ガンプライブ! ~School Gunpla Project~   作:Qooオレンジ

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皆様。本日もご覧いただきありがとうございます。

今回は海未ちゃん生誕祭の特別編その③になります。

海未ちゃん生誕祭特別編は次回の④で完結予定でございます。
結局は海未ちゃんのお誕生日から二週間以上かっかてしまいました…。


それでは 2017 園田海未生誕祭特別編「海未ちゃんの幸せ家族計画③」 はじまります。


















2017 園田海未生誕祭特別編「海未ちゃんの幸せ家族計画③」

[[やれやれ…少しは期待できるかと思ったが、所詮は幼女を襲う下賎の輩。我が愛機、バエルゲーティアの切り札を切るまでもなかったか。さて…イスルギドック。そちらの首尾はどうか?]]

 

[[ハッ!現在、幼女護衛騎士団のグレイズ・リッターと一般協力のファイター達の手により、金色のストライクはその大半を撃墜。再出撃も止んだ様なので間もなく殲滅も完了するかと。残るは…。]]

 

[[黄金の髪の可憐な幼女と、その若き父と母が相手をしているあの金色のストライクフリーダムか。まぁあちらは任せてしまっても問題は無いだろう。]]

 

[[よろしいのですか?あの金色のストライクフリーダムはかなりの改造が施されていました。ビーム兵器を持つジム・スナイパーⅡはともかく、素組のザクとハイ・モック(幼女仕様)には実弾兵器しか搭載されていません。スーパードラグーンを破壊したと言え、PS装甲持ちを相手にまともな戦闘が出来るか…。]]

 

[[イスルギドック。私はお前に問題は無いと言った。あの幼女とその両親…特に若き父親のファイターとしての実力は、すでにガンプラバトルの世界大会に出場していても可笑しくないレベルだ。例え機体性能に圧倒的な差があったとしても、あの程度の相手がどうこう出来る様な甘い相手では無い。現に見てみろ、イスルギドック。あちらの戦闘もそろそろ終わるようだぞ?]]

 

[[なっ!バカな!素組のガンプラでカスタマイズされたストライクフリーダムを撃墜した?!]]

 

[[彼等は本当に素晴らしいな…そして、あの黄金の髪の可憐な幼女…。もしも、この私にアルミリアと言う最高の伴侶が居なければ、思わず抱き締めてプロポーズをしていたかもしれないな…。]]

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<<マスター、ウミ。幼女趣味を拗らせた変態ファイター達の方は間もなく金色集団の殲滅が完了する様です。金色を見ているのにも飽きてきましたので、こちらもそろそろこの金色のストライクフリーダムを墜として終わりにしませんか?>>

 

「そうですね。もうすぐお昼ご飯の時間ですし…ぱーぱ!アイリの言う通り、そろそろこな馬鹿騒ぎも終わりにしましょう!私が金色の脳天をぶち抜きますので、そいつの動きを止めて下さい!」

 

[[おうよ!確かに腹も減った来たし、ここら辺が潮時だな!えりーちかちゃん!まーまが今から金色のストライクフリーダムの脳天ぶち抜くから、えりーちかちゃんはアイツにトドメを!]]

 

[[あい!えりーちか!がんぱりましゅ!!!]]

 

私達親子三人と、金色集団の首魁と思われる金色のストライクフリーダムとの戦闘が始まり、すでに数分が経過しています。

 

私達親子は戦闘を開始した序盤こそは金色のストライクフリーダムの圧倒的な機動性に手間取っていましたが、ぱーぱが何時ものフラッシュグレネードを使った目眩ましで相手の虚を突き、金色のストライクフリーダムの足を無理矢理止めさせてからは概ねこちらの思惑通りに戦闘が進みました。

 

フラッシュグレネードの目眩ましで金色のストライクフリーダムが足を止めた一瞬の隙に、ぱーぱとえりーちかちゃんは一気に距離を詰めて接近戦に持ち込み、それぞれヒートホークとハンドアックスでボコボコにしていました。

 

相手はPS装甲を持っているのでヒートホークやハンドアックスでは致命傷を与える事は出来ませんが、ぱーぱとえりーちかちゃんの絶え間なく繰り返される容赦のない攻撃に手も足も出ない金色のストライクフリーダムを操るファイターは、途中で完全に心が折れてしまった様ですね。

 

先程から中学生くらいの男の子の声が全周波通信を使い、“もうやめて”とか“ごめんなさい”とか言っています。

 

もちろん私もぱーぱも今さら“ごめんなさい”をされても許すつもりは毛頭もなく、その声が聞こえてからは更に攻撃を激化させてあげました♪

 

苛め?違います。

 

“しつけ”です♪

 

[[動きを止めるついでにダルマにしてやんよ!オラァァァァ!!!]]

