ガンプライブ! ~School Gunpla Project~   作:Qooオレンジ

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皆様。本日もご覧いただきありがとうございます。

スクフェスの仲良しマッチでハイスコアを狙える楽曲が全く回ってこないQooオレンジでございます。
今回は久しぶりにスコアランキング10000位にいけないかも…。

さて、今回はにこちゃんsideの8回目となります。
今回は唐突ににこちゃんとソラとの出会いの一部が語られたりしております。

それでは 第7話A「無冠の女王」そのはち 始まります。






























第7話A「無冠の女王」そのはち

「さぁーて…“μ's”の連中はどこまで来てるかしらね…。」

 

広域索敵網を展開した結果。

 

それは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「は?まだレーダー圏外?!」

 

かなり広いレーダー範囲を持っている広域索敵網のレーダー圏内には“μ's”の機影はなかったの。

 

イヤイヤイヤ!

 

だってもうバトルが始まってから結構時間経ってるわよ?!

 

ほら?

 

私が例の“蛇”と戦ったり、割愛したけどここら辺のモブを片付けたりしてかなり時間は使ったのよ?

 

それなのにまだ“μ's”の連中はここまで…バトルフィールドの中央まで来てないの?

 

うわぁ…なんかさ、こう言っちゃ悪いけどぶっちゃけ期待外れ?

 

でもまぁ“μ's”って6人中3人がガンプラバトル初めて1ヶ月も経ってない初心者なら仕方ないのかな?

 

そらと相談してそこら辺も含めて今後の練習スケジュールを考えなきゃダメね。

 

って言っても私が“μ's”に入れてもらえるかどうかまだわかんないけど…。

 

今日はちょっとキツいこと言わなきゃダメだろうからね。

 

それで嫌われてチームには入れません!ってなったら…仕方ないわよね…。

 

“μ's”の子たちの戦いぶりを見た限りじゃ、ここでキツいこと言っておかないとあとであの子たちが後悔することになると思うから…。

 

特に南 ことりは。

 

あの子だけは今の段階で追い詰められると諦める癖?をなんとかしてあげなきゃまずいわ。

 

今日はそれが1番の目的ね。

 

「はぁ…なんか肩すかしね。」

 

<こちらから出向きますか?>

 

「んー……どうしよっかな…。」

 

アイリから渡されたデータを見た限りじゃ、“μ's”の子たちは半分が初心者って言ってもこの時間帯のバトルロイヤルで簡単に全滅するような連中じゃないのよね。

 

よっぽど特殊な事態に…それこそさっき私が戦った“蛇”みたいなヤツや、世界大会レベルのワケわかんない化け物みたいに強いヤツが出てこない限りは問題ないはずよ。

 

だからたぶんここで待っていればそのうち来るとは思うけど…。

 

さて。

 

どうしようかし?

 

待つべきか進むべきか。

 

………………………………うん。

 

“μ's”を待つか、“μ's”のもとへ進むべきか。

 

私の出した答えは…

 

「ここで待つわ。」

 

<了解しました。>

 

この場に留まって“μ's”がやって来るなのを待つ。だったわ。

 

待つ。を選択した理由はぶっちゃけめんどうとか色々とあるけど、1番大きな理由としては、私は“μ's”の連中に奇襲したいから。かしから?

 

最初、まずは奇襲して“μ's”の対応を確認してみたいのよ。

 

だから私の選択は“待つ”。

 

でも……

 

「待ってる間…ひまね………。」

 

うーん…。

 

どうやって時間潰そうかしら?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうやって時間を潰そうか。

 

私はソレを考えるためにちょっとだけ目を閉じて思案し始めたの。

 

目を閉じたことで真っ暗になった視界の中で、私はふと…唐突にあのバカとの始まりの日を思い出しちゃったわ。

 

まぁ思い出したって言っても別に忘れていたワケじゃないのよ?

