ダンジョンに施しの英雄がいるのは間違ってるだろうか   作:ザイグ

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第四話

『ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッ!』

『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ‼︎』

 

先制はヴィルガとヴォルガング・ドラゴン。腐食液と大火球の集中放火がカルナを襲う。

直撃すれば第一級冒険者でさえ消し飛ぶ総攻撃にカルナは、

 

「ふんっ!」

 

前進した。直後、大爆発。

轟炎の衝撃波がルーム全体を震わせ、衝撃波で腐食液が撒き散らされ、被液したヴィルガ達がのたうち回る。

 

「温いな」

 

されど自損さえ厭わないモンスター達の攻撃を受けたカルナは健在。流石に許容範囲を超えたのか、鎧から露出した部分に軽度の火傷を負っているものの、戦闘に支障のないものだ。その上、火傷も瞬く間に回復し完治してしまった。

あらゆる攻撃を無効化し、どんな傷も回復してしまう。こそこそカルナが不死身と称される所以である。

 

「今度はこちらの番だ」

 

カルナはシャクティ・スピアを横に振りかぶり、

 

「おおおおおおおおおおおおおおおっ‼︎」

 

全力でスイングした。

瞬間、槍撃は衝撃波となりカルナの前方にいた数十近いヴィルガだけでなく巨体を誇る女性型ヴィルガとヴォルガング・ドラゴンを数体も吹き飛ばした。

圧倒的な破壊力にモンスター達が浮き足出す間にカルナはモンスター達を飛び越え、モンスター達の頭を狙う。即ちヴォルガング・クイーンを。

 

「はっ!」

 

ヴォルガング・クイーンの『精霊』の上半身目掛けて全力の突きを放つ。超大型モンスターや階層主さえ容易く貫く一撃がヴォルガング・クイーンに迫る。

 

『アハッ』

「っ⁉︎」

 

しかし、ヴォルガング・クイーンは無造作に突き出した掌で弾いた。

元々高い防御力を誇る竜の鱗が何百、何千もの魔石を食らい強化されたヴォルガング・クイーンは単純な強度では大花の『精霊の分身(デミ・スピリット)』を上回る。

そして竜故に『力』も強い。攻撃を弾かれたカルナをヴォルガング・クイーンの剛腕が襲う。

 

「がっ⁉︎」

 

カドモスさえ上回る力で吹き飛ばされたカルナは壁面に激突した。

そこに追撃。ヴォルガング・クイーンが凶暴な破壊衝動と本能のまま生きるモンスターが唱えれないはずの呪文を紡ぐ。

 

『【突キ進メ業火ノ槍代行者タル我ガ名ハ火精霊(サラマンダー)炎ノ化身炎ノ女王(オウ)ーーー】』

「っ、はやり詠唱を使えたか!」

 

呪文を唱えることに驚きはない。『精霊の分身(デミ・スピリット)』であるならば予想できたことだ。

 

『【ファイヤーレイ】』

 

轟炎の大矛。力ある『古代の精霊』の砲撃魔法。加えて女性型ヴィルガが四枚の腕から鱗粉を拡散させヴォルガング・ドラゴンが大火球を放つ。

捲き起こる連続爆発。先ほどの総攻撃とは比べ物にならない大爆発がルームを飲み込んだ。

逃げ場のない極大の爆発にモンスター達も飲み込まれ、耐久力の高い女性型ヴィルガやヴォルガング・ドラゴンは無事だが通常のヴィルガは耐えられずに全滅した。

ルーム全体に及ぶ大爆発に飲まれたカルナは、

 

「いまのは危なかった。ーーー少しな」

 

なおも健在。至る所に火傷や負傷があるものの、まだカルナを倒すには足らない。

カルナの鎧は正攻法での破壊は不可能。露出部分に強力な一撃を与えるか、鎧の守りが効かない内側からの間接的な攻撃をするしない。

しかし、いくら呪文を唱えれようとも所詮は『精霊の分身(デミ・スピリット)』もモンスター。火力にモノを言わせた力技でしか相手を倒せない。故に彼女はカルナを倒せないでいた。

 

「だが、こちらの攻撃がヴォルガング・クイーンに効かないのも事実。それに周りの奴らが邪魔だな。ならばーー」

 

カルナは目標をヴォルガング・クイーンから女性型ヴィルガやヴォルガング・ドラゴンに変更する。

カルナの攻撃はヴォルガング・クイーンに効かず、ヴォルガング・クイーンの攻撃はカルナに致命傷を与えられない。ならば邪魔なモンスターを排除しサシの勝負に持ち込もうと考えたのだ。

まずカルナは一番近くにいた人型ヴィルガに向かう。

 

『ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッ‼︎』

 

だが、それを黙って許す女性型ヴィルガではない。腕から鱗粉を拡散し、近づけまいとする。

 

「それは先ほど見た」

 

シャクティ・スピアを振るう。それだけで凄まじい風圧が発生し、爆粉が人型ヴィルガの元に押し戻される。

瞬間、女性型ヴィルガが爆発に呑まれる。

 

『ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッ⁉︎』

 

自爆に絶叫する女性型ヴィルガにカルナは肉薄し、握るシャクティ・スピアに力を入れる。

攻撃が来ると反応した女性型ヴィルガは全ての腕で全力防御態勢。しかし、

 

「無駄だ」

 

カルナが放った連撃は腕部もろとも女性型ヴィルガを貫通し、いくつもの風穴を開けた。

アイズの『エアリアル』で強化された剣技でさえ弾いた腕部をカルナは純粋な『力』と槍術のみで破壊してみせたのだ。

女性型ヴィルガを仕留めたカルナはすぐに離脱。直後、女性型ヴィルガは破裂した。

それに目を向けることなくカルナは次の獲物に向かった。

 

「ふっ!」

 

カルナは疾走しながら、次々とモンスターを仕留めていく。

 

「はっ!」

 

ヴォルガング・ドラゴン達の頭部を粉砕し、首を断ち、体を貫く。

 

「せぇっ!」

 

女性型ヴィルガ達の体を両断し、風穴を開け、粉砕する。

 

『【ファイヤーエッジ】』

 

無論、ヴォルガング・クイーンも黙って見てない。無詠唱で魔法を発動し、攻撃する。

巨大な炎の柱が、何柱も突き出し、カルナを襲う。しかし、カルナは何処から炎の柱が出るかわかっているように回避しながら、モンスターを屠っていく。

 

「なるほど、使える魔法は炎属性のみか」

 

モンスターを倒しながらもカルナはヴォルガング・クイーンを観察していた。

タイタン・アルムの『精霊の分身(デミ・スピリット)』は多彩な属性を持っていたがヴォルガング・クイーンは炎属性しか持っていない。

ヴォルガング・クイーンは多様な属性がない代わりに破壊力に特化していた。

 

「だからと言って臆する理由にもならないがな」

 

そう呟きながら最後のヴォルガング・ドラゴンを切り裂く。数十体いたモンスターは全て屠られた。

 

「さぁ、残るはお前だけだ」

 

カルナは眼前にいるヴォルガング・クイーンを見据えた。


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