ガンプライブ! ~School Gunpla Project~   作:Qooオレンジ

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皆様。本日もご覧いただきありがとうございます。


今回はにこちゃんの閑話の第二回目になります。

それでは 閑話「マホウツカイハジメマシタ。 ~勇気の魔法~ ②」 はじまります。













閑話「マホウツカイハジメマシタ。 ~勇気の魔法~ ②」

「お掃除も終わりっと♪」

 

そらを送り出した私は急いで朝ごはんのお皿を洗って、お洗濯を済ませちゃったわ。

 

昨日の夜のアレで思いっきり汚しちゃたった私の部屋のベッドのシーツも、ちゃんとキレイに洗って干したし、ママやこころ達の分もお洗濯したし。

 

洗って干したシーツの代わりもベッドに敷いたし。

 

うん♪流石は私!今日も完璧ね!

 

それにしてもあのバカ……昨日の夜はいつにも増して激しかったわね…。

 

実はまだちょっとおまたがヒリヒリして痛いのよね…。

 

うーん…昨日のアレは激しいって言うよりも、どっちかと言うと“乱暴”だったわね。

 

挿れる前の意地悪な愛撫はともかく、最近は挿れたあとはちゃんと私のことを気遣いながらヤってたのに…昨日の夜は私のことはお構いなしにガンガン突っ込んで来てたわよね…。

 

そう…アレはまるで出会った頃のような乱暴な交わりだったわ…。

 

ただ性欲を満たすためだけの行為。

 

女の子をオ○ホ代わり程度にしか考えていなかった、腐りきっていた頃のそらとの行為のようだったわね…。

 

まぁあの頃のダメそらはともかく、今の少しはまともになったそらになら、少しくらい乱暴にされるのもキライじゃなかったりするから別にいいんだけど……。

 

少し乱暴に抱かれるのって、なんだか私の全てをあのバカに支配されてる感じがして好きなのよね…。

 

ゴホン!……あー、今のは忘れてちょうだい…。

 

乱暴にされるのが好きって…マゾじゃないんだから…。

 

また話がそれちゃったわね。

 

今日は朝から脱線してばかりだわ…。

 

今はあのバカの話よ。

 

あのバカ……いつもはちゃんとできてる私への気遣いが出来ないくらいに、そらの中では今日の公式戦がスゴいストレスになってたんでしょうね。

 

今日、あのバカは6年ぶりに震えながら、吐き気を我慢しながら、それでも新しくできた仲間のために無理をして頑張って出撃するんでしょうね…。

 

だから……

 

「がんばる子にはごほうびをあげなきゃね…。今夜はいっぱい抱き締めて、いっぱい“いい子いい子”してあげなきゃ。」

 

……でも…もしも途中でヘタレて出撃をグズってたら……

 

「“このヘタレ”って叱って、思いっきりビンタして目を醒まさせてやろうかしら?」

 

なーんて、うそうそ。冗談よ。

 

私はね?別にそらが逃げたいなら、逃げてもいいと思ってるの。

 

ヘタレて逃げ出すそらを、また世間の人達は、そしてそらの新しい仲間達は責めるのかもしれない。

 

けれども、世界中の誰もが逃げ出すそらを責めたとしても、私だけはそらを責めたりしない。

 

私だけは、私くらいは辛くて逃げ出すそらの最後の居場所になってあげたい。

 

決意から逃げ出したそらと、夢を追い続けるふりをして現実から逃げ出そうとしている私。

 

色々なモノから逃げ出した私達が寄り添っていても、それはただの感傷…傷の舐め合いだってことはわかってる。

 

それでも…それでもいいの…私はそらの居場所になってあげたい。

 

そらの支えになってあげたい。

 

私はそらが大好きだから。

 

だから、震えながら帰ってくるそらにニコニコの笑顔で“おかえりなさい”って、言ってあげたい。

 

泣き出しそうになってるそらに“頑張ったね”って言って頭を撫でてあげたい。

 

“偉かったね”って、そう言って抱き締めてあげたい。

 

いっぱい甘えさせてあげて…いっぱい優しくしてあげて…いっぱい二人でお話をして…二人で美味しいごはんを食べて…二人で一緒にお風呂に入って……いつものようにベッドの中で互いを慰めあって……そらが眠る前に耳元で言ってあげるの……。