 

だってあの日のことは忘れたくても忘れられないもの。

 

そう…。

 

あの日…。

 

あのバカが音ノ木坂に入学して来たあの日…。

 

私がハジメテを失った日。

 

私とあのバカの始まりの日…。

 

それは…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ!ちょっと待って!あなた!鳴神 青空よね!7年前のガンプラバトル世界大会で優勝した!あの鳴神 青空よね!」

 

1年前。

 

桜の花が咲き誇る春真っ盛りのあの日。

 

入学式を終えて帰路につく新入生たちへガンプラバトル部の勧誘のチラシを配っていた時に、私はアイツを見付けたの。

 

7年前の世界大会を制した伝説の最年少チャンピオン。

 

“始まりの精霊使い(オリジンエレメンタラー)”。

 

鳴神 青空を。

 

あのバカを見付けたときはほんとにあの鳴神 青空なの?って思ったのよね。

 

だって私が知ってるのは7年前の世界大会に出場していた頃の、まだ当時は小学生だった鳴神 青空だけなんですもの。

 

でも何故かはわからないけど、7年前にパパに連れられて観戦に行ったヤジマドームでの世界大会決勝戦で見たあの頃の小さな鳴神 青空と、目の前を通りすぎて行って男の子は間違いなく同一人物だって思ったのよ。

 

女の勘ってヤツかしら?

 

気がついたら私は通りすぎて行った男の子を呼び止めていたわ。

 

あなた、鳴神 青空よね?

 

って。

 

そうしたら…

 

「あ"ぁ"?んだよ…って、中坊?」

 

あのバカは露骨にイヤそうな顔で振り返って、期待に胸を膨らませて(膨らませる胸が無いだろ!って言ったそこのアンタ!ちょっとツラだしなさい!その顔がパンパンになるまで殴りまくってヤるから!!!)キラキラとした憧れの眼差しで見上げていた私を一目見るなり…中坊?って言いやがったのよ!!!

 

信じられる?

 

あのバカは初対面の大銀河宇宙級の美少女に向かっていきなり“中坊?”って言ったのよ!

 

そりゃ確かに私は年齢よりも若く見られることが多いけど、ソレでも初対面なのにいきなり”中坊?“はないわよね!!!

 

ほんとぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉに!失礼しちゃうってのよ!!!

 

で、そんな目の前の失礼なバカに対して、私も最年少チャンピオンへの敬意とか憧れとか一瞬で地平の彼方へ放り投げて思わず声を荒らげちゃったの。

 

「んな?!ちょっと!なんで人のこと見るなりいきなり“中坊?”よ!中坊なんかじゃないわよ!!!アンタより歳上よ!!!」

 

ってね。

 

新入生へのしつけは早いに越したことはないもん♪

 

従順になるようにしっかりとしつけてあげなきゃ♪とか思ってたわね。

 

そんなことを内心で思いながら、目の前の最年少チャンピオンを睨み付ける私に、当のクソ生意気な最年少チャンピオン(笑)は…

 

「イヤ、歳上よってアンタどっからどう見てもあきらかに俺より年下じゃねぇーか。なんで中坊が音ノ木坂の制服来てんだ?コスプレか?コスプレにしてもなんで中坊が音ノ木坂の制服でコスプレなんかしてこんなとこに居んだ?あぁ、なんかわかった。お嬢ちゃんの姉貴か兄貴の入学式を見に来たのか?それで制服借りてはしゃいでる、と。そんな感じのアレか?アホか?」

 

ってさらに人の気を逆撫でするようなことを言いやがったのよ!!!

 

しまいには“アホか?”って言いやがったの!!!

 

アホってナニよ!アホって!!!

 

この一言で私は完全にキレて先輩としての威厳とかもうかなぐり捨てて怒鳴っちゃたの。

 

「誰がアホじゃ!誰が!!!ってかコスプレってナニよ!!!コスプレって!!!だから違うって言ってるでしょ!!!私はここの生徒よ!ホラ!見なさい!!!生徒手帳!!!それに私のリボン!赤よ!赤!赤のリボンは何年生!2年生よね!私は赤のリボンの2年生!アンタは水色のリボン、じゃなくてネクタイの新入生!ほーら!私の方が歳上じゃない!ドヤ!!!」

 

「いや、ドヤって言われてもやっぱりどっからどー見ても歳上のふりしてる中学生にしか見えねぇーんだけど。」

 

こうして改めて思い出してみると、出逢ったばかりの私たちの会話ってもうなんか今の私とあのバカのやり取りとそんなに変わらないわね…。

 

「むがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!わからず屋ねぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

「はぁ…めんどくさ。」

 

