比企谷八幡に特殊な力があるのはやはり間違っている。~救いようのない哀れな理性の化物に幸せを~ 作:@まきにき
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おかしい。この状況は絶対におかしいはずだ。何がおかしいって学校行く前に俺の家のリビングで神崎と朝御飯を食べていることだ。
小町が残したメモに日直とか書いてあった所から嫌な予感はしていたが、まさか神崎の分まで作ってあるとかもはや小町確信犯だろ。
「小町ちゃんが作ってくれたご飯美味しいですね!」
「うん、美味いんだけどさ」
「先輩、どうかしましたか?」
「いや。てかさ何でいんの?」
「その...先輩に会いたくて、ダメでしたでしょうか?」
神崎は潤んだ瞳で俺を見てくる。俺はどうにも涙に弱いらしい。
「・・・ダメというか、用事があってきたのかなって」
「あ、いえ。その用事は特に無くてですね...。本当にただ、先輩に会いたくて、それだけで...」
確かに俺は1度神崎に告白されている。俺に対して好意を抱いてくれているのは素直に嬉しい。だけど....未だにトラウマなんだよなぁ。
「・・・今度来るときは連絡してからにしてくれ....あれだ、そのビビるからまじで」
でも、小町以外の奴とご飯食べるのも悪くはないかもと思う俺もいる。泣かれても困るし。
「はい♪毎朝来てもいいですか!?」
「それは駄目だ。せめて余裕のある休日くらいにしてくれ」
「で、では休日になったら毎日!」
「それも駄目だ。俺は忙しい」
「ではいつ来ていいんですか?」
「・・・だから連絡してくれ」
俺は黙って携帯を神崎に渡す。
「・・・はい♪」
「はぁ...」
「八幡どうしたの?溜め息なんてついて」
「ああ、戸塚か。いや疲れたから帰りたいと思ってな」
「今来たばかりだけど体調でも悪いの?」
「いや体調は戸塚のお陰でいつもより良くなった」
「え!?僕何かしたっけ?」
「ああ、気にするな。それより何故かは知らないが平塚先生遅いな。もう1時限目が始まるのに」
「うん。確かにおかしいね。何かあったのかな?」
俺が考えていると携帯のバイブ音がしたので開いてみる。
「これは....」
「どうしたの八幡?」
「悪い。事情も後で話す。でも今は」
そう言って俺は教室から飛び出した。メール画面を開きっぱなしで携帯を握る力を強めながら。
From:一色
To:先輩お願いします!進路指導室にいます。
助けてください!
ガラッと俺は勢いよく進路指導室の扉を開けると一色と神崎、それに平塚先生に一色と神崎の担任である、子萌先生がいた。
「比企谷...何のようだ?」
「先輩!」
「比企谷先輩.....」
「比企谷君。何しにきたの?」
「はぁはぁ...すいません。一色何があったんだ?」
「はい。あの」
「一色。私が話そう。比企谷それでいいかね?」
「はい」
「神崎も構わないね?」
「はい....」
「ちょっと、平塚先生。そんな勝手に」
「勝手ではないさ。本人に許可はもらった何も問題はないだろう。それにこいつは面白半分に話を誰かに話したりはしないやつだよ」
「もう....私は責任もてませんよ?」
「構わないさ。さて比企谷。ことの発端はクラスである問題が起きたことだ」
「ある問題?」
「ああ。これだ」
そこには神崎が所謂ラブホテルに入っていく写真だった。
「っ!これは誰から渡されたんですか?」
「クライアントの秘密を話すわけにはいかないよ」
「わ、私は....行ってません!」
「ふぅ....まだ誰もこの写真が本物だなんて言っていないさ」
「偽物って可能性があるってことですね」
「ああ。不自然なところがあるからな」
「因みにそれはどこですか?」
「ここだ」
平塚先生は神崎の立っている場所とラブホテルの丁度間を指していた。
「ん?なんだこれ少しズレている?」
「ああ、これは合成などをしてミスをしてついたものではないかと私は思っている」
「でも」
「そうだ。それでは証拠にならない。それに例え嘘でもこんな写真が出回ったら神崎自身が学校に来れなくなるだろう。あるいは」