 

ぱーぱはそう叫びながらまるで羽根の様に光の粒子を発していたバックパックを無理矢理に引き剥がすと、ついでとばかりにF2ザクの右手に握られたヒートホークを金色のストライクフリーダムの手足の間接部へと叩き付けました。

 

ぱーぱはまた間接部から四肢を両断して、文字通り手も足も出ない達磨状態にするつもりですね。

 

ぱーぱは本当に好きですね…頭に来た相手を達磨にして抵抗できなくしてから仕留めるのが。

 

確かに動きを止めて下さいとは言いましたが、四肢を両断して達磨にしてしまっては、私が脳天をぶち抜く意味が余り無くなってしまいますよ?

 

「やれやれ…ぱーぱは仕方ありませんね。それでは気を取り直して…えりーちかちゃん!まーまがかっこよく決める所をよぉーく見ていて下さいね!」

 

[[あい!まーま!がんばぇ!]]

 

あぁ!もう!えりーちかちゃんはなんて可愛いらしいのでしょうか!

 

何処かのドMのどえーむちかとは大違いです!

 

可愛い可愛い私のえりーちかちゃんから応援して貰ったからには、この一撃は絶対に外せませんね!

 

まぁぱーぱの手によってバックパックを剥がされて手足も切り取られて動きを止めてしまったただの“的”を相手に外す気なんてさらさらありませんけどね!

 

「その脳天!ぶち抜きます!」

 

私のジム・スナイパーⅡのスナイパーライフルから放たれたビームはもちろん外れる筈もなく、金色のストライクフリーダムの脳天…頭部を貫き吹き飛ばしました。

 

バックパックを剥がされ、四肢を両断され、頭部を失って…これであの金色のストライクフリーダムに残されているのは胴体部分だけになりましたね。

 

さぁ♪えりーちかちゃん♪

 

今ならなんの抵抗も出来ないので、小さい子供達を苛め様としていたあの悪い子を思う存分に懲らしめてあげなさい♪

 

「お待たせしました♪えりーちかちゃん♪手も足も出ないあの悪い子を貴女のお好きな様に仕留めちゃって下さい♪」

 

[[おっし!頑張れ!えりーちかちゃん!ぱーぱも応援してるぞ!アイリ!ちゃんと俺達のえりーちかちゃんの勇姿を録画してるな!]]

 

<<マスター、ご安心を。合流してからのえりーちかちゃんのかしこかわいい勇姿は高画質モードで余す事無く録画中です。後でデータを編集した物とノーカット版の双方を作製しておきます。>>

 

[[流石は俺の相棒!ぐっじょぶだ!家に帰ったら観賞用と保存用と予備と予備の予備と布教用に最低でも100枚は作らねぇーとな!いや?布教用に100枚程度じゃ足りねぇーか?]]

 

「ぱーぱ!布教用もいいですが、私の分もちゃんと用意して下さいね!」

 

[[おうよ!まーま!任せとけって!]]

 

「はい♪お願いします♪さぁ!えりーちかちゃん!ヤっちゃって下さい!」

 

[[あい!えりーちか!がんぱりましゅ!ふるぶーしゅと!しゅとぅーるむ!]]

 

えりーちかちゃんはハイ・モックの右手に握られたハンドアックスを構え直すと、“しゅとぅーるむ!”と鼻から愛が溢れだしてしまいそうになる可愛らしいお声を発しながら突撃して行きました!

 

そして…。

 

[[お見事!さっすがはぱーぱとまーまのえりーちかちゃん!ちゃんとまーまが露出させた間接部を狙えて偉いぞ!]]

 

[[あい!えりーちか!じょーじゅにできまちた!]]