「ぬわぁぁぁぁぁぁぁぁぁんですってぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」

 

っと、言った感じのグダグダなやり取りが私とあのバカとの出逢い。

 

そう。

 

これが私とあのバカ…鳴神 青空との始まり。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で?その自称“センパイ”は俺に何の用ですか?暇だけど暇じゃねーんでご用件があんならさっさと言ってくれませんかねぇ?」

 

一通り怒り狂ったことで少しは怒りがおさまって落ち着いてきた頃合いを見計らって、あのバカは改めて何の用ですか?って言ってきたのよね。

 

余計な一言も添えて、だけど。

 

ほんと今思い出してもクソ生意気な新入生だったわ。

 

「自称センパイって…ま、まぁいいわ!ここは大人の余裕で多少の無礼は見逃してあげる!」

 

「はいはい。そりゃどーも。で?マジで何の用なんすっか?」

 

それでね?そのクソ生意気な新入生の余計な一言を大人の余裕で受け流してやっていると、苛立ちを隠そうともしないふてぶてしい態度でまた何の用?って言ってきたのよ。

 

それに対して私は当初の予定通り…

 

「そんなの決まってるでしょ!勧誘よ!勧誘!!!あなた!伝説の最年少チャンピオンなんだから私のガンプラバトル部に入って一緒にガンプラバトルをやりましょ!!!打倒A-RISE!!!私と一緒にガンプライブ優勝を目指すのよ!!!」

 

この目の前の伝説の最年少チャンピオンなバカをガンプラバトル部に勧誘したの。

 

伝説の最年少チャンピオンが仲間になれば、きっとガンプライブ優勝も余裕よ!余裕!A-RISE?ふん!A-RISEなんかこの目の前の“始まりの精霊使い(オリジンエレメンタラー)”さえいればザコよ!ザコ!とか考えながら。

 

なんって言うか…この時の私ってバカよね。

 

この時そらがガンプラバトル部に入部してくれても、部員が二人きりじゃガンプライブの最低規定人数に達してないから、ガンプライブに出場なんてできるはずなかったのに。

 

ソレでもそんな当たり前のことすら吹き飛ばすくらいに、当時の私は鳴神 青空との出逢いに舞い上がっていたの。

 

報われなかった私がようやく報われる!ってね。

 

「ガンプラバトル…ガンプライブ、ねぇ…。はぁ…またこの手の誘いか…。」

 

そう。

 

舞い上がっていたから、私はそらの反応に気づきもしなかったの。

 

「はい!これ!入部届!さぁ!今すぐ書いて!即書いて!迷わず書いて!書いたら勧誘手伝って!!!」

 

そしてドヤ顔のままで入部届を取り出して、サインをせがんだのよね。

 

早く入部して欲しくて。

 

最強の仲間が欲しくて。

 

「お断りだね。」

 

で、まぁ当然あのバカの答えは否。

 

「……へ?い、今なんて…?」

 

私はそんな拒絶の言葉が信じられなくて聞き返しちゃったの。

 

でも…

 

「お断りだ、って言ったんだよ。」

 

聞き返しても答えが変わることはなかったわ。

 

「な、なんで…?えっ?どうして…?」

 

冷たく言い放たれた拒絶の言葉。

 

あの頃の夢に目が繰らんで周りを見ようともしていなかった私には、そらが言い放った拒絶の言葉はほんとにショックだったわ。

 

どうしてこの子はガンプラバトル部への勧誘を断るの?

 

どうして?

 

この子はあの鳴神 青空なのに?

 

どうして?

 

この子はあの伝説の最年少チャンピオンなのよ?

 

それなのに…どうして?