「写真を撮って平塚先生に渡したやつの工作だったとしたら」
「それはもはや犯罪だ。然るべき罰を受けてもらう」
「そうですか」
「先輩!さっちゃんは絶対にこんなところにいってません!」
「いろはちゃん...」
「そんなことは分かってる。神崎」
「は、はい」
「奉仕部に依頼をしてくれ。嫌かもしれないが....」
「いえ、嫌じゃないです。先輩が私のために拳を強く握ってくれてるのすごい嬉しいですし...先輩の気持ち伝わってきます。先輩よろしくお願いします」
「ああ。任せてくれ」
話を聞くためだと神崎だけを残して俺と一色は教室に戻された。
「意外でした」
「何がだ?」
「こういうとき先輩は1人で解決しようとするんじゃないかなって思ったんです」
「ああ。俺も意外だったさ。でもな、今回は人1人の人生がかかってるからな....荷が重すぎる」
「そんなこと言って何かあったときに雪ノ下先輩達にフォローしてほしいだけなんでしょ?主にさっちゃんのことを」
「・・・なんでそう思うんだ?」
「何でですかね....先輩」
「どうした?」
「私に出来ることがあったら何でも言ってくださいね。さっちゃんのために私も何かしたいですから!」
「助かる。それならこの頃のあいつの周りの事とか教えてくれるか?」
「んーそうですね...あっ!さっちゃんうちの学年の男子に一昨日で全員制覇したんですよ!」
「は?」
「いやですから、全員に告白されて全員断ったそうですよ」
「・・・んな話は関係.....なくないか」
「どうしました?」
「一昨日で制覇したんだよな?」
「はい。何ですか先輩気になるんですか?」
「変な意味じゃないけどな。その最後にフラレた奴分かるか?」
「はい。えーと確か野球部の笹松完二君でしたよ」
「お前のクラスでその笹松完二とやらを好きな女子がいないか調べてくれ」
「え?先輩、それってつまり....」
「ああ。まずそいつが怪しいだろうな」
「分かりました。私なりに調べてみます」
「ああ、だけどあまり深入りはするなよ?今回はここまでやったんだ何するか分かったもんじゃない」
「先輩私のこと心配してくれるんですか?」
「少しは危機感を持てって言ってるんだ。あと神崎の側にいてやってくれ」
「それは当然ですよ!」
「悪いな。たぶんお前も色々と言われると思うが...」
「そんなこともう馴れてますから♪私もさっちゃんも先輩達が分かってくれているだけで大丈夫です♪」
「強いな。お前も神崎も」
「女の子は強いんですよ?」
「そうだな...」
「でも誰かがいてくれるから強くいられます」
「その誰かってお前のことか?」
「さあ?誰のことなんですかね」
俺と一色はお互いのクラスに向けて別れ俺は教室に戻ってきた。
「ヒッキー心配したよ。いきなり出ていっちゃうし、どうしたの?」
「ああ。ちょっとな」
「また一人で何か背負おうとしてない?・・・頼りないかもしれないけどさやっぱり頼ってほしいっていうか...あはは、ごめんね!私何いってるんだろ。やっぱり忘れて」
「いや今回は頼ろうと思う。放課後雪ノ下も含めて話をする。迷惑かけるかもしれないけど....頼めるか?」
「っ!うん!勿論だし!!」
俺は心中気になりっぱなしでとても授業どころではなくあっという間に時間は過ぎて放課後になっていた。
「それで一色さんと神崎さんが来るまえに何があったのかまず説明してもらえないかしら?」
「ああ、そうだな。ことの発端としては神崎のクラスの誰かが神崎がホテルに入ったところの写真を平塚先生に渡したところから始まった」
「え!?彩っちが!?」
「由比ヶ浜さん、落ち着きなさい。本当に行ったのならこんな事態にはなっていないでしょう」
「その通りだ。俺は今回の件は誰かが故意に神崎を嵌めようとしてやったことだと思ってる」
「酷い....でもその写真は証拠になっちゃうんじゃないの?」
「恐らく合成だな。少しパソコンの知識があれば誰だって作れる」
「成る程ね。私は神崎さんが依頼内容をしっかり言ってくれればサポートをするわ。犯人にも然るべく罰を受けてもらって、ね」
「わ、私も!協力するからね!」