 

金色のストライクフリーダムの頭部を失った首元の間接部へとハンドアックスを叩き付けました。

 

えりーちかちゃんの一撃は首元の間接部からコクピットを切り裂き、金色のストライクフリーダムはコアロスト判定を受けてその動きを完全に止めてしまいました。

 

えりーちかちゃんとぱーぱとまーま♪

 

私達親子三人の大勝利ですね♪

 

ちなみにですが。えりーちかちゃんが言っていた“しゅとぅーるむ!”とはロシア語で“突撃!”と言う意味なのだそうです。

 

えりーちかちゃんの元の姿の絵里もよくバトルで気合いを入れて突撃する時には“シュトゥールム!”と叫びながら突撃して行くのですよ。

 

[[よぉーし!えりーちかちゃん!ぱーぱとハイタハッチだ!いぇーい!]]

 

[[あい!はいたっち!はいたっち!ぱーぱとはいたっち!きゃっふー♪]]

 

[[そちらも無事に終わったようだな。]]

 

[[あ!ねこさん!]]

 

えりーちかちゃんがかしこかわいく金色のストライクフリーダムを撃墜し、他の金色集団も殲滅されて周囲に敵機が居なくなると、ぱーぱとえりーちかちゃんはお互いの健闘を称えあってハイタハッチを行い喜んでいます。

 

そんな私達の下へとマッキーキャットが白い機体…“ガンダムバエルゲーティア”を操りやって来ました。

 

[[おう。さっきはあぶねぇトコ助けて貰っちまったな。マッキーキャット、あの時もしアンタが間に合わなかったら、って考えるとゾッとするよ。]]

 

「そうですね…。こんな事になるならば私達も自分のガンプラを持って来れば良かったです…。私のアルテミスならば“零の領域”を発動中に全開で機体を振り回しても、機体が負荷で耐え切れなくなるなんて事にはなりませんでしたから…。」

 

[[それを言うならそもそもえりーちかちゃんが絵里さんのガンプラを使ってれば、この程度の相手なら他の子達を守りながらでも余裕だったんだろーよ。]]

 

[[あい!えりーちかの“ぶりゅん”があればよゆーでしゅ!しゅとぅーるむしてみーんなやっつけましゅ!くしざしでしゅ!]]

 

「串刺しだなんて流石は私達のかしこかわいいえりーちかちゃんです!ね、ぱーぱ♪」

 

[[おうよ!]]

 

[[フッ…頼もしい限りだな。]]

 

[[准将、ご歓談中に失礼します。間もなくバトル終了のお時間です。アルミリアパレードのお時間も迫っています。]]

 

[[そうか…分かった。……可憐な幼女の若き父よ。次は幼女を傷付け様とする下賎な連中とではなく、本気の君と君のガンプラと是非ともバトルをしてみたいな。]]

 

[[へぇ…ソイツは楽しそうだな。その機体…バエルゲーティアって言ったか?そん時はその機体の奥の手を俺と俺の“ツヴァイ”が無理矢理にでも引き出してやんよ。]]

 

[[フッ…君とのバトルを楽しみにしているよ。さて……幼女達の危機を救う為に集まってくれた有志諸君!本日はご苦労だった!諸君等の奮戦のお陰で可憐な幼女達を不粋極まりない金色の悪漢達から守り抜く事が出来た!一人の紳士として、そして諸君の同士として!ここに最大限の感謝を表する!ありがとう!我が同胞達よ!また何時か!幼女を守る為に共に戦える日が来る事を願っている!我等は幼女の剣であれ!我等は幼女の盾であれ!全ては幼女の為に!総員!解散!]]

 

[[[[[[[[[[我等は幼女の剣であれ!我等は幼女の盾であれ!全ては幼女の為に!幼女!幼女!幼女!幼女!!!幼女!万歳!幼女!万歳!幼女!万歳!!!]]]]]]]]]]

