アレは嘘だ。
とは言え、今回は説明回です。
ぶっちゃけ、表に出すつもりはなかった裏設定なのですが、気になる方もいるのではないかと書きました。正直難産でしたが、書いてて楽しかったです()
ただ、DBの世界観には少し合わないかなと思われるような設定かつ説明回なので、もし見苦しいようでしたら読み飛ばしていただいても大丈夫です、後の展開に影響はありません(多分)。
また、わかりにくい設定かと思いますので、後書きにできるだけわかりやすくまとめてあります。最悪そちらを参照にしていただければ問題ないかと。
でももしこういう、くどくて癖の強いものでもよければ読んでやってください。
次話からは元の作風に戻りますので、その辺はご安心いただければ幸いです。
また、閑話としてifの話をかければなぁとも思ってますので、もし《エミューゼvs〇〇がみたい!》とか《こんな場面ならどうなるの?》などアイデアがあれば、良ければ提案してみて下さい、喜んで飛び付きます
あとですね、なんとイラストが届きました!
後書きに挿絵として載せさせて頂きます! ネコサさん、本当にありがとう!
後書きが本編になっちゃう!
追記
スミ ネルさんから素晴らしい感想を頂いたので加筆修正を行いました。
閑話 かあちゃんのヤンチャ時代と舞台裏の淀み
「……何をやってんだか、ボクは」
宇宙の暗闇の中にて佇む男が自嘲気味に言葉を漏らした。
一目で只者ではないとわかる風態をした男だった。
眠たげな瞳と垂れ下がった長い耳とは裏腹に、その佇まいに隙など微塵もない。
態度も堂々としたもので、少し先で“最後の輝きを放つ星”の爆発など全く恐れていない。
「ご機嫌斜めですねぇビルス様。目が覚めるなりサイヤ人を破壊すると仰ったのは、ビルス様じゃありませんか」
そんな彼ーーー破壊神ビルスに、彼の付き人のウィスが不思議そうに声をかける。
鬱陶しそうに顔を歪めるビルスであったが、すぐに肩を竦め、反論することなく視線を“ある方向”へと移す。
「どうやら“アレ”が目覚めたみたいだったからね。余分なリスクは破壊してしまった方がいいだろ」
ビルスの視線を追うと、恐らく消滅前の惑星ベジータから射出されたものであろう、ポッドがあった。
赤子のカカロットと、エミューゼの乗るポッドである。
「寝坊助のビルス様が珍しく惰眠を貪ることを止めたかと思えば……彼女に同情でもしてしまいましたか」
「バカを言うな。ウィスこそ、“アレ”を“彼女”だなんて、まるで人間みたいに…お前こそアレに同情してるんじゃないだろうな」
「おや、ビルス様。私は昔から彼女には同情していると、前々から言っているではありませんか。彼女は歴とした人間ですよ。少なくとも、“今はね”」
心外です、と言わんばかりに口元に手を当てて態とらしく振舞うウィスに、胡乱げとも憮然ともとれる表情を向けるビルス。
そうだったっけ、と呟きながら頭を掻き。
再び惑星ベジータのあった場所に視線を戻す。
しかし既にビルスの意識はそこにない。
彼の思考は過去の記憶へと割かれていた。
遥か昔。
古代サイヤ人が跋扈する、太古の時代の事である。
ーーーーーーーーー
若い界王神は湧き上がる激情をこらえきれず、テーブルに拳を叩きつけた。
陶器がぶつかり合う何処か小気味良い音を立て、ティーカップが跳ね上がる。
「何故です……何故このような存在を放置するのです!」
震える手で必死に人差し指を立て、水晶玉に突き立てる。
正確には、水晶玉に映る怪物に。
若くして界王神となった彼は、正義感に溢れる熱血漢を絵に描いたような人物であった。
そんな彼にとって、水晶玉に映る怪物は到底許しておけるものでは決してなかった。
彼は義憤に駆られるままに、破壊神に対しても臆する事なく声を荒げた。
「こりゃあ、派手にやってるねぇ…ボクの仕事を盗られたような気分だよ」
水晶玉を一瞥したビルスはそんな彼を軽く受け流し、どこか投げやりといった様子で悪態をつく。
水晶玉には、1人の少女……の形をした怪物が映っていた。
破壊と殺戮の具現。
猛者を屠っては心底楽しそうに嗤う鏖殺の徒。
エミューゼが繰り広げる凄惨な惨劇が映し出されていたのだ。
「あんな怪物を放置しておけば、この宇宙は滅びてしまう…そんな事くらい、貴方たちならわかるでしょう!」
界王神は絶叫した。彼は自身の担当しているこの宇宙を愛している。
まだ界王神となって間もないが覚悟は他の誰にも負けはしないと自負している彼は、破壊神にも臆する事なく叫んだ。
激情と共に血反吐でも吐きかねない、痛みを伴った叫びであった。