 

“ダイスキヨ”って。

 

“アイシテルワ”って。

 

“ズットイッショニイヨウネ”って。

 

それは愛の言葉であると同時に、きっと呪いの言葉になる。

 

そらを永遠に私だけに縛り付ける呪いの言葉に。

 

逃げ出したそらは私の愛の言葉を受け入れる。

 

逃げ出したそらは呪いの言葉を受け入れる。

 

弱ったそらは優しく囁く私の愛の言葉を、呪いの言葉を、絶対に受け入れる。

 

私の愛は、私の呪いは、必ず成就される。

 

そうしたら…きっとそらは永遠に私だけのそらになってくれる…。

 

どこにもいかず、どこにもいけず、このぬるま湯のようなお互いに都合のいい関係を続けていくの……。

 

そらは今まで通りに、私だけのそらでいてくれるの……。

 

「………ナニ考えんてんだか、私は…。」

 

それじゃダメなのよ…。

 

そらはもう一度、前に進もうとしているのよ。

 

なら私は全力でそらを応援してあげなきゃ。

 

あの子の歩み始めた新しい道を応援してあげなきゃダメなの。

 

そしていつか、そう遠くない未来に、私達の道は重なりあう。

 

そらが仲間達と進み出した新しい道と、私の歩む夢の道は重なりあう。

 

“ガンプライブ”と言う交差点で。

 

そらの選んだ道はパパと約束した私の“夢”の道と重なりあう…。

 

その時、桜の舞う空の下で、初めてそらと出会った時に私が思い描いた“夢”の理想が叶う。

 

「はぁ……まさかこんな形でガンプライブへの道が見えてくるなんてね…。」

 

でも、どんな形だとしても、2年間ずっとひとりぼっちで足掻き続けて目指し続けたあの夢の舞台へと手が届くのよ…。

 

待ってなさいよ、A-RISE……いえ、“無敗の女王”綺羅 ツバサ…。

 

アンタの無敗神話は私が必ず終わらせてやるわ…。

 

それがあの日、アンタが一人で先輩達を蹂躙したおかげでひとりぼっちになってしまった私のささやかな復讐よ。

 

だから………

 

「首を洗って待ってなさい。A-RISE…。私が必ずその首、刈り取ってヤるわ…。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー!もう!なんで出掛けにインターネットの勧誘の電話がかかってきたり、大家さんの長話に付き合わされたりすんのよ!げっ!もうこんな時間なの?!そらのバトル始まってるじゃない!ヤバイわ!急がないと!」

 

あの後、身だしなみを整え髪型をいつものツインテールにセットしてお気に入りのリボンを結んで、リュックにガンプラやその他の色々なパーツを詰め込んだ私は、意気揚々と家を出ようとしたんだけど、その直後にインターネットの勧誘の電話が掛かってきちゃったのよ!

 

そりゃ勧誘の電話を掛けてくる人達も仕事なんだから仕方ないとは思うわよ?

 

でもね?

 

いつも!いつも!いつも!いつも!いつも!いつも!いつも!いつも!いつも!いつも!いつも!いつも!いつも!いつも!いつも!いつも!いつも!いつも!いつも!

 

毎回!毎回!毎回!毎回!毎回!毎回!毎回!毎回!毎回!毎回!毎回!毎回!毎回!毎回!毎回!毎回!毎回!毎回!毎回!毎回!

 

何回も!何回も!何回も!何回も!何回も!何回も!何回も!何回も!何回も!何回も!何回も!何回も!何回も!何回も!何回も!何回も!何回も!何回も!

 

バカの一つ覚えのような同じ内容の電話かけてきやがって!

 

いい加減しつこいのよ!

 

朝は休みの日の10時頃から夜は8時頃に電話がかかってきた時もあったわ!

 

夜の8時なんて虎太郎はもういい子にすやすや寝てるのよ!

 

せっかくいい子に寝ている虎太郎が電話のクソやかましいベルで起きちゃったらどーすんのよ!

 

睡眠妨害で健康が阻害されたって騒いで訴えるわよ!

 

そらにお願いしてハッキングさせて!アンタらの顧客データやらその他諸々をクラッシュして貰うわよ!

 

アイリにパソのアイコンが全部おっぱいになる悪質なウイルス流して貰って後悔させてやるわ!

