本編も同時に書いてるので少々お待ちください。
といいつつ、まだ中編2です()
まだも少しだけ続くんじゃ
ぐちゃぐちゃに掻き回された意識の中、ベジータは自分でも驚くほどに冷静であった。
一瞬に過ぎない刹那の間が、永遠のように感じる。
永遠に匹敵する時間の中で、ベジータはぼんやりと目の前の脅威の事を考えた。
なんだ、この女はーー人間、それとも化物か。
いや、違う。これが真の“戦闘民族”なのだろう。
ならば俺やカカロットはなんだというのか。これ程までに力の差がつくほど、自分達の種族は退化してしまったというのか。
今まで信じ続けていた自分の血とは、誇りとはいったいなんだというのか。
眼前のエミューゼからは何の感情も読み取ることができない……しかし、彼女が浮かべている微笑みに違和感を感じた。
ベジータは当初、これを『圧倒的な強者の余裕』として見ていた。
だが、違う。何かが違う。
ベジータは己の死を前に、氷のような冷静さをもってこの違和感の正体を模索した。それこそが自身に残された唯一の道だと、何故かそう感じ取った。
考え抜いた末に、エミューゼは何かに耐えているのだと悟った。
この儚げな花を連想させるような微笑みは、敵を逃さないためのものでは決してない……ただ胸の内にある空虚さを隠すためのものなのだと、ベジータは推察した。
エミューゼの苦悶な微笑みに浮かぶもの――それは虚しさだった。
「足りないというのか」
「……はい?」
ピタリと、ベジータを引き裂かんとしていた暴力を孕む風が止んだ。
「超サイヤ人ブルーとなってもなお、貴様には物足りんということか」
「………王子?」
死を目前にすることで、感覚が研ぎ澄まされたベジータが思ったこと。
それは戦いを始めて以来尽きることの無かった不甲斐ない己への怒りと、かつてない興奮だった。
「うぉああああぁッ………!!」
蝕むようだった痛みが理性という枷と共に消し飛び、全身に気をはち切れんばかりに注ぎ込む。鉛のようになった身体が悲鳴をあげるが、どうということはない。
俺は“サイヤ人”だ。そして、目の前の女は化物などではない、自分と同じ“サイヤ人”なのだ。ならば同じサイヤ人の王子たる俺が勝てぬ道理などない。
ベジータは考えることを放棄した。ただ、目の前の恐るべき存在から放たれる全てを感じ取り、そして捻じ伏せたいとだけ思った。
完全に捕らえらていた体勢からがむしゃらに足掻く。
気が爆発しそうな程に全身に力を込め、一気に解放して身体を回転させると、意図せず不意を突かれる形となったエミューゼの手からベジータが弾き出される。
自由を取り戻したベジータは、素早く距離を取り、全身から聞こえるギシギシと軋む音を頭の片隅に置いやり、しっかりと大地を踏みしめてエミューゼを睨みつける。
「……俺たちサイヤ人は戦うほどに強くなる。それも、相手が強ければ強いほどに……そいつは貴様自身がよぉ〜くわかっているはずだ…ッ!」
「……まさか、先程の攻防で。たったあれだけの一瞬で、成長を遂げたというのですか」
唖然と。しかしどこか興味深そうに。期待を込めた表情をするエミューゼ。
初めて変化したエミューゼの表情をみて、不敵にベジータが笑う。
「貴様が嘆くほど。貴様が絶望する程に、サイヤ人は退化などしていない! 俺たちはまだまだ進化する。貴様のような化石など、あっという間に抜き去って置き去りにしてやる。俺たちサイヤ人の進化は光よりも早いんだ!」
言葉に出来ない程疲労し、まさに満身創痍でありながら、ベジータの身体から活力が溢れていた。
エミューゼの興味深そうな面が、驚愕に変化する。
ベジータは嬉しくなった。
痛みも疲労も、ここに来て気にする意味を失った。否、初めから意味などなかった。奇しくも、かつてベジータの父であるベジータ王がフリーザに挑み、擬似超サイヤ人になった時と同じ感情であった。
怒りと闘いに対する歓喜はいつだってサイヤ人を。ベジータを強く高みへと押し上げた。今再び、あの時の感覚が。初めて自分が超サイヤ人に目覚めた時の感覚が蘇り、失意の底からベジータを引きずりあげる。
呼吸は荒く、ダメージを引き摺ったおぼつかない、重心で、それでもなお滾る闘志を込めてベジータは叫ぶ。
「サイヤ人は戦闘種族だ!!!!なめるなよォーーーッ!!!」
エミューゼの驚愕に、再び変化が起こった。
頬が紅潮し、まるで乙女のような眼差しをしていた。
