甘粕はヒーローを信じたい   作:namaZ

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なんで続いたし(白目
この話は、頭を空っぽして読むのをお勧めしますよ!!
これだけは、言っときます。アマカスは、何となくで自分の"個性"が何ができるのかを本能で理解しています!!それを踏まえたうえでどうぞ!!












アマカスはヒーローを

 警察もヒーローの目も届かない闇の世界。ヴィランの闇組織の一つである町はずれの倉庫にその男は出向いていた。そして、単身乗り込めば囲まれるのは当然の事。

 

 

「おいおいニーちゃんよぉ!!ここが何処だかわかってんのか!!ああぁ!!?」

 

 

「大切なのは実年齢ではなく肉体年齢だと言う奴がいるが、これは間違ってはいない。真理だ。だが俺から言わせれば一つ足りない」

 

 

 行き成り何言ってんコイツ?余りに落ち着いた態度で会話が成り立たず逆に戸惑う闇組織の組員達。

 

 

「それは思いの強さ。それさえあれば"個性"の優劣など関係ない。そう、思いこそが力なのだ!」

 

 

 最初こそ馬鹿にしていた闇組織の組員達も、この男の空気(カリスマ)に呑まれ圧倒されている。

 この男とは文字通り格が違うと。

 

 

「この場のリーダーに話がある。通らせてもらうぞ」

 

 

 それを止められる者いない。否、止められない。この男の目に留まるとは死すら生ぬるいと本能が叫ぶからだ。

 彼らは、猛獣の背中が見えなくなるまで汗一つかくことが出来なかった。猛獣?そんなもんじゃない。あれは――――――魔王。

 

 

「この先か」

 

 

 この男を止められる者はいない。異常を察した闇組織の組員達は皆、圧倒的覇道を撒き散らす怪物に目をつけられないよう道端の小石になり切る。小石はただ踏まれ、蹴られる存在だが、この怪物の目に留まるのだけは絶対にあってはならない。

 

 

「待っていろ……オールフォーワン。オールマイトの対をなす表裏一体の益荒男」

 

 

 表社会では決してその素性を明かさないヴィランの実質的支配者。"悪の象徴"として君臨するオールフォーワンの居場所を突き止めたのだ。意外かもしれないが、アマカスと言う男は力だけではなく、情報収集能力も優れているのだ。だてに外の世界とシャットアウトした音信不通のヒッキー病人の居場所を見つけられるだけはあるぜ!

 

 

「やあ君は何者だい?僕はこの場所を決して誰にも悟られていないと自負している」

 

「こんにちはオールフォーワン。お初にお目にかかる。俺がおまえに会いに来たのは目標を達成するためだが、その前に一つ訂正しておく、別におまえに落ち度などない。この俺が特定するのに一ヶ月を要したのだ。こんな経験は初体験だ。覚悟を決めていざ実行しようとした最初の段階で躓いてしまいスタートダッシュを挫かれた。今までの人生やると決めれば即実行を心がけて終わらせてきた俺にとってこれほどの時間を費やしたのは初めてだった。……いや、そもそも覚悟を決めるのに二十年以上費やした時点で、俺はそこらの凡人と何ら変わらんのだろう。だから、嗚呼……だからこそ、この無駄にした二十年を取り戻すため、勇往邁進するのだ。この歪んだ腐り切った世界を真の楽園(ぱらいぞ)にするため俺はおまえに会いに来たのだ。手始めに、俺と友にならないか?」

 

「友だちかい?そうだね……うん、面白そうだね。楽しくなりそうだ。なら、名前の交換をするのが形式かな」

 

「そうだな。一方的に此方が名前やら何やらを知っていては真の友とはいえんな。俺の名はアマカス。己自身が脅威として魔王として君臨するために立ち上がった!そして、その先にある楽園(ぱらいぞ)を実現するため奮闘中だ」

 

「アマカスくんね。それで?僕に何を求めているの?」

 

「実はヴィラン側に来たは良いが伝手も足もない状態でな。オールフォーワンの手を借りられればなと思い推参したのだ。俺一人では試練の手が足りなくなる。まぁ"個性"を使えば時間さえあれば創造できるが――――――何事も順序と言うものがある。俺はそれを大切にしていきたいのだ」

 

 

 以外と脚本家なアマカスは早速オールフォーワンと意気投合し話題を広げていく。オールフォーワンはまだ知る由もないが、どれだけ順序と脚本を練ろうがついヤっちゃうのがアマカス。ある意味ヒーロー以上にオールフォーワンの頭を悩ませる存在になる協力者なのだ!