 

大家さんも大家さんよ!

 

お菓子やお野菜 (お野菜は高いのよ!お肉以上に!いい!バランスのいい食事を作るにはお野菜は欠かせないの!は?サプリメント?ふざけんな!そんな味気ないモノ!私の可愛いこころとここあと虎太郎に飲ませられるか!だいたいね!お手軽プライスだったD○Cのパーフェクト野菜のサプリメントがなんか知らない内に“国産”野菜のパーフェクト野菜になってて値上がりしてのよ!結構ガッツリと!地味にお財布に響くのよ!元の値段に戻しなさいよね!) のお裾分けなら喜んで貰うけど!くだらない噂話にまだ女子高生の私を付き合わせんじゃないわよ!

 

西木野総合病院の夜の病棟にオバケが出るとか!今さらダイパの謎の場所でアルセウスが捕まえられるとか!アルセウス捕まえても第7世代に連れてこれんの?鳴金重工の不正疑惑がどうとか!改良型の無茶苦茶強力な“再生治療用”ナノマシンが開発されたとか!小池さんトコに来る出前のラーメンはいつも伸びてるとか!どっかの会長のドラ息子がどっかの旧家の娘に入れ込んでストーカー染みたことをしているとか!お米を粗末にすると両手にガンプラ持ったお米のお姫さまがやって来てお米に代わってお仕置きされるとか!IFSを介した洗脳だか精神支配だとか!頻発してる猟奇殺人事件を変な眼鏡をかけた美少女中学生3人組が追っているとか!伝説の最年少ガンプラファイターが復帰するらしいとか!どっかのお偉いさんが養女に聞いてると吐き気がするくらいに酷い性的虐待しているとか!あの世界的大女優のりせが近々日本に帰ってくるらしいとか(あ、りせさん帰ってくるんだ。そらも悠莉も喜ぶだろうな。)!神田明神に最近ムダに乳のデカイ女子高生巫女がいるだとか!デカイ乳なんてもげてしまえ!どっかの青トンガリのオレンジジュース野郎がポケモンとラブライブで新しく“それいけ我らKKE団”とかって意味のわかんないモノを書いてるとか!青トンガリのオレンジジュース野郎!テメェはまずはガンプライブを先に進めろ!未来人は存在していただとか!音ノ木坂の現生徒会長は実は酷いポンコツでマゾヒストだとか!擬似人格を搭載したサポートAIが開発されたとか!大家さんが3キロ太ったとか!サンムーンでまだ解禁前なのに改造産のマーシャドーがミラクル交換で流れてきて受け取ると違法行為判定喰らって下手するとネットから閉め出されるとか!プレバンで厄災戦時代の白いフラウロスが出るとか!

 

なんか知ってるネタも混じってるような気もしたけど基本的には全部が全部ゴシップじゃない!

 

私の知ったこっちゃないわよ!

 

プレバンの厄災戦時代の白いフラウロスはちょっと欲しいけどね!

 

流星号もカッコいいけど白いフラウロスもカッコいいのよ!

 

白だと塗装が楽だし!

 

あと1番どーでもいいのが韓国の俳優だかアイドルだか聞いたこともない名前のヤツがカッコいいとかホントにマジでどーでもいいわよ!ガンプラファイターなら知ってるけど韓流スターとか知らないわよ!

 

そもそも1番カッコいいのは私のそらに決まってるじゃない!

 

私のそらは下手なアイドルよりはカッコいいわよ!頭もいいし!運動だって得意よ!お料理もお菓子作りもスゴいのよ!

 

それとね!私のそらはベッドの上の夜の運動だって得意なんだからね!

 