 

……この連中は最後の最後にコレですか…。

 

基本的には子供達を守ってくれた良い人達なのに、どうやら警察に通報しなければいけないようですね…。

 

はぁ…嘆かわしい……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まーま!ねこさんとおひめしゃま!しゅごい!きえー!はらしょー!」

 

ハプニングもありましたが、幼女限定ガンプラバトル体験コーナーも無事に終わり、私達は“ふぁりどらんど”の目玉の一つである豪華絢爛な“アルミリアパレード”を観る為に、観客で賑わう“ふぁりどらんど”のメインストリートへとやって来ました。

 

ちなみに、結局は幼女スキーの変質者共を警察に通報するのは止めてあげました。

 

えりーちかちゃんを助けて貰った恩もありますからね。

 

今回だけは特別に見逃してあげました。

 

「はい♪綺麗なお姫様ですね♪でも?まーまとぱーぱのえりーちかちゃんも、とーっても可愛いくて綺麗ですよ♪」

 

「おうよ!うちのえりーちかちゃんが世界いちぃぃぃぃぃぃ!」

 

「きゃっふ!えりーちかがせかいいちー!」

 

「はい!えりーちかちゃんが世界一です!」

 

パレードの主役の一人であるマッキーキャットは、先程までのシンプルな白いコートではなく、青と白を基調としたコートを羽織っていました。

 

そうしてパレードのもう一人の主役…ラベンダーアメジストの様な薄い紫の少し癖のある綺麗な髪を持つ、“ふぁりどらんど”のお姫様“アルミリア姫”は、白を基調とした豪華なドレスを身に纏い、マッキーキャットと仲良く手を繋ぎとても嬉しそうに、そしてとても幸せそうに、パレードを観る為に集まった観客の皆さんに微笑みながら手を振っていました。

 

……アルミリア姫が9歳の幼女ではなく、成人した女性ならば素直に素敵なパレードだと言えたのですが…。

 

「あ!まーま!ねこさんとおひめしゃまがえりーちかにてーふってる!はらしょー!ねこさーん!おひめしゃまー!はらしょー!きゃっふー!」

 

幼女趣味の変質者が幼女の婚約者と手を握りながら幼女に手を振る…あぁ…ツッコミたい!

 

大きな声で今すぐにツッコミたいです!

 

9歳の婚約者ってなんですか!9歳って!

 

そもそも幼女の夢の国ってコンセプト自体が可笑しいですよね?!

 

なんで社長自らがメインマスコットキャラクターの着ぐるみを来てるんですか?!

 

ツッコミ処が満載ですよね!

 

寧ろツッコミ処しかありませんよね!

 

ですが…えりーちかちゃんがこのツッコミ処オンリーの“ふぁりどらんど”を楽しんでいるのです…えりーちかちゃんを愛するまーまとして、ここは私の中で激しく燃え盛るツッコミ魂をグッと押さえ込んで、何としても我慢してみせますよ!

 

こんなに楽しそうなえりーちかちゃんを不粋なツッコミ何かで邪魔したくはありません!

 

全ては愛しいえりーちかちゃんの為です!

 

もうえりーちかちゃんは本当にはらしょー!です!

 

えりーちかちゃん!まーまは頑張りますね!

 

「まーま、マッキーキャットやアルミリア姫、“ふぁりどらんど”に対して色々とツッコミたいの我慢してるのは分かるけどさ、“愛”って色んな形があるもんだぞ?現に俺達“μ's”だってそうだろ?将来的には嫁が9人とか、男が少なくなって法律的に一夫多妻が認められているって言ってもあり得ねぇだろ?」

 

「私達は互いに認め合っているからいいんです!それに、愛には色々な形があると言う事も分かってはいますが…。」

 

「納得出来ないって顔だな…。なぁまーま…いや、海未さん。マッキーキャットと手を繋いでるあのお姫様、アルミリア姫を見てみろって。どうだ?なんかさ、あのお姫様、すげー幸せそうだろ?確かに今のあの二人が愛し合ったら犯罪だけど、あと7年もすれば今は9歳のアルミリア姫は16歳になるんだ。そうしたら…。」

 

「16歳…彼女は…アルミリア姫は日本の法律上は結婚出来る年齢になるのですね…。」

 

16歳…今の私と同じ年齢ですね…。

 

私も…もう法律上は結婚出来る年齢なのですね…。

 

「そ。それでさ、たぶん…だけど、マッキーキャットがこの“ふぁりどらんど”を作ったのって、まだ幼い婚約者のアルミリア姫と自分の仲をこうしてみんなに大っぴらに祝ってもらう為なんじゃねぇーかな?って俺は思ったりするんだ。」

 

大っぴらに祝って貰う為?