 

 

「つい盛り上がっちゃったね。ゆっくりできる居住先があるんだ。そこまでどうだい?」

 

「無論上がらせてもらう。友の家に呼ばれるのも上がるのも初めてなのだ」

 

「それは意外だね。クラスの中心にいる人気者をイメージしていたんだが」

 

「なに、どういつもこいつも俺の目から見て強い輝きを放つ夢見る者たちではあったが……如何せん、誰も俺にはついてこれなかったのだ。皆"個性"があり自意識が強い者たちであっただけに残念でならない」

 

「話を聞く限り君は人を試すのが好きなようだが、僕の事はいいのかい?」

 

「これでも人を見る目はあるつもりだ。おまえはオールマイトと同じだ。正確には、逆方向に同じだ。陰と陽。光と闇。例えは何でもいいが要するに対極だ。俺が認めたあの漢と同じ領域にいるのだ。見ただけで分かる」

 

 

 オールフォーワンとしては、不本意であるがそれは的を射ていると思う。互いが気に入らず嫌ってはいるが、表裏で似たような立場と対極な"個性"。宿命のライバルと言っても過言ではない。

 倉庫を抜け、街中を並んで歩く二人。和気藹々と人々が楽しそうにしている風景をアマカスは良い物だと思うと同時に悲しいと唇を噛み締める。

 

 

「アマカスくんのぱらいぞだったかな?この光景は君から見てどうなんだい?」

 

 

 アマカスはオールフォーワンの案内を無視しショッピングモールに歩を進める。そこには悲しみなどない。ふざけ合う友がいる。愛し合う家族がいる。大切に思える恋人がいる。この場所は、笑顔がいっぱい溢れている。一階、二階、三階、四階、すべてを回りその光景を目に焼き付ける。屋上まで出向くと街を一望できる端まで歩み寄る。そして、今日を生きる人々の姿を目に焼き付けた。

 

 

「平和そのものだ。幸福で幸せで喧嘩をしても次の日には仲直りで何があっても生活も生命も国とヒーローが保証してくれている真っ当な社会だ。目に見えない腐敗もあろうがそれはそれだ。汚職も悪事もいじめもようは"平和が造り出した腐敗だ"死ぬこともなく、誰かに傷つけられる心配もない。国が保証してくれるから、何をしようが死ぬことはまずないと今どきのヴィランには眩暈を覚える」

 

 

 アマカスはオールフォーワンに向き直る。その眼は燃えている。誰が何をしようが消えることのない不変の炎。

 

 

「肉親である父が言っていた。俺は生まれる時代を……そもそも生まれる世界を間違えたそうだ。成程、納得だ。思想も思いも情熱も"個性"も、俺は人とは違いすぎる。異常だよ。普通でも特別でもない。異常で異物、ホモ・サピエンスから新たに生まれたアマカスという血族。俺はその大願だ。人が猿から人に進化したように、俺は人から俺になった。そこで俺は考えに考え抜いた。間違っているのは世界ではなく、そもそも俺なのではないのかと」

 

 

 アマカスは町の一画を指さす。その直前上にヒーローがヴィランを倒し、周りの野次馬が拍手喝采を送っている。

 

 

「平和ボケもこの通り、目立ちたいとばかりにヒーローは"個性"を駆使しやられ役のヴィランは態々目立つように事件を起こす。それを上から見下ろし見物する民衆たち。嗚呼素晴らしい。平和が造り出した舞台劇だ。どいつもコイツも踊っている。俺も分かりやすい物語は好きだし単純なのは嫌いではない。だが、これはない」

 

 

 アマカスは拳を震わせ忽然に掲げる。

 

 

「俺は見たいのは紛い物の英雄譚などではない。真の勇気と気概を感じる英雄を見たいのだ」

 

 

 オールフォーワンに緊張が走る。これは――――――

 

 

「オールマイトに出会い。俺は人間なんだと確信した。ならば正しい人間が間違っている人間を正すのは問題あるまい?行き成り地球にやってきた宇宙人に此方のやり方に従って貰うと攻撃されればそれは納得できまい。そもそも生物としての価値観が違うのだからな。その点俺は、人間だ。俺こそが人だ。ならば証明せねばならん。俺が口だけではない男というのをな。オールフォーワン、俺を試してくれ。代わりにおまえは俺に強さ(ひかり)を見せろ」

 

 