 

って感じでね。

 

「俺が鳴神 青空だって知ってんなら、アンタも7年前の顛末は知ってんだろ?イヤなんだよね、またクソ虫共にあることないこと言われて叩かれんの。ガンプラバトルは止めてねぇーけど、俺はもう二度と公式戦に出るつもりはねぇんだよ。」

 

そう…この頃の私は舞い上がりすぎて失念していたの。

 

7年前の世界大会の顛末を。

 

「そ、そんな…。」

 

「わかったら二度と声かけんなよ、センパイ。ったく…入学初日からイヤなこと思い出させやがって…。クソ…今日は厄日か?前の席のアホっぽい女はムダにクソうるせぇーし、その隣の席の女はムダに睨んで来やがるし、隣の席の女は…まぁアレは別に何にもねぇーか。」

 

私が拒絶の言葉に愕然としてると、そらは二度と声かけんなよって再び冷たく言い放って、あの頃の私に背を向けてそのまま帰ろうとしたの。

 

それを見た私は咄嗟にそらの制服の裾を掴んで、勢いで何も考えないでとんでもないことを言っちゃったのよ。

 

「ま、待って!なら!勝負して!」

 

って。

 

うん。

 

アホだわ。

 

何度思い出してもみてもこの頃の私って超弩級のアホだわ。

 

でもこの頃の私は自分の口から咄嗟に飛び出たこの一言がスゴくナイスなアイデアだと思ったのよね。

 

「勝負?」

 

「そう!勝負!!!私とガンプラバトルで勝負して!それで私が勝ったら!私のガンプラバトル部に入部して!!!」

 

目の前にいるこのバカは腐っても世界大会を制した超一流のファイターなのに。

 

場末のアミュセンで無双していい気になっていたあの頃の私なんかが勝てるわけないのに。

 

アホな当時の私はあのバカに意気揚々と勝負を持ちかけたの。

 

「はぁ?なんでそうなんだよ?意味わかんねぇセンパイだな。」

 

もちろんあの頃のそらは私の勝負よ!って言葉を聞いて“コイツ、ナニ言ってんだ?”って顔していたわ。

 

当然の反応っちゃ当然の反応よね。

 

「うっさい!!!アンタは私と勝負して負けたらガンプラバトル部に入る!はいこれ決定事項!!!」

 

そんなそらに対して、私は強引にガンプラバトル勝負に持ち込んで、無理やりにでもガンプラバトル部に入部させてやる!とか思っていたわけで…。

 

「たからなんで「決定事項!!!」……はぁ…。変なのに絡まれちまったなぁ…。ったく、ため息しかでねぇよ…。」

 

ご覧の通りに押しきっちゃったのよ。

 

これがバカの一念、岩をも徹す。ってヤツかしら?

 

そして、このあとに私の人生最大のアホが始まるの…。

 

「それじゃ早速アミュセンに行くわよ!!!」

 

「だからイヤだって言ってんだろ!そもそも!センパイのその提案じゃ俺が勝っても何にも得がねぇーだろ!」

 

「そんなの私が勝つに決まってるんだから当然でしょ!!!」

 

「あー、ハイハイ。そーですか。」

 

「ナニよ!文句あんの!!!」

 

「あるに決まってんだろ!!!」

 

「もう!わがままね!」

 

「我が儘なのはどっちだってんだよ…。」

 

「仕方ないわ!」

 

「オマケに人の話は聞かねぇーし…。」

 

「万が一!アンタが私に勝てたら……私の処女をアンタにくれてやるわ!!!!!」

 

私の人生最大のアホ。

 

それはこのバカに勝負に負けたら私の初めてを…処女をくれてヤる!って言い放ったこと。

 

そしてこの一言は私の人生最大のアホであると同時に、私の人生最大の英断でもあったの。

 

この一言のせいで、私を初めてを失った。

 

この一言のせいで、あのバカに余計な重荷を背負わせた。

 

けど。

 

この一言のお陰で、私は強くなれた。

 

この一言のお陰で、私は夢を捨てずにすんだ。

 

この一言のお陰で、私は愛する人を見つけることができた。

 

「…………………………は?」

 

「だーかーらー!もしも!アンタがもしもこの私に勝てたら!私の初めてを…処女をくれてヤるって言ったの!!!」

 

「……………バカじゃねぇの?コイツ?」

 

「バカじゃないわよ!!!」

 

「んじゃアホか?」

 

「アホでもないってのよ!!!ってかヤるの!ヤらないの!!!どっち!!!」

 

「ヤるのって…まぁこの自称センパイ、見た目がガキみたいで貧相な身体してるけど、顔は悪くねぇーよな…。自称センパイってのがホントなら…年上、か…。それにここまで小柄な女とはヤったことねぇーし…確実に穴は小せぇだろーから締まりはいいだろうな…。処女ってのはめんどくせぇけど……。」