手を口元に寄せて、目をまんまるにして、まるで世界中に知れ渡る状況でプロポーズを受けた女性のような表情であった。
平たく言えば、胸キュンしていた。それはもうキュンキュンしていた。
エミューゼは、破壊神とウィスの目が点になり、ジャコとクリリンが4016円顔になるほどに、モジモジしていた。
ブルマが危機感を覚えるほどに、エミューゼは乙女になっていた。
「ぇ、へぁ、あ…そんな、私、困ります…」
そんな状況にあって、悟空ただ1人が深刻な表情で、冷や汗をながしている。
「やべぇな…」
「そ、そうよ孫くん、ベジータは妻子持ちなんだから! あんたの母親でしょ、色々不味すぎるわよ、ドロドロの関係なんて私いやよ!?」
「いや、そうじゃねぇ……いや、その通りだったら確かにそれもやべぇけど…ベジータのやつ、母ちゃんの逆鱗を引っこ抜いちまった、殺されっぞ…!」
パニックに陥るブルマだったが、事態は彼女が考える以上に深刻であった。
「そんな大胆な…私、困ってしまいます…だって…そんな……立派なサイヤ人が相手なら……
手加減できません…死合わなきゃ………!!」
この瞬間、エミューゼにとってベジータは戦士となった。
1人の、立派なサイヤ人の戦士として、認めてしまった。
そして、そのサイヤ人の戦士は、自分に挑んだのだ。
暇潰しなど。手加減など。
そんな失礼な真似など、どうして出来ようか。
果敢にも自分に挑んでくる相手を、無碍にはできない。
「素敵です。やはり、サイヤ人は素晴らしい…。私に挑むのはいつだってサイヤ人です。サイヤ人でなくてはならない…!」
先程より濃密に。それでいて純粋な殺気…やや桃色を帯びている気もするが、純粋な殺気を受けたベジータは。
「くそったれが」
悪態をついた。しかし、先程までの恐怖や、諦めの色はない。
身体が満足に動けば、という悪態ではあったが、未だその闘志は揺るがない。
勝てるわけがないという予測と、勝ってみせるという意気込みが同居していた。
確かに満身創痍、身体は重く、自分のいう通りに動いてはくれない。消耗は決して軽くない。
だが、五感は今まで以上に研ぎ澄まされている。今のベジータは完璧でないが故に完璧以上なのだ。
「ど、どういう事だ…消耗しきっているはずなのに、明らかにベジータは強くなっている………!!」
観察眼に優れるピッコロには分かる。立ち上がるだけで精一杯という様子のベジータだが、先程より強くなっている。
エミューゼに痛めつけられる前の万全の状態だったベジータは、今の満身創痍のベジータに触れることもできないだろう。
疲弊からか緩慢な動作であるが、微塵も隙がないのだ。超サイヤ人ブルーの特性を合わせ、無駄というものがまるで感じられない。
「ピッコロも気づいたか。ベジータのいう通りだ。強ぇやつと戦えばオラ達は強くなる。母ちゃんっていう未曾有の強敵を前にしてベジータはサイヤ人として成長したんだ…」
「普通ならあそこまで急激に成長しないし、エミューゼを前にすりゃ戦意喪失して成長もクソもあったもんじゃないけどね。恐怖を乗り越え、サイヤ人としての本能を引き出して、ほんの僅かな細い糸からチャンスを手繰り寄せたんだ。そりゃ強くもなるさ」
それでもまだまだ足りないけどね、と破壊神は付け加える。
「……でも、このままじゃベジータ殺されっちまうぞ。仕方ねぇ、ベジータにゃ悪ぃけど、オラも親孝行に混ぜてもらうとすっか」
そして、この闘いを前にして、この男が我慢できるはずもなかったのであった。
のちの話ではあるが、意外にも、ベジータはこの事に関しては悟空を責めることはなかった。
乙女顔になった母親を見ていられなかったわけでは決してないとは後の悟空の弁である。
フリーザ? あぁ、ラグナ・ハーヴェイの事か。奴さん死んだよ。
フリーザ様は後編に備えてエネルギーを蓄えています。
エミューゼさんは乙女顔ダブル烈風拳の構えですが、アーカードのアンデルセン神父に対する感情のようなものだと思ってください。
別に何億年も生娘で処女を拗らせたわけではありません()
まだ若いし。いけるし。見た目もロリに近いし。
サラッと流しましたが、フリーザを相手にした時、ベジータ王は死にかけの最後の最後に擬似超サイヤ人になっています。悟空がスーパーナメック星人ことスラッグさんを相手になったあの状態です。
いつか書きたい()
ちなみに、花京院が恐怖を乗り越えないほうが強い性能の格ゲーがあるのは内緒な
また後に閑話に放り込みます。