 

「それは…どう言う意味ですか?」

 

「うん。ここはさ、遊園地はさ…“夢の国”なんだよ。日常から切り離された非日常の空間。子供が…いや、子供だけじゃなくて大人だって、誰だってみんなが楽しい夢を見ていてもいい場所なんだよ。だからさ、まだ9歳のアルミリア姫が、犯罪になる程に年の離れた婚約者と愛を語り合っていても、この夢の国なら…着ぐるみを着たマスコットキャラクターとしてのマッキーキャットとなら夢の国の一幕として片付ける事も出来るんじゃねぇーのかな?海未さんはどう思う?幼いお姫様と着ぐるみの猫が夢の国で愛を語り合っていたらさ。」

 

子供も大人も…誰もが夢を見ていても良い非日常の夢の国で、幼女のお姫様と猫の着ぐるみのマスコットキャラクターが愛を語り合っていたら?

 

…多少シュールな気もしますが、小さな子供と猫の着ぐるみのマスコットキャラクターが愛を語り合っていても、遊園地でなら、夢の国でならば…

 

「……微笑ましいです。」

 

「そう。幼い姫とマスコットキャラクターとしてのマッキーキャットが愛を語り合っていても、ここなら、この“ふぁりどらんど”なら、大抵の人が微笑みながら祝福してくれる。誰も幼いアルミリア姫と着ぐるみのマッキーキャットが愛を語り合っていても、誰もバカにはしないんだ。」

 

「あ…。」

 

そう言う事なのですね…。

 

マッキーキャットはいつか愛しい人と誰憚(はばか)る事なく結ばれるその時が来るまでの間、まだ幼いアルミリア姫の慰めの場として、この“ふぁりどらんど”を作ったのですね…。

 

ただ愛しい人の為だけに自らが道化を演じてまで…。

 

「今の海未さんなら、えりーちかちゃんのまーまになった海未さんになら、少しはマッキーキャットの“愛”も分かるんじゃねぇーかな?」

 

…そうですね…。

 

悔しいですが…とても悔しいのですが……認めてあげます。

 

マッキーキャット…貴方の“愛”の形を。

 

「…うちのえりーちかちゃんに手を出さない限りは見逃してあげます。」

 

「だな。」

 

色々な愛の形…。

 

幼い姫を想う夢の国の猫の騎士の“愛”の形…。

 

絆を繋いだ最高の仲間達と愛する人を分かち合うと誓った私達“μ's”の“愛”の形…。

 

たった一日の限られた時間の仮初めの親子の“愛”の形…。

 

“愛”とは何とも難しい代物ですね。

 

「まーま?どーちたの?ぽんぽんいちゃいの?」

 

「…大丈夫ですよ、えりーちかちゃん…。」

 

今は…今だけは…仮初めの我が子を精一杯愛しましょう。

 

愛していますよ。

 

世界中の誰よりも。

 

えりーちかちゃん…。

 

愛しい我が子。

 

ぱーぱとまーまとえりーちかちゃん…。

 

私達親子三人の優しい時間がどこまでも、ずっと、ずっと、あの空の向こうまでも、海の果てまでも…永遠に続けばいいのに…。

 

少しずつ迫り来る別れの時を想い、私はそう願わずにはいられませんでした…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぱーぱ?大丈夫ですか?えりーちかちゃん、重くないですか?」

 

豪華絢爛な“アルミリアパレード”を堪能し、“ふぁりどらんど”の閉園時間までたっぷりと遊び倒した私達親子三人は、帰り際に私達親子を見送る為に出口で待っていてくれたマッキーキャットとアルミリア姫との別れを惜しみながらも家路に着きました。

 

帰り道ではえりーちかちゃんが遊び疲れてしまい眠くなってしまったので、ぱーぱがえりーちかちゃんを背負ってくれました。

 

ぱーぱは…青空はやっぱり“男の子”なのですね。

 

軽々とえりーちかちゃんを背負ってしまいましたよ。

 

「大丈夫。えりーちかちゃんはそんなに重くねぇーよ。それにさ、なんかこの重さはさ…背負っていて嫌じゃないんだよ。」

 

「背負っていて嫌じゃない?ですか?」

 

「そ。この背中の小さな重さが、背中のぬくもりが、守らなきゃいけない大切な“命”なんだって実感できる様な気がするからさ。だからこの重さは嫌いじゃないんだ。」

 

“命”の重さ。

 

“命”のぬくもり。

 

そうですね…。

 

確かに…そんな素敵な“重さ”は嫌いにはなれませんね。

 