「ああ、でも今回の事案に関して此方からは手が出せない。神崎が頼ってくれないと俺達は手を出してはいけない。それは理解してくれ」
「ええ。分かっているわ」
「え?何で?」
「・・・1つは今回の件は下手をすると警察沙汰になるからだ。まぁ犯人はよくても退学だろうがな。そんな事案に首を突っ込むんだ、俺達も何かしらの疑いの目がくるだろう。それに平塚先生もだ。奉仕部の部員が全員で動いたら奉仕部の顧問っていうのと生徒指導っていう立場のダブルパンチで学校から責任を全て押し付けられるだろう。だからこれは神崎からの依頼ということで俺達が動くんだ。そして2つ目は神崎の為にならないからだ」
「彩っちの?」
「ああ、俺達は2年生。神崎は1年生だ。俺達はいずれ卒業する。そんな中で頼れる相手がいなくなったらどうする?勿論一色は神崎の味方になってくれるだろうが神崎自身が甘えて行動を起こせなかったらあいつは一生前には進めなくなる」
「そっかぁ....」
「由比ヶ浜さん、彼が一番辛いのよ。ここまで分かっていて今日一日何も出来なかったのですから」
「ゆきのん....」
「コーヒーを淹れるわ」
雪ノ下がコーヒーを淹れてくれようとしたとき奉仕部の扉がノックされて扉が開く。
「こ、こんにちわ...」
「先輩方お待たせしました」
「皆揃ってるようだな」
「・・・何で平塚先生もいるんですか?」
俺の作戦では平塚先生がここにいるのはまずい。平塚先生がここにいたらもしもの時に結局責任を取らされてしまうからだ。
「ん?ああ。君の考えなどお見通しだよ。私に迷惑がかからないように色々考えたようだがな比企谷、少しは私にも頼ってくれ。一人で何でもしょいこもうとするな」
「俺は別に...今回もこいつらに頼ってますし」
「だが行動を起こすのは君だけにするのだろう?他の奴にはもしもの時に責任を取らされないように」
「比企谷君、その話は本当かしら?」
「ヒッキー....」
「・・・ならどうしろって言うんですか。正直犯人を見付けるだけなら簡単です。ですが証拠を見付けるにはそれなりのことをしなければいけません。危ないことだってするつもりです。こいつらにそこまで背負わせるつもりはありません」
「あなたは!!」
「雪ノ下、落ち着け。なあ?比企谷」
「はい」
「お前はお前が失敗したときの保険として雪ノ下達を頼った、そうだな?」
「言い方は気になりますが...間違ってはいません」
「そんなやり方では誰かを救えても君自身を救うことは出来ないと私は思うよ」
「でも...全員退学なんかになったら.....」
「そんときはその時に考えればいいさ。それにそうならないように君が答えを出せばいい」
「・・・あんた滅茶苦茶だ。誰もが救われるなんてアニメの主人公くらいにしか出来ませんよ」
「なら君が主人公になればいい。そうだな。アニメじゃないなら、神崎の神崎彩月の主人公に君がなってやればいいじゃないか」
「俺には....」
「荷が重いか?だから周りの力を借りるんだ。奉仕部の部員は君の味方だ。無論私もな。ほらこれは私からの餞別だ受け取っておきたまえ」
「これって....」
平塚先生から渡されたのは1枚のメモ用紙だった。そこに書かれていたのは神崎の写真を持ってきた女子生徒の名前だった。
「これで私も同罪だ。責任は私が全てとろう。だから好きなように君が選ぶ道を後悔のないようにやってこい」
「・・・はい」
俺は平塚先生が奉仕部から出ていくまで感謝を込めて見送った。
「それで比企谷君?一体どうするつもりなのかしら?」
「その前にだ....神崎」
「はい....先輩」
一色は俺の隣に椅子を持ってきて座り神崎は俺達と向かい合って座った。
「先輩方に依頼をお願いしにきました。たぶん....たくさん迷惑をかけてしまいます。本当なら私の問題なので....でも。でもお願いします。私に力を貸してください!」
「うん!勿論だよ!!彩っち!」
「さっちゃん、わたしも手伝うからね!」
「神崎さん。あなたの依頼を受けるわ。私の全力をもってサポートさせてもらうわ」
「決まりだな。今回の主犯であろう人物のだが。1ーB名前は
古市真奈」
次回は八幡が右目をフルに使います。