私の1番感じちゃうポイントを執拗にねちっこく責めてきたりして気持ちよすぎて毎回“もうヤメて!”って言ってもイクまで責めてくるから、お潮を盛大に吹いちゃって大変なんだから!イッたあとも私がぐったりしてまともに動けなくなるまで愛撫は止めてくれないし!毎回毎回気持ちよすぎて死んじゃうわ!私のえぐれてるよりはマシ程度の残念なちっぱいだって喜んで(たぶん…。)ペロペロしてくれるのよ!乳首をコリコリしてハムハムしてチュウチュウしてくれるのよ!あのクソ忌々しいぽんこつロシアンクォーターとエセ関西弁の生徒会コンビみたいにムダにデカイ胸部装甲を搭載してる連中は滅びればイイと思うわ!最近はラブホ使うときはたまーにアブノーマルなプレイもしちゃうし!ってかラブホのレンタルコスプレってなんでSサイズがないのよ!この前ムリしてMサイズ着たらぶかぶかでそらが萎えちゃったじゃない!ネットで売ってるコスプレもほとんどがMサイズだし!男性用のXXLサイズの女の子キャラのコスプレ衣装か売ってんだからSサイズも一緒に売ってよね!ってなんで男が女の子キャラのコスプレすんのよ!しかもXXLサイズって!え?!需要あんの?!コミケとか行ったことないけどガチムチが可愛い女の子キャラのフリフリでキラキラのコスプレしてんの?!それともやっぱりBでLな男同士でのプレイで使ってんの?!男が少なくなってきたこのご時世で男同士でアナを掘り合うなんて無駄弾撃ってんじゃないわよ!野郎のケツのアナに精子垂れ流しにしないでちゃんと女の子とエッチなことして男の責任として生きてるうちに一人くらいは孕ませろ!

 

って!現実逃避してる場合じゃないわ!

 

急がなきゃ!

 

「待ってなさいよ!そら!いまにこちゃんが応援しに行ってあげるからね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あのバカ……こんなトコで突っ立てボケッとナニしてんのよ……。」

 

そら達の公式戦が開かれているいつもの馴染みのアミューズメントセンター音ノ木坂店に着いた私が見たのは、アミューズメントセンターの壁面に設置された大型街頭モニターに写し出されているバトルの様子をじっと見つめて動かないそらの後ろ姿だったわ…。

 

そらが見上げている大型街頭モニターでは、片方の額のアンテナが折れた素組のランチャーストライクがアグニを派手に撃ちまくっていたわ。

 

なんなのよあのランチャーストライクのファイターは?!

 

素組のランチャーストライクでエネルギーをバカみたいに消費するアグニをあんなに無計画にぶっ放しちゃったら、すぐにエネルギー切れになるわよ?!

 

エネルギー切れになっても歩行くらいならできるから、地上ならなんとかなるけど、宇宙だとスラスターもバーニアも使えないとろくに動けなくてイイ的になるだけよ!

 

あのランチャーストライクのファイターはナニ考えんのよ!バカなの?アホなの?それともナニか秘策でもあんの?

 

例えば武装領域(ウェポン・ストレージ)に予備のバッテリーを入れてあるとか?

 

汎用のエネルギーケーブルを使って、味方の機体からエネルギーを供給して貰うとか?

 

……私はナニ言ってんだか……素組のガンプラでどーやって予備バッテリーやエネルギーケーブルを使うのよ…

 

予備バッテーも汎用のエネルギーケーブルも、どっちも使うためには最低でも接続用に少しはガンプラを改造しなきゃダメなんだから、素組のあのランチャーストライクじゃムリでしょ…。

 

それに素組のガンプラの武装領域(ウェポン・ストレージ)に汎用のエネルギーケーブルはともかく、予備バッテリーなんてバカみたいに機体容量喰うモノを入れれるかって話よね!

 

って!だからそうじゃないでしょ!私!

 

どうしてそら達の、確か“μ's(ミューズ)”って名前のチームのバトルが始まってんのに!メンバーのそらがココでボケッと街頭モニター見上げてんのよ!

 

まさか……ヘタレた?

 

アミュセンの前までは来れたけど、例の公式戦トラウマに耐えきれなくなってこれ以上は進めなくなっちゃったの?!

 

あー!もう!しょーがない子ね!私がついてなきゃダメ男なんだから!

 

こうなったら私がそらの手を引っ張ってアミュセンの中まで連れていってやるわ!

 

GPスキャナでtypeRをスキャニングして、GPカウンターで出撃登録して、バトルコスチュームはそらの仲間が用意してあるのよね?

 

なら着替えもさせなきゃ!

 

バトルにさえ出撃しちゃえばそら程のファイターならあとは身体が覚えてるはずだからなんとでもなるわ!

 

よっし!行くわよ!にこ!

