは急な事で対応できず、その拳をまともに喰らってしまった。さらにはぶっ飛ばされ、ビルに命中。そこが脆かったためかビルは倒壊し、瓦礫の下敷きとなった。

 

「やったねティア! 」

 

「ええ」

「ストップ、ストップですぅ〜!? 」

 

 少し遅くはなったが試験管の1人が試験を止めにやってきた。彼女達の試験状況は当然ながらモニターされている。しかしタカシが試験会場にいる時点でこれは止めに入らざるおえない。

 だがこれは手遅れと言っても過言ではないだろう。何故なら既にタカシは瓦礫の下敷きなのだから。

 

「あわわ……大変ですよぉ……すぐに助けないと」

「あ、あの……これはどう言う……」

 

「ち、小さい……」

 

 試験管の1人はなのはだが、今来ているのはなのはの友達、八神 はやてのユニゾンデバイスであるリインフォースツヴァイである。彼女は体のサイズを小さくしており、大きさは30センチ程度。だからモニターでしか会っていなかった2人は少し驚いた。

 

「今2人が戦ってたのは試験とは関係のない人なんです! どう言うわけか迷い込んでたみたいで……だからすぐに」

 

「ええっ!? 」

 

「ティ、ティア? この黒い液体」

「スバル、今はそんな事どうでもいいわ。早く……っ!? 」

 

 突如大きな音を立ててその場の瓦礫は辺りにぶっ飛んだ。言うまでもなくやったのはタカシだ。さっきまで瓦礫があった場所で、頭から血を流し、光を失った目でその場に立ってた。

 

「よ、よかったですぅ! 無事で……っ!? 2人とも伏せるです!! 」

 

「「へ? 」」

 

「あぐっ!? うぐぐっ……なっ!? きゃぁぁああああああ!? 」

 

 リインは2人に伏せるように指示を出すとその場にシールド張りだす。理由は簡単だ。タカシがデッキブラシを振り抜き攻撃を仕掛けてきたためだ。だがシールドなどタカシの前では飴細工も同然。少し持ちこたえたものの、一撃で砕け散った。

 

【働け……働け】

「ぁ……ぐっ……」

 

【働け! 】

 

「ハタ……ラク…………」

 

 タカシは今まともに正気を保っていない。それは自分の意思でボトルを開けていないからだ。故に、こうなるとタカシが元に戻る為には敵と認識した人間を排除するか、タカシ自身が気絶する他ない。ただ、この状態のタカシはを気絶させるのはほぼ不可能に近かった。

 

「ぐっ……何なんですか……あ……」

 

 リインは目の前のタカシに恐怖を覚えた。これ程までに攻撃する事に躊躇のない人間をリインは見た事がなかった。何故なら今の一撃、リインがシールドを張らなければ確実にティアナとスバルは死んでいる。

 

 

「いや……ですぅ……来ないで…………」

 

 

 掠れる声は引き摺られたブラシ音に消え…………

 

 

 生のない足音はその者を恐怖に貶める…………

 

 

 抗いようのない力の差は絶望を…………

 

 

 その絶望は…………

 

 

 彼女を殺す得物となる…………

 

 

「……え? フェイトさん!? 」

 

「くっ……なんて……力……なんだ」

 

 タカシのデッキブラシがリインに振り下ろされた時、試験を見ていたフェイトがバリアジャケットを羽織りその場に乱入した。バルディッシュでタカシの攻撃を受け止め、間一髪リインを救った。

 だが今の一撃でバルディッシュにはヒビがはいる。この程度の破損ならリカバリーできると思っているフェイトだが、それ以上にバルディッシュを一撃で破損させた威力に驚いていた。

 

 

 

 そして……フェイトは気づいてしまう。

 

 

 

「黒い液体に……この威力の打撃……まさか……貴方が…………」

 

【サー!? 距離を取ってください!? 】

「え? なっ!? 」

 

 フェイトは気づいた。タカシが自分の探している犯人だと。しかし気づいて、簡単に捕まえられる程タカシは普通の相手ではない。よってフェイトは苦戦を強いられる。防御できない一撃。攻撃を避けず、なおかつ倒れない異常なタフネス。フェイトは防戦一方であった。

 

 

「バルディッシュ、こうなったら大きいので……バルディッシュ? え……」

 

【サー……申し訳……機能……が……ぁ…………】

 

 バルディッシュは突然沈黙する。原因は破損ではない。それは黒い液体。だがその効果をわかっていないフェイトにとっては現状を理解できていなかった。

 

「バルディッシュ!? 一体……っ!? しまっ!? 」

 

 フェイトは動揺して隙を見せた。よってタカシに攻撃をさせる余裕を与えてしまい、今目に前にデッキブラシが迫りつつあった。フェイトの顔の前に鋼鉄の鈍器が影を作る。

 しかしそれはフェイトに当たる直前でピタリと止まった。

 

「ぅっ……あ……ぅぁ……この……子は……ダメ……だ…………」

 

「え…………」

 

 タカシは片手で頭を抱えながら一歩づつ下がる。そして持っていたデッキブラシを足元に落とすと、震える手でボトルの蓋を閉めた。

 

「はぁ……はぁ……はは、無事で……よかっ……た…………」

 

 無傷ではなかったが、無事なフェイトを見て、タカシは少し笑うとその場に倒れこむ。タカシは完全に意識を失った。フェイトは安堵してかその場に尻もちをつき、息を吐く。

 

「助かった……の? にしても……何者なの? ……っ!? ……あ……嘘ぉ……」

 

 フェイトは倒れたタカシの胸元から溢れていたロケットペンダントを見つけた。するとそれを見たフェイトの目から涙が溢れ出る。そのペンダントはタカシが倒れた衝撃で開き、中が見えていたからだ。

 そのペンダントに入っていた写真は小学生だった頃のフェイトの写真。

 実はこのロケットペンダントはタカシが唯一大事に持っていた品。全てを失い、それでも自分を失わずに生きてこれたのは、名も忘れたフェイトの写真あっての事。

 

「そんな……こんな事ってぇ…………昔私が……タカシにあげた……ペンダント……本当に……タカシ……なの? 」

 

 歯車が噛み合い、連鎖するように動き出した運命はもう止まらない。1つ1つは小さな歯車でも、それらが噛み合う事でより大きな歯車を動かし始める。

 それは幸福か絶望か……それは誰にもわからない。ただ、それはただひたすらに加速を続け、分岐点と呼ばれる壁にぶつかるまで進み続ける。

 フェイトはやっと、大事なものを見つけた。それはおそらくフェイトやその周り、かつてタカシの友となっていた人間にとっては幸福なことなのかもしれない。

 しかし彼女達は知らない。自分達の存在がタカシにどんな影響を及ぼす事になるのか。タカシの止まっていた時間を動かす事が、どんなに残酷で、彼に苦痛と呼べる思いをさせるのかを。

 

 

 

 彼の背負った物は誰にも理解できない…………

 

 

 

 彼の持った力は誰にも止める事はできない…………

 

 

 

 例え、他人に彼を刻み付ける事ができても…………

 

 

 

 彼には何も刻む事はできない…………

 

 

 

 それが……D/1と言う彼に与えられた名の重み…………

 

 

 

 かつて、都市伝説として生まれた怪物は、人知れず鼓動を始めている。誰に求められたわけでもなく、自分で求めるわけでもなく。

 

 

 

 ただ、ただ……『wage slave』の欲を満たすが為に…………

 

 

 




次回もよろしくお願いします!
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