 

「ナニぶつぶつ言ってんの!!!ヤるのかヤらないのか!さっさと決めなさい!!!」

 

アホな私のバカ提案。

 

それに対してあの頃のそらの答え…それは…

 

「ったく…ギャーギャーうるせぇー女だな。せっかく良い声してんだから啼くならベット上で啼けってんだよ。いいぜセンパイ。その勝負…乗ってヤるよ。どれだけ実力があるかは知らねぇけど、たかがスクールファイター程度がガンプラバトルで俺に勝負を挑んだこと、ベットの上でたっぷりと喘がせながら後悔させてヤる。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私自身を対価にすることでようやく勝負を受諾させた私は、そらを引き連れて学校から1番近い馴染みのアミューズメントセンター音ノ木坂店に向かったの。

 

そして通いなれたアミュセンの自動ドアをくぐって店内に入ったあの頃のアホな私とそらは、さっそくGPカウンターで対戦モードの出撃登録を済ませて、それぞれ指定されたガンプラバトルシミュレーターの筐体へと乗り込んだわ。

 

バトルフィールドは宇宙。

 

デブリも暗礁宙域も特殊なギミックも、何にもないただの宇宙空間ステージ。

 

使用するガンプラはそらがレンタルガンプラの素組のF2ザク。

 

私はダークフーレム禍にこの前身のガンダムアストレイ・ダークフーレム。

 

このときに使っていたただのダークフーレムは、基本的には通常のアストレイと同じ装備だったのよね。

 

ビームライフルにビームサーベル、あとはアンチビームコーティングシールド。

 

そう言えば防御アビリティ“ナノラミネートアーマー”でビーム攻撃の効かない鉄血系の機体対策用にって、一応はアーマーシュナイダーも武装領域(ウェポンストレージ)の中に入れていたわね。

 

あとは防御アビリティでフェイズシフト装甲も付けていたかしら?

 

特殊装備の塊みたいなトリニティストライカーを装着してある今の禍にこに比べると、いたってシンプルな装備の機体だったわ。

 

けどシンプルでも性能はバトルロイヤルで遭遇するそんじょそこらの機体にくらべても圧倒的に高かったし、そもそもそらか選んだ素組のF2ザク相手なら十分過ぎるって思ってたっけ。

 

それにこの頃の私は、もう秋葉原地区のバトルロイヤルでは向かうところ敵無しで、例え相手が伝説の最年少チャンピオンだろうと苦戦はしても負けることはないって思っていたしね。

 

でも蓋を開けてみたら…

 

「っ!攻撃が全然当たんない?!なんで!!!」

 

私の攻撃はそらの操る素組のF2ザクにかすりもしなかったの。

 

ビームライフルを連射しても、ビームサーベルで斬りかかっても。

 

そのことごとくをそらは簡単に避けてみせたの。

 

それだけじゃなく…

 

[[その程度の攻撃が当たんねぇーのは当たり前だろ?センパイの射撃の狙いは悪くはねぇけど、動作の一つ一つが遅すぎんだよ。そんなトロい攻撃に当たれって方が難しいってんだ。それに…オルゥラァァァ!!!]]

 

「うぎゃ?!」

 

[[俺に攻撃当てる事に躍起になりすぎて、胴体ががら空きだってんだよ!]]

 

どうして私の攻撃が当たらないのか、私のどこがダメなのか、そんなことを説明しながらも、確実に攻撃をこちらの機体の胴体部分…コックピットへと何度も直撃させて来たの。

 

まぁフェイズシフト装甲の防御アビリティを持っていたダークフーレムには、ヒートホークなんかじゃ何度攻撃してもまともなダメージを与えることはできはしなかったんだけどね。

 

けど何度も攻撃が当たる度にフェイズシフト装甲が発動していたから、ダークフーレムのエネルギーゲージはもう危険域に入ろうとしていたわ。

 

「っ!で、でも!当たっても素組のザクのヒートホークなんかじゃフェイズシフト装甲の防御アビリティは抜けないわよ!!!まだエネルギーは残ってる!いくら攻撃されてもへっちゃらなんだから!!!それに素組のザクなんか1発でも当たればおしまいよ!そうよ!まだこれからなんだから!!!」

 

あの頃のアホな私は、残りわずかなエネルギーでも1発当たればザクなんて、って思って…ううん。

 

思ってたんじゃないわね。

 

ザクなんか、ってそう思わなきゃ心が折れそうになってたの。

 

1発。

 

たった1発当たれば。

 

そうすれば勝てるって。

 

<<マスター、制限時間がラスト3分を切りました。>>

 

そう思い続けて攻撃を続けては避けられて、反撃で嫌がらせのようにコックピットへと攻撃を当てられて…。

 

気が付くとバトルの残り時間はもう3分を切っていたの。

 

[[ん?もうそんなに時間経ったのか?]]