あまりある迫力を持った叫びであったが、しかしビルスは疲れた仕草でやれやれと首を振るばかりであった。
「わからないね。だって、“アレ”が宇宙を滅ぼすなんてありえないし」
「職務に実直なのは素晴らしいですが、少し勉強不足ですねぇ…」
ビルスは気のない返事をし、ウィスは呆れたようにため息をつく。
そしてそのままテーブルに付き、好き勝手にくつろぎ始めてしまった。
尚も動こうとしない破壊神とその付き人に業を煮やし必死に食い下がろうとするも、普段と様子の違う2人を前にして口を噤む。
「あのさぁ。ボク達から見ても化物としか思えないような奴がそう簡単に産まれると思うのか。突然変異なんかで、そうホイホイ現れると思うのか?」
「言って仕舞えば、彼女は唯の自然災害ですから、気にするだけ無駄です。台風だとか火山の噴火だとか…いえ、規模的にはブラックホール以上ですが、そういった自然現象にカテゴライズされるのですよ」
テーブルに溢れた紅茶を片付けながら、ウィスは淡々と語る。
本当になんでもない事なのだと、落ち着いた様子で入れ直した紅茶を口に運びながら、彼は語る。
「確かにこの調子でサイヤ人達が暴れていれば宇宙は滅びてしまうでしょうね。“彼女さえ産まれてこなかったら”の話ですが」
「まさか………そんな馬鹿な」
「馬鹿もクソもあるか。“アレ”はそういう存在だよ。滅びたくないという宇宙の意思そのものが、滅びの原因となる“サイヤ人を滅ぼすために”産み出した抑止力の権化だ。自然の自浄作用ってやつさ」
「言ってみれば宇宙そのものがサイヤ人を使って産み出したデザインベイビーみたいなものでしょうか。ちょっと過激な白血球とも言えるかも知れませんね」
エミューゼ本人は知らないだろうけどね、と締めくくるビルスを、界王神は不満げに睨め付ける。
嫌な予感が、彼を苛み始めていたのだ。
「確かに彼女は彼女自身の意思がありますし、彼女にサイヤ人を滅ぼしている自覚はないでしょう。異常な才覚を持って産まれた事と、思考を誘導されている以外は、普通のサイヤ人ですから」
「心配しなくてもリミッターくらいはかけているだろうさ。例えば“闘いを愉しめる相手が居ないと生きていけない”とかさ。ほら、これなら最終的に…必然的に自分と同種のサイヤ人がターゲットになるだろう。他に強い奴なんていないんだから」
「皮肉なものですねぇ。誰よりもサイヤ人らしく、誰よりもサイヤ人を愛し、誰よりもサイヤ人であることに誇りを感じている彼女が…他ならぬ彼女自身が、サイヤ人を滅ぼしてしまうのですから」
それでもまだ心配か? という様子のビルスに、やはり界王神は不満気な様子であった。
今の説明を信用していないわけではない。むしろ逆である。
ビルス達の言う通りであれば、サイヤ人達は滅びるだろう。他ならぬ、エミューゼの手によって。一安心していいはずだ。
だが。
しかし、それではーーー
ーーーそれではあまりにもエミューゼが哀れ過ぎるではないか。
先程まで憎悪にも近い感情を抱いていた相手ではあったが、よく言えば善良、悪く言えば未熟で青臭い界王神はエミューゼに同情した。
自分が担当しているこの宇宙にて…自分の預かり知らぬところで得体の知れない力が働いている。
寒気すら感じているのに、じっとりとした嫌な汗が、若き界王神の背中を滑り落ちた。
「それが、本当なら……サイヤ人を滅ぼしたあと、彼女は生きる目的を失うのでは……?」
「そりゃあ、あのサイヤ人達を滅ぼしてしまえるような奴がそのままのさばってちゃ危ないだろ。生きる目的を失って失意に堕ちるとこまで計算づくで設計したんだろうさ。悪趣味だよねぇ、宇宙の意思もさ」
「使い捨てですか…一見して悪魔みたいな奴ですが、仮にも宇宙を救う存在なのでしょう…なのに…」
蓋を開けてみれば、憎むべき悪魔は、宇宙を救う救世主で、役目を終えれば用済みとばかり捨てられる。
それでは、あんまりではないか。
そんなこと、あんまりではないか。
何か反論したいが、しかし結局言葉に詰まり、何も言えずに界王神は黙り込んでしまう。
釘をさす必要があると、ビルスは思った。
若い界王神が余計なことをしない様に、彼は追い打ちをかけるようにして、うつむき黙り込む界王神に鋭い言葉を投げかける。
「頼むから余計な事はするなよ。変に同情して“アレ”に真実を教えたり下手に刺激を与えてたりなんてして暴走でもされたら、本当に宇宙が滅びかねないからな」
「逆に言えば、サイヤ人を滅ぼして初めて彼女は解放されるのです。自殺なんて真似をしなければ、その時ようやく彼女自身の人生が始まると考えましょう」
「……はい」
「いいか、絶対に干渉するな。これはボクだけじゃない、全王様のお考えでもあるんだからな」