 アマカスは体を捻り右拳を水平に後ろに引く。

 

 

「我も人、彼も人。故に対等、基本だろう。故、殴るぞ。だから殴り返せ」

 

 

 己が"個性"と身体能力を全力全開。一切の容赦なく殴り飛ばす。

 

 

「グッ!!」

 

 

 "個性"を発動させ怪我はないが、五百メートル吹き飛ばされたオールフォーワンは最早呆れるしかない。

 自分も対外捻くれた男だが、アマカスはそれ以上に真っ直ぐな漢だ。

 

 

「……そんな君だからこそ、その心を圧し折ってやりたい」

 

 

 アマカスの願いが、人の輝きの強さを見たいなら。

 オールフォーワンの願いは、人の輝きの強さが屈する様が見たい。

 自分の手で、自分の計画で、自分の思い通りに、輝き(ひかり)に影を落としたい。

 

 

「ワンフォーオールに連なる者以外に、こんなにも眩しいと思える者がいるとは……そうじゃない、そんなもんじゃない。君は、一人で完結している」

 

 

 金、水、木、火、土、別々の"個性"を組み合わせ陰陽師五行に見立てた力は、発動と同時に一帯を吹き飛ばした。その力を"集束の個性"で束ね放出。ここまでの動作を吹き飛ばされた時間を足せば約十秒ちょい。アマカスに向かって放てば五百メートルの間に被害が出るが、そんなことを気にする二人じゃない。だが、アマカスはもうその拳を振り上げ目前に迫ってきていた。

 

 

「はッ!!」

 

「ふん!!」

 

 

 陰陽師五行ビームの直撃に呑みこまれたアマカスは、ビームを喰らいながら一歩一歩足を踏みしめ殴りにかかる。咄嗟につくった空気ボムをアマカスにぶつける。無論、自分に衝撃波が来ないよう貫通力重視型。アマカスは常人なら土手っ腹に風穴があく威力を無防備にくらい、流石に軌道がずれる。攻撃を外したアマカスは、その"個性"の真価を発揮する。

 

 

「パンツァァァァファアウストォォォォオオオオオ!!」

 

 

 一瞬にして空間を埋め尽くす数十の火器の槍衾。そのすべてが己を巻き込みオールフォーワンに命中。しかし"自分の炭素を操る個性"で硬化し火力を無力化。この漢の戦い方もそうだが何より注目すべきはその"個性"。

 

 

「物質の創造!?身体能力はオールマイトクラス……これ程のものを一瞬で作り出せるのはそうはいない。まさか君も複数の個性を」

 

「否、断じて否だ。俺の"個性"は産まれてからたった一つ。俺だけのものだ。奪うなどと性に合わんことなどしないさ。何より俺自身が驚いている。俺は今日、生まれて初めて"個性"を使用した」

 

「なッ」

 

 

 それはつまり、初の"個性"発動でここまでの芸当を実現したと?成程、確かに生まれる世界を間違えている。云わば、この戦いは試運転だ。パイロキネシスのような"個性"があったとしよう。子供のころ初めて発動させたのがマッチにも劣る炎だったとしても大人になれば自分の身の丈ほどの炎を生み出すことも出来る。そう、アマカスにとっては無自覚かもしれないが、これはマッチだ。今出せるマッチ(全力)でしかない。

 

 

「アマカスくん……いや、アマカスと呼ばせてもらうよ。君の父君は危惧したんだね。その"心"と"個性"を。おそらくだが、父君の"個性"は"他人の個性を知る事が出来る個性"だったと推測できる」

 

「そうだ。だから使うなと教え込まれたし、人の何たるかを教わった。俺は人の儚さと弱さを叩き込まれた。だからかな、俺は他とは違うんだと早くから気づかされたよ。"無個性"のレッテルを張られながらも俺は、尊敬する父の言葉を片時も忘れなかった。だが、俺は俺だ。アマカスだ。教えを信じ、身につけ、その父の背中を追いかけようが俺は俺なんだ。俺は、オールマイトとの出会いに、父の教えは正しいが、また完璧な教えなどないのだと理解した。俺は人だ。オールフォーワンも人だ。オールマイトも人だ。なら、真にただせねばならん。こんなにも同じ人間がいるのだ。叩けばもっと出てくるだろう。そう、俺たちは何も特別なんかじゃない。無論、己の"個性"が結局何なのか今も分からないのは変わりないがな」

 

「……素晴らしい。君の思想はとてもいい。破滅的だ。――――――おっと、ヒーローが来たから退散させてもらうよ。住所はわたしておく、いつでも来たまえ」

 