 

<<はい。なので“お遊び”はもうよろしいのでは?>>

 

[[だな。それに…このあとは“お楽しみ”が待ってるしな。]]

 

<<避妊はちゃんとして下さいね。妊娠でもされると後が面倒なので。>>

 

そう言えば…残り3分を切ったことで、さらに必死に攻撃を続ける私を尻目に、そらと相棒の電子精霊のアイリは呑気にそんなことを言ってやがったわね。

 

あの頃の私は通信越しに聴こえてくるそんな二人のやり取りを悔しい思いで聞きながら、とにかく1発でも攻撃を当てるために、残りのエネルギーとか一切無視してビームライフルを連射しまくったわ。

 

けどそんな私の必死の攻撃も、そらはF2ザクの姿勢制御スラスターを巧みに操ることでヒラヒラと簡単に、しかも余裕なのかアイリとのおしゃべりを続けながら避けてみせたの。

 

そして…

 

[[わかってるっての。ったく……んじゃ…終わらますかね!なぁ!センパイ!!!]]

 

「えっ?!なっ!はや…!」

 

当時の私はまだ知らなかった、そらの得意とする高速空間機動戦術“soar(ソア)”…簡単に言えば足場のない宇宙空間や空中でのクイックブーストを使っての急加速で一気にダークフーレムに近づいてきて…

 

[[センパイも知ってんだろ?いくらフェイズシフトの防御アビリティがあっても、ガンプラバトルシミュレーターじゃ関節部分にまでは適用されてねぇーんだって。素組のザクのヒートホークでも、関節を上手くぶった切ればフェイズシフトなんか関係ねぇーんだよ!]]

 

「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

すばやくヒートホークを四肢の関節へと合計4回叩きつけて、切り落としてしまったの。

 

文字通り手足をもがれた私のダークフーレムは、いわゆる“だるま状態”ってヤツね。

 

「ま、まだ!!!まだこの子は戦えるわ!!!手足がなくても!最後の瞬間まで諦めてたまるもんですか!!!っ!そうだよ!この子の頭は残ってるんだからイーゲルシュテルンで!」

 

それでもあの頃の私は諦めずに残された頭部に内蔵されているバルカン砲…イーゲルシュテルンを起動させて最後の悪あがきをしようとしたんだけど…

 

[[その判断は悪くねぇ。でも判断自体が遅い。はい、クビちょんぱってね。]]

 

「あっ…!」

 

その前に首を狙って再び振るわれたヒートホークの一閃で、あっさりと頭部を切り飛ばされちゃったわ。

 

四肢をもがれ、頭部を失い、全ての攻撃手段を失ったわたしは、これでもうホントにどうすることもできなくなってしまったの。

 

[[終わりだよ、センパイ。アンタの負けだ。]]

 

なす術なくうなだれるわたしに、通信画面越しに映るそらから言い渡されたのは、私の負けを告げる一言。

 

「う…そ……。」

 

そらの言葉を聞いて負けを理解した私はただ呆然とするしかなったわ。

 

そんなあの頃の私にはそらは…

 

[[……………なぁ……今なら…見逃してやってもいいぞ。もう二度と俺に関わらないって約束してくれれば…そうすれば…。]]

 

二度と関わらなければ見逃してやる。

 

そう言ってくれたの。

 

見逃してやる…つまりは私が勝負の対価として約束したアホな条件…。

 

負けたら私の初めてをくれてやる!って条件を無かったことにしてあげる。って。

 

でも私は…

 

「二度と関わらない……」

 

私は………

 

[[あぁ。二度と関わらなければ…]]

 

「そんなの…そんなの……絶対にイヤよ!!!」

 

二度と関わらなければ…その一言に無性に頭にきて絶対にイヤ!!!って言い放ってやったわ。

 

ふざけんじゃない!