その言葉を最後に、3人の誰も言葉を発する事はなかった。
沈黙こそが、雄弁に彼らの心境を物語っていた。
やがて、彼らの予想通りに古代サイヤ人は滅び、エミューゼもまた眠りにつく事になるが、彼らの心にかかるモヤは晴れることはなく、むしろ濃くなる一方である。
ーーーーーーーーー
「それにしても」
不意にウィスはビルスに語りかけた。
過去の回想に没入していたビルスは耳だけをウィスに寄越すことで返事をする。
「起きるなりサイヤ人を滅ぼすなどと…いったいどういった風の吹き回しです?」
「別に。前々から気に食わなかったんだよね、サイヤ人って連中はさ」
「まさか、彼女をサイヤ人という呪縛から解放してあげようだなんて思ってませんよね?」
ウィスの指摘にビクリと肩が動き、ビルスは口を噤んだ。
しまったと、思った時にはもう遅い。
また付き人の小言が始まるのだ、うんざりした気分でビルスはウィスに視線を投げる。
「そんな事をしても意味ないでしょうに。いっそビルス様が彼女と闘ってあげれば良いではありませんか」
そして、破壊して終わらせてあげればよい。
そう、ウィスは言外に語っていた。
「そいつができない事はお前だってわかっているだろ。アレはどうしようもなく、“古代サイヤ人”の権化だぞ」
サイヤ人は闘いの中で強くなる。もしビルスと闘おうものなら、凄まじいスピードで成長し、手に負えなくなるかもしれない。
いや、ひょっとしたら、既にビルスでも手がつけられないなんて事もあり得るかもしれない。
那由多の彼方に等しい可能性ではあるが、相手が相手だけに警戒せざるを得ない。
いくら役目を終えたとは言え、パワーダウンしたわけではないのだ。
寧ろどんなきっかけで現役時代に…いや、現役時代を超えるかわかったものではない。
もし暴走でもすれば、もはや全王様案件になりかねない核爆弾だ。
「全王様もアレには接触するなと言ってただろう。全王様に逆らうなんて真似ができるか」
何を当たり前の事を言っているんだとばかりにウィスを非難するが、ウィスの視線は冷たいままである。
「ですから。全王様に逆らう覚悟もない癖に中途半端に干渉するなと申し上げているのです」
結局、言い返す事も出来ないまま、住処に帰るまで永遠とチクチク付き人に小言を貰うことを覚悟しなければならなかった。
だが、同時に、哀れな小娘の事を考えなくて済むと、ビルスは静かに瞼を落とし、ウィスの小言に付き合う事にしたのだった。
ネコサ様より頂きました、主人公エミューゼのイラストです!
イラストを描いていただけたのは初めてなので正直テンション上がりまくりです!
ありがとうございます、ネコサさん!
孫悟飯老人の料理を食べているところでしょうか、非情に可愛らしいイラストに感謝です!
【挿絵表示】
【挿絵表示】
さて、今回の話はエミューゼの正体というか、出生の謎についてです。
まとめてみましたがそれでも長いな…
1.古代サイヤ人ヤバすぎ、もぅマジむり宇宙滅びちゃう
2.滅びたくない宇宙氏、古代サイヤ人を滅ぼすために、他ならぬ古代サイヤ人エミューゼを産む。
3.つまりエミューゼは宇宙の自浄作用そのもので、台風や噴火やブラックホールやビッグバンみたいな自然災害の一種。宇宙の白血球みたいなもの。ちょっとばかし過激な。
4.でもエミューゼ自身にはその自覚はなく、普通に古代サイヤ人の両親から生まれた事もあって、なんかやたら強い事と思考を誘導されている事以外は普通の古代サイヤ人。
5.でもこんな化物じみた強さのエミューゼを宇宙が野放しにするはずもなく、“強い敵がいないと生きる目的を失う”様に設計された。つまりはエミューゼが失意に堕ちるのは必然であり計画されていた事であった。
6.ぶっちゃけ使い捨てなので、界王神やビルス、ウィスは内心同情気味。彼らからしたら立派に宇宙救っていますからね。
7.彼らがエミューゼに干渉しないのは、役目を果たせば脅威とならない事がわかっていたからです。
型月作品で言えば、抑止力とかギルガメッシュとかエルキドゥに近いのでしょうか。
地球で若干穏やかになっていたのは、役目を果たし終えて宇宙の意思の干渉から解放されたために、彼女本来の意思が表に出てきたからとなります。
とは言え、育った環境が環境な上に種族も宇宙意思による初期設定もヤバいので、緩くなったと言ってもパワーダウンもしていなければ非情さや成長率もまるで衰えてはいません。
ちなみに、正義感溢れる若い界王神ですが。
実は後にゼットソードに封印される老界王神だったりします。
次回は閑話3か、原作無印に入りたいと思います