ダンジョンに施しの英雄がいるのは間違ってるだろうか   作:ザイグ

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第五十七話

 

 

 

カルナ達と分断されたアスフィ達は食料庫(パントリー)を目指していた。

最大戦力であるカルナ達を失い、大幅に戦力ダウンしてしまったアスフィ達にモンスターの大群が襲撃するが、

 

「らあああああッ‼︎」

 

ベートが超速で疾走し、ヴィオラスを双剣で引き裂き、

 

「あはははははッ‼︎」

 

ヒポグリフに騎乗したアストルフォが飛行するイル・ワイヴィーンを撃墜していく。

一部の英雄と呼べる猛者達にモンスター達は蹂躙されるだけだった。

 

「………私らの出る幕ないな」

「ですが助かります。この数と連戦は私達だけでは危なかった」

 

ルルネが顔を引き攣らせ、アスフィが助かったと一息つく。

 

「アストルフォ、【凶狼】‼︎ 一旦、止まってください! 態勢を整えます!」

 

襲撃したモンスターが途切れたのを見計らってアスフィが声を掛ける。

相次ぐ連戦により、ベートやアストルフォなどの一部を除いたメンバーには疲労が溜まっていた。

食料庫(パントリー)も近い今、呼吸を整える時間が必要だった。

 

「わかった〜」

「ちっ、雑魚共が」

 

アストルフォは快諾したが、ベートは悪態をついた。

 

「グズグズしてんじゃねぇ。足引っ張るなら、置いてくぞ」

 

ベートは分断されたカルナ達と一刻も早く合流したかった。正確にはアイズ一人の心配をしており、カルナのことは欠片も気にしていない。

それが彼が死ぬはずがないという信頼か、気に食わない奴のこなど知るかという嫌悪か、それは本人しかわからない。

そして一人でなら簡単に走破できる冒険を、お荷物がいるせいで延々と進まないのにイライラしていた。

そんな彼の態度に一緒にいる【ヘルメス・ファミリア】の評価はよろしくなかった。

だが、ここで意外な人物が声を上げた。

 

「いい加減にしてください!」

「あぁ?」

 

ベートを怒鳴りつけたの何とレフィーヤだった。予想外過ぎる人物が声を上げたことにその場の全員が驚愕する。

 

「ベートさんがアイズさん達を心配をして急いでいるのはわかります! でも、他の人のことも考えてあげてくぁさい! 貴方はいま一人じゃないんです!」

「うるせぇ。そんな事は言われなくてもわかってるんだよ」

「わかってません! カルナがなんてベートさんに言ったのか忘れたんですか⁉︎」

「………っ」

 

ベートの頭に分断された瞬間、カルナの言葉が蘇る。

 

“このパーティーで一番強いのお前だ。ーーー強者の務めを果たせ”

 

「カルナはベートさんだから全員の命を託したんです! それなのにどうしてカルナの気持ちを踏み躙るようなことをするんですか!」

「………」

 

レフィーヤの叫びにベートは黙り、背中を向けた。

 

「………五分だ」

「え………?」

「五分たったら、進むぞ。それまでは好きにしろ。俺はてめぇ等と違って休憩なんざ必要ねぇから、周囲を見てくるぜ」

「………っ、はい!」

 

レフィーヤはベートの言いたい事がわかり、嬉しそうに返事をする。ベートは自分が周囲の警戒するから、全員は休憩をしていろといいたいのだ。

それを理解した【ヘルメス・ファミリア】の面々もベートへの評価を上げだ。

後衛組が各自にポーションを配り、小休憩を取る。

 

「あの赤い光って………?」

 

団員の一人が通路の先から、血のように赤い光が漏れているのを視認した。

 

「石英の光かしらね………」

「ふむ………ついにたどり着いたか」

 

食料庫(パントリー)には特大の石英があり、神秘的な光を放って空洞を照らしている。

24階層の大主柱は赤水晶。赤い光を黙認して誰もが終着点が近いことを悟る。

 

「………カルナ達はまだ見てぇだな」

「え、なんで分かるんですか、ベートさん?」

 

ベートの呟きにレフィーヤが疑問の声を上げる。しかし、ベートはその疑問を鼻で笑った。

 

「バカか、お前? あのカルナが先についてりゃ此処まで響く破壊音してんだろう」

「カ、カルナもそこまで危険なことは………」

 

閉鎖された空間で大規模な破壊は崩落を招く危険な行為だ。だから、カルナもそんな軽率な事はしないとレフィーヤは言おうとして口を紡ぐ。

合流前に確認した吹き飛ばされた大地。カルナが何気なく放った一撃はレフィーヤの魔法を遥かに上回る破壊を生む。それをカルナがしないとレフィーヤには何故が断言出かけなかった。

そしてそれは正しい。レフィーヤは知らない事だが、カルナは以前、30階層の食料庫(パントリー)を崩壊させた前科があった。

 

「行きましょう」

 

一同を見渡しアスフィが食料庫(パントリー)への進入を決め、足を踏み入れた。

 

「ーーー」

 

そして変貌した食料庫(パントリー)に言葉を失う。

これまでの道のりと同じように緑の肉壁に侵食された空間に、撃破してきたヴィオラスを思わせる蕾が無数に垂れ下がっていた。

そして一番目を引くのは石英の柱に絡み付く巨大なモンスターだった。

 

「宿り木………?」

「あれがカルナの言っていた超大型モンスターですか」

「でけぇ………いままで戦った食人花の十倍以上だぜ」

 

全員が注目する超大型モンスター三体のヴィクスムは柱から養分を吸い、体を爆発的に膨張させ、ダンジョンを肉壁で覆っていた。

 

「おい。ボーとしてんじゃねぇぞ。新手だ」

 

ベートの言葉に全員がハッと我に帰る。彼の視線の先を追えば謎の集団がいた。

上半身を隠すローブに、口もとまで覆う頭巾、額当て。素性を隠した所属不明の者達がこちらに敵意を向けていた。

 

 

 

 

 

 

 


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