 

二度と関わるなってナニよ!!!って感じでね。

 

「今日負けても!明日は勝てるかもしれない!!!明日また負けても!!!そのつぎこそは!それでも勝てなかったら!何度でも!!!私は!絶対にアンタを倒して仲間にしてみせる!!!負ける度にアンタにめちゃくちゃに犯されたとしてもよ!!!決めたわ!!!こうなりゃヤケよ!ヤケ!!!ヤるんならヤってみやがれってのよ!!!!!」

 

この頃の私はもうなんだか知らないけど完全に意地になっちゃったてのよね。

 

例え何度負けたとしても、勝つまでは絶対に勝負を挑み続けてやる!って。

 

[[チッ…。あぁそーかい。人の親切をムダにしやがって…まぁいいさ。]]

 

そらはそんな私の言葉に舌打ちを1つ打つと、苛立った様子で私にとどめを刺すために動き出したわ。

 

左手に持っていたMMP-80マシンガンの銃口を、ダークフーレムの切り落とした右腕の関節部分にねじ込んで、機体中央のコックピット部分目掛けて…

 

[[んじゃ…お望み通りにサクッと終わらせて!ベットの上で俺に関わったことを後悔させてヤるよ!!!コイツでゲームオーバーだ!センパイ!!!]]

 

何十発もの弾丸をぶち込んで来たの。

 

もちろん機体内部への攻撃なんかされちゃったら、当たり前だけど防ぐ手段はないワケで…

 

「っぅぅぅ!!!お、覚えてなさいよ!!!次は絶対に負けないんだからね!!!」

 

[[あー、ハイハイ。それよりも約束守れよ?なぁセ♪ン♪パ♪イ♪せいぜい良い声で泣き叫んで楽しませてくれよな♪]]

 

私はコアロストでゲームオーバー。

 

「う、うっさい!!!このバカ!!!スケベ!!!変態!!!ヤ○チンやろう!!!そっちこそ油断したらアンタのチ○コ噛みちぎってやるから覚悟しときなさいよ!!!」

 

[[おー、こわ。]]

 

 

<<BATTLE END>>

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<広域索敵網に反応。数、6。>

 

私とあのバカの始まりの日のひと幕を思い返していた私を現実へと引き戻してくれたのは、そらからプレゼントされた電子精霊へと至る可能性を秘めた特別なサポートAIのウズメの声だったわ。

 

告げられた内容は広域索敵網に反応アリ。

 

数は6。

 

「ん。」

 

私は閉じていた目を開けると、すぐにサブモニターへと視線を移して、表示されているレーダー情報を確認したわ。

 

<侵入方向から推測になりますが、恐らくはマスターが目的となさっていた例のチームかと思われます。>

 

でしょうね。

 

数もちょうど6だし。

 

さて…色々とあったけどようやく今日の本来の目的…私の大切な、私の愛するあのバカの…そらの仲間たち…。

 

チーム“μ's”の連中を試すことができるわね。

 

「ウズメ。展開中のヤサカニノマガマであの6機をこちらの射程圏内…そうね、“御雷槌(ミカヅチ)”の射程圏内まで誘導しなさい。」

 

<了解しました。>

 

さぁ。

 

来なさい。

 

“μ's”

 

そして見せてみなさい。

 

アンタたちの力ってヤツを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




皆様。本日もご覧いただきましてありがとうございました。

実は今とあまり変わらないやり取りをしていた1年前の出会ったばかりのにこちゃんとソラ。
魔女さん並に腐っていたソラがどうして少しはまともになれたのか。
にこちゃんとの間に何があったのか。
そこら辺はまた追々と本編、または閑話で描いて行きたいと思います。

次回はことりさんsideの更新予定です。
ことりさんがブルードム攻略のために取ったとんでもない手段。
それは…。

次回更新はいつも通り月曜日のお昼頃を予定しております。
お時間よろしければご覧下さいませ。

それでは改めまして、本日もご覧いただきまして、本当にありがとうございました。
皆様のご意見、ご感想、または質問などもお待ちしております。
どうかお気軽にお声掛け下さい。

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