「ん?家の前に車?あの車って真姫の護衛の連中の…西木野警備保障の車だろ…。なんで家の前に…。」

 

「希と真姫?どうしてあの二人が……あ…。」

 

車から降りてこちらを見ている希と真姫の二人を見た瞬間、私は悟ってしまいました。

 

ぱーぱとまーまとえりーちかちゃん。

 

私達親子三人だけの優しい時間に終わりが来たのだ、と。

 

仮初めの親子に終わりの時が来たのだ、と。

 

愛しい我が子と別れの時が来たのだ、と。

 

「えりーちかちゃんの迎え…か。」

 

「はい…。」

 

「まーま…いや…海未さん…。」

 

「分かっています…分かっていますが……。」

 

手放したくない。

 

頭では別れの時だと理解してはいるのに、私の心は全力でそれを拒んでいる。

 

この子を、仮初めとは言え、たった一日だけとは言え、成り行きでお世話を押し付けられたとは言え…絆を繋いだ愛しい我が子を…誰にも…それが大切な仲間である希と真姫だとしても、誰にも渡したくない。

 

……このまま…踵を返して、ぱーぱとえりーちかちゃんと三人で逃げてしまえば…。

 

そうすれば、私達はまだ親子でいられる…。

 

このままえりーちかちゃんを迎えに来た希と真姫から逃げてしまえば…私はまだえりーちかちゃんのまーまでいられる…。

 

このぬくもりを手放さなくても済む…。

 

もっと一緒にいられる…。

 

ずっと一緒にいられる…。

 

何時までも一緒にいられる…。

 

こんなにも優しい時間を終わらせないでも済む…。

 

今なら…今、逃げ出せば…。

 

そんな栓ない事を考えている内に、私はいつの間にか希と真姫の目の前に立っていました。

 

「えりーちかちゃん、海未ちゃん、そらっち~。おかえり~。」

 

「おかえり。海未、そら。えりーちかちゃんの面倒をみてくれてありがと。約束通りその子を…えりーちかちゃんを引き取りに来たわ。さ、その子をこっちに渡してちょうだい。」

 

 

 

 

 

ついに…愛しい我が子との別れの時が来てしまいました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「嫌です!この子は!えりーちかちゃんは私の子です!このまま私が!まーまがぱーぱと一緒に育てるのです!誰にも渡しません!絶対に!希!例え貴女だとしても!えりーちかちゃんは渡しません!」

 

「海未ちゃん、あのな?」

 

希と真姫から告げられたえりーちかちゃんとの別れの時。

 

私はそんな別れを拒み、えりーちかちゃんを抱き締めて、希と真姫に引き渡すまいと必死に抵抗します。

 

希はそんな私を困った様な、そして申し訳なさそうな面持ちで見ながら声を掛けてきます。

 

「聞きたくありません!大体!貴女が私にこの子を宅配便で送り付けたのではないですか!送られた以上は!この子は私の子です!私の子なんです!」

 

「それは…宅配便の真似して海未ちゃんに預けたのはイタズラが過ぎたとは思うとるよ。けどうちにもえりーちかちゃんの為に…えりちの為にやらなアカン事があったんよ。海未ちゃんにしかえりーちかちゃんは預けれんかったんよ…。まさかそれがこなんなるなんて…海未ちゃん…堪忍してぇな…。」

 

「そんな事はどうでもいいのです!どうでもいいんです!お願いですから早く帰って下さい!私からこの子を!えりーちかちゃんを奪わないで下さい!お願いです…お願いですから……この子を…連れていかないで下さい…。お願いです……。」

 

希らしくない悲しそうな顔で、何度も私に“堪忍してぇな”と謝るそんな希の声を遮って、私は拒絶の声をあげます。

 

あぁ…私はなんて我が儘を言ってるのでしょうか…。

 

頭では別れの時が来たのを理解していたのに、結局は心の赴くままに、えりーちかちゃんを渡したくないと駄々を捏ねています…。

 

分かっています…。

 

今のこの状況が、絵里が心身共に幼くなり、えりーちかちゃんになってしまったこの状況が異常な物だとは。

 

分かっています…。

 

このまま絵里がえりーちかちゃんのままでいたら、亜里沙を始めとした沢山の人達が悲しい想いをするのだと言う事も…。

 