「心遣い感謝する」

 

 

 爆炎に紛れこの場を離脱したオールフォーワン。アマカスは、今し方やってきたヒーローに向かい合った。

 

 

「吾輩は束縛系ヒーローシュピ虫である!このような街中で不埒な行い!天魔が見逃してもこのシュピ虫が許さないのである!」

 

 

 見た目は蜘蛛系"個性"のヒーローだが、面は三流悪党向きである束縛系ヒーローシュピ虫さん。彼は運が悪いことにアマカスと出会ってしまったことも含まれるがそれ以上に、人生初のハッスル時にヒーローがやってきたら我慢なんて出来るはずもないアマカスのターゲットになってしまったことだ!むしろ自分が満足するまで俺好みに調教するかもしれない!か・も・し・れ・な・い・!

 

 

「デビュー戦だ。おまえの輝きを見せろ。無論、俺もすべてをさらけ出そう」

 

「なーに頭の悪いことをほざいてやがるのですアナタ!そんな三流負けポジの戯言を吐いたからにはもう呑み込めませんよ?大人しく吾輩の人気の糧になるがいい!」

 

 

 蜘蛛の様に舞、蜘蛛の様に刺すを心がけているシュピ虫さん。キラキラエフェクトが付きそうな優雅な動きだが、絵面が気持ち悪い。未だにヒーローとしての人気が出ないのはこれが原因の気がするぞ!

 

 

「吾輩の糸の前にはヴィランなど無力。お縄に付きなさい!」

 

 

 あのアマカス相手に蜘蛛の糸を雁字搦めに縛り付けた!すごい!だてに万年No.10のヒーローは格も違うぞ!やったね!!

 

 

「!!ッほう、……これは」

 

「気づきましたか。そう!!脱出は最早不可能!!吾輩の糸からには何人たりとも抜け出すことなど不可能なのです!!あのオールマイトでさえこの糸を千切るのは不可能と心得なさい。何をしようが無駄なんですよ無駄ァ無駄ァ!!」

 

 

 アマカスまさかのピンチ!誰がここまでアマカスを追い込むと予想していただろうか!

 

 

「さあ、死になさい!」

 

 

 顔にも糸を巻き付け息の根を完璧に取りに来たシュピ虫さん。勿論殺さないが。

 

 

「素晴らしい。シュピ虫と言ったか?"個性"を十全に活かすその姿勢、嫌いではない。なら、これはどうかな。――――――フン!」

 

「はひ?」

 

 

 アマカスの体が高熱を発し炎が吹き荒れる。その衝撃と熱量で蜘蛛の糸を焼き尽くす。

 

 

「なななななななななななんですとぉーー!!」

 

 

 実力の違いを垣間見たシュピ虫はヒーローの職務を忘れ、一目散に逃げようとするが。

 

 

「待て、これからだろ。……体のほてりが治まらない。成程、これが暴走か」

 

 

 "個性"初使用の全力全開によって暴走状態に移行したアマカスの"個性"。誰にも止めることはできない炎はアマカスの情熱に応えるかのようにその勢いを増していく。

 

 

「俺はこの激情に身を任せる!なに、半径百メートルが吹き飛ぶ程度だ。ヒーローなんだろ?守って見せろ」

 

「ワワワ吾輩の"個性"は炎との相性が最悪なのですよぉぉお!!?」

 

 

 駆けつけてきた他のヒーローは民間人を逃がすため急いで避難誘導と抱えて被害範囲から逃れようとする。

 

 

「さあシュピ虫。俺を倒せば止まるぞ?どうした。来ないのか。なら、俺から行こう」

 

「来ないでくださいましぃぃぃぃいいいいいい!!!!!?」

 

 

 皆のために時間を稼ぐシュピ虫さん。他のヒーローも民間人も君の活躍は決して忘れないからね!

 

 

「では――――――行くぞ」

 

「いやあああああああああああああああああああああああ!!」

 

 

 その日の犠牲者は直径で二百メートルも吹き飛ぶ大惨事にもかかわらず、シュピ虫さんの活躍もありなんとゼロ人!シュピ虫さんありがとう!シュピ虫さん本当にありがと!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なお、これはアマカスのヴィランデビュー戦として後に、被害者が一人もいなかった唯一の事件として特集が組まれ。その被害者数をゼロ人と言う脅威な数字を叩きだしたシュピ虫さんはお茶の間のアイドルとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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