 

『ねぇ、にこ…ちょっと待って?このまま行けば、そらはトラウマに耐えきれなくなってきっと逃げ出すわよ?』

 

………………もしこのままそらを放っておけば……逃げ出したそらはさっき私が考えた通りに私だけのそらでいてくれる……?

 

このまま…バトルのタイムリミットはあと20分くらいだから、その間ずっと手を差し伸べないで見守っているだけで、そらは完全に私だけのそらになる……。

 

私の愛を受け入れて。

 

『…ねぇ、にこ…それはとても素敵な未来なんじゃないの?これからもそらが私だけのそらでいてくれるのよ?』

 

私の呪いを受け入れて。

 

『……ねぇ、にこ…あなたはそれでホントにいいの?このままそらが足踏みしているのをただ見ているだけでいいの?それは“私らしく”ないんじゃないの?』

 

あぁそうだ。その通りだ…。そんなのは“私らしく”ない。

 

私ならそらのお尻を蹴飛ばしてやらなきゃいけないはずだ…。

 

そらを私だけのそらにしたい。

そらが決意した新しい道を応援してあげたい。

 

私の中で相反する二つの願いがせめぎ合う…。

 

ねぇ、私……なら私はどうすればいいの…?

 

私は…私は…………

 

「そーら♪アンタこんなトコでナニボケッと突っ立てんのよ?」

 

気が付くと私はそらに話しかけていた…。

 

あぁ、そうか。

 

私は選択しちゃったんだ…。

 

そらとにこの、二人きりの未来を諦めて。

 

そらと私の、二人だけの優しい時間を終わらせて。

 

私はずっと傷付いて怯えていたこの子の背中を押してあげるのね。

 

「っ!に…こ……ちゃん…。いつの間に……。」

 

私の声に“ビクッ”と身体を震わせたそらは、肩越しに私をばつの悪そうな顔で、怯えた顔で、助けを求めているような顔で見てきたわ。

 

さて……可愛いこのバカにおせっかいしてあげますか!

 

「いつの間にって、ちょっと前からアンタの後ろにいたわよ?」

 

「はは…マジかよ…ぜんぜん気付かなかった…。」

 

「あ!ちょっとそら!あのランチャーストライク!」

 

「はっ?んなっ!あのアホ!エネルギー切れかよ!ことりさんと園田さんはナニやってんだ!穂乃果の手綱を握れてなかったのか?!」

 

街頭モニターに写し出されていたランチャーストライクは、ちょっと目を離したスキにエネルギー切れを起こしてストライク特有の白赤青のトリコロールカラーから、灰色のディアクティブモードになっちゃっていたわ。

 

マズイわね…出撃してる残りの機体は素組のジム・スナイパーⅡとウィングガンダムの改造機…。

 

エネルギー切れのランチャーストライクを庇って戦うにも素組のジム・スナイパーⅡとウィングの改造機だけじゃそのうち手が足りなくなるわよ?

 

素組のジム・スナイパーⅡのファイターは狙撃の腕はかなりのレベルだけど、動きがまだどこかぎこちない…たぶん初心者ね…。

 

ウィングの改造機の方は少しは機体もファイターも多少はマシけだど、他の二人に比べればまだマシってレベル…。

 

「クソ…行かなきゃ…行かなきゃ…頼むよ…動けよ…動いてくれよ俺の足…なんで前に進めないんだよ…俺を穂乃果の、ことりさんの、園田さんの、みんなの所に行かせてくれよ…。みんながヤバいんだぞ?!なのになんで…なんで俺は…。」

 

はぁ…ホント見てらんないわ…そらも…そらの仲間のファイター達も。

 

「ねぇ、そら。」

 

「なんだよ…。」

 

「帰ろっか?」

 

「えっ?!にこちゃん?」

 

「辛いんでしょ?怖くて震えが止まらないんでしょ?」

 

ごめんね、そら…今から私はアナタが1番言って欲しくて1番言って欲しくないことを話すわ。

 

「なら…アンタの新しい仲間も、公式戦も、ナニもかも投げ出して…」

 

もしも…そらが私の言葉の通りに“帰る”って言ったらどうしよう?

