ダンジョンに施しの英雄がいるのは間違ってるだろうか   作:ザイグ

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第四十五話

アストルフォ。Fate/Apocryphaの聖杯大戦、黒の陣営のライダーとして召喚されたサーヴァント。

前世ではイングランドの王子にして、シャルルマーニュ十二勇士の一人。実力は他の十二勇士に劣る騎士だが、生まれながらの英雄気質により多くの冒険を成し遂げ、数々の宝具を手に入れた人物。

トラブルメーカーで、どこにでも顔を出し、トラブルに巻き込まれ、時には巻き起こす困った奴だ。

ちなみにFate/Apocryphaでは最終決戦で最後までカルナと戦ったサーヴァントである。

 

………クー・フーリンが存在していた以上、他のサーヴァントがいる可能性は考えていたが、まさか懇意していた【ヘルメス・ファミリア】にいたとは。

 

灯台下暗しとはこの事だな、とはカルナは嘆息した。クー・フーリンのようにダンジョンに潜んでいたなら分かるが、冒険者の中にいたのを見逃していたとは、自分の観察力の無さが情け無くなる。

カルナは気付いていない。自分が地上にいる時は読書と鍛錬くらいしかしておらず、交友関係が非常に閉鎖的なことを。そのせいで原作知識で知っている登場人物以外を全く知らない世捨て人以上の世間知らずなのだということを。

カルナは改めてアストルフォを観察する。

 

ーーー強いな。種族は小人族(パルゥム)のようだか、この中ではアスフィと同等のLv.4といったところか。

 

例え見た目が強者に見えずともアストルフォが強いというのは雰囲気でわかる。だが、それなら疑問が残る。カルナは酒場に入った時、『貧者見識』で全員の所属ファミリアとLv.は確認していた。その時は最高Lv.はアストルフォのLv.4だったと思うが。

カルナは、失礼と思いながらもアストルフォの【ステイタス】を再度、確認した。

 

アストルフォ

 Lv.☆

 力:D

 耐久:D

 器用:C

 敏捷:B

 魔力:C

 狩人:G

 耐異常:H

 %¥:H

《魔法》

【ラ・#+<〒・ルナ】

・■$%〒魔法

・$×性

・詠唱式【恐怖を○々€=#魔笛を吹け。轟け♪¥咆哮、響け巨鳥<¥☆%♪、%〆神馬の嘶(いななき)き。音色(ねいろ)を聞い○■か逃げ出す、<〜¥奏でよ】

《スキル》

【破>%*(キャ■〒「・デ・=×$スティラ)】

・■法無÷。

・【☆テイ→♪】の隠蔽。

 

………何だこれは?

 

アビリティの詳細な熟練度までは見えないが、平均的な基本アビリティ。問題は一部の発展アビリティ、魔法、スキル、果てはLv.まで落書きされたように読めなくなっている。

原因はおそらくこの詳細不明のスキルの項目にかかれた『隠蔽』という言葉。

【ステイタス】を隠蔽できるなんてスキルなんて聞いこともない。間違いなくレアスキルの類だ。だが、所々しか見えなくなっていないということは完全な隠蔽能力ではないらしい。

ならば、カルナの【貧者見識】ならば看破しようと思えば看破できないことはないはずだ。

カルナはもう一度、アストルフォに注目した。今度はより深くどんな些細な事も見逃さないように。すると、

 

アストルフォ

 Lv.4

 力:D

 耐久:D

 器用:C

 敏捷:B

 魔力:C

 狩人:G

 耐異常:H

 怪力:H

《魔法》

【ラ・ブラック・ルナ】

・広域攻撃魔法

・音属性

・詠唱式【恐怖を呼び起こす魔笛を吹け。轟け竜の咆哮、響け巨鳥の雄叫び、鳴け神馬の嘶(いななき)き。音色(ねいろ)を聞いた者か逃げ出す、魔音を奏でよ】

《スキル》

【破却宣言(キャッサー・デ・ロジェスティラ)】

・魔法無効。

・【ステイタス】の隠蔽。

 

今度はハッキリと【ステイタス】が公開された。やはりLv.はアスフィと同じLv.4。それから【ステイタス】を隠蔽していたのは【破却宣言】というスキル。効果は魔法無効という魔導士にとって天敵と呼べる能力。おそらく攻撃魔法、呪詛(カース)、異常魔法(アンチ・ステイタス)もアストルフォには通用しない。カルナの【貧者見識】が妨害されたのもこの看破能力が一種の魔法と扱われたからだろう。ただし、回復魔法や補助魔法などのサポートしてくれる魔法も無効にするのでメリットばかりではないようだ。

 

「【ヘルメス・ファミリア】にアスフィ以外のLv.4がいたとは知らなかったな。というより、この子をそもそも見たことがなかった」

「………身内の恥を晒すようですが、この子はお調子者でして。私達に一言もなくあちこちをフラフラしています。その旅に厄介事を巻き起こして………! トラブルを起こす度になんで私が火消しを! 厄介事はヘルメス様だけで十分なのに!」

「………苦労しているな。面倒なのが二人もいて」

 

アストルフォのトラブルメーカーはこの世界でも同様らしい。その分、アスフィの負担が増している。

 

………今度、ストレス解消に使える物でも送ろう。確か【ディアンケヒト・ファミリア】に天使薬(アルゼリカ)という安眠効果のあるハーブが売っていたな。

 

不憫なアスフィを見て、カルナはそう思った。

とりあえず、アストルフォは戦力になるのはわかった。なら、こちらも自己紹介しよう。

 

「今度は俺達の番だな。知っているようだが、【ロキ・ファミリア】カルナ・クラネル。武器は大槍と魔法を使用する。配置は主に前衛で壁役と中衛で遊撃をしている。アスフィの好きな配置で使ってくれ」

「【ロキ・ファミリア】アイズ・ヴァレンタイン。武器は片手剣。配置は前衛」

「こうなっては仕方ありません。各員、全力で依頼に当たりなさい」

 

アスフィの呼びかけに団員達が頷く。そしてカルナとアイズに向き直った。

 

「貴方方がいてくれるなら心強い。短いパーティーになると思いますが、どうかよろしく」

「よろしく、お願いします」

「まぁ、また近いうちにパーティーを組む気もするが………よろしく頼む」

 

カルナはヘルメスを郵便代わりに使っている対価としてヘルメスから個人的な依頼を受けることがある。都市外にある遺跡の調査などをする為にアスフィとよくパーティーを組んでいた。あの神のことだから、また我儘を言うに決まっている。

 

「………否定できませんね」

 

アスフィもヘルメスが我儘を言う姿が目に浮かんだのだろう。溜息を吐いた。

だが、それでも気持ちを瞬時に切り替え、いまは目の前のことに集中する。

 

「それから、くれぐれも私達のことは口外しないように」

 

まずはアイズとカルナに口止めをした。

 

「あ、はい」

「俺は元から共犯だ。その点は安心しろ」

 

………大丈夫か、このパーティー、とカルナは考えてしまった。

 

 

 


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