分かっています…。

 

希が大好きな親友の絵里の為に、真姫と一緒に必死に“何か”をしていたのだと言うのも…。

 

分かってはいます…。

 

けど…だけど………。

 

「海未さん…。」

 

「海未…ゴメンね。でもね、もう時間がないの。あと1時間位で薬の成分で幼女化を引き起こしているえりーちかちゃんの体内のナノマシンが完全に今の形に定着しちゃって、えりーちかちゃんはエリーには戻れなくなるの。希が人体実験に志願してくれたお陰で幼女化を解く薬は出来てるの。だから、今ならまだエリーに戻れるの…間に合うのよ…。海未…貴女の気持ちも分かるわ。けど…。」

 

幼女化したナノマシンが完全に定着する?

 

戻れなくなる?

 

絵里がこのままえりーちかちゃんのままでいたら…絵里がこの世界から居なくなったら…沢山の人が悲しい想いをしてしまう…。

 

私の我が儘で…沢山の人が悲しむ事になる…。

 

今なら…今なら私が涙を流すだけで全てが丸く納まる…。

 

「なぁ真姫。えりーちかちゃんが絵里さんに戻ったら…えりーちかちゃんは…今ここに居る、俺と海未さんの“娘”としてのえりーちかちゃんはどうなるんだ?何時もの幼児退行みたいに、絵里さんに戻ったらえりーちかちゃんの記憶は絵里さんに引き継がれるのか?それとも…。」

 

絵里がえりーちかちゃんの記憶を引き継ぐ?

 

それなら…絵里を怖がらせて幼児退行を引き起こせば、またこの愛しいえりーちかちゃんに逢えるのですか?

 

絵里がえりーちかちゃんの記憶を引き継ぎさえすれば…。

 

「……今回のこの幼児退行現象はいつものエリーのアレとは違うの…。たぶん…えりーちかちゃんの記憶はエリーには引き継がれないわ…。奇跡でも起こらない限りはね…。だから…このえりーちかちゃんは……。」

 

えっ?

 

真姫?貴女は今、なんて言いました?

 

記憶は引き継がない?

 

それでは私の腕の中に居る、この愛しいえりーちかちゃんはどうなるのですか?

 

「…そっか……このえりーちかちゃんは居なくなるんだな…。」

 

「ゴメン…。」

 

居なくなる…。

 

えりーちかちゃんが居なくなる…。

 

もう…二度と会えない…。

 

もう…二度と“まーま”と呼んでくれない…。

 

もう…二度とこの笑顔を見る事が出来ない…。

 

もう……二度と……。

 

「そんな…。そんなのって…。」

 

絵里かえりーちかちゃんか…。

 

「まーま?ぱーぱ?どーちたの?」

 

そんなの…選べるはずありません…。

 

「えりーちかちゃん……。」

 

でも…

 

「クソが……ホント…ままならねぇよな…ホント…クソだよなぁ…。」

 

私は…

 

「海未…お願い。もう本当に時間がないのよ。」

 

私は………

 

「海未ちゃん。恨んでくれてええ。憎んでくれてええ。うちのこと嫌いになってくれてええ。全部が終わったらうちのこと、好きなだけ殴ってくれてええ。せやから…お願いやから…。」

 

私は…私は…………私は………。

 

私は…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私の選択は…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えりーちかちゃん…。まーまとはもう“さよなら”の時間ですよ…。」

 

「ふぇ?まーま?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




皆様。本日もご覧いただきましてありがとうございました。

マッキーキャットの戦闘シーン…思いっきり割愛してしまいました…。
マッキーキャットは今回だけの出番のつもりで書いたいたのですが、書いている内に鉄華団側のキャラクターも出したいなぁ…とか思ってしまい、その影響でマッキーキャットの戦闘シーンが割愛されてしまいました。
近い内に再び幼女の夢の国を舞台とした物語をお送り出来ればと考えております。
海未ちゃん生誕祭特別編は次回で完結予定でございます。
皆様よろしければ最後までお付き合いいただければ幸いでございます。

次回更新はいつも通り月曜日のお昼頃を予定しております。
よろしければ是非ご覧下さい。


それでは改めまして、本日もご覧いただきまして、本当にありがとうございました。
皆様のご意見、ご感想もお待ちしております。
どうかお気軽にお声掛け下さい。


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