 

「帰ろ?」

 

そのときは…

 

「かえ…る?」

 

「そ、いいじゃない。別に逃げたって。約束を破ったて。仲間を見捨てたって。」

 

でも…そらはきっと…

 

「逃げる……約束を破る……穂乃果を…ことりさんを…園田さんを…………見捨て…られるかよ!!!」

 

そう。そらはきっと前に進む。

 

自らの内側に踏み行った相手を、仲間を、そらは見捨てることなんて絶対にしない。

 

それでこそそらよ…。

 

私がダイスキな、私の1番タイセツな、私のダイキライな……そらなのよ…。

 

「そう…それでいいのよ。なら進まなきゃね?そら♪」

 

「おうよ!」

 

おうよ!って威勢よくお返事したのはいいけど、まだ震えが止まってないわよ?

 

ほーんと、仕方ない子ね…。

 

「それじゃがんばるいい子には“マホウツカイ”なにこちゃんが、とっておきの“マホウ”をかけてあげる♪」

 

「“マホウツカイ”?ナニ言ってんだよにこちゃん?」

 

「しゃらっぷ!黙って聞きなさい!」

 

「うぇ?!は、はい…。」

 

「よろしい!ゴホン…それじゃあ…リラックスして…ゆっくり深呼吸して…目を閉じて…。」

 

「うん…すうーはぁー…すうーはぁー……こう?」

 

「そ、お利口さんね…偉いわ…。」

 

とっておきの“マホウ”

 

アナタだけに送る“ユウキノマホウ”

 

私のありったけの想いを、勇気を、愛を、私の持てる全てを…

 

そら…アナタにあげるわ。

 

「(ダイスキよ…そら…。)んっ…」

 

「にこちゃん?今なんて…んん?!」

 

そらに聞こえないようにそっと囁いた私の愛の言葉。

 

その囁きを、なんて言ったのか聞き返そうとしたそらの唇に、私は自分の唇を押し付ける。

 

唇を押し付けて、舌でそらの唇をこじ開ける。

 

そらはいきなり絡めてきた私の舌に驚き、逃げようとするけど、私は逃がさずにそらの口内へ、奥へ奥へと舌を伸ばす。

 

初めは驚いて戸惑っていたそらだったけど、次第に舌を絡めていつものように激しいキスへと変わっていく。

 

受け取って、そら…私の精一杯の想いを。

 

受け取って、そら…私のなけなしの勇気を。

 

受け取って、そら…私の狂おしいまでの愛を。

 

受け取って、そら…私の…にこの全てを。

 

「ん…ん………んん…」

 

「んっ…ん……」

 

どれくらい口付けを交わしていのだろうか?

 

永遠のようで、一瞬のような、甘く、せつなく、蕩けるように甘美で退廃的な時間。

 

いつものように互いの肺の中の酸素を全て使い尽くして、私達はようやく唇を離す…。

 

互いの舌先がまるで別れを名残惜しむ恋人達のように、ゆっくりと、少しずつ離れて、混ざりあった私達の唾液が舌先から糸をひいて珠になり、やがて重力に引かれて地面へと落ちていく……

 

「にこちゃん…びっくりした…外でにこちゃんから激しい方のキスして来るなんて…。」

 

「イヤだった?」

 

「イヤじゃないけどさ、ちょっと驚いただけだよ。」

 

「ならにこの“ユウキノマホウ”はちゃんとそらに届いた見たいね♪」

 

「は?」

 

「“は?”じゃないわよ。ほら?にこのとびっきりの“ユウキノマホウ”のおかけで、そらの震え。少しは収まったでしょ?」

 

「ナニ言って…あっ…え?…ホ、ホントだ……なんで…。」

 

「はい!バカは深く考えない!さぁ!行くわよ!アンタの仲間が!私の未来の仲間が!最強の援軍の到着を待ってるわよ!」

 

私はそらの手をアミューズメントセンターの入り口へと取って走り出す。

 

新しい未来へ向けて走り出す。

 

さぁ!そら!楽しい楽しいガンプラバトルの時間よ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




皆様。本日もご覧いただきましてありがとうございました。

今回はソラが第5話で穂乃果ちゃん達を助けに来るちょっと前のお話でございました。
次回は第5話でのソラの出撃直前のお話になります。


次回更新は月曜日のお昼頃を予定しております。
よろしければ是非ご覧下さい。

それでは改めまして、本日もご覧いただきまして、本当にありがとうございました。
皆様のご意見、ご感想もお待ちしております。
どうかお気軽にお声掛け下さい。

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